5u5h1が使う Studio One 第1回

ミュージシャンが使うStudio One by 5u5h1 2018年6月14日

S1

 第1回 内田真礼「ロマンティックダンサー」の
作曲〜編曲プロセスを公開!

はじめまして! 作曲家の5u5h1(すし)と申します。今号より、PRESONUS Studio One (以下S1)の連載を担当させていただきます。以後お見知りおきを。初回は、4月25日に発売された声優・内田真礼さんの2ndアルバム『Magic Hour』より、僕が作詞/作曲/編曲を担当した「ロマンティックダンサー」にフォーカス。同曲のデモ制作の流れに沿って、普段愛用しているS1の便利機能やエフェクトなどを紹介していこうと思います。

 

ソングのテンプレート上で
Mai TaiやAmpireを使用

楽曲の制作を始める際、面倒なのはトラックやソフト・シンセの追加、エフェクトの設定などの下準備。そんな面倒な下準備の工程ですが、“ソングのテンプレート”の機能を使うことで大幅に短縮することができます。

僕は、いつも使うソフト・シンセやエフェクトの組み合わせなどを数パターン、テンプレートとして保存しています。「ロマンティックダンサー」ではオーソドックスなロック・サウンドが欲しかったので、シンセ・メロ、ディストーション・ギター×2、ベース、ドラムなどが含まれるテンプレートを選択しました。デフォルトで立ち上がるソフト音源は、S1に標準搭載のMai Tai、MUSIC LAB Real Strat(ギター音源)やIK MULTIMEDIA Modo Bass(ベース音源)、XLN AUDIO Addictive Drums 2(ドラム音源)といったサード・パーティ製品。計4種類となっており、デモの段階では基本的に全パート打ち込みで作ります。

▲空のソングを立ち上げて、よく使うプラグインをロードするなどして、ファイル>テンプレートとして保存を選択すると、好きな名前でソングのテンプレートを作ることができます。保存したソング・テンプレートは、新規ソングを立ち上げる際に“ユーザー”タブから選択可能(赤枠)

▲空のソングを立ち上げて、よく使うプラグインをロードするなどして、ファイル>テンプレートとして保存を選択すると、好きな名前でソングのテンプレートを作ることができます。保存したソング・テンプレートは、新規ソングを立ち上げる際に“ユーザー”タブから選択可能(赤枠)

Mai Taiはアナログ・シンセを思わせる音源で、太く良い音が鳴ります。また内蔵のLFOやエンベロープ・ジェネレーターをモジュレーションのソースとして使用できるので、かなり自由な音作りが可能。ですが、ここではひとまずシンセ・メロ用にシンプルな矩形波を使います(ちなみにS1は、Mojitoというモノフォニック・シンセも備えています。初期バージョンから入っているので、最近使っていない方は思い出してみてください)。

ほかの音源にも触れておくと、Real StratはFENDER Stratocasterの専用音源です。クリーン・トーンのみの収録なので、S1に標準搭載のアンプ・シミュレーターAmpireをインサート。Ampireは標準搭載エフェクトとは思えないほどハイクオリティなシミュレーターで、キャビネットの選択やマイキングの設定なども行えます。ドラム音源のAddictive Drums 2は、各打楽器の音をS1のトラックにパラアウトして個別に処理した後、バスにまとめて加工しています。その際に有用なエフェクトがSaturation Knob。無料のサチュレーターで、簡単操作で音を太くしてくれます。ドラム・バスだけでなく、スネア単体やベースに挿すのもお勧めです。

 

▲ヘッド、キャビネット、ストンプ・ボックス、マイクのシミュレートなどを備えたAmpire

▲ヘッド、キャビネット、ストンプ・ボックス、マイクのシミュレートなどを備えたAmpire

 

SOFTUBE Saturation Knobは、ワンノブ・タイプのプラグイン・サチュレーター。Studio One Professional/Artist用の無料アドオンとしても提供されています。詳しくは製品サイトを見てみましょう(www.mi7.co.jp/products/presonus/studioone/addon/)

SOFTUBE Saturation Knobは、ワンノブ・タイプのプラグイン・サチュレーター。Studio One Professional/Artist用の無料アドオンとしても提供されています。詳しくは製品サイトを見てみましょう(www.mi7.co.jp/products/presonus/studioone/addon/)

エフェクトつながりのトピックとしては、S1標準搭載のPro EQも重宝しています。非常に使いやすい7バンドEQで、ほぼすべての楽曲で全トラックに使用。スペクトラム・アナライザーを内蔵しており、大雑把なイコライジングをするときには“Third Octave”、細かいイコライジングの際は“FFT Curve”というように、モードを使い分けています。

コピーした音を“D”のキーでペースト
絶妙なかかり具合のヒューマナイズ

さて、ここからは「ロマンティックダンサー」の制作について、イントロに重きを置いて解説していきましょう。ダンス・ロック系の楽曲なので、テンポを140〜150BPMに設定し、とりあえず4つ打ちのドラム、バッキング・ギター、ベースを大雑把に打ち込んでいきます。僕が打ち込みの際、頻繁に使う機能は“複製”。選択したイベントやノートなどを複製できるもので、コンピューター・キーボードのCtrl+C(Macだと⌘+C)でコピーした後Dを押せば、打ち込んだパターンの長さに応じて次の拍や次の小節にペーストしていけます。僕は、キックとスネアを2拍分打ち込んでD連打、ハイハットは一拍分を打ち込んでD連打、ベースは8分音符を打ち込んでD連打……といった具合に酷使しています。

