Gonnoが使う Studio One 第4回

ミュージシャンが使うStudio One by Gonno 2019年4月25日

Gonno

第4回 基本機能&純正プラグインで
テクノ・トラック制作もお手のもの

皆さん、いかがお過ごしでしょうか。筆者はヨーロッパ巡業中で、本稿もベルリンで書いています。今回のツアーは長く、初日のアムステルダムからもう3週間が過ぎようとしていているのでさすがに疲れが出てきていますが、ツアーのハイライトになると思われるベルリンPanorama Barでの出演を控えているため、気合いを入れているところです。

Mojitoの音でアシッダイズ!
演奏に便利なQwerty Keyboard

筆者はこれまでPRESONUS Studio One(以下S1)をミックスなどにしか使っていませんでしたが、今回はトラック・メイクに試してみて、その使用感をレポートします。滞在先はベルリン在住のDJ、Shingo Suwa君の自宅で、僕が普段使っているハードウェアは無いので、“ラップトップ+S1のみ”という環境で実践。サード・パーティのツールは一切使いません。

このS1連載では、過去に僕以外の方がポップスの作り方を解説したこともあるでしょうし、せっかくベルリンに居るので、ベルリンらしい130BPM前後のテクノを作ってみようと考えました。ただ同時に“自前のハードが無く、純正のシンセも触ったことがないDAWだけでホントにできるんかな……”という不安も。ですが、いざやってみるとS1だけでかなり良い感じに!

まずは16ビート基調のベース・ラインを作るべく、アナログ・モノシンセ系のMojitoをチョイス。何よりもまず、このMojitoの音を聴いて安心しました。オシレーターは1基+サブというシンプルな構成ですが、フィルターやアンプ・エンベロープ、LFOなどの風合いがハードウェアとそん色なく、ROLAND SH-101と同じような粘り気のあるベース・ラインがすぐにできました。フィルターは、SH-101のような発振こそしませんが、レゾナンスをフルにするとだいぶ良い加減のアシッド具合。開発者の方が、相当丁寧にアナログ・シンセをシミュレートして設計したことが、触ってすぐに分かる音だと思います。

 

▲Mojitoは、アナログ・モノシンセを意識したプラグイン・インストゥルメント。モノシンセ特有のストレートでファットな音が魅力で、コーラスやひずみなどの内蔵エフェクトによる音作りも可能です

▲Mojitoは、アナログ・モノシンセを意識したプラグイン・インストゥルメント。モノシンセ特有のストレートでファットな音が魅力で、コーラスやひずみなどの内蔵エフェクトによる音作りも可能です

フレーズ作りに関しては、手元にMIDIキーボードが無いため、ピアノロールに一つ一つ打っていくしかないのかな?とかパソコンのキーボードを鍵盤代わりに使える機能は無いのかな?……などと思っていたらありました、Qwerty Keyboard機能! Qwerty Keyboardはデフォルトでは立ち上がらず、“環境設定→外部デバイス→デバイスを追加”でMIDIコントローラーとして認識されます。あとは打ち込みたいトラックを選び、ミキサー左にある“外部デバイス”からロード可能。MacではCapsLockキーでいつでも登場してくれます。

▲Qwerty Keyboardは、パソコンのキーボードをMIDI鍵盤として使うためのツール。オクターブはカーソル・キーの左右で調整でき、サステインはTabキーにアサインされています

▲Qwerty Keyboardは、パソコンのキーボードをMIDI鍵盤として使うためのツール。オクターブはカーソル・キーの左右で調整でき、サステインはTabキーにアサインされています

 

▲Qwerty Keyboardは、外部デバイスとしてS1に登録することで、初めて使えるようになります。左の画面は環境設定の“外部デバイス”欄で、追加ボタンを押すと“デバイスを追加”ポップアップ(右の方の画面)が開くので、その左側にあるPreSonusというフォルダーからQwerty Keyboardを選択する流れです

▲Qwerty Keyboardは、外部デバイスとしてS1に登録することで、初めて使えるようになります。左の画面は環境設定の“外部デバイス”欄で、追加ボタンを押すと“デバイスを追加”ポップアップ(右の方の画面)が開くので、その左側にあるPreSonusというフォルダーからQwerty Keyboardを選択する流れです

このQwerty KeyboardでMIDIデータを記録していくわけですが、当然パソコンのキーボードはタイミングがあまり良くないので、クオンタイズをかけます。ここで作っているテクノ・トラックのように、人間的なニュアンスを必要としない場合は、初めにオート・クオンタイズを入れておくとよいでしょう。ピアノロールの“AQ”という部分を青く点灯させてから演奏すると、クオンタイズがかかった状態で入力されます。

▲ピアノロールなどのMIDIエディター上部には“AQ”というボタンがあり、青く点灯させるとオート・クオンタイズがオンに

▲ピアノロールなどのMIDIエディター上部には“AQ”というボタンがあり、青く点灯させるとオート・クオンタイズがオンに

テクノらしい質感を与える“Drive”
クローン機能でループ編集を効率化

続いてドラムに取り掛かります。純正インストゥルメントの中では、Impact XTがリズム・マシンの役割を担います。いわゆる“MPC”ライクなルックスで視認性も良く、ドラムのワンショット・オーディオをパッドに読み込んでMIDIでトリガーして鳴らせるのです。各パッドでピッチやフィルター、アンプ・エンベロープなどを調整できますが、特筆すべきはフィルター部の“Drive”ノブ。使用したプリセット・キットのキックはテック・ハウスっぽいアタッキーな音だったので、ピッチを−2セミトーンほど下げ、Driveノブで若干ひずませると、いわゆる往年のテクノのバウンシーなキックがうまく作れました。Driveは前述のMojitoにも備わっていますが、プラグインにありがちな派手にひずむ感じが無く、嫌味の無い効きで本当に優秀です。

