林ゆうきが使う Studio One 第2回

ミュージシャンが使うStudio One by 林ゆうき 2015年7月24日

S1_Hayashi

 第2回
ピアノロールを中心に使用した
Studio Oneの便利機能について

 こんにちは、作曲家の林ゆうきです。最近は7月クールのドラマ、アニメ、そして10月からの“朝の連続テレビ小説”の音楽制作など、並行していろいろな作業を進めております。つい先日、Studio One(以降S1)のバージョン3がリリースされましたが、前述の通りいろいろな作業が並行して進行しているので、いったん落ち着くまではバージョン・アップできそうにありません。ですので、今月もS1のバージョン2で、僕なりの便利だと思う機能を紹介していこうと思います。

パート譜の制作にも役立つ
“ノートを転送”の機能

僕がS1で作業するときは、ピアノロールが最も多いのですが、ピアノロール上でよく使う便利な機能に“ノートを転送”があります。これは文字通り、選択したノートを別のトラックに転送する機能。例えば4声のストリングスを書く場合、僕はアンサンブル系の音色を使い、鍵盤でコードを弾きながら1つのトラックに横のラインを意識しながら打ち込みます。しかし、レコーディングに持って行くときは、それぞれのパート譜を用意する必要があるので、あとから1stバイオリン、2ndバイオリン、チェロ……とトラックを分けなければいけません。それを1つ1つコピペしてトラックを作るのはとても大変ですが、そこで活躍するのが“ノートを転送”なのです。

やり方としては、まずは分割したい数の空のトラックを用意します(ここでは4声のストリングスと仮定して、3つ空のトラックを追加。トラック名も2ndバイオリン、ビオラ、チェロなどと付けておくと良いでしょう)。そして、メイン画面で、和音を打ち込んだトラックと3つの空のトラックを同時選択し、ピアノロール上で分けたいノートを選びます(例えばチェロのパートのみ)。そして右クリック(MacではCtrl+クリック)>ノートを転送>任意のトラック(トラック名が表示されます)を選べばOK。1声ずつ順番に空のトラックに割り振ることができます。コピペするわけでもなく、一発で転送できるので、画期的な機能だと思いますね。

▲和音で打ち込んだノートを別のトラックに転送する“ノートを転送”機能。事前に空のトラックを用意し、ピアノロール上でノートを選択して右クリック(MacではCtrl+クリック)>ノートを転送>任意のトラック(トラック名が表示)でOK。黄色枠のように1パートずつスムーズにトラックを分けることができる

▲和音で打ち込んだノートを別のトラックに転送する“ノートを転送”機能。事前に空のトラックを用意し、ピアノロール上でノートを選択して右クリック(MacではCtrl+クリック)>ノートを転送>任意のトラック(トラック名が表示)でOK。黄色枠のように1パートずつスムーズにトラックを分けることができる

ピアノロール画面でもう1つ便利なのが、独立してミュートが付いている点。これはピアノロール上で選択したノートをミュートできる機能です。例えば、あるハーモニーの内声だけ抜いて聴きたいときや、ループさせたフレーズの2拍目と4拍目だけをミュートしてみたいといった場合に、いちいち削除しなくても確認ができるのです。打ち込んでいるとどうしても音数が多くなってしまいがちなので、この機能を使って抜き差しを確認できるのは良いですね。ちなみに僕はキーボードの“m”をそのショートカットにしてすぐに確認できるようにしています(デフォルトのショートカットはshift+m)。

“ピッチをトラックに展開”で
迅速なエディットが可能

ドラム・アンサンブルの音源をマルチで書き出すときに重宝するのが、“ピッチをトラックに展開”。この機能は、1つのトラックに打ち込んでいたドラムやパーカッションのノートを、すべてバラバラのトラックに分けることができるというもの。ドラム音源は、キーによって音色が異なるので、バラバラのトラックに分けるとエディットも楽にできるようになりますし、レコーディングではステム・ファイルとして書き出すので、その作業がすごく楽にできてしまうのです。こちらは、メイン画面でトラックを右クリック(MacはControl+クリック)>インストゥルメントパート>ピッチをトラックに展開を選択するだけ。トラック自体も自動的作られるのでとても便利です。

 

▲ドラム音源などの、キーによってバラバラの音色が割り当てられているトラックのデータを、1つ1つのトラックに展開できる“ピッチをトラックに展開”機能。任意のトラックを選択して、右クリック(MacはControl+クリック)>インストゥルメントパート>ピッチをトラックに展開で、すぐに生成できる(下画面が展開後)。エディットをしたり、ステム・データを作る際に非常に便利な機能と言える

