加納洋一郎が使う Studio One 第3回

ミュージシャンが使うStudio One by 加納洋一郎 2016年8月25日

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 第3回
実用的な付属プラグインと
ミックスにおけるテクニック紹介

梅雨のじめじめした中でこの原稿を書いていますが、皆さんはフェスに行ったりと夏を満喫していますか? さて、エンジニア目線で見るStudio One(以降S1)の3回目は、前回に続きS1付属プラグイン紹介とミックス時に便利だなと思う機能について書いていきます。

簡単な操作で
Melodyneが使用可能

僕の中でまず必須アイテムになっているS1付属プラグインはDual Pan。

 

▲ステレオ・パンナーのDual Pan。入力バランスのコントロールとパン・ロウ、左右独立のパンニングが可能となっている

▲ステレオ・パンナーのDual Pan。入力バランスのコントロールとパン・ロウ、左右独立のパンニングが可能となっている

AVID Pro Toolsの場合、それぞれのトラックでパンが動かせますが、S1はトラックがステレオでも一つのパンで操作するようになっているので、L/Rどちらかにパンニングを寄せたいときにはいちいちL/Rそれぞれの定位を変える必要もなく便利。逆にステレオ・トラックのパンニングを少し狭めたいときに活躍するのがDual Panです。例えば、バンドものをミックスしてるときに多いのが、L/Rでダブルで入っているギター。L/Rを振り切りで使うことでステレオ感を出し、壁のように扱う場合が多いですが、L/Rに別のステレオの音色(例えばピアノやパッド、シンバルなど)が広がっていると、定位が重なりマスキングされてしまう場合があります。そんなときにDual Panでそれらの楽器を少し内側に動かすだけでギターのスペースが空き、ギターも内側に寄せた音色もよく聴こえてくるようになります。

良い音質で評判のS1ですが、少し汚してみようという場合はRed Light Distortionがお勧め!

▲ディストーション・モデルを選択できる、アナログ・ディストーション・エミュレーターRed Light Distortion。6つのモデルを内蔵し、Driveのノブでひずみ具合を調節する。周波数をカットできるLow/High Freqも搭載

▲ディストーション・モデルを選択できる、アナログ・ディストーション・エミュレーターRed Light Distortion。6つのモデルを内蔵し、Driveのノブでひずみ具合を調節する。周波数をカットできるLow/High Freqも搭載

ハイサンプリングで録ることが多くなってきた近年、すべての音色がクリアな分、パンチが弱く感じることがあります。そんなときにレンジ同士の接着剤的な要素でRed Light Distortionでひずみをほんの少し足してみるのも良し、積極的にひずませて存在感を演出するも良しです。ラウドに聴かせるときなど使い方はさまざまですが、EQの設定で質感を調整する場合や、録り音をひずませてレベルが大きくなってしまった場合のアウト・レベルの調整に対応する優れものですので、一度試してみてはいかがでしょうか。

S1には、Professional版だけになりますがCELEMONY Melodyne Essentialが付属します。Melodyneは現在の音楽制作におけるポピュラーな音程補正用ソフトウェアの一つで、ANTARES Auto-Tuneと並んで使う頻度が非常に高いツールです。Essentialの上位バージョンにアップグレードすれば、音声補正にとどまらず、タイミングやオーディオのMIDI変換、複数のトラック編集やテンポ検出、音色加工までできてしまうという優れもの。録音した歌のピッチやリズムを調整するのが一般的な使われ方ですが、歌だけでなく楽器のちょっとした経過音のタイミングやニュアンスなども簡単に直せてしまうので中毒性は高いです。

S1での使い方は至って簡単。編集したいオーディオ・イベントを選択し、メニュー(もしくはWindowsなら右クリック、Macならcontrolクリック)から“Melodyneで編集”でMelodyneが立ち上がり、編集作業が可能。

 

▲Stusio One Professionalに付属するCELEMONY Melodyne Essential(下の画面は上位バージョンのMelodyne Editor)。起動方法も簡単で、オーディオ波形を選択し、メニュー(もしくはWindowsなら右クリック、Macならcontrolクリック)から“Melodyneで編集”を選ぶだけ

▲Stusio One Professionalに付属するCELEMONY Melodyne Essential(下の画面は上位バージョンのMelodyne Editor)。起動方法も簡単で、オーディオ波形を選択し、メニュー(もしくはWindowsなら右クリック、Macならcontrolクリック)から“Melodyneで編集”を選ぶだけ

