AJURIKAが使う「FL Studio」第1回

ミュージシャンが使うFL Studio by AJURIKA 2017年9月22日

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歌モノのダンス・ミュージックの制作は
どこから手を付ければよいのか?

皆さま初めまして! 今回から本連載を担当いたしますAJURIKAです。普段IMAGE-LINE FL Studioを使用して、ゲーム・ミュージックからダンス・ミュージック、また歌モノの制作などをしており、同社のWebサイトにFL Studioのパワー・ユーザーとして掲載していただいています。FL Studioは独特の構造を持ち、オートメーションやミキサーのルーティングにもいろいろな方法が存在するので、選択肢が多いゆえの難しさも抱えています。そこで本連載のために歌モノのダンス・ミュージックを新たに作り、その工程を通してFL Studioの機能とその使用方法を紹介します。今回はボーカルが入っていない段階のデモ音源を用意したので、サンレコのSoundCloud(https://soundcloud.com/sound-7/2017_fl-studio)にアップしました。本文と併せてご試聴ください。

 

 

純正のシンセ3X OSCなどで
まずは大まかに曲を構成する

音楽にはいろいろなジャンルや形態があり、その制作手法もさまざまです。歌モノのダンス・ミュージックでも人によりさまざまな作り方がありますが、ここでは私なりの手順を紹介します。普段ボーカル曲を制作する場合は、FL Studioに標準搭載のシンセ3X OSCをメロディ、コード、ベースの分の計3つ立ち上げ、テンプレートとして使っているキックやスネア、ハイハットを交えて大まかに曲を構成していきます。これを“下書き”と呼んでいます。以前はキックとベースの音作りから手を付け、そこにコードやメロディを乗せていました。バッキングが先にできているとメロディを作りやすいのですが、その反面構成の変更や転調をしたくなったときに対応が難しく、不自由さを感じていました。しかし最近は、下書きを先に作ることでメロディや展開の発想に制限が無くなり、思った方向へ曲を向けていけるようになりました。

 

▲FL Studio使いならば必ず一度は立ち上げるであろう3オシレーターのシンセ、3X OSC。FL Studio 12 All Plugins Bundle(99,990円)、FL Studio 12 Signature Bundle(パッケージ版:31,000円)、FL Studio 12 Producer Edition(24,000円)、FL Studio 12 Fruity Edition(12,800円)の全グレードに標準搭載されています。Signature Bundle以外はbeatcloud(beatcloud.jp/)でダウンロード購入可能

▲FL Studio使いならば必ず一度は立ち上げるであろう3オシレーターのシンセ、3X OSC。FL Studio 12 All Plugins Bundle(99,990円)、FL Studio 12 Signature Bundle(パッケージ版:31,000円)、FL Studio 12 Producer Edition(24,000円)、FL Studio 12 Fruity Edition(12,800円)の全グレードに標準搭載されています。Signature Bundle以外はbeatcloud(beatcloud.jp/)でダウンロード購入可能

 

▲3X OSCと簡易的なリズムのみで構成した下書きプレイリストの一部。全8trとなっています

▲3X OSCと簡易的なリズムのみで構成した下書きプレイリストの一部。全8trとなっています

 

3X OSCだけで簡単にメロディ、コード、ベースを組み展開を作ったら、次はそれぞれをより意図に合った音源に差し替え、フレーズの追加も行います。今回はメインのコードをピアノにしたかったので、サード・パーティ製のピアノ音源XLN AUDIO Addictive Keysを立ち上げました。このAddictive Keysは目的の音にたどり着くのが早く、最近のお気に入りです。

新しいフレーズの追加に際しては、専らサード・パーティ製のLENNARDIGITAL Sylenth1かFL Studio純正のHarmorを使用しています。昨今人気のXFER RECORDS SerumやREVEAL SOUND Spireも素晴らしいサード・パーティ製シンセなのでよく使うのですが、CPU消費が比較的大きいこともあり、下書き段階での登場は少ないです。この段階ではあまり細かく音作りせず、思うがままに音を足していきます。ちなみにキックとベースは、まだ最初の状態のままです。3X OSCでの下書きの後、先にキックとベースの音作りを進めてもよいのですが、まずはどのような楽器が鳴っているかの当たりを取り、その後曲の土台となるキックとベースを作り込んだ方が良い結果が出やすいと思います。

 

▲FL Studio Signature Bundle以上に標準搭載されている倍音加算合成シンセ、Harmor。エディットの方法が難解ですが、使用頻度は高いです。ちなみに、今回は本文中で触れることができませんでしたが、FL Studio純正のシンセを使うと、MIDIノートの“Slide”モードをアクティブにした際、素晴らしいピッチ・ベンド効果が得られます

▲FL Studio Signature Bundle以上に標準搭載されている倍音加算合成シンセ、Harmor。エディットの方法が難解ですが、使用頻度は高いです。ちなみに、今回は本文中で触れることができませんでしたが、FL Studio純正のシンセを使うと、MIDIノートの“Slide”モードをアクティブにした際、素晴らしいピッチ・ベンド効果が得られます

 

 