▲AKAI PROFESSIONAL MPCスタイルのドラム用ワークステーション、Impact XT。画面の右側にはパッドの音を加工するためのモジュールが並び、ピッチやフィルター、アンプなどを自在に調整できます

▲AKAI PROFESSIONAL MPCスタイルのドラム用ワークステーション、Impact XT。画面の右側にはパッドの音を加工するためのモジュールが並び、ピッチやフィルター、アンプなどを自在に調整できます

打ち込みはQwerty Keyboardで行います。スクエアなノリなので、オート・クオンタイズをオンにして打ち込むとだいぶ楽。Impact XTはドラムの打ち込みを前提としたインストゥルメントなので、トラックに立ち上げるとエディット画面はピアノロールでなく“ドラム・エディター”となります。ただし、エディット画面上部の鍵盤アイコン/ドラム・アイコンでピアノロールとドラム・エディターを切り替えることが可能。これはImpact XTに限らず、あらゆるインストゥルメントで行えます。

▲ドラム・エディターは、ドラムの打ち込みに向けたエディット画面。左上の鍵盤アイコン(赤枠)を押すとピアノロールに切り替わり、その右のドラムを押すとドラム・エディターに戻る仕様です

▲ドラム・エディターは、ドラムの打ち込みに向けたエディット画面。左上の鍵盤アイコン(赤枠)を押すとピアノロールに切り替わり、その右のドラムを押すとドラム・エディターに戻る仕様です

Impact XTについては、各パッドの音をミキサーにパラで立ち上げられるのも出色。プリセット・キットを使うと、あらかじめ“キックはステレオ・チャンネル1”とか“スネアは2”などと振り分けられているので、個別の処理が可能です。“ドラム・キットは1つのチャンネルにまとめたい”ということであれば、パッド右下の番号を押すとルーティングの再設定が行えます。

パターンを組めたら適宜リバーブをかけます。まずはサンプリング・リバーブのOpen Air。非常にリアルで多彩なIRが搭載されているため、かなり重宝しそうです。個人的にはLiquid Reverbというプリセットが面白く、アナログ・ディレイが発振したような音なので、タムなどにかけてサイケデリックな雰囲気を演出。ただしこれは飛び道具的なものなので、いわゆるリバーブらしい響きはデジタル・リバーブ系のMixverbで加えます。こちらもなかなか優等生で、プラグインながらディザリングのザラつきみたいなものを感じさせない滑らかな響き。すべてのパッドの音に薄くかけると立体感が増しました。

▲Room Reverbは、オーソドックスな仕様のリバーブで、汎用性が高いため扱いやすくなっています。中央下部のディスプレイに、シミュレート対象の空間がグラフィカルに映し出されるので、各種パラメーターを動かしたときの音色変化が視覚的にもとらえられます

▲Room Reverbは、オーソドックスな仕様のリバーブで、汎用性が高いため扱いやすくなっています。中央下部のディスプレイに、シミュレート対象の空間がグラフィカルに映し出されるので、各種パラメーターを動かしたときの音色変化が視覚的にもとらえられます

以上で1小節のループが完成したわけですが、タイムライン上にたくさんコピー&ペーストした後で“ループのお尻にクラップを入れたいけど、全部差し替えるのは面倒だな……”といった場合もあるはずです。そこで便利なのがクローン機能。元のループ(イベント)のクローンを作るもので、MIDIデータをいじるとクローンにも反映されるという仕組みです。作り方は、元のループのイベントをコピーしてパソコン・キーボードのShiftとDを同時に押すだけ。Shift+Dを連打すれば、クローンのイベントがどんどん作成されます。普通にコピペしたイベントとの見分け方は、左下に小さくあるマーク。クローンは解除することも可能で、例えば“良いループだけど15小節目の最後のキックだけ抜きたい”といった場合は、イベントの右クリック・メニューで“インストゥルメントパート→共有コピーを分割”を選択すれば、独立してエディットできるようになります。

▲クローン機能でMIDIイベントをコピー&ペーストしたときの様子。イベントの左下に付くマークがクローンの目印です(赤枠)。通常のコピペではなくクローンとして複製しておくと、元のイベントのMIDIデータを編集したときに、それが自動的に反映されるのでループ・ミュージック制作に便利

▲クローン機能でMIDIイベントをコピー&ペーストしたときの様子。イベントの左下に付くマークがクローンの目印です(赤枠)。通常のコピペではなくクローンとして複製しておくと、元のイベントのMIDIデータを編集したときに、それが自動的に反映されるのでループ・ミュージック制作に便利

これで基本的なトラックは完成。次回は他パートで色付けし、展開させていきます。曲作り解説、後半をお楽しみに!

 

 

 

*Studio Oneの詳細は→http://www.mi7.co.jp/products/presonus/studioone/

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