ギター音源のReal Stratには、単音のMIDIデータでコードをトリガーできるChordsモードがあるので、ベースのイベントから和音の生成が可能。というわけで、打ち込んだベースのイベントをそのままギター・トラックにコピペします。なお、このChordsモードには発音に若干の遅延があるため、S1のインスペクター(コンピューター・キーボードのF4で表示)でディレイを−25.00〜−20.00ms辺りに設定してトリガーのタイミングを早めています。このようにして「ロマンティックダンサー」のイントロの基礎となる伴奏が出来上がりました。

▲インスペクター内にあるトラック・ディレイ(赤枠)。音源によっては、MIDIノートでのトリガーからやや遅れて発音する場合もあるので、トラック・ディレイが有用です。インスペクターではトラックの諸情報を一度に見ることができ、常に表示しておくと便利

▲インスペクター内にあるトラック・ディレイ(赤枠)。音源によっては、MIDIノートでのトリガーからやや遅れて発音する場合もあるので、トラック・ディレイが有用です。インスペクターではトラックの諸情報を一度に見ることができ、常に表示しておくと便利

 

▲コンピューター・キーボードのDを押すと、コピーしたイベント(もしくはノート)を次の拍や小節にペーストできます。例えば画面上段のように、2拍分プログラミングしたイベントの場合は、コピー後にDを押すことで次の拍にペーストされます(赤枠で囲んだ部分がペーストされたイベント)。画面下段のように、1小節のイベントに対して同様の操作を行えば、隣以降の小節にどんどんペーストしていけるので、ループ・ベースのダンス・ミュージックの制作などにも便利でしょう

▲コンピューター・キーボードのDを押すと、コピーしたイベント(もしくはノート)を次の拍や小節にペーストできます。例えば画面上段のように、2拍分プログラミングしたイベントの場合は、コピー後にDを押すことで次の拍にペーストされます(赤枠で囲んだ部分がペーストされたイベント)。画面下段のように、1小節のイベントに対して同様の操作を行えば、隣以降の小節にどんどんペーストしていけるので、ループ・ベースのダンス・ミュージックの制作などにも便利でしょう

次にリフを打ち込みます。イントロで重要なのは、とにかく“キャッチーさ”。フレーズ自体のキャッチーさはもちろんですが、音色面にも分かりやすいキャッチーさが必要なので、派手にモジュレーションをかけたギター・リードとスーパー・ソウ系のシンセ・リードをレイヤーし、リフの音色とすることにしました。まずはReal Stratを新規トラックに読み込み、S1に標準搭載のFlangerとAmpireをインサート。Flangerの効果をピーキーに設定することで、派手なギター・リードができました。そしてシンセ・リード用にMai Taiを新しくロード。スーパー・ソウの音色は、2つのオシレーターをノコギリ波に設定し、オシレーター1のSpreadノブを上げるなどすれば作れます。

 

▲Mai Taiで矩形波を選択し、Osc1のSpreadノブをしっかりめに上げるとスーパー・ソウ的なサウンドが得られます。“スーパー・ソウって何?”という方は、何も調べずに試してみてください。“ああ、この音ね!”とアハ体験間違いなしです

▲Mai Taiで矩形波を選択し、Osc1のSpreadノブをしっかりめに上げるとスーパー・ソウ的なサウンドが得られます。“スーパー・ソウって何?”という方は、何も調べずに試してみてください。“ああ、この音ね!”とアハ体験間違いなしです

その後イントロのベースをスラップの音色に置き換えたり、部分部分にドラムのフィルなどを打ち込んだり、仮のギター・ソロを打ち込んだり、良いメロディが降ってくるのを祈るなどして楽曲を膨らませました。そして最後は、打ち込みが完了したドラム・トラックにヒューマナイズ(ノート/イベントを右クリック>音楽機能>ヒューマナイズ)を忘れずにかけます。S1のヒューマナイズ機能は、細かい設定はできませんが、お手軽かつ絶妙なかかり具合なので個人的にすごく好きです。

 

▲ヒューマナイズは、打ち込み済みのノートのベロシティやタイミングを若干ランダムにすることで、人間が演奏しているようなグルーブをMIDIのパターンに与える機能。ベロシティが極端に大きくなったノートは、一つ一つ手作業で下げておきましょう

▲ヒューマナイズは、打ち込み済みのノートのベロシティやタイミングを若干ランダムにすることで、人間が演奏しているようなグルーブをMIDIのパターンに与える機能。ベロシティが極端に大きくなったノートは、一つ一つ手作業で下げておきましょう

デモ制作の後、ギターやベースのダビング、歌のレコーディング、エンジニアさんによるミックス・ダウンを経て完成した「ロマンティックダンサー」。内田真礼さん『Magic Hour』に収録されています。ポニーキャニオンのYouTubeチャンネルに試聴動画が公開されているので、ぜひご一聴ください!。

次回以降も、楽曲制作の話を通じてS1の魅力を紹介します。また、この連載の執筆を通して、僕自身もS1への理解をより深められたらと思っていますので、また来月もよろしくお願いいたします!

 

*Studio Oneの詳細は→http://www.mi7.co.jp/products/presonus/studioone/

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