【音響設備ファイルVol.30】マクセル アクアパーク品川

音響設備ファイル by Text:iori matsumoto Photo:Takashi Yashima(except *) 2018年2月1日

AquaParkMain

2005年のオープン以来、品川の新名所として人気のマクセル アクアパーク品川。都市型水族館のパイオニアとして、水生生物の展示にとどまらず、音や光と組み合わせて季節や昼夜に合わせた演出を行っている。昨年、ドルフィン・パフォーマンスが行われる“ザ スタジアム”の音響システムを一新。その絶大な効果を取材した。

耐候性と音質を両立するスピーカーを選定

 品川プリンスホテルの敷地内にあるマクセル アクアパーク品川。音/光/映像など、最先端テクノロジーによる演出で、350種もの海の生きものの魅力を伝える“TOKYO最先端エンターテインメント”をテーマとしている。22時まで営業しているため、仕事や学校が終わってからの来場も可能。演出テーマに四季やトレンドを取り入れるのみならず、昼夜でもさまざまな演出が変わり、何度訪れても異なる楽しみ方ができることが大きな魅力となっている。

 中でも人気を集めているのは、直径約25mのプールを囲む円形の会場“ザ スタジアム”で行われるドルフィン・パフォーマンス。イルカの動きと照明/映像/ウォーターカーテンが連動するそのショウは、昼夜別プログラムが行われる。もちろん音楽や音響も重要なショウの一部。オペレートを担うワンステップ ワークショップの青木雅史氏は、クラブの音響などにも携わった経験の持ち主だ。

 「ショウの中で必要な音量で、なおかつお客様にクリアに聴こえることを意識しています。トレーナーのレベルというわけにはいきませんが、ある程度イルカの動きを予測することも必要ですね。ショウの構成に関するコミュニケーションをトレーナーと密にして、お互いにフォローしながら進めています」

 そんなザ スタジアムの音響システムが、昨年一新された。

 「当館は2015年にリニューアルをしましたが、その際に音響システムは含まれていませんでした。そこで昨年、ムービング・ライトとともに音響システムをアップデートして、よりエンターテインメント性の高いショウに対応できるようにしました。また、アーティストの生歌とイルカのコラボレーションも行う機会があり、従前のスピーカーではどうしても無理がありました。そうしたケースにも十分対応できるようなシステムにしたい……そんな要望も館から挙がっていました」

 プールに使われている水はもちろん海水で、その飛沫がかかっても耐えうるようなスペックと音質を両立するスピーカーは多くない。そんな中、アクアパークが選定したのJBL PROFESSIONALの耐候スピーカー、AWCシリーズ。15インチ+1.5インチ同軸2ウェイのAWC159×12基をメインに、15インチ・ユニットのサブウーファーAWC15LFを4基加えた構成で、プールの上方中央から客席に向けて設置している。

 「これまで使用していた2ウェイ・モデルも11基を現在に近いレイアウトで使用していましたが、指向角が65°×65°だったのに対し、AWC159では90°×90°となり、客席全体をカバーできるようになりました。同時に、余計な反射もかなり改善できたと思います。入れ替えたその日に、トレーナーからショウがやりやすくなったという声が挙がりました。サブローが入ったことで、お客様のノリも良くなっているのが分かります」

 アーティストのパフォーマンスでも、2年連続で出演しているボーカル・グループの帯同エンジニアから“去年よりすごく良くなったよ”と良い反応があったそうだ。

▲天井中央部から客席に向けて、耐候性を備えるJBL PROFESSIONALの2ウェイ同軸スピーカーAWC159を12基設置。低域を補うため、サブウーファーのAWC15LFも4基加えられている。AWC159とAWC15LFの外観は同一で、写真中央にある2本のうち右側がAWC15LF

▲天井中央部から客席に向けて、耐候性を備えるJBL PROFESSIONALの2ウェイ同軸スピーカーAWC159を12基設置。低域を補うため、サブウーファーのAWC15LFも4基加えられている。AWC159とAWC15LFの外観は同一で、写真中央にある2本のうち右側がAWC15LF

