ナカシマヤスヒロが使う Studio One 2 第4回

ミュージシャンが使うStudio One by ナカシマヤスヒロ 2015年1月14日

第4回
Studio Oneを使った
ボーカル・レコーディング方法

すっかり寒くなり、もういくつ寝るとクリスマス。皆様いかがお過ごしでしょうか。学生の方なんかは社会人より一足早く冬休みに入られると思いますので、まさにDAWをいじり倒して使いこなせるようになる絶好の季節ですね! 今月で筆者の連載もいよいよ最終回です。冬ごもりのStudio One(以下S1)ユーザーの皆さんのために、今回はめちゃくちゃ内容充実で実践的な記事を展開しようと思っていますので、どうぞ最後までご覧くださいませ!

Studio Oneで
ボーカル・レコーディングを実践

これまで、できるだけ分かりやすくS1の魅力をお伝えしてきたつもりですが、ソフトの機能だけをテキストと画像でお伝えしても、ヘビーなS1ユーザーさんには物足りないでしょうし、S1を使ってない方に理解してもらえているのだろうか? というのが一番の気がかりでした。そこで!これまで説明してきた“軽さのメリット”“必要十分なMIDI機能”“充実のミキシング・ワークフロー”という特徴を生かし、実際のレコーディングを通しておさらいしてみましょう!というのが今回の趣旨です。その実践の場として私ナカシマが書き下ろした「Milestone」という楽曲のボーカル・レコーディングを行いました。ボーカリストは広島県出身のYonoaさん。

▲作詞と歌唱をお願いしたボーカリストのYonoaさん。ナカシマがYonoaさんが出演するAntelope Audioの動画を見てFacebookで声をかけたのが出会いのきっかけ。今回の誌面連動企画への参加も快諾してくれた

▲作詞と歌唱をお願いしたボーカリストのYonoaさん。ナカシマがYonoaさんが出演するAntelope Audioの動画を見てFacebookで声をかけたのが出会いのきっかけ。今回の誌面連動企画への参加も快諾してくれた

YouTubeで歌っている姿を見てすぐメッセージを送ったところ、今回のプロジェクトへの参加を承諾してくれました。

第1回で紹介したように、S1とVIENNA SYMPHONIC LIBRARY Vienna Ensemble Proの組み合わせでストレスなく創作に集中することができました。そして、レコーディング用に“ステムの書き出し”機能を使って各バスにオーディオ化

▲それぞれのインストゥルメントごとのアウトをバッチ処理で一気に書き出して、録音用のマルチインスト・トラックを作成できる。本番ミックスをする場合はトラックごとに書き出して細かな編集をすることも可能

▲それぞれのインストゥルメントごとのアウトをバッチ処理で一気に書き出して、録音用のマルチインスト・トラックを作成できる。本番ミックスをする場合はトラックごとに書き出して細かな編集をすることも可能

同一ソング・ファイル内にインポートしてレコーディング・スタジオに持ち込んだのです。

今回は特別に、S1の国内正規代理店であるエムアイセブンジャパンさんから、プリアンプのPRESONUS ADL700、デジタル・ミキサーのPRESONUS Studio Live 16.0.2をお借りし、筆者のAPPLE iMacを持ち込んでセッティング。

 

▲PRESONUSが誇るプリアンプのフラッグシップ機であるADL700(左)と、小さくても便利で使いやすいStudio Live 16.0.2(右)、そして愛用のStudio Oneが中央のiMacに立ち上げられている。トークバックやマイク以外はほぼこのセットで完結できた

▲PRESONUSが誇るプリアンプのフラッグシップ機であるADL700(左)と、小さくても便利で使いやすいStudio Live16.0.2(右)、そして愛用のStudio Oneが中央のiMacに立ち上げられている。トークバックやマイク以外はほぼこのセットで完結できた

“作曲家がスタジオに入ってワンマン・オペレートする場合”を想定したかったので、デスクの奥にそびえるAMEK Angelaを高級トークバック専用機として使い、Studio Live 16.0.2はオーディオ・インターフェース兼ミキサーとしてFireWireでiMacに直結しました。そしてS1上でオケの2ミックスをStudio Liveのステレオ・チャンネルにアサイン。さらにS1内のクリック・トラックのオーディオ化機能を使ってクリック音をStudio Liveのモノラル・チャンネルにアサイン。プリフェーダー設定にしておくことで、ブース内とコントロール・ルーム内の音量を個別に調整できるるようにしました。もしミキサーが無く、オーディオ・インターフェースのみでレコーディングを行う場合でも、環境設定→ソング設定→オーディオI/O設定で、モニター・ミックスを出力したいハードウェア・アウトプットの部分に“キューミックス”というチェックを入れるだけで、メイン・ミックスとは別のサブミックスとしてモニター・ミックスを作ることで同様のことはできるので、非常に便利だと思います。またStudio Live 16.0.2はコンパクトで持ち運びやすく、これなら慣れないスタジオのラージ・コンソールを扱わなくても簡単にモニター・ミックスを作ることができるので非常に便利でした。さて、準備が整ったところで、早速レコーディングです!

