小南千明が使う Studio One 第3回

ミュージシャンが使うStudio One by 小南千明 2017年11月25日

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 第3回 Studio Oneにおける
ボーカル録音とそのデータの活用法

こんにちは! DAW女シンガー・ソングライター小南千明です。このPRESONUS Studio One(以下S1)コーナーも3回目になり、11月19日のワンマン・ライブまで1カ月を切りました! 今回のライブもステージ上のAPPLE MacBookでS1を立ち上げながら演奏していきます。お時間のある方はぜひ六本木SuperDe luxeに遊びにきてください! この連載ではシンガー・ソングライター目線でのS1の使い方を紹介していますが、今回は宅録にとても重要なボーカル録音と、そのトリートメントついてお話ししたいと思います。

レイヤー機能を使って
ベストなボーカルを録音

私は、リリースする際のボーカルはスタジオで録っていますが、デモやライブ用音源の歌は宅録がほとんどです。自分の曲はもちろん、仮歌やカバー動画を作るため、自宅で歌を録れる環境を整えている人も多いでしょう。最近はシンガーでもしっかりとボーカルを録ってある程度トリートメントできるのは当たり前になっているし、何だかボーカル・データってベース・メイクと似ているよなぁといつも思っています。もちろん素っぴん素肌のまま美しいのが理想だけど、人前に出るときはどのようにメイクをして奇麗に魅せられるかもとても大事。そのためにファンデーションを塗ったり、くすんだところはコンシーラーで隠したり、その上にカラーを重ねたり。ボーカル録音ではもちろん完ぺきな歌を追い求めて歌っていますが、人に届けるときにはピッチを直したりタイミングを合わせたり、ある程度のお化粧は必要ですよね。ただ元のお肌がボロボロだとその上に何を塗り重ねても奇麗な見た目にはならないし、スキンケアと同じように、歌のクオリティはもちろん奇麗な素材が録れる環境を整える努力をしています。

私もせっかくS1を使っているので、奇麗な音で歌詞やニュアンス、メッセージを届けられる歌を録れるように、自分の声や録音環境に合った機材を探し続けています。最近使っているのは、マイクがASTON MICROPHONES Origin、オーディオI/OはUNIVERSAL AUDIO Apollo Twin、リフレクション・フィルターにSE ELECTRONICS RF-Xです。

▲私の作業部屋。お気に入りのマイクはASTON MICROPHONES Origin。オーディオI/OのUNIVERSAL AUDIO Apollo Twinで、UADのプリアンプやコンプをかけ録りしています。最近リフレクション・フィルター(SE ELECTRONICS RF-X)を導入して、ベッド・ルームでもクリアなボーカルが録れるようになりました

▲私の作業部屋。お気に入りのマイクはASTON MICROPHONES Origin。オーディオI/OのUNIVERSAL AUDIO Apollo Twinで、UADのプリアンプやコンプをかけ録りしています。最近リフレクション・フィルター(SE ELECTRONICS RF-X)を導入して、ベッド・ルームでもクリアなボーカルが録れるようになりました

ニュアンス、ピッチ、タイミング、すべてのベスト・テイクが録れるまで何度も何度も歌い直すこともあるのですが、録音したトラックで“右クリック>レイヤーを追加”を選択すれば、一つのトラックの中にいくつもテイクを録りためていくことができるので、サクサクと集中して歌えます。

▲ボーカルを録音したトラックの上で“右クリック>レイヤー>レイヤーを追加”を選択すると、イベントがレイヤーに移動され、一つのトラックの中でテイクを録り重ねていくことが可能になります。録りためたトラックはレイヤーを展開することで確認することができます

▲ボーカルを録音したトラックの上で“右クリック>レイヤー>レイヤーを追加”を選択すると、イベントがレイヤーに移動され、一つのトラックの中でテイクを録り重ねていくことが可能になります。録りためたトラックはレイヤーを展開することで確認することができます

そのあと客観的にトラックを聴き比べながら、良いなぁと思うテイクをドラッグして選ぶだけで、一番上でOKテイクを1本作れるので感覚的に作業を進められてとても楽チンです。このテイクを選んでいく作業をコンピングと言います。

▲“レイヤーを展開”を選択し、録りためたトラックをソロで再生して聴き比べながらベスト・テイクを選んでいきます。レイヤーから使いたい個所をドラッグしていくだけでテイク選びが可能。一番上のトラックがつなぎ合わされた1本の波形になり、自動的にクロスフェードも書いてくれるので、とてもスムーズにコンピングが行えるのです

