JapaRoLLが使う「FL Studio」第4回

ミュージシャンが使うFL Studio by DJ JapaRoLL 2017年8月18日

JapaRoLL_sashikae

多彩なエフェクト&手法で魅せる!
EDMトラックのミキシング

筆者の連載は今回が最後。最終回のテーマはミキシングです。良いマスタリングをするには良いミキシングが必要で、良い2ミックスを生むには一つ一つの音色選びが重要です。ミキシングがうまくできない場合は思い切って音色自体を変更する。マスタリングがうまくいかない場合はミキシングを見直す。この点を意識してみるといいかもしれません。では早速、連載の題材としている曲(プログレッシブ・ハウス系EDM)のミキシングついて、そのテクニックを幾つか紹介したいと思います。

 

 

ベースは帯域によって左右幅を変え
400Hz以上をバッサリとカット

今回はサビのミキシングにフォーカスして解説します。鳴っている主なパートはキック、ベース、リード、コードの4つ。最初に手を着けるパートについては、特に決まりはありませんが、僕はキックとサブベースから作業することが多いです。まずはキックとベースにマルチバンドのステレオ・イメージャーでモノラル処理を施し、センターに配置します。先ほど主なパートの紹介で“ベース”と書きましたが、実はこのベースは2つの音色をレイヤーしたもので、一つは150Hz以下のサブベース、もう一つは中低域を補うミッドベースです。ここではベースの全帯域ではなく、サブベース帯域だけをセンターに配置。ミッドベースにはステレオ感を出すエフェクトをかけているので、これでサブベース帯域はセンター、ミッドベース帯域はセンターと左右の両方で鳴っていることになります。

続いてはEQで400Hz以上をカット。400Hz以上の帯域にはリードやコードが入ってくるので、必要なしと判断したわけです。このベースとキックを同時に鳴らしてみると、ベースの30Hz以下をカットした方が全体のバランスが良かったので、そちらも思い切ってカットしています。基本的には、30Hzもしくは20Hz以下の低域は、ミキシングやマスタリングのときに邪魔になってくる部分なので、カットをお勧めします。

 

▲ベース(サブベース+ミッドベース)のチャンネルに挿したFruity Parametric EQ 2。30Hz以下、400Hz以上を大胆にカットしている(赤枠)。このEQは、FL Studio 12 All Plugins Bundle(99,990円)、FL Studio 12 Signature Bundle(パッケージ版:31,000円)、FL Studio 12 Producer Edition(24,000円)、FL Studio 12 Fruity Edition(12,800円)に標準搭載。Signature Bundle以外はbeatcloud(https://beatcloud.jp/)にてダウンロード

▲ベース(サブベース+ミッドベース)のチャンネルに挿したFruity Parametric EQ 2。30Hz以下、400Hz以上を大胆にカットしている(赤枠)。このEQは、FL Studio 12 All Plugins Bundle(99,990円)、FL Studio 12 Signature Bundle(パッケージ版:31,000円)、FL Studio 12 Producer Edition(24,000円)、FL Studio 12 Fruity Edition(12,800円)に標準搭載。Signature Bundle以外はbeatcloud(https://beatcloud.jp/)にてダウンロード

 

次にサード・パーティ製のNICKY ROMERO Kickstartでダッキング(サイド・チェイン・コンプのような効果)をかけ、キックとぶつからないよう処理。キックは200〜300Hz辺りを−4dBほど削り、ベース用のスペースを空けています。またアタック感が足りなかったので、3kHz辺りを+4dBブースト。次にサード・パーティ製のCAMEL AUDIO CamelPhatで少しだけひずませ、さらなるアタック感の強調と倍音の増幅を狙いました。

 

▲CAMEL AUDIO CamelPhatは、ディストーションやコンプ、フィルターを統合したエフェクト

▲CAMEL AUDIO CamelPhatは、ディストーションやコンプ、フィルターを統合したエフェクト

 

 

コードのダッキングは緩めがベター
リードの一部のレイヤーを違う定位に

次はリードとコードです。最初に各パートを単体で鳴らしながら処理した後、キックやベースなどの他パートと合わせてミキシングしていきます。

リードはLENNARDIGITAL Sylenth1で作った4種類の音色を重ねています。このレイヤーをミキサーのバスにまとめ、サード・パーティ製のFABFILTER Saturnで低/中/高域の3つに分けてひずみ具合やダイナミック・レンジを調整。なお、このSaturnはマルチバンド・ディストーションですが、今回はマルチバンド・コンプとして使っています。次にFruity Parametric EQ 2で200Hz以下をカット。リードやコードのEQ処理は、キックやベースと一緒に鳴らすことでバランスが取りやすくなります。200Hz以下をカットしたのは、ここがキックやベースの入る帯域で、必要がないためです。それから、サウンドのこもりを解消するために400Hzも削り、足りなかった中域と高域をブーストしています。

