AJURIKAが使う「FL Studio」第2回

ミュージシャンが使うFL Studio by AJURIKA 2017年9月29日

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曲の土台となる低域パート
キックとベースをレイヤーで作る

皆様こんにちは! 今回は曲の土台となる低域部分、キックとベースに焦点を当てて解説していきます。近年の音楽制作(特にダンス・ミュージックやポップスなど)において、キックとベースは楽曲を支える大変重要なパート。ここがしっかりしていれば、後の楽曲制作は非常に進めやすくなります。この低音パートが以降のアレンジやミックスの軸となるので、しっかり時間をかけ、納得のいく音にしていきましょう。今回も参考音源を用意したので(https://soundcloud.com/sound-7/sound-and-recording-mag-fl02)そちらも聴いてもらえればと思います。

 

 

キックとベースをレイヤーする場合は
EQで帯域を分けて処理する

まずはキックです。この鳴り方で曲のイメージが一変してしまうので、念入りに音色選び、音色制作します。今回は3つの音を重ねて1つのキック音を作成します。

最近はサンプリング素材やキックに特化したソフト音源も多数出ていますが、今回はFL StudioのBassDrumで基本となる部分を作ります。

 

▲キックに特化したBassDrum。左上のBASE(基音周波数)とDURATION(音の長さ)がキモ。FL Studio 12 All Plugins Bundle(99,990円)、FL Studio 12 Signature Bundle(パッケージ版:31,000円)、FL Studio 12 Producer Edition(24,000円)、FL Studio 12 Fruity Edition(12,800円)の全グレードに標準搭載されている。Signature Bundle以外はbeatcloud(https://beatcloud.jp/)でダウンロード購入可能

▲キックに特化したBassDrum。左上のBASE(基音周波数)とDURATION(音の長さ)がキモ。FL Studio 12 All Plugins Bundle(99,990円)、FL Studio 12 Signature Bundle(パッケージ版:31,000円)、FL Studio 12 Producer Edition(24,000円)、FL Studio 12 Fruity Edition(12,800円)の全グレードに標準搭載されている。Signature Bundle以外はbeatcloud(https://beatcloud.jp/)でダウンロード購入可能

 

BassDrumでは左上MAINのBASEというパラメーターが重要になります。これはキックの基音の周波数を決めるもので、楽曲によって必ずどこかちょうど良い数値があります。自分の耳で確かめつつ、鳴りが良いところを見つけましょう。また、左上のDURATIONというパラメーターも重要です。キック音の長さを決めるためのものですが、長過ぎると締まりが無く、短過ぎると低音成分が鳴らなくなってしまいます。先のBASEと併せ、最適な部分に設定します。そのほかのパラメーターも音色に影響するので、適宜調整します。

BassDrumの音作りがある程度終わったら、コンプとEQで音作りをします。コンプはアタック・タイム遅めにしてアタックを強調。EQは低域と高域を持ち上げ輪郭をはっきりするようにしました。また、キックの作成において重要となるのがアタックを強調するTransient Processorです。コンプでアタックを強調するのとはまた違う、いわゆる今風の音になるのでぜひ試してみてください。

 

▲Transient Processorでアタックを少し強めてリリースを縮めるだけで、今っぽいキックの音になる

▲Transient Processorでアタックを少し強めてリリースを縮めるだけで、今っぽいキックの音になる

 

次に、キックのアタックに含まれる高域成分を強調するため、EQで5kHz以下をカットしたハイハットをキックと同時に鳴らします。この高域だけのハイハットはあまり音量が大きいと耳につくので、ミュートで比較してごくわずかに鳴っているくらいでちょうど良いです。

 

▲キックにレイヤーする素材にかけたEQ。上段は高域成分を足すハイハットで、5kHzより下をバッサリとカット。下段は胴鳴り成分として使うクラップで、350Hz以下をカットしながら3kHzより上も少し下げている

▲キックにレイヤーする素材にかけたEQ。上段は高域成分を足すハイハットで、5kHzより下をバッサリとカット。下段は胴鳴り成分として使うクラップで、350Hz以下をカットしながら3kHzより上も少し下げている

 

さらに、中域の胴鳴りを強調するために、350Hz以下をカットして高音部分をかなり下げたクラップ音も混ぜました。これはステレオ感強調のためのショート・ディレイで左右に広げています。

このようにそれぞれの音を単純に重ねるだけではなく、EQによって帯域を分けることで、キックとしては一つに聴こえる音でも、帯域ごとに音が存在する空間に変化が生まれ、立体感や存在感が増します。重ねる音が増えるとそれだけ設定要素が増えるので試行錯誤することになりますが、その分良い結果が得られます。

以上の工程ですが、楽曲の一番盛り上がるパートで鳴りを確認しつつ、キックの音色を調整するのが大事です。静かなところでキックの音作りをして、肝心の盛り上がるところに来たらほかのパートに埋もれてしまう……といったことが無いようにしましょう。

