【PMCモニター・スピーカー特集①】独自機構“ATL”で最高水準のサウンドへ

【PMCモニター・スピーカー】独自機構“ATL”で最高水準のサウンドへ by サウンド&レコーディング・マガジン編集部 2018年7月30日

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テクノロジーの発展でさまざまなブランドのスピーカーが市場を賑わせる中、文字通り“リファレンス”として信用の置けるモニターを探し続けているエンジニア/クリエイターは多いことだろう。その最有力候補の一つとして紹介したいのが英国のPMCブランドだ。国内では近年オーディオ・ファンから支持される高級スピーカー・メーカーだが、もともとプロフェッショナル・モニターからスタートし、同社の特許技術“ATL”を用いた唯一の製品として、現在もモニター・スピーカーを進化させ続けている。PMCスピーカーの歴史、そして独自のフィロソフィを紹介したい。

Histor y of PMC
~元BBC の技術者が起こしたスピーカー革命

◎その名に恥じない精巧な開発環境
1991年、ピーター・トーマス氏が創業したPMC。もともと氏はイギリスBBCで技術マネージャーを務めており、BBCメイダヴェール・スタジオ用にバックロード・ホーン型スピーカーの研究を行っていた。その後LB1とBB5という初号機を作り、BBCから独立してPMCを設立。最初の顧客はもちろんBBCだ。このことからも分かるように、PMCはプロフェッショナル・モニター・メーカーとしてスタートしたのである。

トーマス氏が最も注力したのはベース・ローディング・システムの研究。ひずみ無く、高効率で超低域を鳴らすためにはどうすればいいのか……その答えとして、今やPMCの代名詞になっている“ATL”(アドバンスド・トランスミッション・ライン)の開発に成功した。トランスミッション・ラインの研究は1960年代から行われているもので、簡単に言うならばエンクロージャー内にトンネルのような経路を作り、その出口を仮想超低域ドライバーとして、メイン・ドライバーとともに広いレンジの再生を可能にするという考え。それを実用化したのがPMC独自のATLで、経路の長さや内部の特殊吸音材、エンクロージャーの最適化といったカスタマイズがなされている。結果、同サイズのスピーカーよりも低い周波数再生を可能にし、さらにボリュームを変えた際の高域〜超低域のバランス変化を抑える。このATLとソフト・ドーム・ツィーターによるサウンドこそがPMC最大の特徴だ

❶ PMC 創始者であるピーター・トーマスは、英BBCで技術マネージャーを務めていた

❶ PMC 創始者であるピーター・トーマスは、英BBCで技術マネージャーを務めていた

❷ PMCの本社はロンドンの北・ビグルスウェードにある

❷ PMCの本社はロンドンの北・ビグルスウェードにある

もちろんドライバーやクロスオーバーもオリジナル開発。ドライバーはATL構造に対応するため自ずと特注品でなければならず、自社製もしくはPMC専用指定品が使われる。クロスオーバーも同様で、超幅広銅箔を基板パターンにぜいたくに使用し、ミリタリー・グレードの厚みを誇る基板で急峻なフィルター特性を実現。各ドライバー・ユニットのスムーズなつながりをもたらしている。また、PMCはパッシブ/アクティブの両モデルを展開しているが、アクティブのアンプに関しては1993年にBRYSTONとの代理店契約後の共同開発の実績もあり、その後の内蔵アンプにそのノウハウが生かされていると言えるだろう。こうした製造のためにロンドン郊外のルートンに主力工場を構え、そこで熟練工たちがドライバーのボイス・コイルの手巻き作業からステレオ・ペアでの検聴まで行い、晴れて検査に合格した製品が出荷されていく。こうしたきめ細やかな作業は日本職人のモノ作りの考え方に近いと言えるかもしれない。

❸ PMCの独自機構ATL(アドバンスド・トランスミッション・ライン)。ドライバー・ユニットから外部に出るまでの長い経路がトランスミッション・ラインで、その過程で不要な周波数が吸音され、出口からは超低域を同位相で出力。高効率/パワフルな低域特性/安定した大音量特性/低ひずみなどのメリットを持つ。図はTwotwo.6のATL

❸ PMCの独自機構ATL(アドバンスド・トランスミッション・ライン)。ドライバー・ユニットから外部に出るまでの長い経路がトランスミッション・ラインで、その過程で不要な周波数が吸音され、出口からは超低域を同位相で出力。高効率/パワフルな低域特性/安定した大音量特性/低ひずみなどのメリットを持つ。図はTwotwo.6のATL

