Device08 『Music Today on Fluxus』のための音像移動パッチ by 蓮沼執太

Maxで作る自分専用パッチ by 蓮沼執太 2013年8月12日

基礎的な機能ブロックをつなぎ合わせることで独自のソフトウェアを構築できるCYCLING ’74 Max。現在ネット上では数え切れないほどのパッチがシェアされており、それらのプレーヤーとしても活用が可能です。ここでは最先端のプロフェッショナルが作成したクールなパッチを紹介。パッチのサウンドを試聴できるほかファイルをWebよりダウンロードして、新しい音楽の制作に役立ててください

Device08 『Music Today on Fluxus』のための音像移動パッチ by 蓮沼執太

 

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▲パッチ外観(プレゼンテーション・モード)


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▲『Music Today on Fluxus』公演時の模様(撮影:舘かほる)

 

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▲塩見允枝子氏によるテキストのスコア

 

 

自分の考えや身体でソフトに触れる

今から約10年前の20歳前後のころ、欧米のサウンド・アーティストや現代音楽家が音響を演算しプロセッシングする行為をコンピューター上で行いサウンドを生成する方法論に魅了され、CYCLING ’74 Max/MSP(出会いはバージョン4)やSupercolliderをいじり始めました。“いじりはじめる”という言葉は物を言い当てており、アナログ・シンセサイザーのように、自分の考えや身体でソフトに触れていくという行為がとても新鮮でした。当時はエラーやバグが“グリッチ”として音響的に受け入れられていましたが、僕の耳にもそれらの音は新鮮に響き、いま思うとそれらは“ノイズ”ではなく、純粋な電子音の1つだったと感じています。ヤニス・クセナキスや高橋悠治さんのような作曲プロセスの多様性を追い求めていた学生時代の僕は、音列音楽や確率論で電子的に作曲を試みようとしていたので、フレキシブルなインターフェースを持つMaxを使い始めたというわけです。
Maxは今やサウンド生成以上に映像やインタラクティブな表現に多く用いられているツールですが、アルゴリズムを演算で用いてグラフィカルにコンポジションしていく点は、ジャンルを問わず変わっていないように思います。ただ時が流れれば、ツールとしての在り方も変わってくるはず。僕は学生時代にエンジニア=Masato TSUTSUI君のワークショップにも通っており、当時は身体のパフォーマンスと音響プログラムのシンクロを求めたコンセプトのワークショップでしたが、あれから数年経った今回もTSUTSUI君にサポートをいただきつつ、無限のプロセスがあるであろうMax6の、一つの使い方をひもといていきたいと思います。

無音状態を挟みつつ音像が移動

今回は2013年7月7日に国立国際美術館で行われた公演『Music Today on Fluxus 蓮沼執太vs塩見允枝子』にて、塩見さんがコンポジションされた作品『方向のイヴェント(加速と膨張のプレデュード)』という演目でパッチを書いてみました。音楽というよりは、フルクサスという1960年代にニューヨークで行われた芸術運動のパフォーマンスに近い作品です。塩見さんのイベントのスコアはいわゆる五線譜ではなく、インストラクションがテキストで記載されており、僕は下記のような指示が与えられた上で、“音像移動”という役割でパフォーマンスを行いました。
左右のスピーカーの間で音像を移動させる。移動と移動との間隔(無音の時間)は、始めは20〜30秒。その後次第に間隔を狭め、終り頃はテニスのラリーのスピード、或はそれ以上で。音の種類はなるべく多い方がよい。@最初の音像移動でパフォーマンス開始
今回のパッチは、演奏者の1人という意味合いが大きいです。ほかのプレイヤーもメトロノームで時を刻むスピードを変化させたり、CDプレーヤーで即興的にプレイ/ポーズのリピート演奏をしたり、ステージ上をランニングするパフォーマンスもあったりと、“これぞフルクサス!”とうなってしまう光景でした。指示もシンプルで、リアルタイムで音を生成していくというよりも再生方法のコントロールをメインに、シンプルなパッチを意識して書きました。任意の音声ファイルを読み込み、パフォーマンスのトータルの時間を入力しプレイすることで、サウンドがLchからRchへパンニングされ、移動しきったら数秒間の無音状態を経て、また対のポジションにサウンドが移動していきます。トータル・タイムに近づけば近づくほど、音像移動のスピードがアップし、無音時間も短くなっていきます。
ただ、これはあくまで素材のようなパッチです。この設定をベースにアイディアや実現したいアウトプットを正確に演算することで、“自分の機材”としてより近しい存在になるかと思います。そうしたチャレンジを重ねることで、マシンが起こすエラーよりも、自身が起こしてしまうエラーや意外な発見に気付くことが、今後の制作につながる小さなキッカケになるはずです。

 

 

ファイルをダウンロードする(movement.maxpat)

 

shuta_nairobi_photo蓮沼執太

【Profile】1983年東京都生まれ。音楽作品のリリース、蓮沼執太フィル/チームを組織。他ジャンルとのコラボレーションを多数制作する。2014年よりニューヨークに滞在予定。蓮沼執太フィルのスタジオ・レコーディング・アルバムを制作中。www.shutahasunuma.com

 

 

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問合せ:エムアイセブンジャパン
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