 

大幅な時間短縮になる
Melodyneインテグレーション

 まずはメイン・ボーカルからレコーディングです。冒頭はピアノ伴奏のみで、歌から入る構成でしたので、非常に繊細で説得力のある表現が必要でした。イメージに近付けるため、10回近く歌い直したのですが、そのすべてのテイクをS1のレイヤー機能を使って一つも消すことなく並べた結果、ものすごい数の裏トラックになってしまいました。

 

▲今回は筆者が表現にこだわったため、かなりの回数録音をすることになった。しかし、これだけの数のトラックがあっても整理は非常に簡単で混乱することはない

▲今回は筆者が表現にこだわったため、かなりの回数録音をすることになった。しかし、これだけの数のトラックがあっても整理は非常に簡単で混乱することはない

レイヤー機能は、一つのトラックに再生されない裏トラックを重ねていけるので、良いテイクだけを組み合わせて一つのベストなボーカル・トラックを作る上でとても有効です。そしてS1の中で、最もボーカル録音の際に使いたい機能と言っても過言ではないのが“マルチトラックコンピング”の便利さです。レイヤーにある大量の裏トラックの中から、ベストな部分をドラッグして範囲指定するだけで本番トラックに差し替え可能。しかもクリップの編集点に自動でクロスフェードをかけてくれます。また、クリップの編集点の範囲内で別の裏トラックをダブル・クリックすれば、全く同じ編集点を維持したまま別のテイクに差し替えることもできます。

 

▲筆者制作のドキュメンタリー『Behind The Scen es "Milestone"』の一コマ。ダブル・クリック一つでテイクを差し替えられる便利さは時間に追われるスタジオ・ワークではとても有効だ

▲筆者制作のドキュメンタリー『Behind The Scenes “Milestone”』の一コマ。ダブル・クリック一つでテイクを差し替えられる便利さは時間に追われるスタジオ・ワークではとても有効だ

これは本当に便利で、特に今回のようなたくさんのテイクにチャレンジする場合は、ボーカリスト監修のもとで、テイク選びをする時間が大幅に短縮されると思います。

そうした作業の後、待っているのが細かなピッチ修正作業です。Yonoaさんの歌唱力はかなりのもので、小さなピッチのズレも含めてライブ感として説得力がありますから、修正をするのはほんの一部。S1はピッチ・コレクト・プラグインの業界標準と言われるCELEMONY Melodyneと高度に連携していて、一部のDAWでは必要なリアルタイムでのオーディオの転送が不要。ほぼ一瞬でMelodyneに波形が読み込まれ、即座にピッチとタイミングが解析されます。待ち時間が少ないと作業効率がアップしますし、特に貸スタジオでの作業時には非常にありがたいですね。まるでS1の機能の一つかのような使用感で作業を進められます。

こうした便利なテイク編集とピッチ・コレクト機能のおかげで、Yonoaさんに監修してもらいながら軽快に作業できました。

▲作業はサクサク進みリラックス・ムードが漂うスタジオ。待ち時間が減る分、作る時間を増やして、これからも良いものを生み出していきたいものです

▲作業はサクサク進みリラックス・ムードが漂うスタジオ。待ち時間が減る分、作る時間を増やして、これからも良いものを生み出していきたいものです

 

作業のテンポ感が失われず、“ここはこうしたらどうなるだろう”と思ったら即座に試せるので、現場の雰囲気も良くなります。これは素晴らしいことです。

そんなこんなで、ほぼPRESONUSのソフトウェアとハードウェアを使い、Yonoaさんの力も借りて新曲「Milestone」が仕上がりました! ぜひ聴いてみてください!

§

4回にわたって紹介してきましたS1。皆さんはどんなDAWだと感じましたか? 今回、連載の機会をいただいて詳しく機能をおさらいするうち、僕がS1に対して感じたのは“無駄がなくて速い→気分が良い!”ということ。気分が良いってことは当然創作する営みにも影響を与えると思うのです。当然相性がありますし、使い慣れたDAWから乗り換える人にとって、初めはストレスが多いと思いますが、それを補って余りあるメリットがたくさんあると思います。ぜひ皆さんも試してみてください!

ナカシマヤスヒロ

最初に手にした楽器は、パソコン。映画音楽やゲーム音楽から影響を受け、独学で作曲を始める。大阪芸術大学映像学科在学中より本格的に作曲活動を始め、映画・映像作品のための音楽制作キャリアをスタート。オーケストラとシンセサイザー・サウンドを融合した、エモーショナルな作風を得意とする。アイドルやアーティストへの楽曲提供のほか、近年はGOOGLE、VOLKSWAGEN、ASTON MARTINなどのグローバル企業のCM映像の音楽を手掛け、日本にいながら世界を舞台に活躍



TUNECORE JAPAN