Device 22 “生演奏によるコンピューター音楽”のためのパッチ by 大久保雅基

Maxで作る自分専用パッチ by 大久保雅基 2016年5月25日

基礎的な機能ブロックをつなぎ合わせることで独自のソフトウェアを構築できるCYCLING ’74 Max。現在ネット上では数え切れないほどのパッチがシェアされており、それらのプレーヤーとしても活用が可能です。ここでは最先端のプロフェッショナルが作成したクールなパッチを紹介。パッチのサウンドを試聴できるほかファイルをWebよりダウンロードして、新しい音楽の制作に役立ててください

Device 22 “生演奏によるコンピューター音楽”のためのパッチ by  大久保雅基

 

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▲パッチ外観(プレゼンテーション・モード)


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▲パッチ内部(パッチング・モード)

 

 

 

ラジオの音声を処理して演者に送出

私は近年、生演奏によるコンピューター音楽の作曲をしております。電子音響音楽やアルゴリズム作曲などで使用される概念や技術を、楽器やパフォーマンスによる生演奏に応用しています。従来のコンピューター支援作曲と異なる点は、音響作曲法が中心となり、誰もが“素人”となるような奏法が採用されていることです。

その作品の一つである『どこかの日常』における演奏方法は、ヘッドフォンから聴こえてきた言葉を復唱するものです。“スピーカー”と呼ばれる4人のパフォーマーはそれぞれヘッドフォンを装着しています。リアルタイムに放送されているラジオ放送の音声をコンピューターに取り込み、音響処理をかけた音声をそれぞれのパフォーマーに送ります。“スピーカー”は客席の四隅に立ち、サラウンド再生方法の一つであるクアドラフォニックの形態を模します。この方法は、音響処理が演奏家への指示として使えること、また電子音響音楽において培われてきた、音響処理による表現が生演奏にも応用できること、などのメリットがあります。

このコンピューターに音声を取り込んで音響処理を施し、各パフォーマーに送るまでの処理をMaxで行いました。今回は『どこかの日常』で使用したものを2人のパフォーマー用に作り直したパッチをご紹介します。もしお近くにお手伝いできる方がいらっしゃらない場合は、(音響機器の)スピーカーやヘッドフォンでも再現できます。

このパッチはマニュアル操作と、シーケンスによる操作が可能です。シーケンスによる詳細な操作は、パッチ付属のテキスト・ファイルをお読みください。まず“Audio”にある赤いナンバー・ボックスからオーディオ・インプットのチャンネルを設定します。“Speaker 1”“Speaker 2”の青いナンバー・ボックスからオーディオ・アウトプットのチャンネル(L/R)を設定します。

“Speaker 1”と“Speaker 2”はそれぞれパラメーターを変更でき、“Mode”から3つのモードを選べます。“repetition”では入力された音声をそのまま出力。“loop”ではサンプリングされた信号をループ再生します。“freeze”ではサンプリングされた信号の一部を引き伸ばしフェード・イン/フェード・アウトで出力します。loopとfreeze modeではサンプリングを行う必要があり、“Rec”のトグルをオンにすることでサンプリングが行われます。“Loop mode”では再生速度とループの長さを設定できます。“Freeze mode”ではフェード・イン/フェード・アウトの長さを設定します。ここを設定した後、“Freeze!”のボタンをクリックすると再生されます。波形をクリックするとFreezeのポイントを設定できます。“pitch”では、Loop modeとFreeze modeのピッチを変更できます。

エディット・モードの画面の解説

オーディオI/Oなどから入力された音声は“Speaker 1”“Speaker 2”に送られます。それぞれ3つのモード(Repetition/Loop/Freeze)から入力された音声があり、選択されたモードの音声が出力に送られます。

Repetition modeでは、入力された音声信号がそのまま出力されます。この音声信号は同時に画面右上の“Sampling”にも送られており、Loop modeやFreeze modeで使用するサンプルを録音します。Loop modeでは[groove~]オブジェクトを使い、再生速度の変化にタイム・ストレッチ、ピッチの変化にピッチ・シフトの機能を使用しています。これらはMax 7から実装されたものです。Freeze modeにはグラニュラー・シンセシスを組み込み、サンプルの一部分を引き延ばす処理をしています。

これらのパラメーターは、プレゼンテーション・モードから波形やナンバー・ボックスを操作することによって変更できますが、シーケンスを記入することで自動演奏することも可能です。シーケンスから送られたデータはナンバー・ボックスを通り、波形表示に反映されます。

このパッチを改造して、MIDIコントローラーで操作できるようにしたり、さまざまなエフェクトを追加してもいいでしょう。面白いパッチができたら、ぜひ送ってください。

 

ファイルをダウンロードするMax Patch

 

1440大久保雅基

【Profile】1988年、仙台市出身。洗足学園音楽大学音楽・音響デザインコース卒業、情報科学芸術大学院大学(IAMAS)修了。電子音響音楽の作曲家。名古屋芸術大学、愛知淑徳大学非常勤講師。
http://motokiohkubo.net/

 

 

CYCLING ’74 MaxはMI7 STOREでオーダー可能

問合せ:エムアイセブンジャパン
http://www.mi7.co.jp/

 

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