砂原良徳が使う Studio One 第1回

ミュージシャンが使うStudio One by 砂原良徳 2016年10月24日

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 第1回 Studio Oneを使うきっかけと制作にメリットだと思うこと

今月からStudio One(以降S1)の連載を担当することになりました。ここでは、僕の楽曲制作において、S1がどのように活用されているのか紹介していきたいと思います。まずは、僕がどういうきっかけでS1を使うようになったのか、そこから始めていきましょう。

Studio Oneを使い始めて音質的な不満が解消された

僕のDAWの変遷は、OPCODE Visonに始まり、STEINBERG Cubase、APPLE Logicと来て、数年前からS1に落ちつきました。最初は、牛尾(憲輔)が勧めてくれたのがきっかけだったと思うんですけど、試しにインストールしてみたら、使っていけそうだと感じました。そこで、そのときに制作に取りかかっていた、TVドラマ『ノーコン・キッド 〜ぼくらのゲーム史〜』の劇伴で実際に使い始めたら、すごくスムーズに作業ができたのです。

何が良かったかというと、まずは音質。これまでのDAWでは、少なからず音質的な不満を持っていたので、それが解消されたのと、あとは基本的なソフトの動作反応、スピード感です。プラグインが立ち上がるのが0.5秒なのか1秒なのかってそんなに大きな差じゃないかもしれませんが、制作においてはそれの積み重ねなので、すごく大きいです。待ってると忘れちゃうというか、いちいち止まっていられませんからね。車も信号が多いと燃費悪くなるじゃないですか。良いプラグインが入っているよ、とか言う以前の問題で、S1はこういう基本的なことがしっかりしていたので、とても好印象でした。あとは見た目のカラーも好きですね。ずっと見ている画面なので、実は結構大事なんですよ。好きな色味に変えられますしね。僕はいろいろ試してみましたが、結局はデフォルトが一番良かったです(笑)。

 

▲筆者が使用しているStudio Oneの画面。カラーは自由に設定できるが、いろいろ試した結果、デフォルトに落ち着いた

▲筆者が使用しているStudio Oneの画面。カラーは自由に設定できるが、いろいろ試した結果、デフォルトに落ち着いた。

僕の作業環境は、APPLE Macのデスクトップがメイン・マシンで、MacBook Proをライブ用として所有していたのですが、最近はMacBook Proで作業することも多くなりました。それにYAMAHA 01V96Iと、MIDIキーボードを接続して打ち込んでいます。

打ち込みやエディットがやりやすく積極的にオートメーションを書くように

僕のS1を起動すると、まず基本のテンプレートとしてNATIVE INSTRUMENTS Batteryが2つくらいと、REFX Nexus2、UVIのソフト・シンセが3トラックくらい立ち上がります。

▲Studio Oneを起動させた際の基本テンプレート。よく使うソフト・シンセのトラックが立ち上がるように設定してあり、画面では、NATIVE INSTRUMENTS Battery、REFX Nexus2、UVI Darklight IIx、Falconなどが、トラックにアサインされている

▲Studio Oneを起動させた際の基本テンプレート。よく使うソフト・シンセのトラックが立ち上がるように設定してあり、画面では、NATIVE INSTRUMENTS Battery、REFX Nexus2、UVI Darklight IIx、Falconなどが、トラックにアサインされている

そしてリズムから制作をスタートさせることが多いです。打ち込みはMIDIキーボードで手弾きしながらやっていますが、ベロシティなどの差が出ても、ニュアンスが良ければ直しません。だからドラムのベロシティをよく見たらバラつきがあるんですよ。でもバラつきがある程度ある方が面白いし、良く聴こえる。昔はそろえていたんですけど、いつからか良いところは残して、気になるところだけ修正すればいいかなと思うようになってきました。一方MIDIノートに関しては、クオンタイズでジャストに打ち込んでいます。こういった一連の打ち込みやエディットがすごくやりやすいので、これまであまりやってこなかった、オートメーションも積極的に書くようになりました。

▲Studio Oneのオートメーションは、トラックのオートメーション、パートのオートメーション、専用のオートメーション・トラックとある。画面赤枠は、すぐ上のオーディオ・トラックのボリューム・オートメーションを表示したものだが、インストゥルメント・パートも含め、ほぼすべてのパラメーターのオートメーションを設定することができる