 

▲FABFILTER Saturnは、サード・パーティ製のマルチバンド・ディストーション。中央の大きなノブがひずみ量を調整する“DRIVE”で、その左がダイナミック・レンジをコントロールするためのノブ

▲FABFILTER Saturnは、サード・パーティ製のマルチバンド・ディストーション。中央の大きなノブがひずみ量を調整する“DRIVE”で、その左がダイナミック・レンジをコントロールするためのノブ

 

▲リードへのイコライジング。200Hz以下をバッサリ切って、中〜高域をブーストしている

▲リードへのイコライジング。200Hz以下をバッサリ切って、中〜高域をブーストしている

 

続いてはFruity Reeverb 2で残響感を演出。ここで注意してほしいのは、ルーム・サイズを表す“SIZE”というパラメーター。今回は50%で残響感を再現しています。上げるほどに大きなリバーブがかかるわけですが、リードにかけ過ぎると音がフワッとしてしまいます。Fruity Reeverb 2の次は、ILLFORMED Glitchのテープ・ストップ・エフェクトを使い、リードにアクセントを付加。その後Kickstartでダッキングをかけて完了です。

 

▲ILLFORMED Glitchは、テープ・ストップやリバース、クラッシャー、ゲート、ストレッチなどを併装したプラグイン。画面はVer.1で、現在Ver.2がリリースされている

▲ILLFORMED Glitchは、テープ・ストップやリバース、クラッシャー、ゲート、ストレッチなどを併装したプラグイン。画面はVer.1で、現在Ver.2がリリースされている

 

最後はコードです。こちらも4音色から構成していますが、そのうち2音色はアルペジオで鳴らしています。まずはFruity Parametric EQ 2で緩めに350Hz以下をカット。次にSoundgoodizerで全体の音圧を上げ、サード・パーティ製のリバーブVALHALLA DSP Valhalla Roomで薄く残響を加えました。最後にKickstartでダッキングをかけて完成ですが、コードにかけるダッキングは緩めの方がベターです。ガッツリかけると奥に引っ込んでしまい、キックやベース、リードの空いたスペースを埋める役割が全くできなくなってしまうからです。

ミキシングでは基本的にEQやコンプを駆使して調整するものの、うまくいかない場合や+αで良い音を実現するためには、各パートの定位を調整する必要があります。今回はリードとコードを若干調整します。先ほどリードとコードがそれぞれ4つの音色から成っていると書きましたが、一部のレイヤーのみを調整することもあります。

まずはリードについて。ミキサーのパンではなく、ステップ・シーケンサーのパンでレイヤーの一つをLch側に30%回します。そのレイヤーにSylenth1内でリバーブをかけ、左右の広がりを付加。他レイヤーにはSylenth1内でリバーブがかかっていないので、このレイヤーに特徴が生まれ、さらには中央に若干のスペースができるため、キックとベースがよりスムーズに鳴ります。

 

▲リードの4音色を鳴らすMIDIノート(赤枠)をステップ・シーケンサー上で見たところ。レイヤー2のパンのみがLch側に30%振られているのが分かる(青枠)

▲リードの4音色を鳴らすMIDIノート(赤枠)をステップ・シーケンサー上で見たところ。レイヤー2のパンのみがLch側に30%振られているのが分かる(青枠)

 

▲サード・パーティ製のシンセLENNARDIGITAL Sylenth1。この画面は、上のシーケンサー画面でパンをLch側に振っているトラックのもので、シンセ内部のリバーブをかけている(赤枠)

▲サード・パーティ製のシンセLENNARDIGITAL Sylenth1。この画面は、上のシーケンサー画面でパンをLch側に振っているトラックのもので、シンセ内部のリバーブをかけている(赤枠)

 

コードにはFruity Stereo Enhancerを立ち上げ、GUI左の“STEREO SEP”を少しだけ+側へ回します。これでコード全体にステレオ感を付加することができ、他パートとのバランス、そして曲全体の太さが増します。

 

▲FL Studioの全グレードに付属のプラグイン・ステレオ・イメージャーFruity Stereo Enhancer。“STEREO SEP”ノブではステレオ幅を調整可能だ

▲FL Studioの全グレードに付属のプラグイン・ステレオ・イメージャーFruity Stereo Enhancer。“STEREO SEP”ノブではステレオ幅を調整可能だ

 

以上で筆者の連載は終了。ご愛読いただき、ありがとうございました。解説の内容が参考になれば幸いです。

 

 

FL Studio シリーズ・ラインナップ

FL Studio 12 All Plugins Bundle(99,990円)
FL Studio 12 Signature Bundle(パッケージ版のみの販売:31,000円)
FL Studio 12 Producer Edition(24,000円)
FL Studio 12 Fruity Edition(12,800円)

<<<Signature Bundle以外はbeatcloudにてダウンロード購入可能>>>

 

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