Liniaが使う Studio One 第3回

ミュージシャンが使うStudio One by Linia 2017年3月24日

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 第3回 マニピュレーターにおける
Studio Oneの活用法について

 皆さんこんにちは、Liniaです。今回は僕がマニピュレーターとして実際に仕事で使っているStudio One(以下S1)の機能を中心に紹介していきます。

DAWを使う音楽制作において
データ管理が重要なスキル

まず僕がやっているマニピュレーターという仕事について簡単に説明すると、ライブで必要なシーケンス・データを作成/編集し、ライブ本番で再生するといったことがメインになります。ステージにいるバンド・メンバー以外のパート(シンセ、コーラス、効果音)などを再生することもあれば、バンドのいないDJスタイルですべての楽器をPAにバラバラに送って再生することもあります。

最近では誌面などで取り上げられる機会も増え、マニピュレーターという言葉も一般的になってきてはいますが、アレンジャー的であったりエンジニア的であったり……僕の場合だとDJスタイルも行っているので、一体マニピュレーターが何をしているのか分からないという方も多いのではないでしょうか。

▲筆者がマニピュレーターを行う際の機材セッティング。スタート/ストップなどの操作をKORG NanoKontrol2で行い、USB接続したICONNECTIVITY IConnect MIDI4+へ。そこからUSBで接続されたメイン、サブ2台のMacBookに信号が送られる仕組みとなっている

▲筆者がマニピュレーターを行う際の機材セッティング。スタート/ストップなどの操作をKORG NanoKontrol2で行い、USB接続したICONNECTIVITY IConnect MIDI4+へ。そこからUSBで接続されたメイン、サブ2台のMacBookに信号が送られる仕組みとなっている

現場によって求められる音楽スキルはさまざまですが、共通していることは“データ管理”というスキル。データ管理というとなんだかミュージシャン的ではない響きですが、DAWを使う現代の音楽制作においてかなり重要な作業であり、スキルであると僕は思っています。素早く目的に合った楽曲やサンプル・ファイルを再生することはDJのスキルですし、レコードからドラムや効果音などをサンプリングし、再構築するトラック・メイカーのスキルも、日ごろのデータ管理がなければスムーズに行えません。DAWにおいてデータ管理というのは料理で言うところの仕込みであり下ごしらえのようなものです。

マニピュレーターの現場ではマルチトラック・データを再生するのですが、音源素材そのままだとトラック数が多過ぎるので必要に応じてステム・ファイルにまとめていきます。空のセッション・ファイルにマルチを読み込みバス・チャンネルにまとめ、EQ、コンプなどで調整して書き出すのですが、S1なら簡単に設定可能。“ソング”のメニューから“ステムをエクスポート”を立ち上げ、書き出したいチャンネルにチェックを入れてOKを押すだけ。

▲Studio Oneのステム書き出しする際の設定画面。左からまとめるトラックを選択して、音声フォーマット、範囲、そのほかオプション機能を設定してステム・ファイルを作成できる

▲Studio Oneのステム書き出しする際の設定画面。左からまとめるトラックを選択して、音声フォーマット、範囲、そのほかオプション機能を設定してステム・ファイルを作成できる

僕はこの機能は非常によく使います。アレンジ作業などでも重宝する機能で、作業時間をかなり短縮することができるのです。

VUメーターを使って
全体のバランス感を把握する

ライブでのシーケンス・データ作成には、曲ごとのレベル差に気をつけなければいけません。2ミックスと違い、各chバラバラの状態で音色/音量などのバランスを取る必要があるのです。マスター・コンプでの音作りを前提に、ミックスされた音源をマルチの状態で再生すると、バランスやサウンド・キャラクターが変わってしまうことが多々あるのですが、僕はそういったバランスを決める際にPSP TripleMeterを使っています。その際、TripleMeterのリファレンス・レベルを−16dBFSに設定して、メーターで0dB辺りに収まるようにしています。 

▲ライブのシーケンス・データを作成時に重宝しているというPSP TripleMeter

▲ライブのシーケンス・データを作成時に重宝しているというPSP TripleMeter

また、ライブ用のソング・ファイルはPAへの送りとは別に、自分のモニター用にすべてのチャンネルをまとめたCUE OUTチャンネルを用意し、VUメーターを使って全体のバランス感を確認できるようにしているのです。

 
▲ライブ中に全体のバランスをVUメーターで確認できるよう、パートごとバスにまとめてCUE OUTチャンネルに送り、そこでPSP TripleMeterをインサートしている(赤枠)。こうすることで、バスごとに音量やEQの調整も行えるので、会場ごとに微調整する際に便利だ