▲Studio Oneのオートメーションは、トラックのオートメーション、パートのオートメーション、専用のオートメーション・トラックとある。画面赤枠は、すぐ上のオーディオ・トラックのボリューム・オートメーションを表示したものだが、インストゥルメント・パートも含め、ほぼすべてのパラメーターのオートメーションを設定することができる。

このように、作曲/アレンジは、MIDI中心で行い、サンプル・ネタなどの波形を直接張って作っていくことはほとんどありません。しかし、オーディオ機能も使いやすくできています。例えばタイム・ストレッチも自動で行うことができますし(手動にも変更可能)、テンポ操作は非破壊なので、やり直しも可能です。またトランジェントの検出も、オーディオ・ファイルを右クリック(Macの場合はCtrl+クリック)し、コンテキスト・メニューから、オーディオ>オーディオベンド>トランジェントを検出を選択するだけ。僕は、MIDIデータでアレンジが完成すると、S1内でオーディオに書き出してミックスをするので、こういったところまできびきび動くのは、本当にストレスがありません。

また、S1はマスタリングまで行えるのが特長の一つです。僕もいろいろな作品のマスタリングを行っていますが、実際の波形処理をして音質を作るところは、別の波形編集ソフトでやり、曲を並べてDDPに書き出す工程は、S1でやることが多くなってきました。

ドラッグ&ドロップで使えるサンプル・プレーヤーSample One
S1には、いろいろなソフト・シンセやプラグイン・エフェクトが内蔵されていますが、よく使うものの一つがサンプル・プレーヤーSample One。

▲Studio One内蔵のサンプル・プレーヤーSample One。調整可能なキーマップ範囲とループ機能、ピッチ、アンプ、フィルターの各エンベロープ、LFOモジュレーション・パラメーターが搭載されおり、波形が表示された画面で、ループ範囲の設定やキーマップの編集などを行うことができる

▲Studio One内蔵のサンプル・プレーヤーSample One。調整可能なキーマップ範囲とループ機能、ピッチ、アンプ、フィルターの各エンベロープ、LFOモジュレーション・パラメーターが搭載されおり、波形が表示された画面で、ループ範囲の設定やキーマップの編集などを行うことができる

サンプル素材を取りあえず鳴らしたいときなどは、フォルダーからドラッグ&ドロップするだけですぐに再生できる。とにかく速いのでかなり重宝していますね。

あとエフェクトでよく使うのはAnalog Delay、Beat Delay、Pro EQ、X-Tremなど。特に僕は、音を左右で動かすのが好きなので、そういったことをすごく感覚的にできるX-Tremを重宝しています。

▲トレモロ・エフェクトのX-Trem。テンポに同期する可変式のLFO、16ステップ・シーケンサーと16ゲー・トシーケンサーのほか、オート・パン機能も搭載している

▲トレモロ・エフェクトのX-Trem。テンポに同期する可変式のLFO、16ステップ・シーケンサーと16ゲー・トシーケンサーのほか、オート・パン機能も搭載している

もちろん、サード・パーティのプラグインも活用していますが、それらの動作ももたることがないので、本当にストレスフリーです。やっぱり動作が快適だとどんどん試そう試そうという気になるので、クリエイティブに作業ができるんですよね。

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S1はプロフェッショナルからビギナーまで使いやすいDAWですし、専門学校などで教材として、授業で使うのにも適しているのではないでしょうか。分かりやすくて、動作も速いですし、実際に僕も、S1を使い始めてから仕事のスピードが速くなっています。このソフトが2000年くらいからあったら、もっとソロ・アルバムを作れたのかなと(笑)。だから、まだS1ではソロ・アルバムを作っていないので、次作はS1だけで作ってみたいですね。

*Studio One 3の詳細は→http://www.mi7.co.jp/products/presonus/studioone/

砂原良徳

1969年9月13日生まれ。北海道出身。1991年に電気グルーヴに加入し、1999年に脱退。ソロ活動も並行して行っており、アルバムもリリースしている。またCM音楽やサウンドトラックも手掛ける。2015年からは高橋幸宏率いるMETAFIVEに参加し、2016年1月にアルバム『META』リリース。この8月には、映像作品『METALIVE』も発表した

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