▲音響に加え、照明や映像、特殊効果のオペレートを行う調整室。メインのミキサーはデスクに置かれたYAMAHA 01V96I。左にあるKORG NanoPad2×4は、イルカのトレーナーが照明やウォーターカーテンの操作を行うためのもの。ROLAND AR-3000SD上にあるMIDIファイルをトリガーして、照明/噴水の色や動きをイルカの動きに合わせて切り替える。照明卓の操作が分からないトレーナーにも扱えるような工夫とのこと。なお天井にはJBL PROFESSIONAL AWC82を設置し、場内と再生環境を近付けている

▲音響に加え、照明や映像、特殊効果のオペレートを行う調整室。メインのミキサーはデスクに置かれたYAMAHA 01V96I。左にあるKORG NanoPad2×4は、イルカのトレーナーが照明やウォーターカーテンの操作を行うためのもの。ROLAND AR-3000SD上にあるMIDIファイルをトリガーして、照明/噴水の色や動きをイルカの動きに合わせて切り替える。照明卓の操作が分からないトレーナーにも扱えるような工夫とのこと。なお天井にはJBL PROFESSIONAL AWC82を設置し、場内と再生環境を近付けている

▲音響システム改修の解説をしてくれたワンステップ ワークショップの青木雅史氏

▲音響システム改修の解説をしてくれたワンステップ ワークショップの青木雅史氏

▲ナイト・バージョンでは、“ザ スタジアム”の壁面とウォーターカーテンに映像を投影する360°プロジェクション・マッピングとイルカの共演が楽しめる演出。今回の音響システム改善によって、音も映像にリンクしたマルチチャンネル・コンテンツとなった(*)

▲ナイト・バージョンでは、“ザ スタジアム”の壁面とウォーターカーテンに映像を投影する360°プロジェクション・マッピングとイルカの共演が楽しめる演出。今回の音響システム改善によって、音も映像にリンクしたマルチチャンネル・コンテンツとなった(*)

 

360°映像と連動するサウンド定位を演出

 スピーカーのリプレースに合わせて、アンプを含む出力系システムも一新された。要となるのは、BSS AUDIOのプログラマブル・デジタル・プロセッサーBLU-160。アンプのDCI 4|600N×5基と独自の伝送バスBLU-Linkによりリング・トポロジーで冗長化されたオーディオ信号のネットワーク接続が行えるのに加え、コントロールも専用ソフトウェアのAudio Architectを使って、Windowsマシンから管理が行える。

 「Audio Architectでは現場に合わせたオリジナルの操作画面の“カスタム・パネル”を設けることができるので、入出力のレベル監視用画面と、ミュートでの回線チェックやレベル・コントロールが行える画面を用意しています。旧システムからの乗り換えもスムーズでしたし、GUIが優れているので使いやすいですね。また、システムの入れ替えで営業を止めるわけにはいきませんでしたので、営業終了から翌朝までの間で施工する際に、配線が簡単なことも助かりました」

 このBLU-160導入によって、新たな試みが実現したそう。

 「以前から夜のプログラムでは空間演出チームのNAKEDさんが手掛けたプロジェクション・マッピングを取り入れていたのですが、映像の動きに合わせて音も動かしてみたいと考えました。ですので、SEなどをメディア・サーバーから12ch出力し、それをBLU-160にインプットして、内部のマトリクス・ミキサーでスピーカーに振り分けるということをしています。ショウが新たなプログラムに切り替わったときに、SEなどの調整が必要な場合にも、BLU-160のインプットにコンプレッサーとEQを設けているので対応可能です。より臨場感が増したという実感はありますね」

 つまりここでは、BLU-160をアウト系のミキサーとして使用していると考えるのがシンプルだ。さらにアウト系のチューニング・プロセッサーとしてはDBX DriveRack Venu360が導入されている。

 「DriveRack Venu360は、RTA(リアルタイム・アナライザー)を搭載しているので、日々の調整に便利です。客席の混み具合に合わせて、スピーカーのチューニングをしたりしています」

 そんなサウンド周りが一新された環境で見るドルフィン・パフォーマンスは、トレーナーのMCがはっきり聴き取れるのはもちろん、リズムに合わせたイルカのパフォーマンスも臨場感が増し、来場者にも大変好評とのこと。最後に青木氏はこう付け加えてくれた。

