清水靖晃+渋谷慶一郎のライブ音源を高音質配信!

サンレコ・レーベル by サンレコ編集部 2010年8月12日

shimizu_shibuya_2-thumb-650xauto-25928

サウンド&レコーディング・マガジンでは、このたび音楽配信サイトOTOTOYと組んで、DSDおよび24ビット/48kHzの高音質ファイルでの音楽配信をスタートする。その第一弾となるのが、清水靖晃+渋谷慶一郎の2人によるライブ音源『FELT』。これは2010年3月1日に、東京芸術劇場中ホールにて行われた”東京芸術見本市インターナショナル・ショーケース”の模様を収めたものであり、バッハをキーワードにしつつも多様な音楽世界が展開されたライブとして大評判となったものだ。早速、両名にライブを振り返ってもらいつつ、高音質音源の制作に関しての意見を交わしていただいた。

 

[この記事は、サウンド&レコーディングマガジン2010年9月号のものです] 
Photo:Takashi Yashima

演奏家同士の共演というよりは2人で空間を作り上げるイメージ

■実は3月のライブが初顔合わせだったそうですが、共演してみての感想をお聞かせください。

清水 僕と渋谷君では年齢が二回りくらい違うんだけど、大きい世界観のところで共通するところがあった。僕もそうなんですけど演奏家っていう態度よりも作曲から来ているというのがあって、音楽そのものというか、その上のレベルで感じる部分からアプローチするタイプだと思いました。

渋谷 そうですね、確かに楽器同士で共演しているというよりも、ひとつの音響というか空間を2人で作っているみたいな感じでした。

清水 演奏家……例えばフリージャズの人とやっても僕はあまりうまくいかないの。それはなぜかというと、彼らの多くはフリージャズのフォームをやっているから。

渋谷 “フリーっていう形式”とか”即興っていう形式”っていうのがあって、僕もそういうのは苦手。でも、清水さんとの共演では、作曲された作品が基にはなっているんだけど、弾いていてお互いが行ったことのないところに行こうとしている感じがあったんですよね……タイミングのとり方とか、スタイルをよけて違うところに行こうとしているのが。

清水 僕も普段から、もっと巨視的な視点からの突っ込みとかボケっていうのを磨きたいと思っているからね。実際、リハーサルは30分くらいしかやらなかったけど、本番ではちょっとした演奏的な突っ込みを入れたし(笑)。

■演目はバッハの作品が中心になりましたが、清水さんがこれまでバッハに対してアプローチ
してきたやり方と、今回のライブとで変えている部分はありましたか?

清水 僕が今までバッハをやってきた場合、実は音の質量にコンセントレーションを置いてい
た。別にバッハじゃなくても良かったんだけど、その質量を見せるため、聴きやすくするためにはバッハの作品が有効だと考えていたんです。でも、今回のコンサートのように渋谷君のピアノと一緒にやると、構造的なコンセントレーションが高くなる。ただ、当日のライブではevala君がプロセッシングをしたり、PAの金森(祥之)さんが立体音響の演出をしたりと絡んだことで、中間的な位置に行けた気がします。

渋谷 バッハの「フーガの技法」に関してだけは何回かリハーサルをやったんです。でも、違う解釈っていうかアドリブが入るかっていうと、そうではなくて、きわめて譜面に近いものになっている。これは”バッハってスゴイね”って話じゃなくて、バッハというテクストがあって、それを音色的・音像的に読み替える作業を行ったということだと思うのですが。

清水 ピアノが面白いなって思うのは、頭の中での構造をピアノの中で作っていけるところ。僕のサキソフォンのアプローチっていうのは、だだっ広い外からのものだから、その2つの世界が面白い具合に交わったのが良かった。録音を聴き返してみると、ズレが面白いんだよね。
渋谷 僕がバッハを弾くときは、鍵盤の上に指を着けておいて、指を落とすか落とさないかっていうタイミングを自分でずらしながら弾くんですけど、それに加えてあのライブでは靖晃さんが吹く旋律もあるから、二重のズレが生じてるんですね。そのズレで音色が広がっていくところがDSDで聴くと味わえる。単にいい音質というよりも、ピアノの音とサックスの音が重なったときの味が広がるというか、音楽の聴き方として新しいと思うんです。

DSDだとオンマイクで楽器の鳴りを自然に収録できるのが不思議

■バッハ以外に、お互いの曲も演奏されましたが、それらもほとんどリハーサル無しでしたね。

渋谷 「Kiwa」という靖晃さんの曲は譜面をもらったんですけど、メロディだけでコードが書かれていなかったから、エライ緊張しました(笑)。前日にコードだけ付けとこうかなと思ったんですけど、やっぱりその場でサックスの音を聴いて、空間があってというのに対してピアノの音を置いていくのがいいかなと思ってやめたんです。その代わり何回も原曲を聴いて、それをリファレンスとして頭に入れておいてその場で反応してみました。

では、本番でのハーモナイズは即興だった?

