DJ URAKENが使う Studio One 2 第4回

ミュージシャンが使うStudio One by DJ URAKEN 2015年5月25日

第4回
便利な機能で制作に役立つ
付属プラグインについて

 

こんにちは、DJ URAKENです。4月から新生活という方もたくさんいらっしゃるでしょう。私の新生活といえば、大学に入学し上京してきたころのことを思い出します。当時はとにかくたくさんの音楽を聴きたくていろんなレコード店を巡り歩いていました。今ではスマホやコンピューターでいつでもどこでも(!)しかも無料で(!!)聴くことができますよね。こんな時代が来るなんてあのころには全く想像もつきませんでした。

サイド・チェイン・モードが使いやすい
付属のCompressor

近年、音楽の聴き方とともに音楽制作のスタイルにも大きな変化がありました。データのやり取りによって遠く離れたところにいても簡単にコラボが可能になり、私と金田謙太郎とのユニットRIZM DEVICEもほぼ会うことはありません(笑)。やり取りはメッセージ・アプリ中心。普段から音楽情報のやり取りをよくしているためか感覚的なことも伝わるので、お互い遠くに住んでいるわけではないのですが特に問題ないので一緒に作業しようとならないのです。時間の使い方もお互い自由にできますしね。

そうやって制作した水曜日のカンパネラ「桃太郎」のリミックスですが、ほぼ出来上がったというタイミングで金田が「後半の“じいちゃん〜”というラップ・パートの入口がさびしい感じになるからなんとかしよう」とどうしても譲らなかったので、WAVES H-Delayで変化をつけました。どういうことをやっているかというと、インサートしたH-Delayにボーカルをセンドで送り、そのボーカル・トラックにS1付属のCompressorを立ち上げサイド・チェイン・モードに。

◀S1に標準付属のコンプレッサー“Compressor”。サイド・チェイン・モード時、中央のグラフでトリガー信号のレベルとパラメーターの関係を視覚的に捉えることができる

▲S1に標準付属のコンプレッサー“Compressor”。サイド・チェイン・モード時、中央のグラフでトリガー信号のレベルとパラメーターの関係を視覚的に捉えることができる

ボーカル・トラックをトリガーにすることで、ディレイ成分をちょっと大きめに設定しても、メインのラップが入ってくると引っ込み、ラップの聴こえを邪魔しないようになります。このようにS1付属のCompressorはとても使いやすいんです! 特にサイド・チェイン・モードが気に入っていて、EDMでよく聴くシンセ・ベースにサイド・チェイン・コンプをかけるときは、必ずこのCompressorを使っています。Compressorの画面は、パラメーターとトリガーで入ってくる信号のレベルの関係を視覚的に捉えることができ、また、素直な効き具合なので、サイド・チェイン・コンプも素早く自分の狙った感じに調整することができます。ほかのコンプも試したことはあるのですが、今のところ私はこれが一番気軽に扱えて、欲しいサウンドもすぐに得られるのでサイド・チェイン・コンプにはいつもCompressorを使っています。

また、このパートでのディレイは“じいちゃん”という言葉の“ちゃん”の部分にだけディレイをかけたかったので、センド・レベルのオートメーションを書きました。

 

▲“じいちゃん”の“ちゃん”の部分のみディレイのセンド・レベルを上げるように書いたオートメーション。これによりラップ・パートに入ったパートのさびしい感じを解消している

▲“じいちゃん”の“ちゃん”の部分のみディレイのセンド・レベルを上げるように書いたオートメーション。これによりラップ・パートに入ったパートのさびしい感じを解消している

さらにここからしばらく続くラップ・パートは、最後に向かう前ということもあってトラックをシンプルにしているので、変化をつけるために同じくディレイのセンド・レベルのオートメーションを書いています。

 

▲ラップ・パートの印象的な部分や間のある部分などを選んで、ディレイ送りのレベルを上げるようにオートメーションを書くことで、シンプルなパートながら音数を増やすことなく楽曲に変化を持たせている

▲ラップ・パートの印象的な部分や間のある部分などを選んで、ディレイ送りのレベルを上げるようにオートメーションを書くことで、シンプルなパートながら音数を増やすことなく楽曲に変化を持たせている

 

オーディオの波形が透けて表示されて、それを見ながらその上にオートメーションを書けるのもS1の使いやすいところです。

そのほかにS1付属のプラグインで私がよく使っているのがFlanger。あまり派手な機能があるわけではないのですが、かかり方が何とも気持ち良いのです。使い方も、かけたいトラックにインサートし、プリセットをいろいろセレクトしながら聴いた感じでどれにするか決めていくだけで、特にこだわった使い方ではないのですが、それで十分。3月にリリースされたゲーム・シリーズ『キングダム ハーツ』のトリビュート盤『KINGDOM HEARTS トリビュートアルバム』にRIZM DEVICEとして参加したのですが、参加曲「March Caprice」でこのFlangerを活用しています。最後のブレイクで使用したSEの途中からオートメーションをオンにして変化をつけているのです。