▲“レイヤーを展開”を選択し、録りためたトラックをソロで再生して聴き比べながらベスト・テイクを選んでいきます。レイヤーから使いたい個所をドラッグしていくだけでテイク選びが可能。一番上のトラックがつなぎ合わされた1本の波形になり、自動的にクロスフェードも書いてくれるので、とてもスムーズにコンピングが行えるのです

全力で歌った後は切り替えてピッチ修正をします。いつもS1 Professionalに付属しているCELEMONY Melodyne Essentialを使っていて、オーディオ・イベントを選択してメニューからMelodyneを立ち上げればすぐにウィンドウ内で編集を始められます。シンガーとして自分を甘やかしてはならぬと、Melodyneの上位版であるEditorやStudioへのアップグレードはしていないのですが、Essentialでもピッチやタイミングの移動、長さを調整したりノートを切ったりすることはできるので十分。歌のニュアンスが残るように注意しながら、ロング・トーンでは、途中何カ所かでカットしながら、それぞれ中心を合わせるようにそろえていくと自然に聴こえます。Essentialの機能では直しきれない!と言うときは潔く歌い直します(笑)。

私はプロデューサーの浅田祐介さんとS1のソング・ファイルを送り合って曲作りを進めていくことが多いのですが、S1同士なのでMelodyneのデータもそのままお互いのパソコンで開くことができます。送ったソング・ファイルの中にハモのラインがついて返ってきて、“あれ? 私こんなパート歌ったっけ?”と思ってよく見てみると、メインのボーカル・データからMelodyneで作ったものだったりすることもあるのです。本当にナチュラルでいつもびっくりします。

▲CELEMONY Melodyne Essentialでピッチの修正をします。長めの音符は何カ所かでカットをしてそれぞれの中心を合わせるように調整するとナチュラルに仕上がります

▲CELEMONY Melodyne Essentialでピッチの修正をします。長めの音符は何カ所かでカットをしてそれぞれの中心を合わせるように調整するとナチュラルに仕上がります

自分でも、曲作りの中でありきたりな3度や5度ではないハモのラインを探すときに、Melodyneを活用しています。ピッチを調整しながらいい感じのハモのラインを作り、それを何度も聴きながら覚えます。そして実際に歌って録音していくのです。

ボーカル・データを
シンセのように活用する

ここまではボーカル・データをいかに自然に仕上げるかを話してきましたが、最近はトリートメントした素材を積極的にいじって、フューチャー・ベースのイントロなどでシンセのように使われている手法にハマっています。メイクでいうと、カラー・メイクのようなちょっとした冒険みたいな感じですね。曲中のキーワードを歌っている個所や、フェイクを歌ってオーディオ素材の準備をしたら適当に切り刻んでいじっていくのですが、例えばイベントを選択して左側のインスペクター内のトランスポーズに数字を入れると、選択したイベントだけピッチ・チェンジをした音になります。

▲録音したオーディオ・データをスライスしてピッチを大胆に変えることがあります。ここでは、インスペクター内のトランスボーズに数値を入れて(赤枠)、選択した個所のみをピッチ・チェンジをさせています

▲録音したオーディオ・データをスライスしてピッチを大胆に変えることがあります。ここでは、インスペクター内のトランスボーズに数値を入れて(赤枠)、選択した個所のみをピッチ・チェンジをさせています

うやってスライスしたイベントごとにピッチを変えたり、コピー&ペーストで並べてみたり、消してみたり、クオンタイズの設定を変えてタイミングをずらしたり、optionを押しながらイベントの長さを変えてタイム・ストレッチをかけたりするのも面白いです。

▲スライスしたデータをさらにコピー&ペーストしてシンセのように扱うことも。optionキーを押しながら波形データをドラッグすると、タイム・ストレッチをかけることができます(赤枠)。プラグインを使わなくてもフューチャー・ベース的なボーカルを加工したパートを簡単に作ることが可能なのです

▲スライスしたデータをさらにコピー&ペーストしてシンセのように扱うことも。optionキーを押しながら波形データをドラッグすると、タイム・ストレッチをかけることができます(赤枠)。プラグインを使わなくてもフューチャー・ベース的なボーカルを加工したパートを簡単に作ることが可能なのです

なめらかなピッチ・チェンジをしたいときはスライスしたデータをSample Oneに送ってMIDIで鳴らし、ピッチ・ベンドのオートメーションを描きます。Sample Oneに送ったデータのピッチを調整すれば、自分の声をシンセのように弾くこともできちゃいます。思いつきでいろいろ試しながら再生してみて、何だかカッコ良いことになっているときが最高に楽しいです。

今回はシンガーにとって重要な“歌”パートについてお話ししました。次回はついに最終回! 最後はライブでのS1の使い方についてお話ししていこうと思います。

*Studio One 3の詳細は→http://www.mi7.co.jp/products/presonus/studioone/

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