【音響設備ファイル Vol.21】ナガシマスパーランド

音響設備ファイル by Text:Tsuji. Taichi/Photo:Noriaki Yasuda 2017年5月25日

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JR名古屋駅から車を走らせること約30分、三重県桑名市に位置するアミューズメント・パーク=ナガシマスパーランド。2014年には開業50周年を迎えたが進化は止まらず、“4Dスピン・コースター 嵐”(上の写真)などの新しいアトラクションも展開中だ。本稿では、現在改修の進むナガシマスパーランドの音響設備を中心にレポートしよう。

JBLのスピーカーを全面的に導入

伊勢湾に面する国内屈指の総合レジャー施設、ナガシマリゾート。その中核であるナガシマスパーランドもアミューズメント・パークとして日本最大級の規模を誇り、アトラクションの数は50種類以上にのぼる。園内を歩いてみると、メイン・ゲートの付近から各アトラクションの周囲まで、あらゆるポイントにJBL PROFESSIONALのスピーカーが認められる。「園内の音響設備は、お客様向けのBGMやアトラクション用効果音の再生、迷子などの案内放送に使用しています。JBL PROFESSIONALのスピーカーは、プロセッサーでイコライジングなどをしなくても良い音で鳴ってくれるんですよ。とりわけ音楽ソースにはバッチリですね」と語るのは、ナガシマスパーランドで音響設備の改修を手掛ける担当者だ。

「改修済みの音響設備は、年何回かのイベントにも役立っています。例えば園内全域にゾンビが現れる……といった催しでは、ゾンビのパフォーマンスに合わせて、スピーカー間で音を動かしてみたんです。改修前は、こうした演出を外部のPA会社にお任せしていて、システムもその都度組んでもらっていました。しかし今は、規模によっては自前の設備で賄えるイベントも増えたわけです。改修は2年くらい前から徐々に進めていて、パーク内の遊園地エリアについては7割程度が完了しました。残りの3割は、あと1〜2年かけて改修していくつもりです」

 

▲ナガシマスパーランドのメイン・ゲート。JBL PROFESSIONAL AWC129(同軸2ウェイ・スピーカー)やCBT70J(コラム型スピーカー)といったモデルが、写真手前中央の柱や奥のゲートに設置されている

▲ナガシマスパーランドのメイン・ゲート。JBL PROFESSIONAL AWC129(同軸2ウェイ・スピーカー)やCBT70J(コラム型スピーカー)といったモデルが、写真手前中央の柱や奥のゲートに設置されている

 

▲園内での一コマ。左から時計回りにAWC129、AWC82(以上同軸2ウェイのフルレンジ)、AWC15LF(15インチ径のサブウーファー)

▲園内での一コマ。左から時計回りにAWC129、AWC82(以上同軸2ウェイのフルレンジ)、AWC15LF(15インチ径のサブウーファー)

 

▲広範囲へ音を届けるために使われているJBL PROFESSIONAL AWC82。8インチ径の低域ドライバーを備えた同軸2ウェイ・スピーカーで、指向性は120°(水平)×120°(垂直)。雨風や塩害などに強く、屋外設置に向いている

▲広範囲へ音を届けるために使われているJBL PROFESSIONAL AWC82。8インチ径の低域ドライバーを備えた同軸2ウェイ・スピーカーで、指向性は120°(水平)×120°(垂直)。雨風や塩害などに強く、屋外設置に向いている

改修された音響設備は、QSCのネットワーク・システムQ-SYSをプラットフォームに据えたもの。園内の幾つかの事務所には音響機器のラックが設置されており、それらが光ネットワークでつながっている。例えば、プール施設付近の事務所にはBGM用の音楽ファイルを収めたサーバーが、メイン・ゲートのそばの事務所にはトランスポートやボリュームのコントローラー、パワー・アンプなどがスタンバイ。すべてがネットワークの中にあるため、メイン・ゲートのそばからプール付近のサーバーに入った音楽ファイルを扱うようなことも可能。また専用ソフトの入ったコンピューターを接続すれば、ネットワーク内のスピーカーの音量などを個別にコントロールできる。

