ナカシマヤスヒロが使う Studio One 2 第2回

ミュージシャンが使うStudio One by ナカシマヤスヒロ 2015年1月14日

第2回
Studio Oneで作曲する上で
知っておくべきMIDI関連Tips

すっかり秋の空気になってきました。気持ちが良いので制作作業には持ってこいの季節ですね。筆者は秋になると移動中にメロディが浮かぶことが多いです。やはりアイディアに鮮度があるうちに形にしたいものです。今回は、DAWの共通した概念を理解いただいている方がStudio One(以下、S1)を使って作曲をする上で、知っておくと便利な設定やMIDI関連のTipsについて解説していこうと思います。

ショートカット/テンプレートを活用して作業時間を短縮

どんなソフトウェアでもそうですが、キーボード・ショートカットを使いこなすことで格段に作業効率を上げ、制作時のストレスを軽減できます。S1にも独自のショートカットがありますが、後発の新しいDAWだけあって、STEINBERG Cubase、APPLE Logic、AVID Pro Toolsとほぼ同じショートカットをプリセットとして用意。

▲S1のキーボード・ショートカットは細かくカスタマイズ可能。メジャーなDAWのプリセットがあるだけでなく、設定ファイルのインポート・エクスポート、印刷可能なテキスト・ファイルを書き出すこともできる(黄色枠)

▲S1のキーボード・ショートカットは細かくカスタマイズ可能。メジャーなDAWのプリセットがあるだけでなく、設定ファイルのインポート・エクスポート、印刷可能なテキスト・ファイルを書き出すこともできる(黄色枠)

ほかのDAWから乗り換えるユーザーでもスムーズに移行できます。筆者は以前Pro Toolsを使っていましたが、最もよく使うタイムラインのズーム・イン/アウトにあたるTとRのキーを共通にできたので、比較的乗り換えはスムーズでした。もちろん、よく使う機能を独自にカスタマイズできるので、自分好みに作り込んでいくのもオススメです。

ただ、ショートカットをカスタマイズし過ぎると、別のコンピューターを使うときにショートカットが違い過ぎて大変な思いをすることもあります。そんなときはショートカット・キーの設定ファイルをエクスポートして保存したり、インポートして環境を移植することも可能なので安心です。

DAWの起動待ちやインストゥルメントを立ち上げている間に、ふと思いついたアイディアを忘れちゃった、といった経験は皆さんもあるのではないでしょうか。最近ではDAWの起動を待つよりも、携帯電話の録音機能を使ってメモするのが最も確実だとは思いますが、すぐにコード付けやアレンジを始めたいこともありますよね。そんなときのために筆者はS1のテンプレート機能を活用しています。

S1では起動画面から“新規ソングを作成”ボタンを押すと自動的に各種テンプレートを選択する画面が表示されます。最初から楽曲スタイルやレコーディングのシチュエーション、PRESONUS製オーディオ・インターフェース用のテンプレートが豊富に用意されていますが、ユーザー・タブから保存済みのユーザー・テンプレートを選ぶこともできます。インストゥルメントの設定やミキサー・エフェクトのルーティングまでをテンプレートで保存でき、またサンプリング・レートやビット・デプスを新規ソング作成時に変更できるのでとても便利です。

 

▲新規ソング作成時の画面。ユーザーが作ったテンプレートをリストから選び、場合によってはサンプリング・レートやビット・デプスを個別に変更できる。筆者はよく使うNATIVE INSTRUMENTS KontaktとSPECTRASONICS Omnisphereを最初から全チャンネル分アサイン済みのテンプレートを用意しており、それを立ち上げて作曲を始めている。

▲新規ソング作成時の画面。ユーザーが作ったテンプレートをリストから選び、場合によってはサンプリング・レートやビット・デプスを個別に変更できる。筆者はよく使うNATIVE INSTRUMENTS KontaktとSPECTRASONICS Omnisphereを最初から全チャンネル分アサイン済みのテンプレートを用意しており、それを立ち上げて作曲を始めている。

特に筆者の場合はパート数の多いオーケストラのシミュレーションをすることが多く、最初からインストゥルメントとバス・チャンネルのルーティングが完了しているシンプルなテンプレートから作業を始めることで、MIDIチャンネルの設定やバランスの調整をある程度スキップすることができるのはとても重宝しています。

