伊橋成哉が使う Studio One 2 第4回

ミュージシャンが使うStudio One by 伊橋成哉 2014年12月24日

第4回
Studio Oneにおける
ミックス/マスタリングの活用法

こんにちは、早いもので今月が連載の最終回となってしまいました。初回は“まだまだ暑いですねぇ”と書いていたのに、既に寒いですもんね。時がたつのは本当に早いものです。最終回も皆さんに何か有意義なものが届けられたらと思います。今回はミックス/マスタリングの話を中心に紹介していきましょう。

細かい設定まで追い込める
オートメーションを搭載

まずはミックス作業時に僕が使う機能を幾つか紹介したいと思います。以前も触れましたが、僕はドラム・トラックに基本2〜3つのソフト音源を使い、それを混ぜてキットにしています。最近のドラム音源のソフトはよくできているのですが、その中でもやはり全部が100点なんてソフトはなくて、やっぱり得意不得意があります。また単体で聴いて良いな!と思うソフトも、オケ中で埋もれてしまったり……と、そういう理由で曲によっていろんな組み合わせ方をしているのです。しかし、ただ組み合わせただけでは、やっぱり音像として違う音源を使っているので一体感が出ません。そこでミキサー上に並んだキット・トラックを複数選択し右クリック(Control+クリック)で、“選択されているトラックのバスを追加”を選び、グループ・トラックを作成します。

 
▲筆者のように複数のドラム音源を組み合わせて使用する場合(画面ではTOONTRACK Superior Drummerを基本のキットに、ハイハットはXLN AUDIO Addictive Drums、スネアをFXPANSION BFD3にしている)、グループ・トラック化しておけば、一括でエフェクトをかけることができる

▲筆者のように複数のドラム音源を組み合わせて使用する場合(画面ではTOONTRACK Superior Drummerを基本のキットに、ハイハットはXLN AUDIO Addictive Drums、スネアをFXPANSION BFD3にしている)、グループ・トラック化しておけば、一括でエフェクトをかけることができる

そこに筆者の場合は、コンプや前回紹介したSOFTUBE Saturation Knobなどをインサートしてドラムとしての固まりの一体感を作ります。

▲バージョン2.5より追加されたプラグイン、SOFTUBE Saturation Knob。シングル・ノブを採用したテープ・サチュレーション・シミュレーターで、シンプルな操作でサウンドにクラシックなテイストを加えることができる

▲バージョン2.5より追加されたプラグイン、SOFTUBE Saturation Knob。シングル・ノブを採用したテープ・サチュレーション・シミュレーターで、シンプルな操作でサウンドにクラシックなテイストを加えることができる

これをやると1つのソフト音源で作ったかのように聴こえるんです。

ミックスでよく使われるのは、リバーブやディレイなどのセンド・エフェクトを利用した処理ですよね。Studio Oneはその点便利に作られているのがうれしいです。以前使っていたソフトだと、センド・トラックを作成しプラグインを挿し、プラグインのWET/DRYでWETを100%に設定し……という、複数の手順が必要でとても手間に感じていました。しかしStudio Oneは、センド・トラックにドラッグ&ドロップでプラグインを入れるだけ。WETが100%の状態でインサートされるので、あとはセンド・レベルなどを基本に細かい調整をしていけば良いのです。

またミックスではオートメーションも駆使して作業しますよね。Studio Oneの場合キーボードの“a”を押すと、オートメーションの設定画面が現れます。

 

▲キーボードの“a”で表示されるオートメーションの画面。上トラックはボリュームを、下トラックはセンド・レベルが表示されている。このほかに、パンやミュート、各インサート・エフェクトのパラメーターなど細かく設定が可能

▲キーボードの“a”で表示されるオートメーションの画面。上トラックはボリュームを、下トラックはセンド・レベルが表示されている。このほかに、パンやミュート、各インサート・エフェクトのパラメーターなど細かく設定が可能

基本的なボリューム、パン、ミュートなどのほか、もっと細かいプラグインの設定などを書きたい場合は、自分でどんどん追加することも可能です。ここでプチ便利技を紹介しましょう。一定のポイントのオートメーション数値を上げたいとき、通常は4カ所ポイントを作り、その間の区間2カ所のポイントをマウスで上げ下げしていくのですが、プチ便利技は、間の2つのポイントをshiftキー(もしくはマウスのドラッグ)で両選択の状態にし、Altキーを押しながらマウスのローラーでクリクリとすると、選択されている2カ所を同時に上げ下げできます(もちろん2個所以上でも設定可能です)。この技を使えばサビのボーカルだけ2dbくらい上げたい場合など、簡単に設定できるのです。

 ミックスは、ディレクターやクライアントにプレゼンする際にとても重要で、そういう意味では、作家という立場でも昨今はミックスの技術力が求められているのかもしれません。もちろんメロディだけ際立って良いものが選ばれるべきではあるのですが、時に音楽に詳しくない方が決定権を持つ案件もありますからね。どうやったら自分の頭の中で鳴っている素敵な音楽が、そのまま相手に伝わるのか、いろいろな努力をする必要があると思います。