キックの音色ができたら、次はベース。ここでもキックと同じ考え方で、低域/中域/高域で音色を分けることで、ベースの立体感、存在感を出すことができます。

ここで便利な機能がLayerです。“Set children”ボタンで複数の音源を指定すると、指定した音源をユニゾンで鳴らすことができます。このLayerで3音のベースを重ね、それぞれEQで帯域を分けていきます。

 

▲Patcherが登場して一時はその存在が危ぶまれたLayer。個人的に使う機会が多く、ベースやシンセ・リードなど目立たせい音をレイヤーするときに有用

▲Patcherが登場して一時はその存在が危ぶまれたLayer。個人的に使う機会が多く、ベースやシンセ・リードなど目立たせい音をレイヤーするときに有用

 

一番低域を担う部分は3X OSCによるノコギリ波を使い、EQで60Hz以上をカット。次に、ベースのメインとなる中域部分はHarmorを使用しました。こちらはEQで60Hz以下をカットし、先の3X OSCとクロスフェードするような形にします。また高域部分として重ねたパートはEQで200Hz以下をカットします。

このように帯域でパートを分けて重ねた場合、多くの場合で低音はセンターに、高域に行くほどステレオ感を広げると空間が埋まり、安定感が出ます。FL Studioのミキサーにはステレオ感調整のパラメーターStereo Separationがありますので活用しましょう。

これらのベース音を最終的にはミキサー上の1つのチャンネルにバスとしてまとめ、さらにEQやコンプなどで調整をします。ケースバイケースになりますが、ベースはコンプでしっかりとつぶして音量変化を安定させた方が、楽曲の土台としてしっかりすることが多いです。

 

オートメーション・クリップで
サイド・チェイン・コンプ効果を得る

キックとベースの音作りを進めていくとどうしてもお互いの音が重なり、マスキングして鳴りがはっきりしなくなります。特に低域はエネルギーが大きく、重なるとミックス・バランスも不安定になりがちです。ですのでサイド・チェイン・コンプやオートメーションを使い、キックが鳴っているときはベースの音量を下げるようにしましょう。

今回はキックの音に合わせてオートメーション・クリップを置き、ベースの音量を変化させてキックとかぶらないようにしました。サイド・チェイン・コンプを使用してもよいのですが、ボリュームを直接オートメーションで動かした方がベースの音量変化によるノリやボリューム感の調整がしやすいと思います。

 

▲赤枠内の上がサイド・チェイン・コンプの代わりにベースのボリューム・オートメーションを描いたクリップ。下はそれに合わせてEQゲインを調整している。FL Studioは1つのオートメーション・クリップで幾つものパラメーターを制御可能なため、他パートのゲイン・リダクションなども1つのオートメーションでまとめることができる

▲赤枠内の上がサイド・チェイン・コンプの代わりにベースのボリューム・オートメーションを描いたクリップ。下はそれに合わせてEQゲインを調整している。FL Studioは1つのオートメーション・クリップで幾つものパラメーターを制御可能なため、他パートのゲイン・リダクションなども1つのオートメーションでまとめることができる

 

▲Fruity PanOMatic。ボリュームやパンをLFOで動かしてトレモロやオート・パンの効果を得るのが本来の使い方だが、ここではLFOは使わず、“ボリュームとパンをコントロールするプラグイン”としてのみ使用。ミキサーのフェーダーやパンは最終的なバランスやパンの調整に使うので、そこのオートメーションは最後まで触らないようにするために、ユーティリティとしてこのプラグインを使う

▲Fruity PanOMatic。ボリュームやパンをLFOで動かしてトレモロやオート・パンの効果を得るのが本来の使い方だが、ここではLFOは使わず、“ボリュームとパンをコントロールするプラグイン”としてのみ使用。ミキサーのフェーダーやパンは最終的なバランスやパンの調整に使うので、そこのオートメーションは最後まで触らないようにするために、ユーティリティとしてこのプラグインを使う

 

ちなみにボリュームのオートメーションについて、FL Studioでは多種多様なやり方があります。個人的には今回のような場合はミキサー・トラックにFruity PanOMaticを立ち上げ、ボリュームのオートメーション・クリップを作成して調整するようにしています。オートメーションを無効化したい場合、プラグインのミュートで済むので、効果の比較が非常にやりやすいです。

以上、キックとベースの音作りを解説しましたがいかがでしたでしょうか? 次回はボーカルの録音/編集について取り上げます。お楽しみに!

 

FL Studio シリーズ・ラインナップ

FL Studio 12 All Plugins Bundle(99,990円)
FL Studio 12 Signature Bundle(パッケージ版のみの販売:31,000円)
FL Studio 12 Producer Edition(24,000円)
FL Studio 12 Fruity Edition(12,800円)

<<<Signature Bundle以外はbeatcloudにてダウンロード購入可能>>>

 

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