▲ドラム音源などの、キーによってバラバラの音色が割り当てられているトラックのデータを、1つ1つのトラックに展開できる“ピッチをトラックに展開”機能。任意のトラックを選択して、右クリック(MacはControl+クリック)>インストゥルメントパート>ピッチをトラックに展開で、すぐに生成できる(下画面が展開後)。エディットをしたり、ステム・データを作る際に非常に便利な機能と言える

ちなみに、ステム・ファイルへの書き出しの速さもS1の特徴だと思います。レコーディング前は、それこそ50曲近くをバウンスして書き出すこともあるのですが、それでもだいぶ時間は軽減されているのでしょう。書き出しの時間はもっぱら仮眠の時間になることが多いのですが(笑)。また、2ミックスへの書き出し時に、0dBを超えていると教えてくれるようになっているのも、ありがたい機能ですね。

 

▲2ミックスへの書き出し時に、ボリュームが0dBを超えていると、画面のようにアラートが表示される。クライアントにクリッピングしたデータを渡すことを事前回避できるありがたい機能だ

▲2ミックスへの書き出し時に、ボリュームが0dBを超えていると、画面のようにアラートが表示される。クライアントにクリッピングしたデータを渡すことを事前回避できるありがたい機能だ

ソフト・シンセなどでオートメーションを書くときに便利な機能があります。それは書きたいパラメーターを簡単にフィジカル・コントローラーにアサインできるということ。やり方は、ソフト・シンセの画面の上部に歯車のアイコンで“マッピングを編集”というコマンドがあり、ここをクリックして動かしたいパラメーターを選択。ウィンドウにそのパラメーターが表示され、さらに接続されたフィジカル・コントローラーの任意の操作子を触り、中央のリンク・ボタンをクリックすればアサイン完了。より簡単に、直感的にオートメーションを書くことができるのです

 

▲Studio Oneでオートメーションを書く場合、プラグインの画面の上部にある歯車のアイコン(黄色枠)をクリックすると、マッピング編集するためのウィンドウが開く(赤枠)。そして、任意のパラメーターをクリック(ここではCutoff)し、その後フィジカル・コントローラーのツマミを触るとマッピング待機の状態になり、中央のリンク・アイコンをクリックすればOK。フィジカル・コントローラー簡単かつ直感的にオートメーションを書くことができる

▲Studio Oneでオートメーションを書く場合、プラグインの画面の上部にある歯車のアイコン(黄色枠)をクリックすると、マッピング編集するためのウィンドウが開く(赤枠)。そして、任意のパラメーターをクリック(ここではCutoff)し、その後フィジカル・コントローラーのツマミを触るとマッピング待機の状態になり、中央のリンク・アイコンをクリックすればOK。フィジカル・コントローラー簡単かつ直感的にオートメーションを書くことができる

さらに、CELEMONY Melodyne Essentialが付属するのがS1の特徴ですが(Professionalのみ)、僕もレコーディング後に細かいエディットをする際に活用しています。特に劇伴では、民族楽器を使うことが多々あるのですが、その中でアラビックな音階で動いているものがほかの音とぶつかってしまっている場合があるので、そういったときにわざわざ別のソフトを立ち上げることもなく、完全に統合されたMelodyneで簡単に修正ができるのはありがたいですね。

 

 

▲Studio One Professionalに付属するCELEMONY Melodyne Essential。ボーカルのピッチ処理などに活用されることが多いが、劇伴では民族楽器など特殊な音階を奏でる楽器のピッチ調整にも重宝する

▲Studio One Professionalに付属するCELEMONY Melodyne Essential。ボーカルのピッチ処理などに活用されることが多いが、劇伴では民族楽器など特殊な音階を奏でる楽器のピッチ調整にも重宝する

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さて次回は、S1のバージョン3の使用感について書こうと思います。Web上でチェックした中で特に気になったのはスクラッチパッド。メイン画面上で別作業ができるということですが、特にサントラをやっていると、尺の変更など細かい修正をすることが多く、それを解消してくれる機能だと思いますね。あとは音質の良さや、ピアノロールでの作業の向上、動画の書き出しなどに対応していることを期待しています。S1の良さであるシンプルな中での使いやすさがさらに進んでいると良いですね。

林ゆうき

1980年生まれ/京都府出身。元男子新体操選手、競技者としての音楽の選曲から伴奏音楽の世界へ傾倒していく。音楽経験は無かったが、大学在学中に独学で作曲活動を始める。卒業後、hideo kobayashiにトラック・メイキングの基礎を学び、競技系ダンス全般の伴奏音楽制作を本格的に開始。さまざまなジャンルの音楽を取り込み、元踊り手としての感覚から映像との一体感に重きを置く独自の音楽性を築く。 http://www.legendoor.com/artist/hayashi_yu-ki.html

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