Device 19 “えせDJスクラッチ”半自動演奏 by 平♯重行

Maxで作る自分専用パッチ by 平♯重行 2016年2月25日

基礎的な機能ブロックをつなぎ合わせることで独自のソフトウェアを構築できるCYCLING ’74 Max。現在ネット上では数え切れないほどのパッチがシェアされており、それらのプレーヤーとしても活用が可能です。ここでは最先端のプロフェッショナルが作成したクールなパッチを紹介。パッチのサウンドを試聴できるほかファイルをWebよりダウンロードして、新しい音楽の制作に役立ててください

Device 19 “えせDJスクラッチ”半自動演奏 by  平♯重行

 

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▲パッチ外観(プレゼンテーション・モード)


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▲パッチ内部(パッチング・モード/パッチ全体)

 

 

 

“それっぽく”スクラッチ演奏する発音制御

こんにちは、平♯と申します。平#と書いたり、普通に平井と書いたりもします(どれでもいい)。どうやらMax利用歴(20年以上)からすると、国内では古株になってしまっているようです。あぁ恐ろしい。でも実は、あまりパッチング自体のテクニックを持っているわけでも、優れたサウンドを生み出してきているわけでもありません。ごめんなさい(笑)。それでも、長年Maxを使ってインタラクティブなシステムや作品にかかわってきているので、それらのネタの中から今回は似非(えせ)DJスクラッチ演奏を、しかも半自動で行うパッチを紹介します。

これは、もともとは2010年に作った“Bathcratch”というエンターテインメント作品の機能の一部をさらに縮小したものになります。そのBathcratchとは、お風呂につかりながら浴槽を指でこすって“キュッ”と音を鳴らせばスクラッチ・フレーズが鳴って音楽演奏できる、ばかげた作品です。そこでのスクラッチ音は真っ当なサウンドのスクラッチング処理をせず、最初から録音されたスクラッチ音をリズム・トラックのテンポに合わせてフレーズとして半自動で鳴らすものでした。今回紹介するパッチも、特定テンポのビートに合わせてスクラッチ・フレーズを鳴らすものです。キーの1〜4でそれぞれ4分音符、8分音符、16分音符、6連符のフレーズを鳴らせます。各フレーズの発音位置は画面上にチェック・ボックスとして並んでおり、フレーズごとにどの音を鳴らす、鳴らさないかを自由に設定できます。また“Pitch Change”というチェック・ボックスをオン(キー0で変更)にしておくと、鳴るスクラッチ音のピッチをランダムで変化させます。これでスクラッチ・フレーズにバリエーションがあるように聴こえます。

さらに、スクラッチ・フレーズが鳴っている途中でキーを押してフレーズを変更すると、複雑なスクラッチ演奏をしているようにも聴こえます。リズム・トラックはループ素材を使って自由に変更できます。ただこれはループ素材をテンポ解析したりしないので、スクラッチ・フレーズのテンポは自分で調整してください。この辺りの微妙に機能が足りないところが“半自動”たるゆえんです。あとは、気ままにキーボードをたたき、スクラッチ・フレーズを鳴らして遊んでください!

パッチ構成と処理内容

各スクラッチ・フレーズの処理を統合化して、効率の良いパッチを作ることは可能でしょうが、ここでは各フレーズ用のサブパッチを実装しています(それぞれquarter、eighth、sixteenth、sextupletという名称)。力技です。

画面に表示されている各フレーズの発音チェック・ボックスの情報や1拍の時間の長さ(テンポの逆数)、そして拍のトリガーを対応するフレーズ用サブパッチに送り、サブパッチ内で発音制御を行っています。各サブパッチでは受け取ったトリガーを[delay]オブジェクトで各音符の発音タイミングを制御してスクラッチ音を鳴らします。そのスクラッチ音のサンプル・データはサブパッチ内部で切り替えることができるようになっているうえ、各音の発音タイミングを正確なタイミングより前後にズラすことも、サブパッチ内部で可能です。表のGUIには出していない微妙な調整が可能な(変に凝った)フレーズ処理となっています。無駄ですね。なお、切り替え可能なサンプル・データは、大元のパッチにある[audioFileManager]というサブパッチですべて読み込んでいます(単に[buffer~]を複数用意しているだけで、リズム・トラックのサウンド・ファイルもここで読み込みます)。

さて冒頭に書いた通り、自分はあまりパッチングのアイディアやテクニックにたけているわけではありません。C/C++でMaxオブジェクトを作る時間の方が長いんじゃないかとさえ思っています。そのような中で、今回は純粋にパッチだけの紹介をさせてもらいました。普段は音響センシングや信号処理を交えたインタラクティブモノを作っていることもあり、今後は機械学習と信号処理を組み合わせたMaxオブジェクトなどを提供することが増えそうだなぁと、ぼんやり考えています。

 

 

ファイルをダウンロードする→PseudoScratcher

 

 

hirai_ksuihome_large平♯重行

【Profile】1970年生まれ。小学生のころからプログラミングしている8ビット・マイコン世代。当初から音楽やCG処理を行い、学生時代にいろいろ活動する中でMaxと遭遇。以来Max使いとして研究開発やアーティストのサポートなどを行う。現在、京都産業大学コンピュータ理工学部准教授。
http://hir.ai/
Twitter : @shigeyuki_hirai
Facebook : shigeyuki.hirai

 

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