Device 26 遺伝的アルゴリズム・リズム・マシン by 中川善裕

Maxで作る自分専用パッチ by 中川善裕 2016年9月24日

基礎的な機能ブロックをつなぎ合わせることで独自のソフトウェアを構築できるCYCLING ’74 Max。現在ネット上では数え切れないほどのパッチがシェアされており、それらのプレーヤーとしても活用が可能です。ここでは最先端のプロフェッショナルが作成したクールなパッチを紹介。パッチのサウンドを試聴できるほかファイルをWebよりダウンロードして、新しい音楽の制作に役立ててください

Device 26 遺伝的アルゴリズム・リズム・マシン by  中川善裕


presentationM

▲プレゼンテーション・モード

 

PachingM

▲パッチング・モード

 

 

ファイルをダウンロードする→GA_RhythmMachine.maxpat

 

パターンが置き換わっていくリズム音源

考えてみると、Maxを初めて買ったのが今から○十○年前。学生のころから一番欲しいソフトでしたが、何せ当時は70,000円くらいもしたため、貧乏学生には手の届かない代物でした。仕事をするようになってやっと手に入れられたという、懐かしい思い出のあるソフトウェアでもあります。

それ以来、我がMacの片隅には必ずMaxが入っており、作曲や音響制作のためのツールとして欠かせない存在となってきました。私の近作で言うと、『Seven Seas and The Sun』 for electroacoustics(2015年)では波の音の音響分析とそれに基づく音響合成、Boidsを利用したマルチチャンネル音場での音源移動プログラムなどに使用しました。また『Arioso immodicus Ⅱ』 for Zephyros(2012年)では、緊張度構造を利用したアルゴリズム作曲用のプログラムをMaxで作成し、LilyPondと連携してオートマティックに楽譜を生成するプログラムを作りました。『Air Corridor II』 for electric guitar and electroacousticsでは、エレキギターが発するノイズ音に反応して、FM合成音や物理モデル合成音を発生させるプログラムを作ったりしています。本当にMaxが一つあればほとんど何でもできる、とても便利なソフトウェアです。

今回紹介するパッチは、“遺伝的アルゴリズム・リズム・マシン”と言います。実際の作品制作にはまだ使っていませんが、そのうち素材作りに活用しようと思って作っておいた遺伝的アルゴリズムを利用したベーシックなパッチです。このパッチでは、8つの音から成るA/B2つのリズム・パターンを用意し、各パターンの音が鳴る/鳴らないが、AあるいはBから1/2の確率で選ばれることになります(一様交差)。つまりA/Bの同じポジションの音が両方とも鳴らない場合は無音、両方とも鳴る場合は発音、片方が鳴る場合は1/2の確率で鳴る/鳴らない場合があります。この結果、次のAのパターンがこのアルゴリズムによって新しく作られたパターンに置き換わり、次のリズムを鳴らします。

今回のパッチでは、突然変異のパーセンテージの設定値に基づき、鳴る/鳴らない音が最終段で入れ替わってしまう可能性を組み込みました。またパターンBは2パターン設定してランダムに切り替えることにし、リズム・パターンが1つに収束しないよう、少しずつ何かが変化していく仕掛けとしました。

ファイルの再生個所を選択してリズム化

このパッチの使い方ですが、まず“Replace”ボタンで任意のオーディオ・ファイル(8つ程度のはっきり分離している音素が入った1本のファイル)を選択します。ファイルを開いたら、0〜7の番号が付いた横スライダーでファイルの再生範囲を選択してください(数字ボタンで選択した音が鳴らせます)。0〜7のスライダーで設定した音が、A/B1/B2のリズム・パターン(左から0〜7)で鳴ることになります。A/B1/B2のボタンをクリックしてリズム・パターンを打ち込んだら、“Start”ボタンを押して再生してください。“DelayTime”は各音の間隔の時間となります(ms)。

私の場合、このようなパッチは創作上の素材作りで活用する場合が多いのですが、今回のパッチも、完全な自動作曲的な意味合いよりは、何度かやってみてその中から良いものをチョイスする、または面白いと思った部分を切り張りして作品を作るというような用途を考えて作っています。音楽を作るために一番重要なのは、やはり人間の耳だと思いますし、コンピューターはあくまでそれを助けるものであるというのが基本スタンスですので、最終的にはコンピューターで作った素材も自分流に手を加えてしまう場合が多いです。今回のサンプル音源は、学生に協力してもらってレコーディングしたボイスなどを素材としていますが、フィールド・レコーディングで収録した自然音などを活用しても意外に面白いサウンドが作れるかもしれません。

 

nakagawa中川善裕

【Yoshihiro Nakagawa Profile】北海道生まれ。東京藝術大学作曲科卒業、東京藝術大学大学院作曲専攻修了。作曲を南弘明、黛敏郎、林光の各氏に師事。電子音楽を南弘明氏に師事した。現代音楽作品からエレクトロ・アコースティック作品まで、幅広い作品を制作している。現在、埼玉工業大学人間社会学部情報社会学科教授。

 

CYCLING ’74 MaxはMI7 STOREでオーダー可能

問合せ:エムアイセブンジャパン
http://www.mi7.co.jp/

 

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