林ゆうきが使う Studio One 第3回

ミュージシャンが使うStudio One by 林ゆうき 2015年8月24日

S1_Hayashi

 第3回
さまざまな進化を遂げた
Studio One 3について

 こんにちは、作曲家の林ゆうきです。最近も変わらず作曲にいそしんでおります。7月放映の作品では、アニメ 『クラスルーム☆クライシス』、ドラマ『リスクの神様』、そして映画『ハイキュー!! 終わりと始まり』を担当しました。すべてStudio One(以下S1)で作曲したので、ぜひチェックしていただけたらうれしいです。今回は先月号でお伝えしたように、いよいよリリースされたバー ジョン3について、使用してみて便利だと思った機能を紹介していこうと思います。

アレンジのアイディアを蓄積できる
新機能スクラッチパッド

S1使用者は、アップグレード版が利用可能なので、 Webサイトからダウンロードしてインストールもスムー ズに行えました。このあたりの手軽さもS1の魅力です ね。そしてまずは、バージョン2で使っていたファイルを開いてみて、皆さんが“音がさらに良くなった”というの が本当なのか確かめてみました。僕の個人的な印象ですが、確かにクリアになったと感じたのと、より音が詰まったというか、粒子が細かくなった印象ですね。
さて、実際に作業をしてみようと思ったところ、僕にとって大きな問題が発生してしまいました。それは、画面 のフローティングが思い通りにいかなかったことです。以 前にも書きましたが、僕は4つのディスプレイに、プラグ インやピアノロール画面などを独立させて表示していま す。S1は1つのウィンドウで作業が行えるのが利点ですが、フローティングの自由度が高いのも魅力でもあるのです。特に僕の場合は、ピアノロール画面を中心に曲作りをしており、スムーズに作業できる作業環境を構築していたので、もう戻ることができなくなっています。ですので、今回のタイミングでは、1つのウィンドウでも作業が できる小編成での作曲でバージョン3を試してみました。 その中で気に入った新しい機能を見ていきましょう。 まず最初に便利だなと思ったのは、“アレンジトラック”。

 

▲ソングのセクション分けに便利な新機能アレンジトラック。ページ上部のアイコン(赤枠)をクリックすることでトラックが追加され、任意の範囲でセクションを設定できる。セクションをドラッグ&ドロップするだけで入れ替えが可能で、状況に応じたアレンジに即対応できる

▲ソングのセクション分けに便利な新機能アレンジトラック。ページ上部のアイコン(赤枠)をクリックすることでトラックが追加され、任意の範囲でセクションを設定できる。セクションをドラッグ&ドロップするだけで入れ替えが可能で、状況に応じたアレンジに即対応できる

これは、マーカーとは別に、Aメロ、Bメロといったリハーサル・マークなどを、任意の名前で表示させることができる機能です。マーカーよりも見やすく、しかもセク ションの入れ替えやコピーなどもドラッグ&ドロップで簡単にできます。サントラの仕事は、そういったセクション の入れ替えを頻繁に行って、どれが一番映像に合うのか試すことが多いので、大変便利な機能だと思いました。 同じく、アイディアを試すということでいうと、先月号でも気になっていると書いた“スクラッチパッド”は、まさにそのための機能でした。

▲Studio One 3 Professionalの目玉機能 の一つ、スクラッチパッド機能。スクラッチパッ ド・ボタン(黄色枠)を押とタイムラインの右側 に独自のタイムラインが作られ(赤枠)、作業 が可能となる。チャンネル、エフェクト、インス トゥルメントは自動複製されるが、以降は自由 に変更でき、作業が完了したら、ドラッグ&ド ロップでもとのタイムラインに戻すことでアッ プデートできる。またスクラッチパッド内から エクスポートすることも可能。また各ソングに 対して複数のスクラッチパッドを生成できる

▲Studio One 3 Professionalの目玉機能 の一つ、スクラッチパッド機能。スクラッチパッ ド・ボタン(黄色枠)を押とタイムラインの右側 に独自のタイムラインが作られ(赤枠)、作業 が可能となる。チャンネル、エフェクト、インス トゥルメントは自動複製されるが、以降は自由 に変更でき、作業が完了したら、ドラッグ&ド ロップでもとのタイムラインに戻すことでアッ プデートできる。またスクラッチパッド内から エクスポートすることも可能。また各ソングに 対して複数のスクラッチパッドを生成できる

もともとのアレンジは残しつつ、新たにちょっと試したいと思ったことや新しくアイディアを追加したい場合に、すごく便利です。しかもそのアイディアは幾つも保存しておくことができるので、AパターンかBパターンか迷ったときなどもパッと切り替えて確認可能。今までトラックの後ろの方にアイディアを張り付けていたのですが、今後はスクラッチパッドを活用することになりそうです。スクラッチパッドで作ったアイディアは、 曲に戻したり、それ単体で書き出すこともできるので、無 駄にはせずに活用できますしね。ちなみにアレンジトラッ クとスクラッチパッドは、Professional版のみの機能となっています。 また、ブラウザー機能もバージョン3.0に進化しましたが、これまで僕は、あまりこの機能を活用してきませんでした。