付属のプラグインでもう1つ紹介したいのが“バーチャル・サンプル・プレーヤー”のPresenceです。

▲S1付属のバーチャル・サンプル・プレーヤー“Presence”。ピアノ、ストリングス、ホーン、パーカッションなどの楽器が含まれ、内蔵のアンプ・エンベロープとモジュレーション・エンベロープ、フィルター、エフェクトを使用して、さまざまなサウンドを構築することができる

▲S1付属のバーチャル・サンプル・プレーヤー“Presence”。ピアノ、ストリングス、ホーン、パーカッションなどの楽器が含まれ、内蔵のアンプ・エンベロープとモジュレーション・エンベロープ、フィルター、エフェクトを使用して、さまざまなサウンドを構築することができる

特徴的な音が出るわけではないのですが、逆にそこが良いところ。私はサード・パーティのインストゥルメントに個性を求めるので、付属のプラグインにこういった標準的なものが備わっているのはうれしいです。またS1は、画面右側のブラウザーからドラッグ&ドロップでインストゥルメントを立ち上げることが可能で、S1付属のプラグインなら、プリセットをドラッグ&ドロップすることができ、そのプリセットが呼び出された状態で立ち上がります。ブラウザーの検索機能も秀逸で、“とりあえずピアノ!”みたいなときは“piano”と入力すれば、“piano”とネーミングされたソフトがヒットするので(S1付属のソフトならプリセットまでヒット)、サクっと立ち上げることができます。

 

▲ブラウザーの検索機能。プラグイン・エフェクトやソフト・シンセを一発で見つけることができ、またS1付属のソフトならプリセットまでヒットする。そのプリセットをドラッグ&ドロップで立ち上げれば、プリセットが呼び出された状態ですぐに使用することができる

▲ブラウザーの検索機能。プラグイン・エフェクトやソフト・シンセを一発で見つけることができ、またS1付属のソフトならプリセットまでヒットする。そのプリセットをドラッグ&ドロップで立ち上げれば、プリセットが呼び出された状態ですぐに使用することができる

ちなみに「桃太郎」のリミックスでは、終盤のピアノでPresenceのRock Pianoというプリセットを使っています。リッチでリアルなピアノの音というわけではないのですが、コンプとEQで加工するとビートの強いダンス・トラックの中に混ぜても、しっかりとした存在感のあるサウンドになるので、この曲に限らず重宝しています。

バス・トラックの作成も
簡単操作で実現可能

最後にミキサーの便利な機能を紹介しましょう。アレンジ画面でもミキサー画面でも同じことができるのですが、トラックを複数選択してハイライトさせた状態で右クリック(Macの場合はcontrol+クリック)し、“選択されているトラックのバスを追加”を選ぶと、選択しているトラックのバス・トラックが、選択している全トラックのアウトをそのバスにセッティングした状態で立ち上がります。

 

▲複数のトラックのバス・トラックを制作したい際、選択したトラックを右クリック(Macの場合control+クリック)して“選択されているトラックのバスを追加”を選ぶと、一発でバス・トラックを作ることが可能

▲複数のトラックのバス・トラックを制作したい際、選択したトラックを右クリック(Macの場合control+クリック)して“選択されているトラックのバスを追加”を選ぶと、一発でバス・トラックを作ることが可能

これは早いし最初に使ったときはなんだかとてもそう快感が! 「桃太郎」のリミックスでは種類の違うスネアをまとめるときやコーラスをまとめるときにこの機能を使いました。

これまで4回にわたってS1の魅力について書いてきました。私がS1を導入して約3年たちましたが、今でも初めてS1から音を出したときのような新鮮さを感じながら制作することができています。また、楽しく音楽を作ることができながら、正確なサウンド、流れるようなフローを実現することが可能なのもS1の魅力です。皆さんもぜひ一度S1の世界を体感してみてください。

DJ URAKEN

1996年の渡英時に経験したロンドン郊外での大規模レイブ・イベントに衝撃を受けDJとしてのキャリアをスタート。日本をはじめUK、オーストラリアなどワールドワイドにDJ/プロデューサーとして活躍する。エレクトロニック・ダンス・ミュージックをベースにした幅広い音楽性が支持され、テレビ、CM、ラジオ、ゲームなど多方面でのサウンド・プロデュースを展開。またFIREWORK DJs 名義でリリースしたデジタル・シングルが連続でレコチョク総合チャート・トップ10入りしている。現在はトラック・メイキングだけでなくレコーディング、ボーカル・ディレクション、ミックス、マスタリングまでのほぼすべての制作過程を自身で手掛けている。2015年、金田謙太郎とのユニットRIZM DEVICEを始動。

TUNECORE JAPAN