Device 28 ギター・アンビエント「Aerial Tone」 by 及川潤耶

Maxで作る自分専用パッチ by 及川潤耶 2016年11月25日

基礎的な機能ブロックをつなぎ合わせることで独自のソフトウェアを構築できるCYCLING ’74 Max。現在ネット上では数え切れないほどのパッチがシェアされており、それらのプレーヤーとしても活用が可能です。ここでは最先端のプロフェッショナルが作成したクールなパッチを紹介。パッチのサウンドを試聴できるほかファイルをWebよりダウンロードして、新しい音楽の制作に役立ててください

Device 28 ギター・アンビエント「Aerial Tone」 by 及川潤耶


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▲プレゼンテーション・モード

 

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▲パッチング・モード

 

 

ファイルをダウンロードする→MaxPatch_AerialTone_JunyaOikawa

 

 

音響作品で実際に使用されたパッチ

及川潤耶です。ドイツのカールスルーエ市にあるメディア芸術センター「ZKM」を制作拠点に作家活動をしています。Maxは学生のころに1年ほど勉強した後、サウンド・インスタレーションや作曲、コンサートなどの実践を通して独学しました。今回はエレキギター作品『Adagio』や電子音響作品『Bell Fantasia』で使用しているMaxパッチ「Aerial Tone」の簡易版を紹介します。

このページの冒頭では『Adagio』のサンプル・ムービーを見ることができます。この作品は教会の建築や内部の雰囲気からインスピレーションを受けており、空間を包み浮遊するような音の余韻や、意識の彼方にある儚さに触れるような距離感を音で構想しました。この『Adagio』において、エレキギターのボリューム奏法、トレモロ奏法、ハーモニクス奏法などと組み合わせることで、特徴的なギター・アンビエンスを作り出すのが「Aerial Tone」です。例えば遠くで揺らぐ断片的な音の余韻や、1台のギターから生まれる合奏のような質感を聴取できるかと思います。動画では体験できませんが、立体音響の環境で行われるコンサートでは会場全体を音響体として扱っており、天に向かって上昇する音像や、ある一点に向かって音が集まる様子、音の密度、パースペクティブといった象徴的な音響現象を精密にコンポジションしています。

「Aerial Tone」はこの作品を実現するための技法なので、入力音に対して相性があります。『Adagio』を耳コピして効果を試してもいいですし、アタックの立ち上がりが遅いほかの音も向いていると思います。興味を持たれた方は、さまざまな素材で実験してみてください。

パッチの構造

主要なシステムは極めてシンプルです。オーディオ・インターフェースに入力されるギターの音をMaxに取り込んで、そこからギターのひずみ系プラグイン(このパッチには含みません)、MIDIフット・コントローラー、ディレイ、パンなどの情報をリアルタイムで処理しています。

今回はボリューム奏法もMaxを介して行っているので、まずMIDIフット・ペダルからの情報を[Ctlin]で取得してMaxに入力されるギターの音量を操作しています(MIDI情報であれば、ノブやフェーダーでも操作可能)。ディレイは[tapein~]と[tapeout~]をつないで[tapeout~]にディレイ・タイムを与えることで動作し、フィードバックはこの2つのオブジェクト間の情報をループさせて、その送量を可変することで得られます。このディレイを[Poly~]オブジェクトを使って数十個複製し、それぞれに異なるディレイ・タイムとフィードバック、ボリュームを制御しています。また、3つの[Multi slider]オブジェクトをレイヤーして各情報を操作できるようにしています。

今回使用しているパンは、チューリッヒ芸術大学の音響研究所「ICST」で開発/公開されているAmbisonic(HOA)のエクスターナル・オブジェクト[ICST Ambisonic]です。Maxを開いたら、まず初めにMaxのファイル・メニューから“Show Package Manger”を選択して、“ICST Ambisonic”を検索/インストールしてください。今回はステレオ・フィールドに25個のオーディオ・ソースを簡易的にデザインしていますが、もし音の動きを実験する際は、少ないオーディオ・ソースで、かつ低音が含まれない素材だと音の動きを知覚しやすいと思います。25個の各音源の位置は数字が付いた丸いオブジェクトと対応しており、それを囲っている円/半円は会場の平面図/正面図となります。

今回は、Maxが実作品にどのように生かされているのかを紹介しました。特定の作品のために作られたこのパッチは、“ディレイ”という古典的な技術を使ったとしても、作家性が発揮されることを感じていただけるかと思います。作家にとって、“いかに独自の視点でMax(技術)を自分のものにできるか”は、創作の上で重要な要素の一つ。古典的な技術を異なる視点からとらえ直す実験ツールとして、Maxを扱うのも面白いと思います。

 

03及川潤耶

【Junya Oikawa Profile】仙台市出身。主な実績として東京都現代美術館“Transformation”(2010年)、“BAINS NUMÉRIQUES”(2014/2016年:フランス)、“SEMIBREVE”(2016年:ポルトガル)、「Qwartz Music Awards」最高賞受賞(2013年:フランス)など。幅広い音楽のバックグラウンドと伝統を軸に、現代の音楽/音響/芸術を横断する活動を各国で展開。東京藝術大学大学院 先端芸術表現専攻 修士課程修了 Photo:Tetsu Hiraga

 

 

 

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