「例えるなら、改修前は1台のアンプに100台のスピーカーがぶら下がっているような状態でした。なので、ある場所のスピーカーの音量を変えると、ほかの場所の音量まで変わっていたんです。また同一の音声が、場所によって大きく聴こえたり小さく聴こえたりもしていたので、音量のバラつきを無くすというのはテーマの一つでしたね。そして、最もアップデートしたかったのは音質。昨今は設備が老朽化し、お客様アンケートでも“音を良くしてほしい”という声が見られました。それを解決したかったのと、音質を向上させることで遊園地エリアの雰囲気をより良くしたいという思いがあったんです」

 

▲ナガシマスパーランドのネットワーク・システムをイメージ化。ルームAでコントローラーの再生ボタンを押すとそのコントロール信号(①)がネットワーク・スイッチを介してルームBのパッチ盤〜スイッチに届き(②③)、オーディオ・サーバーへと入力される(④)。するとサーバーから音声が出力され(⑤)、それがネットワーク経由でルームAのパワー・アンプに達する流れ(⑥〜⑧)。最後はオーディオ信号がスピーカーへと出力される(⑨)。このような仕組みにより、園内のどこからでもサーバーやアンプを調整することができる

▲ナガシマスパーランドのネットワーク・システムをイメージ化。ルームAでコントローラーの再生ボタンを押すとそのコントロール信号(①)がネットワーク・スイッチを介してルームBのパッチ盤〜スイッチに届き(②③)、オーディオ・サーバーへと入力される(④)。するとサーバーから音声が出力され(⑤)、それがネットワーク経由でルームAのパワー・アンプに達する流れ(⑥〜⑧)。最後はオーディオ信号がスピーカーへと出力される(⑨)。このような仕組みにより、園内のどこからでもサーバーやアンプを調整することができる

 

▲園内の“ジャンボ海水プール”の付近には事務所があり、写真の機器ラックがスタンバイ。左のラックには上からD-LINK DGS-3120-24S C×2(ネットワーク・スイッチ)、QSC Q-SYS C ore 1100×2、Q-SYS Core 500I×2(以上、システム・エンジン。BGM用の音楽ファイルを保存/再生するオーディオ・サーバーとしても機能)などを設置。右のラックには複数のスイッチをつなぐパッチ盤を収納している

▲園内の“ジャンボ海水プール”の付近には事務所があり、写真の機器ラックがスタンバイ。左のラックには上からD-LINK DGS-3120-24SC×2(ネットワーク・スイッチ)、QSC Q-SYS Core 1100×2、Q-SYS Core 500I×2(以上、システム・エンジン。BGM用の音楽ファイルを保存/再生するオーディオ・サーバーとしても機能)などを設置。右のラックには複数のスイッチをつなぐパッチ盤を収納している

 

▲メイン・ゲート付近の事務所にある機器ラック。右のラックにはネットワーク・スイッチやパワー・アンプのQSC CXD-4.3Qが設置されている。中央のラックにもCXD-4.3Qがあり、左のラックにはコントローラーなどをマウント。園内のスピーカーは、QSC Q-SYS Designer Softwareを使えば個別に制御できるが、ラック内のコントローラーではエリアごとにある程度まとめて調整する形を採っている。これは、音響に精通していない人でも触りやすいようにとの計らいだ

▲メイン・ゲート付近の事務所にある機器ラック。右のラックにはネットワーク・スイッチやパワー・アンプのQSC CXD-4.3Qが設置されている。中央のラックにもCXD-4.3Qがあり、左のラックにはコントローラーなどをマウント。園内のスピーカーは、QSC Q-SYS Designer Softwareを使えば個別に制御できるが、ラック内のコントローラーではエリアごとにある程度まとめて調整する形を採っている。これは、音響に精通していない人でも触りやすいようにとの計らいだ

 

風雨のみならず塩害にも耐えるJBL AWC

音質に多大な恩恵をもたらしたのは、JBL PROFESSIONALのスピーカーだ。AWCシリーズ(同軸2ウェイ)やCBTシリーズ(コラム型)、Controlシリーズ(2ウェイ)などのモデルが適材適所に導入された。
「環境面でありがたいのは、AWCシリーズが塩害にも耐える点。ここは海に面しているため、潮風が吹いてくるんです。風雨に強いスピーカーは他社にもありますが、塩害に耐えるモデルはあまり見ないので、うれしいですね」