 「通常のショウだけでなく、この空間でプレス発表会などが行われるケースもあるのですが、音響システム的に対応できることが以前より増えているので、活用していただきたいですね。音が主役の空間ではないので、ライブ・ハウスのように音が良くなったことそのもののインパクトはそう強くはないと思いますが、逆に言えばライブ・ハウスなどでは難しい音の演出もできると思います」

▲調整室右手側のラック。右はパワー・アンプのAMCRON(現CROWN) DCI 4|600N×5基と、イーサーネット・スイッチ、BSS AUDIO Audio ArchitectをインストールしたWindowsパソコンが並ぶ。左はDENON PROFESSIONAL DN-F300、TASCAM SS-CDR200×6、CD-500×2といったオーディオ・プレーヤーで、DN-F300は幕間のBGM、TASCAMのプレーヤー群はショウ(デイ・バージョン)でイルカの演技に合わせたBGMを送出するためのもの。ナイト・バージョンのショウでは、メディア・サーバーから映像と同期した音声を再生する

▲調整室右手側のラック。右はパワー・アンプのAMCRON(現CROWN) DCI 4|600N×5基と、イーサーネット・スイッチ、BSS AUDIO Audio ArchitectをインストールしたWindowsパソコンが並ぶ。左はDENON PROFESSIONAL DN-F300、TASCAM SS-CDR200×6、CD-500×2といったオーディオ・プレーヤーで、DN-F300は幕間のBGM、TASCAMのプレーヤー群はショウ(デイ・バージョン)でイルカの演技に合わせたBGMを送出するためのもの。ナイト・バージョンのショウでは、メディア・サーバーから映像と同期した音声を再生する

▲調整室右手奥のラックには、DBX 1046(4chコンプレッサー/リミッター)と1231(2chグラフィックEQ)×2を用意。これらはトレーナーのMCマイクにインサートして使う補正用。そのほかSHUREのワイアレス・レシーバーULXD4D-ABなどもスタンバイ。画面に映るのは、Audio Architectによる入出力のレベル監視パネル

▲調整室右手奥のラックには、DBX 1046(4chコンプレッサー/リミッター)と1231(2chグラフィックEQ)×2を用意。これらはトレーナーのMCマイクにインサートして使う補正用。そのほかSHUREのワイアレス・レシーバーULXD4D-ABなどもスタンバイ。画面に映るのは、Audio Architectによる入出力のレベル監視パネル

▲上は出力系の調整に使用しているDBX DriveRack Venu360。その下がマルチプロセッサーのBSS AUDIO BLU-160で、ここでは主に出力系の信号アサインを行うマトリクス・ミキサーとして使用されている。下段のROLAND AR-3000SDは、特殊効果(スモークやスノー・マシン)のコントロール用MIDIファイル送出用

▲上は出力系の調整に使用しているDBX DriveRack Venu360。その下がマルチプロセッサーのBSS AUDIO BLU-160で、ここでは主に出力系の信号アサインを行うマトリクス・ミキサーとして使用されている。下段のROLAND AR-3000SDは、特殊効果(スモークやスノー・マシン)のコントロール用MIDIファイル送出用

▲“ザ スタジアム”での運用向けに組まれたAudio Architectのカスタム・パネル。スピーカーのレベル調整やミュート設定が簡単に行え、回線チェックなどに便利だそう。最上段に並ぶのは、メディア・サーバーからBLU-160に直結されたナイト・バージョン用12ch音声のインプット・フェーダーで、画面上には表示されていないが、EQやダイナミクスなどもインプット・チャンネルに設けられているという

▲“ザ スタジアム”での運用向けに組まれたAudio Architectのカスタム・パネル。スピーカーのレベル調整やミュート設定が簡単に行え、回線チェックなどに便利だそう。最上段に並ぶのは、メディア・サーバーからBLU-160に直結されたナイト・バージョン用12ch音声のインプット・フェーダーで、画面上には表示されていないが、EQやダイナミクスなどもインプット・チャンネルに設けられているという

 

■関連リンク
マクセル アクアパーク品川
http://www.aqua-park.jp/

JBL PROFESSIONAL AWCシリーズ 製品情報
http://proaudiosales.hibino.co.jp/jblpro/2523.html

サウンド&レコーディング・マガジン2018年3月号より転載
 

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