▲ライブ中に全体のバランスをVUメーターで確認できるよう、パートごとバスにまとめてCUE OUTチャンネルに送り、そこでPSP TripleMeterをインサートしている(赤枠)。こうすることで、バスごとに音量やEQの調整も行えるので、会場ごとに微調整する際に便利だ

S1にも、Professional/Artist用のアドオンとして、VU Meterが用意されており、無償でダウンロードできるので、ぜひ使ってみることをお勧めします。

S1内蔵のSpectrum Meterも便利です。

▲オーディオ信号の周波数成分の特定に活用できるSpectrum Meter。サブキックなど低い帯域の出方を確認するのに重宝している

▲オーディオ信号の周波数成分の特定に活用できるSpectrum Meter。サブキックなど低い帯域の出方を確認するのに重宝している

いわゆるスペクトラム・アナライザー(スペアナ)ですね。サブキックなど低い帯域の出方を確認するのに重宝しています。同じくS1内蔵のPro EQもスペアナ機能が付いています。ちなみに僕はEQが好きで何種類も使い分けるのですが、その中でよく使うのがUNIVERSAL AUDIO UAD-2 Sonnox Oxford EQとFABFLTER Pro Q2です。Pro EQはこの2つを合わせたような操作性を実現しており、名機だと思います。ちなみに複数のEQを使い分ける理由としては、ローカットの切れ方がメーカーによって違う点と、EQなど多く立ち上げるプラグインは種類やメーカーを分けることでCPUへの負荷が分散されると聞いたことがあるからです。僕はUNIVERSAL AUDIOのUADプラグインとネイティブ・プラグインで分けるといった工夫もしています。

最後に、なくてはならない縁の下の力持ち、Tone Generatorを紹介します。

▲ノイズ、周波数スウィープ、そのほかの信号を生成でき、シグナル・パスのテストやキャリブレーションに使えるTone Generator

▲ノイズ、周波数スウィープ、そのほかの信号を生成でき、シグナル・パスのテストやキャリブレーションに使えるTone Generator

これは“ピー”といった音声信号を出す、それだけのシンプルなプラグインです。僕がマニピュレートをする際、オーディオ・インターフェースの余ったライン・アウトからTone Generatorで1kHzのサイン波をRADIAL SW8(オート・スイッチャー)に送っています。

▲Tone Generatorで1kHzのサイン波をRADIAL SW8に送っている(Output 7)。パソコンがフリーズなどしたときにそのサイン波が届かなくなることで、SW8が自動でサブの回線に切り替えてくれる。またチャンネルごとにカラーを変えられるので、チャンネル数が多いときでも視認性が良く、助かる仕様となっている

▲Tone Generatorで1kHzのサイン波をRADIAL SW8に送っている(Output 7)。パソコンがフリーズなどしたときにそのサイン波が届かなくなることで、SW8が自動でサブの回線に切り替えてくれる。またチャンネルごとにカラーを変えられるので、チャンネル数が多いときでも視認性が良く、助かる仕様となっている

というのは、パソコンがフリーズなどしたとき、このサイン波がSW8に届かなくなりますが、SW8はその際に自動でサブの回線に切り替えてくれるという優れものだからです。マニピュレーターをやるまでTone Generatorを使うことはなかったのですが、使い方を見付けたときは感動しましたね。S1とSW8は非常に相性が良いと思いました。

3回目の連載はいかがでしたか? 僕はもともとギターや歌から音楽を始め、作曲、編曲、マニピュレーターといった感じで時間をかけて少しずつ幅を広げてきました。今の時代、マニピュレーターとしてのスキルは多方面で役立ちます。音やシステムへの責任感も高まり自分の作品作りにもフィードバックされますし、高性能パソコンが手ごろな価格で手に入る今、若きミュージシャンにとってDAWは必須でしょう。シーケンスを使用したライブを行うミュージシャンも増えてきています。その中でマニピュレーターとしてのマニュアル/ティップスはまだまだ少ないように思い、これからライブでDAWを使おうと考えている方の背中を一押しできる記事になればいいなと思って今回書かせていただきました。Twitter(ID:Linia_tone)もやっていますので気軽にフォロー、リプライください! それではまた次回、お楽しみに!

*Studio One 3の詳細は→http://www.mi7.co.jp/products/presonus/studioone/

Linia

学生時代に結成したバンドでデビュー。その後、バンドでの経験とDTMを融合させた有機的な宅録サウンドを確立させる。AKB48、HKT48、ノースリーブス、MAAKIIIなど さまざまなアーティストへの楽曲及び歌詞の提供を行う。プロデュースのほかにもマニピュレーター(相川七瀬、浦島坂田船、etc.)ギター・サポート(ナオト・インティライミ、etc.)など、Studio Oneを使用したボーダレスな活動を行っている。

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