中土智博が使う Studio One 第4回

ミュージシャンが使うStudio One by 中土智博 2016年5月24日

スクリーンショット 2016-02-19 13.26.37

 第4回
さらに進化した
Studio Oneの3.2が登場!

 皆さまこんにちは、中土です。Studio One(以降S1)が3.2にアップデートされましたね! “たかが0.1のマイナー・アップデートでしょ?”と侮るなかれ。今回のアップデートはメジャー・アップデートにも負けないような濃い内容になっています。というわけで今月はVer.3.2の新機能を紹介しましょう。個人的に特筆すべきと思うものは、Mix Engine FX、VCAフェーダー、インストゥルメント・パートのオーディオをドラッグ&ドロップで瞬時にオーディオへバウンスする機能です。

DAWのミキサーで
アナログ・コンソールの質感を再現

Ver.3.2で新たに搭載されたMix Engine FXは、DAWのミキサー部と連携して、ミックス・エンジンを根幹から変えるエフェクトで、これはほんとアツい機能です。このMix Engine FX用の第一弾プラグインが“Console Shaper”。アナログ・ミキサーが持つキャラクターを再現するために、ドライブ/ノイズ/クロストークという3つのパラメーターが搭載されています。ドライブとノイズは文字通りドライブ感やノイズを追加するわけですが、クロストークが今までのDAWでは考えられなかったアナログ・コンソールの“チャンネル間の音漏れ”を再現しているのです!

▲Mix Engine FXは、バスやマスターのチャンネル上部でオン/オフを切り替え可能。各トラックのレベル・メーターが、付加されたノイズ分(−72dBほど)振れているのが確認できる(黄色枠)

▲Mix Engine FXは、バスやマスターのチャンネル上部でオン/オフを切り替え可能。各トラックのレベル・メーターが、付加されたノイズ分(−72dBほど)振れているのが確認できる(黄色枠)

それぞれ解説していきましょう。“ドライブ”はスイッチをオンにすると2次倍音、3次倍音、4次倍音……といったふうに倍音が付加されます。

▲内蔵のTone Generatorで1kHzのサイン波を再生して、Console Shaperでの倍音変化を検証。Driveスイッチを入れると、2kHz、3kHz、4kHz……と倍音が加わっているのが分かる。高次倍音の下がり方が非線形なところにも注目したい。Crosstalkは劇薬にもなるので、上げ過ぎにはご注意を

▲内蔵のTone Generatorで1kHzのサイン波を再生して、Console Shaperでの倍音変化を検証。Driveスイッチを入れると、2kHz、3kHz、4kHz……と倍音が加わっているのが分かる。高次倍音の下がり方が非線形なところにも注目したい。Crosstalkは劇薬にもなるので、上げ過ぎにはご注意を

さらにパラメーターを上げると、各チャンネルの音量が上がり(ピーク・メーター)、文字通りサミング・バスでのドライブ感が増します。特筆すべきは、各チャンネルがブーストされても全体の音量は変わらないところ。DAWと連携しているMix Engine FXならではのすごさだと思います。“ノイズ”は、ホワイト・ノイズをうっすら付加。ミックス・バスの最終段からノイズが出ているのではなく、各チャンネルから出ているので、チャンネルにインサートしたさまざまなエフェクトの振る舞いも加味したノイズになっています。

そして“クロストーク”。例えば音が鳴っていないトラックをソロにしても、そのほかのトラックの音が漏れるようになります。筆者が音楽制作を始めたころは、まだアナログ・ミキサーにハード音源を立ち上げていたので、割となじみがあるのですが、ソフトウェアだけで作り始めたクリエイターには新鮮なのではないでしょうか?

筆者はConsole Shaperを、ドラム・バスでドライブを軽く上げてつぶしたり、ギターのバスにかけて倍音を付加したり、エアー感の足りない素材に少しだけノイズを足したり……と、マスターよりもステムへの色付けのために使っています。ちなみにクロストークはほんの少しだけ上げると、ミックスのなじみが良くなるように感じますが、余り上げ過ぎると文字通り“壊れかけの”コンソールの音にもできるので(笑)、実際のアナログ・コンソール同様、25
%位を限度にほのかに質感を足す程度にとどめるのが良いと思います。今後SLATE DIGITAL、SOFTUBE、ACUSTICA AUDIOからもMix Engine FX用プラグインがリリースされる予定とアナウンスされているので、期待に胸を膨らませているのは僕だけではないはずです。

ミックスの微調整に威力を発揮する
VCAフェーダーを新搭載

VCAフェーダーは作曲がメインの方にはピンとこないかもしれませんが、複数チャンネルのフェーダーをまとめて操作できる言わばリモート・フェーダーです。バスにまとめて操作することも可能ですが、より自由度が高く、例えばミックスの後半、しっかりバランスも取り、オートメーションも細く書いた後で、“ここのコーラスのハモリとダブルだけ下げたい……”という微調整したい場合や、任意のトラックの音量変えたい際に威力を発揮します。