必要十分な機能を実装したMIDIエディット項目

 人によってDAWの使い方はさまざまですが、筆者的にベストなS1の設定をご紹介します。
1つ目は、“オプションメニュー>停止時にはスタートに戻る”という設定です。

▲S1のオプション・メニューは極めてシンプル。慣れの問題もあるかもしれないが、筆者が設定項目が少なかったからといって困ったことはない

▲S1のオプション・メニューは極めてシンプル。慣れの問題もあるかもしれないが、筆者が設定項目が少なかったからといって困ったことはない

再生/録音時の停止した際に、開始したポイントにカーソルが戻るというシンプルな機能。この機能をONにしておけば、録音するたびにカーソルを手動で戻す必要がなく、同じ個所を納得がいくテイクが録れるまで録音を繰り返すときにはとても便利です。編集点を聴きながら探すときなどにはOFFにしますが、こと作曲をするときにはONのままで問題ないと思います。

2つ目は、“オプションメニュー>インストゥルメント入力は選択に従う”という設定です。これはトラックを選択すると自動的に録音待機状態になる機能です。S1をはじめ、ほかのDAWでもトラックを録音待機状態にするボタンは付いていますが、一部DAWではトラックを選択したとしてもMIDI入力はあくまで録音ボタンを押したトラックにだけ信号を送るものがあります。この機能をONにしていると、弾き直したいMIDIトラックを選択するか、該当するMIDIクリップを選択するだけで該当するMIDIトラックが録音待機状態となり、信号のルーティングを意識すること無く直感的で使いやすくなります。逆に同じオプションメニューの中の“オーディオ入力は選択に従う”の設定は、OFFにしておけば、オーディオ録音するとき、操作ミスで別トラックに録音してしまうことを防げるのです。

3つ目は“環境設定>詳細>ユーザーデータ>ドキュメントを自動保存”をONにすることです。そのものずばりの機能ですが、指定した分数毎に自動バックアップを取ってくれます。不意に高負荷状態になりフリーズしてしまったときには有効です。まめに手動で保存するようにしていますが、気分が乗ってくると忘れてしまいがちなので、筆者は20分程度の頻度に設定しています。

S1は新しいDAWなので、LogicやCubaseなど、MIDIシーケンサーから始まった歴史が長いDAWと比較してしまうと、MIDI機能に関しては項目が少な過ぎて不安になるかもしれません。試しに、打ち込んだMIDIノートを右クリックすると、“音楽機能”という項目にMIDI機能がずらりと表示されますが、それほど多くないですね。しかしS1の真骨頂は“余計な機能が無いこと”だと思います。機能が少ないと言ってもかゆいところに手が届く機能はしっかりと実装されています。

▲MIDIノートを右クリックしたときのコンテクスト・メニュー。MIDI関連機能は多くはないがよく使う機能がシンプルにまとめられており、使用履歴が“最近使った項目”として並ぶので、すぐに目的の機能にたどり着くことができる

▲MIDIノートを右クリックしたときのコンテクスト・メニュー。MIDI関連機能は多くはないがよく使う機能がシンプルにまとめられており、使用履歴が“最近使った項目”として並ぶので、すぐに目的の機能にたどり着くことができる。

例えばクオンタイズ。オススメは“クオンタイズ50%”の設定です。グリッドに正確にクオンタイズするのではなくそのちょうど半分の割合でグリッドに近づけてくれます。リアルタイム入力の人間らしさを残しながら、複数回このコマンドを実行することでちょうどいいタイミングまで調整可能です。他社製のDAWやS1のクオンタイズの詳細設定なら、パーセンテージを細かく数値指定できるのですが、筆者は“クオンタイズ10%”といった微妙な設定を使うことは恐らく無いと思っているので、この“クオンタイズ50%”は一番ちょうど良い設定なのです。

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今回はS1の基本設定やMIDI機能などのかなり細かい部分をかいつまんでご紹介しました。ほかのDAWと共通する機能もあるのですべてがS1独自のものではありませんが、必要十分な機能が厳選されて実装されているということが伝わっていたらうれしいです。先述の通り、S1の真骨頂は“余計な機能が無いこと”。操作が煩雑でないからこそ敷居が低く習得しやすいDAWなのです。次回はミキサーやエフェクトの便利な機能などを紹介できればと思います。お楽しみに!

ナカシマヤスヒロ

最初に手にした楽器は、パソコン。映画音楽やゲーム音楽から影響を受け、独学で作曲を始める。大阪芸術大学映像学科在学中より本格的に作曲活動を始め、映画・映像作品のための音楽制作キャリアをスタート。オーケストラとシンセサイザー・サウンドを融合した、エモーショナルな作風を得意とする。アイドルやアーティストへの楽曲提供のほか、近年はGOOGLE、VOLKSWAGEN、ASTON MARTINなどのグローバル企業のCM映像の音楽を手掛け、日本にいながら世界を舞台に活躍



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