各モデルの配置については、こう解説する。
「AWCシリーズはカバー・エリアが広いので、広範囲へ音を届けたいポイントに設置しています。これに対してCBTシリーズは直進性が高く、アトラクションの出入り口などに有用。入場した瞬間、迫力のある音質で音が聴こえてくるので、“ほかのエリアから雰囲気が変わった感じ”を持たせることができるんです。順番待ちのお客様に対しては、Controlシリーズでアナウンスを伝えています。Control 25Tなどの小口径モデルを採用し、会話の妨げにならない程度の音量で鳴らしていますね。改修後は、お客様から音へのご指摘をいただくことが無くなり、さらにはアンケートで“音が良くなった”という反応を見るようにもなったので、大変満足しています」

 

▲写真手前右に見えるのはコラム型スピーカーのJBL PROFESSIONAL CBT70J。写真奥左にかけては同社の2ウェイ・フルレンジ・スピーカーControl 28Tなどの姿が見える

▲写真手前右に見えるのはコラム型スピーカーのJBL PROFESSIONAL CBT70J。写真奥左にかけては同社の2ウェイ・フルレンジ・スピーカーControl 28Tなどの姿が見える

 

▲パーク内の広場。写真中央の柱にはAWC82が設置されている。広範囲に音を届ける役目だ

▲パーク内の広場。写真中央の柱にはAWC82が設置されている。広範囲に音を届ける役目だ

ナガシマスパーランドには3つの宿泊施設が隣接しており、その一つであるホテル花水木もバンケット(宴会場)の音響設備が改修された。バンケットは全3部屋で、それぞれにJBL PROFESSIONALの2ウェイ・ラインアレイVRX932LA-1とサブウーファーVRX918Sをメインとするスピーカー・システムがスタンバイしている。
「改修の動機は主に2つあって、一つは従来の設備が老朽化していたこと。もう一つは、昨年の伊勢志摩サミットの“ジュニア・サミットin三重”の会場に選ばれていたことです。以前は出音のレンジが狭く、もっと迫力が欲しいと思っていましたし、聴取位置による音量のバラつきも気になっていました。VRX900シリーズはラインアレイらしい聴きやすい音質ですし、価格も手ごろなので良いですね。導入した後の評判も良く、普段オペレートを務めている係の者も“音がクリアになった”と喜んでいます」

新しい音響機器を積極的に取り入れ、音のグレード・アップを果たしたナガシマスパーランド。来場客からの反応も上々とのことで、音響設備への投資が施設そのものの価値向上につながったと言えるだろう。

 

▲ホテル花水木のバンケットには、JBL PROFESSIONALのラインアレイが導入されている。写真手前右は2ウェイ・モジュールVRX932LA-1×4とサブウーファーのVRX918Sを連結したアレイ。同奥左はVRX932LA-1×3とVRX918Sに、2ウェイ・フルレンジ・スピーカーのAC18/95を加えたものだ。このAC18/95はアレイ直下(ステージ〜ステージ手前にあたる位置)に向けたフロント・フィル用途である。なお、写真は全3部屋のバンケットのうち一番奥の部屋のもので、右のアレイは3つの部屋をつなげて大会場として使うときのメイン・スピーカー。左のアレイは、この部屋を単体で使用する際のメイン・スピーカーだ

▲ホテル花水木のバンケットには、JBL PROFESSIONALのラインアレイが導入されている。写真手前右は2ウェイ・モジュールVRX932LA-1×4とサブウーファーのVRX918Sを連結したアレイ。同奥左はVRX932LA-1×3とVRX918Sに、2ウェイ・フルレンジ・スピーカーのAC18/95を加えたものだ。このAC18/95はアレイ直下(ステージ〜ステージ手前にあたる位置)に向けたフロント・フィル用途である。なお、写真は全3部屋のバンケットのうち一番奥の部屋のもので、右のアレイは3つの部屋をつなげて大会場として使うときのメイン・スピーカー。左のアレイは、この部屋を単体で使用する際のメイン・スピーカーだ

 

 

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