さて、あと誰もが気になるのが、パラデータの書き出し機能ですよね。Studio Oneでは、メニューのソング>ステムをエクスポートで行います。

 

▲ステムのエクスポート画面。左のリストからエクスポートしたいチャンネルもしくはトラックを選び、右で保存場所/ファイル名、フォーマット、オプションなどを設定して実行する

▲ステムのエクスポート画面。左のリストからエクスポートしたいチャンネルもしくはトラックを選び、右で保存場所/ファイル名、フォーマット、オプションなどを設定して実行する

ここでソースをチャンネルにするのか、トラックにするのかを選択し、その後ファイル名の接頭の名前(曲タイトルなど)を入力、書き出しフォーマットの選択、その他必要なオプションにチェックを入れたらOKボタンです。書き出し時間で言うと、個々のパソコンの処理力などで誤差は出ますが、ハード・ディスクを使用している僕のマシンでテストをしてみたところ、30tr/約4分弱の曲で11分30秒かかりました。実質書き出しの9.6倍と出ていました。

オススメのプラグインを1つ紹介しましょう。これは本当に使えるのであまり教えたくなかったのですが(笑)、内蔵のMixverbというリバーブです。

▲筆者お気に入りのリバーブMixverb。プリセットのVocal Echoは万能で、ロックからバラードまで、幅広く使用している

▲筆者お気に入りのリバーブMixverb。プリセットのVocal Echoは万能で、ロックからバラードまで、幅広く使用している

このプラグインのプリセット“Vocal Echo”は、ボーカル・センドにインサートすればもうこれでOK!と思うはず。ナチュラルな湿り方とショート・ディレイに似た効果が付加されていて、これまでいろいろリバーブを試してきましたが、これを使い始めてからボーカルには、ロックでアッパーな曲もピアノ・バラードもコイツ挿しています。それくらい万能なリバーブなんです。

本格的な機能を備えた
マスタリング・ツール

最後にStudio Oneで行うマスタリングについて紹介していきます。Studio Oneのユニークなところは、曲を作るソング画面とマスタリングをするプロジェクト画面がワン・クリックで行き来できることです。2ミックスをマスタリングしてみたら少し印象が変わってしまったときなど、ソング画面に行き調整/保存した後、再びマスタリング画面に戻ってすぐに反映させることができます。

▲マスタリングのプロジェクト画面。左の黄色枠の中に、ソング・データを並べてマスタリングを行う。ソング・データをクリックすれば、そのソングの編集画面へすぐに移動できる。中央のプラグインはマスター・エフェクトにインサートされたコンプ/エキサイターのMultiband Dynamics

▲マスタリングのプロジェクト画面。左の黄色枠の中に、ソング・データを並べてマスタリングを行う。ソング・データをクリックすれば、そのソングの編集画面へすぐに移動できる。中央のプラグインはマスター・エフェクトにインサートされたコンプ/エキサイターのMultiband Dynamics

またマスター・エフェクトのインサートや曲間の調整、DJ用にクロスフェードの設定、スペクトラム・アナライザーなど各種メーターの搭載といった本格的なマスタリング機能をいろいろ内蔵しています。マスタリングしたデータは、CDやmp3はもちろん、SoundCloudへ直接アップロードできたり、DDP出力にも対応しているのです。筆者も基本はプロのマスタリング・エンジニアさんにお願いしますが、自宅で完パケするセッションだったり、作家としてデモを提出するときなど、今のご時世マスタリングされていないデモはないと言って過言ではありません。ミックス同様、デモ音源がより完成品に近いものが求められていますから、本格的にマスタリング・スキルを磨かないまでも、ある程度は習得した方が良い技術であると思います。

§

4回という短い期間でStudio Oneの良さを伝え切れたかは分かりませんが、初回にも触れた通り、本ソフトの魅力は何と言っても圧倒的な軽さです。また、機能的なブラウザーの搭載により、エフェクト/ソフト・シンセ/サンプル・ライブラリーなどが即座に検索が可能ですし、何と言ってもアップデートの頻度が多い! 今後どんどん成長していくソフトだと思います。つたない文章でしたが、少しでも皆さんの役に立てていたらうれしく思います。ありがとうございました!

伊橋成哉

2004年、hitomiへの楽曲提供を皮切りに、コンポーザー/作詞家としてのキャリアをスタート。数多くのトップ・アーティストに楽曲を提供し、大手メーカーのCM音楽なども手掛ける。その後も浜崎あゆみ、倖田來未、AAA、山下智久、テゴマス、sexyzone、misono、橘慶太、SDN48など、ヒット・チャートを賑わすアーティストに楽曲を提供している。近年はバンド・プロデュースにも力を注ぐ。

TUNECORE JAPAN