Device 15 1秒×100個のフラグメンツで奏でてみた by evala

Maxで作る自分専用パッチ by evala 2014年11月15日

基礎的な機能ブロックをつなぎ合わせることで独自のソフトウェアを構築できるCYCLING ’74 Max。現在ネット上では数え切れないほどのパッチがシェアされており、それらのプレーヤーとしても活用が可能です。ここでは最先端のプロフェッショナルが作成したクールなパッチを紹介。パッチのサウンドを試聴できるほかファイルをWebよりダウンロードして、新しい音楽の制作に役立ててください

Device 15 1秒×100個のフラグメンツで奏でてみた by evala

 

PresentationMode

▲パッチ外観(プレゼンテーション・モード)


PatchingMode

▲パッチ内部(パッチング・モード)

 

 

 

 

ファイルをダウンロードする→DFJK144x100

 

乱数と対話する

 

今から15年ほど前にCYCLING ’74 Maxに触れ始めました。ちょうどMaxでオーディオがしっかり扱えるようになったころで、真鍋大度くんや徳井直くん、澤井妙治くんやSILICOMとして活動していた青木孝允くんなど、今思えば豪華な面子がごく少数のメルマガ・コミュニティで情報交換していたMax第2世代の面々も、もう30代後半になるとか考えると、恐ろしいものです。今ではコンピューターの進化とともに映像やさまざまなデザイン/研究分野にも広く普及するようになってきましたが、僕自身、音楽家として音に特化しながら、美術館などでのインスタレーションはもちろん、舞台や広告、公共空間のサウンド・デザインやプロダクト開発、最近では立体音響の制御まで、あらゆる面でMaxを活用しています。

そういった仕事の中でMaxのネタや利点を挙げればきりがなく、悩みましたが、今回は初心に返って“乱数”にフォーカスしてみます。乱数というのはコンピューターが持っている重要な特性の1つ。人間が乱数を生成することはとても難しくて、例えば“でたらめに歩いて”と言われても、本当にでたらめに歩くのは難しく、どうしても規則のようなものが出てきます。なので、乱数を意図的に出せない僕ら人間としては、それとどう対話し、その特徴をどう表現に反映していくかという辺りが、Maxを使う上で面白い部分です。どこでどう使うかは、ある種のセンス。そのセンスがよろしくないと、乱数が乱数で終わってしまいます。音とともに最もシンプルにそれを浮き彫りにするパッチを書いてみました。ぜひダウンロードして実際に起動してみてください。

 

144KBのデータの可能性を引き出す

 

このパッチの操作は、コンピューターのキーボードの4つのキーを押すだけです。D/F/J/Kに両手の人指し指と中指を置き、キーをタイプするとコンピューターが音源も再生速度もステレオ間の位置も選び、残響まで付けてくれます。時には繰り返したり、永遠に引き延ばしたりもしてくれます。操作できるのは発音タイミングのみ。何がどのように出てくるのか分からない、いわばコンピューターと対話しながらの演奏で、D/F/J/Kの4トラックのキー・タイプのタイミングに演奏力が問われます。

音源は、僕のコンピューターのハード・ディスクに眠っていた“ピッ”“ジーッ”“フワァー”“ドンッ”“ノイ!”といったさまざまな音の断片を適当に100個集めてモノラルで1秒ジャストに切り出してみたもの(24ビット/48kHzのWAV)。100個といっても全部合わせて100秒、1つあたり144KBの小さなデータたちです。それらがキー・タイプによってアット・ランダムに選ばれ、[groove~]に格納されます。そこでごく一般的なアーギュメント“速度やループの有無”“ループ範囲”にあらかじめ設定した範囲内で乱数が適用されます。

その後、パンニングや残響が付加されますが、その各パラメーターにも乱数が適用され、左右に動いたり、大きく小さく反響したりしなかったり、あるいはドローン化したりします(今回はパンニングに[M4L.pan2~]、残響には昔から知られたアルゴリズムの[freeverb]とその兄弟分の[gigaverb]を利用させていただいてますので、helpパッチを参照ください)。

テクニカル的にはたったこれだけのことですが、これらの乱数を通った結果、144KBのデータから多様な表情が引き出されて重なり合い、とても密度の高い、また自分の手と頭ではプロセスできないような新しい音楽に出会うことがあります。そのバリエーションは豊富で、Webサイトで試聴できるデモ音源などは氷山の一角に過ぎません。僕にとっては、その“出会い”こそが大事であり、それにはMaxが不可欠なのです。

これは何か操作するための道具としてのパッチではありません。楽器に近いような、素材としてのプログラムです。高橋名人よろしく連打するもよし、サムライよろしく一打一打の残響に耳を澄ますもよし。遊んでもらえたら幸いです。

そしてぜひ、皆さん各々の好きな1秒の音を100個集めて、パッチ・フォルダー内のオーディオ・データを上書きしてみてください。そこにはきっと素敵な出会いが待っています。

 

 

evala_Profevala

【Profile】1976年生まれ。電子音楽作品の発表および上演、美術館でのインスタレーションのほか、公共空間、舞台、広告メディアなどで多彩な楽曲/サウンド・デザインを行なう。現在、NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]にて、完全暗転の無響室で体験する立体音響作品『大きな耳をもったキツネ』を展示中。
<Webサイト>www.evala.jp
Photo:Kenshu Shintsubo

 

 

CYCLING ’74 MaxはMI7 STOREでオーダー可能

問合せ:エムアイセブンジャパン
http://www.mi7.co.jp/

 

TUNECORE JAPAN