渋谷 そうです。ただ、即興ということより大事なのはサックスの旋律が収縮するのに対して、ある種の持続の線があるようにした方がいいなということです。でも具体的にどういうフレーズで持続しようというのは決めないで、その場で弾いていましたね。

■清水さんは渋谷さんの曲に対する準備は?

清水 渋谷君はちゃんと譜面を書いてくれたし、僕の味が出せるメロディだったから、特に問題はなかったですね。

■モーツァルトの「トルコ行進曲」をモチーフにした「Samayoe Renga」の演奏もとてもスリリングでしたね。

清水 実は本番での演奏はもっと長くて、今回配信するのはその抜粋。全体像がどうだったかはもう忘れているんだけど(笑)、つまんだバージョンを聴くとすごくいいよね。最後のところでモチーフが出てくるんだけど、僕はずっと離れようとしていて(笑)。

渋谷 つまんだところは一応モーツァルトのモチーフが少し出ているところからにしたんです。最後にだけモチーフが出てくると、僕が狂っているように聴こえちゃいますし(笑)。

■編集はどのような方法で行ったのですか?

渋谷 ライブの収録はKORGのMR-1000を2台使って5.6MHzのDSDで行っていたのですが、
同期させられなかったので、PAもやってくれた金森さんにそれぞれのDSDファイルをAudioGateで24ビット/192kHzのWAVに変換して、STEINBERG Nuendoで各トラックのタイミングを合わせてから作業してもらいました。

■ライブ当日のマイキングは録音用ではなく、PA用のセッティングだったのですよね?

清水 僕のサックスへのマイキングは突っ込み……SHUREのBeta98でしたしね(笑)。
渋谷 ピアノに関して言うと、PAでは一番鳴るところにマイクを置きますけど、DSDだとその鳴りをそのまま録れるんです。今までのPCM録音を前提としたマイキング・テクニックとは別物で、DSDによって録音とPAの境界がなくなってきていると思います。

■清水さんは普段のレコーディングでは、サックスにはオフめでマイクを立てますよね?

清水 10mくらい離す……突っ込みのマイクだとジャズの音になっちゃうからね(笑)。でも、今回はうまく録れていて不思議だなと思いました。

■ミックスはどのように行ったのですか?

渋谷 金森さんにお願いして、Nuendoで編集した24ビット/192kHzのファイルにアナログ・ベースでEQやコンプ、リバーブをかけていって、KORG MR-2000Sに5.6MHzのDSDファイルで落としました。

清水 ただ、そのままだとダイナミック・レンジが広過ぎたんだよね。小さい音から始まる曲なんかだと、聴いている人が途中でびっくりしちゃうくらい。まあ、ラベルの「ボレロ」だと思えばいいんだけど(笑)、やっぱりある程度レベルはそろえたいと思って処理をしてもらいました。

■マスタリング的な意味合いですね?

清水 そう。最初は単にノーマライズをかけてもらったんだけど、もう少しレベルをそろえたかったのと、あと、アナログでコンプをかけると音が艶っぽくなると思ったので、2ミックスのDSDを再びアナログ出ししてコンプをかけて、またDSDで録って、ノーマライズして、最後に2.8MHzのDSFに変換して配信用ファイルを作りました。

■今回、そのファイルが配信されるわけですが、お二人にとってDSDの魅力とは?

渋谷 まず、柔らかいけどニュアンスがあって、音の核が伝わりやすい感じがする。昔は細いという印象が強かったけど、今はその後のエディット……コンプレッションとかも含めて考えることで、難点みたいなものもなくなってきた。レコーディングで使っていると、記憶が逆戻りするくらい再現性が高いんです。あとピアノを録るとアタックが本当に違う。

清水 立ち上がりが速いよね。

 渋谷 PCMだとハイが強くて”キン”という音になるけど、一番上のところじゃない、ミッドの部分がちゃんと立ち上がってきますよね。

清水 そうなんだよね、僕はピアノのフェルトの音が良い感じで聴こえてくるところが好きでね。その柔らかい音がとても色っぽいんです。色っぽい音の象徴とも言えますね。何の楽器でもこの色っぽさを出せると思っていて、奏法や録音方法を探ってきたわけです。DSDはかつてアナログ録音で表現しやすかった色っぽさプラス、空間の奥行きが出てくる感じがします。

 

_MG_8462++_.jpg

 

清水靖晃+渋谷慶一郎 『FELT』

1.Kiwa 2.フーガの技法コントラプンクトゥス第1番 3.パルティータ第4番アルマンド 4.無伴奏チェロ組曲第2番サラバンド 5.Dolomiti Spring 6.Samayoe Renga 7. Ida 8.Stardust

 

*ファイル・フォーマットは下記の3種類、2つのパッケージでの配信となります。

●24ビット/48kHz WAV

●1ビット/2.8MHz DSFとMP3のバンドル

いずれもアルバムのみの販売で価格は1,000円。

購入はOTOTOYのサイトから!

 

TUNECORE JAPAN