第12回〜“歌を作る”=ボーカルのOKテイク制作②

“D”と“P”の作法(音楽業界編) by 中脇雅裕 2017年6月20日

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皆さん元気ですか〜。すっかりご無沙汰してしまってすみません。ここ最近はホノルルでのイベントやロスでの講演、東京大学とのAIによる作曲/作詞の共同研究、そして新しい音楽サービスの立ち上げなどなどバタバタしていました。
さて、今回も夏に向けてガンガン音楽制作している皆さんに向けて、参考になる話ができたらと思っています!

ボーカル・テイクのセレクト時に「優先すべきポイント」は?

第9回「“歌を作る” =ボーカルのOKテイク制作」の続きとして、ボーカル・トラックの修正についてお話していきます。

まず、ちょっと話を戻して、ボーカル・テイクをつなぎ、OKテイクを作るとき、あなたは何を基準にしてOKテイクを作っていきますか? ここで歌の評価のポイントをもう一度整理してみましょう。

・ピッチ
・リズム
・タイミング
・音の長さ
・声質
・表情
(番外)ブレス

歌のこれらのポイントを評価しながら、良いと思う部分をつなげてOKテイクを作ります。
さて、あなたはどのポイントを大切にしますか?

答えは「全部」!!!

なんですが、強いて言えば私の場合、

1)表情
2)声質
3)音の長さ
4)ピッチ
5)リズム・タイミング
の順番で評価しています。

サンレコの読者の方なら察しがつくと思いますが、現状のDAW上では修正できない、もしくは難しいポイントから評価しています。

つまり、リズム/タイミングやピッチなど後で修正がしやすいポイントより、修正が難しい表情や声質のポイントを優先して、それらが良いテイクを選んでいくことになります。

 

歌がヘタな筆者でもボーカル・ディレクションをしている事実

そしてOKテイクができました!(とします)。
ここからがディレクターの腕の見せどころで、OKテイクをさらにDAWの編集機能やオートメーション機能、そしてプラグインなどを駆使してブラッシュ・アップしていきます!

さて、
私事で恐縮ですが、私は歌がめっちゃヘタです。カラオケには行ったとしてもまず歌いません(笑)。歌ったら“えっ?この人ホントに音楽関係の仕事してんの???”と思われること必至です

でもレコーディングのときは本当に申し訳ない話というか、めちゃくちゃ上手いシンガーの方たちに自分が歌って指示(ボーカル・ディレクション)をしてきました。“ちょっとピッチが低いな〜、もう少し上げてください。こんな感じ♪〜”と言って、何と歌って指示するのです。多分、私のピッチの方が全然低いと思うのですが“分かりました〜!”と素直に言っていいただいて、何度もトライしてくれたりします。この場をお借りして、今までお付き合いいただいたシンガーの方々にお詫び申し上げますm(__)m。

とはいえ、ディレクションはコミュニケーションです。下手だろうが上手かろうが“こう歌ったらもっと良くなる”という思いを伝えようとすることが大切です。

で、こんな歌が下手な私でもボーカル・ディレクションや歌のトラック作りがうまくできる秘密があります。それは“完璧なボーカル・トラックを頭の中でイメージする”ことです。

“このシンガーでこの曲の最高のボーカル・テイク”を常にイメージして、歌入れのときは実際の歌と、その完璧なボーカル・トラックと比較しているので、的確な指示ができます。また、OKトラックを作ることもゴールがはっきりしているので迷いなく作業ができます。

そしてこの“完璧なボーカル・トラックのイメージ”は鮮明でなければなりません。

・ピッチ
・リズム・タイミング
・音の長さ
・声質
・表情
(番外)ブレス

すべてのポイントにおいて“完璧なボーカル・トラック”をイメージしてください。

この“完璧なボーカル・トラック”をイメージするためのトレーニング方法をご紹介しましょう。

(1)まず好きな音楽(この場合はボーカルものが良いでしょう)を選んで何度も聴きます。10回以上は聴いてください。それも何かをしながらでなく、ちゃんと音楽に向き合ってださい。ヘッドフォンなど利用するのも良いでしょう。
(2)その音楽の再生を止めて、自分の頭の中で再生します。つまり思い出し再生です。
(3)その際、自分がボーカリスト、つまりエアー・ボーカリストとなってください。
(4)これを何度もやってみます。何曲もやってみます。慣れると数回聴いただけでしっかり頭に音楽が記憶されるようになります。
(5)たまにオリジナルの音楽を聴きながらエアー・ボーカルをしてみるのも効果的です。
(6)これは歌だけでなく他のパートにも効果的。ぜひトライしてみてください。

これを何十曲、何百曲、さまざまな種類の音楽、ボーカリストでやってみます。
そうすると見本がなくても頭の中で“完璧なボーカル・トラック”をイメージすることができるようになります。

“完璧なボーカル・トラック”のイメージができれば、あとはそれに向かって作業するだけです。

これが「“歌を作る”=ボーカルのOKテイク制作」の最大の秘密です!!!

次回はさらに具体的なボーカルのOKテイク制作のテクニックにつてお話ししましょう。

【中脇雅裕】
プロデューサー/音楽ディレクター。CAPSULE、中田ヤスタカ、Perfume、手嶌葵、きゃりーぱみゅぱみゅなどのヒット作品に深くかかわる。アーティスト/クリエイターの成功とメンタルの関連性に日本でいち早く着目し、研究を重ねている。http://nakawaki.com

 

 

※本連載は毎月15日・30日近辺に更新していく予定です。お楽しみに!

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