補正が終わりオーディオ化したければ、トラック・インスペクターのレンダーをクリックするだけでOKです。レンダー後でも編集をやり直したければレンダー・ボタンが復元ボタンに変わっているのでいつでも戻って編集ができてしまいます。ほかに便利な使い方としては、Melodyneで解析したピッチ・データをMIDIに簡単変換することもできるので、自分で歌った歌をシンセに置き換えることや、Vocaloidなどに歌わせるなど用途は多様です。使っているとさらに面白い使い方が浮かぶかもしれませんね。

複数のトラックを扱うのに便利な
フォルダー機能

ミックスを進めるにあたってグループを組んだり、ドラムやストリングス、コーラスなどまとめて処理したいなと思う場合に便利なのが、フォルダー・トラック。

 

 

▲アレンジ・ビューの整理に便利なフォルダー・トラック(黄色枠)。Studio Oneのフォルダー・トラックには、グループ化とバス送りのオプションがあり、ミックスなどの作業効率を向上させることができる

▲アレンジ・ビューの整理に便利なフォルダー・トラック(黄色枠)。Studio Oneのフォルダー・トラックには、グループ化とバス送りのオプションがあり、ミックスなどの作業効率を向上させることができる

その名の通り、フォルダーに入れてまとめて操作したり、トラックが多い場合、フォルダーを開いたりしまったりできて表示をすっきりさせることもできます。使い方は、フォルダーにまとめたいトラックを選択し、右クリックして出るメニュー画面の“フォルダーにパック”を選択するだけ。フォルダー・トラック内にあるアイコンを押すことで開閉、さらにグループ・ボタンでグループ化(インスペクターにも同様のボタンがある)でき、インサートにプラグインを挟むことでEQやコンプ、そのほかのエフェクトをまとめてかけることも可能。出力も変えられるので、さらにFXトラックにまとめたオケだけのトラックへのアサインや、もちろんメインにルーティングすることもできるので何かと重宝します。わざわざ専用にトラックを作ってからアサインするのではないので、非常に簡単なのです。

 

▲フォルダー・トラックへのエフェクトのアサインは、まとめてかけることや(赤枠のトラック)、それぞれ個別にかけることも可能。センドもそれぞれ選べるので自由度の高いルーティングを構築できる

▲フォルダー・トラックへのエフェクトのアサインは、まとめてかけることや(赤枠のトラック)、それぞれ個別にかけることも可能。センドもそれぞれ選べるので自由度の高いルーティングを構築できる

ミックスも中盤になってくるとリバーブやディレイでお化粧がしたくなるもの。Pro Toolsの場合、直接オーディオ・トラックにプラグインを指すこともありますが、多くの人はAUXトラックを作成してインプットとなるバスを選択、インサートにプラグインを指すという手順を踏むと思います。S1の場合、そういったFXチャンネルは、基本右クリックから作成できます。しかもS1の良いところはもっと直感的に操作ができるところ。右にあるブラウザーを開き上部エフェクト選択、使用したいプラグインをグラブし、使いたいトラックのセンド上にドラッグ&ドロップするだけでFXチャンネルが作られ、ドロップしたトラックにはセンドレベルが自動的に表示されます。

▲センドを通じてエフェクトをかけるためのトラック、FXチャンネル(黄色枠)。どのチャンネルでもセンドからオーディオをルーティングでき、作成方法も、ブラウザーからドラッグ&ドロップするだけと簡単だ

▲センドを通じてエフェクトをかけるためのトラック、FXチャンネル(黄色枠)。どのチャンネルでもセンドからオーディオをルーティングでき、作成方法も、ブラウザーからドラッグ&ドロップするだけと簡単だ

かけたいときにスムーズにかけられるというスピード感はというのはイメージしている音に近づけるのにはとても重要でミックスの完成度も変わってくるかもしれませんね。

次回はミックス時のさらにに便利な機能とS1の特徴でもあるマスタリング機能も紹介していきたいと思います。Nos vemos!

 

*Studio One 3の詳細は→http://www.mi7.co.jp/products/presonus/studioone/

加納洋一郎

1993年、ミキサーズ・ラボに入社。さまざまな楽曲に携わりキャリアを積む。2011年に独立し、セルフ・マネージメントを開始し、バンド、歌モノを中心に、ライブ・レコーディング、劇伴など、数多くの録音〜ミックス〜マスタリングを担当している。『サマーウォーズ』や『踊る大捜査線』シリーズなど、映画やDVD/Blu-rayのサラウンド・ミックスにも造詣が深い

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