◎世界のアーティストが愛したPMC サウンド

BBCへの納品を皮切りに、1993年にメトロポリス・スにもATLサウンドが浸透していく。当時から現在までのユーザーをざっと書き出すだけでも、ブライアン・メイ(MB1)、ロビー・ウィリアムス(MB1)、アフロジャック(BB5 XBD-A)、カール・クレイグ(BB5 XBD-A)、マーク“スパイク”ステント(Twotwo.6)、アラン・モウルダー(Twotwo.8)、センゾ・タウンゼンド(Twotwo.5)らの名前が挙げられる。

❹ 測定ブースで製品テスト

❹ 測定ブースで製品テスト

❺ ロンドンにあるテープ・スタジオ。ラージにQB1-XBD-A、ニアフィールドにResult6と、PMCスピーカーが導入されている

❺ ロンドンにあるテープ・スタジオ。ラージにQB1-XBD-A、ニアフィールドにResult6と、PMCスピーカーが導入されている

1999年には同社初のハイファイ・コンシューマー向けスピーカーとしてFB1が登場。とりわけ2000年代はこの分野でも大きな飛躍を遂げ、日本ではPMC=高級オーディオという認識の方も多いかもしれない。もちろんプロフェッショナル・モニターとしても進化は続け、2007年にはPMCが共同開発したDIGIDESIGN RMシリーズがリリース。ATLとDSPエンジンが同居した野心的なモデルとなった。さらに2012年には本格的なニアフィールドのアクティブ・モニターとして、Twotwoシリーズが登場。DSP&デジタル入力を搭載し、外部コントローラーによって多チャンネル運用にも対応。PMCにとってホーム・スタジオも視野に入れた製品として大きな転機となる。そして2018年、スタジオ・エンジニアのみならずクリエイターやプロデューサーたちのホーム・ユースも想定したResult6を発表。こちらはTwotwoシリーズとは反対にDSPなどは搭載せず、“単体でのハコ鳴り”にこだわった王道のスピーカー。しかも価格を約350,000円(ペア)に抑え、同社のATLサウンドを身近にしたモデルとして注目を浴びている。

❻代表的なPMCスピーカー製品

❻代表的なPMCスピーカー製品

❼Result6はPMCが満を持してリリースした“ホーム/プロジェクト・スタジオ向けモニター”。価格もペアでオープン・プライス/市場予想価格350,000円前後となっており、同社のラインナップの中では手の届きやすい設定

❼Result6はPMCが満を持してリリースした“ホーム/プロジェクト・スタジオ向けモニター”。価格もペアでオープン・プライス/市場予想価格350,000円前後となっており、同社のラインナップの中では手の届きやすい設定

なお、近年に入ってのPMCの変化に関しては、ピーター・トーマスの息子であるオリバー・トーマス氏がR&Dのヘッドに就任したことも大きい。彼はそれまでF1チームのエンジニアとして空力関連の研究をしていたそうで、PMCに新たな技術革新をもたらすキーマンとなっている

英国の高級車ではベントレー、アストンマーティン、ジャガー、レンジローバーなどの名前が挙げられるが、PMCを語る際によく引き合いに出されるのがロールス・ロイス。ご存じ英国王室ご用達の高級車だ。そのイメージと重なるように、PMCも気品と信頼性を持った高級スピーカーと目されているのだ。

Oliver Thomas
〜Head of Research & Development, THE PROFESSIONAL MONITOR COMPANY LTD

オリバー・トーマス氏。創業者ピーター・トーマス氏の息子であり、現在はPMC R&Dのヘッドを務める

オリバー・トーマス氏。創業者ピーター・トーマス氏の息子であり、現在はPMC R&Dのヘッドを務める

「私は小さなころから日常的に楽器の演奏や音楽を聴いて育ち、そして我が家の家業であるプロフェッショナル向けのスピーカーの設計/製造に携わってきました。ATLのような既に確立されたテクノロジーを日々改善し、新しい製品を作り出す環境に携われることはとても幸運だと感じています。PMCの最新スピーカーは、私が好きな曲のこれまで聴くことができなかったより深いディテールやニュアンスを伝えてくれ、今後さらに良い製品を作る原動力となっています。日本の皆さんもPMCの素晴らしさを体感していただけるとうれしいです」

●PMCスピーカーに関する問合せ:オタリテック http://www.otaritec.co.jp

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