MIDIリージョンの切り張りや
内蔵アルペジエイターでフレーズ作成

ここでピアノ・トラックに注目。最初に作ったMIDIリージョンをスライス・ツールで切り刻み、それをコピー&ペーストし別のフレーズとして使用しています。ダンス・ミュージックの制作ではサンプル(オーディオ・データ)を切り張りすることが多いですが、MIDIデータの切り張りも普通とはまた違う表現になります。メロディなども単一のリージョンにノートを一つ一つ打ち込んで作るのが主ですが、その後にあえて切り刻み、別フレーズに組み替えるのも大変面白い結果を生みます。偶発的ですが、自分が作ったものを組み替えて新たなフレーズを生み出すのは、制作モチベーション的にも良いことだと思います。

 

▲オリジナルのMIDIリージョン(赤枠)と切り張りした後のMIDIリージョン(青枠)。オーディオをチョップした方がリバーブ成分なども切れるため、エディットの効果が大きいのですが、アイディア出しのときはMIDIの切り刻みも有用です。メロディやコード・バッキングなどに新たな展開が欲しいと思ったときに切り刻んでみましょう

▲オリジナルのMIDIリージョン(赤枠)と切り張りした後のMIDIリージョン(青枠)。オーディオをチョップした方がリバーブ成分なども切れるため、エディットの効果が大きいのですが、アイディア出しのときはMIDIの切り刻みも有用です。メロディやコード・バッキングなどに新たな展開が欲しいと思ったときに切り刻んでみましょう

 

この段階で使用しているFL Studioの機能としては、各チャンネルのセッティング・ページにあるLayerとArpeggiatorが挙げられます。Layerはその名の通り、複数の音源を重ねて鳴らす機能です。今回のデモ音源では後半に出てくるリード音に使用しており、シンセを3つ重ねています。このLayerは、リードやベースといった重要なパートでは必ず使っていて、音の立体感や存在感を出すのに有効です。デモ中盤に出てくるアルペジオのフレーズには、音源としてSylenth1を使っているのですが、アルペジオはFL StudioのArpeggiatorで作り出しています。シンセ個々にもアルペジエイターが備えられている場合があり、高機能なものも多いのですが、このArpeggiatorはどんな音源にも使えるので私の中ではファースト・チョイスとなっています。

次にリズム隊に手を付けます。今回はMIDIによる打ち込みではなく、ワンショットをプレイリスト(タイムライン)上に直接配置することでフレーズを構築します。生ドラムをシミュレートする際などに細かいニュアンスの違いを出すのであれば、幾つもパターンを作成し、FL Studioならではのパターン・ベースで組んだ方が良いと思いますが、ダンス・ミュージックの場合は大きな流れの中でリズムを組んだ方がイメージをつかみやすいでしょう。ただしハイハットは細かい演奏となるので、しっかりシーケンスを打ち込みMIDIのリージョンで鳴らしています。そのほかヒット音やホワイト・ノイズのスウィープ音、効果音などは既存のサンプルを適宜張っています。楽曲のキーやBPM、展開に合わせてオリジナルなものが必要になった場合は、後から作成するようにします。

以上のようにある程度フレーズを追加したら、次に各トラックをミキサーにルーティングしていきます。この段階で最終的な調整を見据え、大まかにドラム、ベース、オケ、ボーカル、そして全体といったバスを用意しました。この段階まで進み、書き出したものがサンレコWebにて聴けるデモ曲になります。

 

▲ミキサーに作成したバス。左の方の青いバス・チャンネルはトータル、緑色のバス・チャンネルはドラムで、赤いのはベース、水色はその他のオケでピンク色はボーカルのためのもの。こうして大まかに分けておくと、制作後半に特定パートをミュートしたり、フィルタリングしたりといったトリッキーなことが非常にやりやすくなります。あまり細かく分けても扱いづらくなるだけなので、3つもしくは4つくらいに分けてトータルにまとめるとよいでしょう

▲ミキサーに作成したバス。左の方の青いバス・チャンネルはトータル、緑色のバス・チャンネルはドラムで、赤いのはベース、水色はその他のオケでピンク色はボーカルのためのもの。こうして大まかに分けておくと、制作後半に特定パートをミュートしたり、フィルタリングしたりといったトリッキーなことが非常にやりやすくなります。あまり細かく分けても扱いづらくなるだけなので、3つもしくは4つくらいに分けてトータルにまとめるとよいでしょう

 

▲デモ曲のプレイリスト。下書きの状態に比べるとMIDIのリージョンも大分増え、それらしくなってきました。オートメーションはまだ一切無く、楽器類のレンダリングによるオーディオ化もしていないので、後のボーカル録音の際にキー変更にも対応できます

▲デモ曲のプレイリスト。下書きの状態に比べるとMIDIのリージョンも大分増え、それらしくなってきました。オートメーションはまだ一切無く、楽器類のレンダリングによるオーディオ化もしていないので、後のボーカル録音の際にキー変更にも対応できます

 

下書きを作成し音源差し替え、フレーズを追加しミキサー・チャンネルへの割り振りまで進みましたが、いかがでしたでしょうか? 次回は曲の根幹となるキックとベースの音作りについて解説します。お楽しみに!

 

FL Studio シリーズ・ラインナップ

FL Studio 12 All Plugins Bundle(99,990円)
FL Studio 12 Signature Bundle(パッケージ版のみの販売:31,000円)
FL Studio 12 Producer Edition(24,000円)
FL Studio 12 Fruity Edition(12,800円)

<<<Signature Bundle以外はbeatcloudにてダウンロード購入可能>>>

 

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