 
エフェクト、インストゥルメント、ループ、プリ セットなど、さまざまなファイルを素早く見つける ことができるブラウザー。進化したこのブラウザ ーでは全ページとタブが画面上部に統合され、 “ 音楽的”なキーワード検索機能が追加された。 音楽的とは、コンテンツにスタイル、楽器、特性 といった関連用語(タグ)を付けることで、直感的 なワードで検索できる機能。またサムネイル表示 にも対応した

▲エフェクト、インストゥルメント、ループ、プリ セットなど、さまざまなファイルを素早く見つける ことができるブラウザー。進化したこのブラウザ ーでは全ページとタブが画面上部に統合され、 “ 音楽的”なキーワード検索機能が追加された。 音楽的とは、コンテンツにスタイル、楽器、特性 といった関連用語(タグ)を付けることで、直感的 なワードで検索できる機能。またサムネイル表示 にも対応した

というのは、よく使うサンプルやループ素材が膨大にあり、それらをネットワーク接続している別のWindowsマシンに入れていたため、MUTANTというサウンド・ライブラリーの管理ソフトを使った方がいろいろと便利だったからです。しかし、今回のバージョン・アップで、上部のタブが統合され、より素早く素材にたどり着くための検索機能も強化されいるとのこと。今後は活用できたらと思いました。

出音が太く芯のある
アナログ・モデリング・シンセMai Tai

新しく追加されたソフト・シンセ、プラグインも面白いも のが入っていました。サンプル・プレーヤーPresenceの 進化版Presence XTは、アコースティック楽器とエレクトリック楽器までカバーする14GBという大容量サンプルを搭載し、一般的なサンプラー・フォーマット(EXS、 Kontakt、Giga、SoundFont)の読み込みにも対応しています。もう1つは、Mai Taiというポリフォニックのアナログ・モデリング・シンセ。

▲ポリフォニック・アナログ・モデリング・シ ンセMai Tai。2 基のオシレーター、サブオ シレーター、2 基のLFO、ノイズ・ジェネレ ーターを搭載し、全5タイプのマルチモー ド・フィルターを備えたサウンドは、重厚な ベースからシャープなリード音まで、幅広 いシンセ・サウンドを生成可能。また、16 段のモジュレーション・マトリックスによ り、“モジュラー・シンセ・スタイル”の複雑 なサウンドも実現する

▲ポリフォニック・アナログ・モデリング・シンセMai Tai。2 基のオシレーター、サブオ シレーター、2 基のLFO、ノイズ・ジェネレーターを搭載し、全5タイプのマルチモー ド・フィルターを備えたサウンドは、重厚な ベースからシャープなリード音まで、幅広 いシンセ・サウンドを生成可能。また、16 段のモジュレーション・マトリックスにより、“モジュラー・シンセ・スタイル”の複雑 なサウンドも実現する

まだじっくり触れていないのですが、最初の1音を鳴らした瞬間、“太く芯のある音だな!”と思いました。今後、使用の機会を見つけていきたいですね。プラグインでは、ロータリー・シミュレーターのRotorやBitcrusherが追加されましたが、Rotorは、設定も分かりやすく効きも良かったです。

ロータリー・キャビネットのサウンドを再現するエフェクトRotor。ドライブとトーンのプリアンプ(Horn-Q)とマイク位置のコントロールにより、往年のオルガン・サウンドを得ることが可能

▲ロータリー・キャビネットのサウンドを再現するエフェクトRotor。ドライブとトーンのプリアンプ(Horn-Q)とマイク位置のコントロールにより、往年のオルガン・サウンドを得ることが可能

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来月は、引き続きStudio One 3を紹介したいと思いますが、今制作している曲をエンジニアさんにお願いして、S1で録音/ミックスできないか画策中です。S1に興 味があるエンジニアさんも多くなってきていると思うので すが、“スタジオにはAVID Pro Toolsしかないからな……”という声をよく聞きます。しかし、それは本質とはずれていて、もしS1がより良い音であるならば、それを選択するべきだと思いますし、その事例を作っていけたら変わっていくのではないでしょうか。確かに最初はいろいろと作業上の不都合があるかもしれませんが、それは慣れ というのもありますし、1度構築できれば次からはスムーズに行くような気もしています。後は、S1の操作をマスターしたアシスタントさんが現れると良いですね(笑)。サントラのレコーディングは時間勝負なところもあるので、そんな人材がいたら、重宝されると思いますよ。それでは、 また来月もよろしくお願いします。

 

*Studio One 3の詳細は→http://www.mi7.co.jp/products/presonus/studioone/

林ゆうき

1980年生まれ/京都府出身。元男子新体操選手、競技者としての音楽の選曲から伴奏音楽の世界へ傾倒していく。音楽経験は無かったが、大学在学中に独学で作曲活動を始める。卒業後、hideo kobayashiにトラック・メイキングの基礎を学び、競技系ダンス全般の伴奏音楽制作を本格的に開始。さまざまなジャンルの音楽を取り込み、元踊り手としての感覚から映像との一体感に重きを置く独自の音楽性を築く。 http://www.legendoor.com/artist/hayashi_yu-ki.html

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