▲選択したトラックをアサインしたVCAフェーダーを作る際は、選択されているチャンネルを右クリック(MacはCtrl+クリック)して、“VCAチャンネルを追加”を選ぶ。既存のVCAフェーダーにアサインしたい場合は、フェーダー下の部分から選択することができる(黄色枠内の赤い囲み)。また、矢印で指したミュート・スイッチの上に、フェーダーのステータスを表示する欄があり、左からチャンネル・インサート、センド、Mix Engine FXの状態が目視できるようになっている

▲選択したトラックをアサインしたVCAフェーダーを作る際は、選択されているチャンネルを右クリック(MacはCtrl+クリック)して、“VCAチャンネルを追加”を選ぶ。既存のVCAフェーダーにアサインしたい場合は、フェーダー下の部分から選択することができる(黄色枠内の赤い囲み)。また、矢印で指したミュート・スイッチの上に、フェーダーのステータスを表示する欄があり、左からチャンネル・インサート、センド、Mix Engine FXの状態が目視できるようになっている

“ボリューム・オートメーション結合”機能を使えば、VCAフェーダーで取ったフェーダー情報を、各チャンネルのオートメーションに結合可能なので、より精密にバランスを取ることができます。

▲VCAオートメーションを結合すると(右クリック、Macの場合はCtrl+クリックからVCAオートメーションを結合を選択)、VCAフェーダーで書いたオートメーションが各オートメーション・トラックに適用される

▲VCAオートメーションを結合すると(右クリック、Macの場合はCtrl+クリックからVCAオートメーションを結合を選択)、VCAフェーダーで書いたオートメーションが各オートメーション・トラックに適用される

スマート・ツールはツールを持ち替えず、トラック下部にマウスオーバーすると通常の矢印ツール、トラック上部にマウスオーバーするとレンジツールに変わるようになりました。

▲ツールバーの“ [ “ボタンでスマート・ツール(イベント・エリア上側の範囲ツール)のオン/オフができる。旧来の使い方に慣れていて、なじめない場合はオフにすることも可能

▲ツールバーの“ [ “ボタンでスマート・ツール(イベント・エリア上側の範囲ツール)のオン/オフができる。旧来の使い方に慣れていて、なじめない場合はオフにすることも可

▲トラックの半分から上の部分にマウスオーバーするとレンジツールに切り替わるので、範囲指定/編集が高速化できるようになった。カーソル操作が少しシビアになるので、トラックはこの画面くらいズームにして使うのがオススメ

▲トラックの半分から上の部分にマウスオーバーするとレンジツールに切り替わるので、範囲指定/編集が高速化できるようになった。カーソル操作が少しシビアになるので、トラックはこの画面くらいズームにして使うのがオススメ

またオートメーションを表示させた状態でオートメーション・ノード間のトラック上部にマウスオーバーするとトリムツールになります。

レンジ・ツールとトリムを使えば、セクションの音量調整が簡単。クリップ・ゲインでも同様の操作ができるのですが、プラグインへ送る音量が変わってしまうのでコンプレッサーの動作にも影響します。どちらが良いということではなく、求める効果に合わせてうまく使い分けましょう!

インストゥルメント・パートのオーディオをドラッグ&ドロップするだけで瞬時にオーディオへバウンスする機能については、以前からほぼ同様の“選択をバウンス”や“新規トラックにバウンス”があったので、“何を今さら……”と思ったのですが、新機能ではMIDI情報も残したままバウンス可能。今までのバウンスはあくまでオーディオ化するだけだったので、リコールのために、オーディオ化してミュートしたMIDIリージョンの管理が必要でしたが、コレなら手間も減りますし、元のMIDIリージョンを消しちゃって再現できない……といった致命的なミスも回避できますね! このスピード感と元に戻せる安心感でバウンスできるなら、オーディオをEVENT FXと併用して、ノート単位に異なるエフェクトをかけてトリッキーな実験にトライするのも簡単になるのではと感じました。

4回にわたりご覧いただきありがとうございました。曲を作る側からS1の魅力や使い方について紹介しましたが、まだまだ伝え切れないことが山のようにあるので、実際にS1に触れて魅力を感じていただければと思います。

*Studio One 3の詳細は→http://www.mi7.co.jp/products/presonus/studioone/

中土智博

2007年にヒップホップ・ユニットRemark Spiritsのサウンド・プロデューサー/トラックメイカーとしてデビュー。2011年作編曲家へ転向。THE IDOLM@STER、近藤真彦、茅原実里、中森明菜、乃木坂46、Flower、ラブライブ作品などに楽曲提供。アニソン、アイドルからヒップホップまで振り幅の広さとジャンルを飛び越えるサウンドが身上。

TUNECORE JAPAN