JapaRoLLが使う「FL Studio」第3回

ミュージシャンが使うFL Studio by DJ JapaRoLL 2017年8月11日

JapaRoLL_sashikae

スネアひとつにも丹精込める!
奥深きビルドアップの世界

EDMプロデューサー/DJとして活動しているJapaRoLLです。第3回の今月は、フィルやエフェクトなどを駆使したビルドアップ(=サビ前の盛り上げ部分)の作り方を紹介したいと思います。パッと聴きはシンプルに思えるビルドアップですが、実は奥が深く、作り方ひとつでサビの聴こえ方が変わるとも言われています。

 

 

2種類のスネアを個別に処理した後
まとめてフィルターやリバーブをかける

今回は16小節のビルドアップを題材に話を進めます。手順としてはまず、好みのサンプル・スネアをステップ・シーケンサーにロードし、オーディオ・エディターEdisonのピッチ検出メニューでメイン・ピッチを解析します。これを書きながら使っているスネアのピッチは“A”と解析されました。続いては、別トラックのステップ・シーケンサーにキャラクターの異なるスネアをロード。これら2種類のスネアを使い、フィルを作っていきます。

ステップ・シーケンサーからピアノロール画面を開き、4つ打ちのタイミングで打ち込んだスネアをコピー&ペーストして8小節分の長さにします。9小節目から16小節目に関しては、若干の変化を付けたいので打ち方を変更。このパターンで両方のスネアを鳴らします。

 

▲ビルドアップのスネアを鳴らすためのパターン。全16小節で、1〜8小節目には4つ打ちに相当するパターン、9〜16小節目にはより音符の数が多いパターンを打ち込んでいる

▲ビルドアップのスネアを鳴らすためのパターン。全16小節で、1〜8小節目には4つ打ちに相当するパターン、9〜16小節目にはより音符の数が多いパターンを打ち込んでいる

 

さらに手を加えていきます。スネアのChannel Setting画面を開き、右上にあるRANGEの値を24に設定。この数値は、PITCHノブでコントロールできるピッチの幅を表すもので、24なら±24半音(つまり±2オクターブ)の範囲で調整が可能です。サビへ向かうにつれてピッチが徐々に上がるよう設定したいので、PITCHノブを右クリックし“Create automation clip”を選択。すると、ピッチ・オートメーションのトラックが立ち上がるので、9小節目の頭からサビに向けてピッチを上げます。いずれのスネア・トラックにも同様の処理を施しましょう。

 

▲スネアのピッチ・オートメーション。9小節目の頭からサビに向かって、徐々にピッチが上がるよう設定している

▲スネアのピッチ・オートメーション。9小節目の頭からサビに向かって、徐々にピッチが上がるよう設定している

 

やるべきことはまだあります。各スネアをミキサーに立ち上げ、それぞれに個別のエフェクトをかけるのです。まずは1つ目のスネア。アタッキーな音ですが、もう一方のスネアと同時に鳴らしながら不要な低域(ここでは70Hz以下)をFruity Parametric EQ 2でバッサリとカットし、7kHz辺りを若干ブーストして輪郭をさらにはっきりとさせます。次にサード・パーティ製のIZOTOPE Ozone 5のImagerで低域と中域をセンターに寄せ、最後にミキサー・チャンネルのパンをLch側の10%に設定。これで、もう一方のスネアのためのスペースができます。

 

▲一方のスネアにインサートしたFruity Parametric EQ 2。低域カット&高域ブーストで輪郭を立たせているのが音作りの特徴

▲一方のスネアにインサートしたFruity Parametric EQ 2。低域カット&高域ブーストで輪郭を立たせているのが音作りの特徴

 

次にもう一つのスネア。こちらは割と音圧と残響感がある、長めの音色です。Fruity Parametric EQ 2で不要な40Hz以下をカットしながら650Hz辺りを−3dB、15kHz周辺を−2dB切ることで先のスネアが聴こえやすくなり、バランスが取れてきます。次にサード・パーティ製のコンプPSP VintageWarmerを挿し、ニーだけを少し上げて輪郭をハッキリとさせます。

 

▲もう一方のスネアに挿したFruity Parametric EQ 2。先のスネアとのバランスを取るために各帯域をカット方向で調整している

▲もう一方のスネアに挿したFruity Parametric EQ 2。先のスネアとのバランスを取るために各帯域をカット方向で調整している

 

▲スネアの輪郭を立たせるために使ったPSP VintageWarmer

▲スネアの輪郭を立たせるために使ったPSP VintageWarmer

 

次は両スネアを同一のミキサー・チャンネルへ送り、そこでさらにエフェクトをかけます。一つはフィルター。サード・パーティ製のFABFILTER Simplonを使用し、サビへ向かって徐々に低域から中低域(300Hz)が削れていくようオートメーションを描きます。それからサード・パーティ製のリバーブVALHALLA DSP ValhallaRoomをインサートし、サビへ向かって残響感が増していくようオートメーションを設定。これらの処理には、明確な意味があります。フィルターに関しては、低音〜中低音を切ることによって、サビでキックやベースが入ったときその低域がより生きるようにしているのです。リバーブについては、フィルターでローカットされて薄っぺらくなっていくスネアの迫力をキープしつつ、サビに向けて盛り上がっていく雰囲気を作っています。

 

 

スネアにフランジャーをかけて
オリジナリティをプラス

以上は多くの海外プロデューサーもやっていることですが、ここで一つ、僕独自のアレンジを加えます。まずは2つのスネアをまとめたチャンネルにFL Studio付属のEffectorを立ち上げ、フランジャーを選択。GUI左のY PARAM(中央のX/YパッドのY座標を決めるノブ)とBYPASSのオートメーション・トラックを立ち上げ、13小節目からエフェクトがアクティブになりY PARAMが徐々に上がっていくようオートメーションを設定。この処理を行うことで、スネアがサビに向かってロボットっぽい音に変わっていきます。また先ほどのリバーブとの相性も良く、より興味深いスネア・フィルになるわけです。

 

▲Effectorは、ひずみ/モジュレーション/空間系など12種類のエフェクトを備えたプラグイン。いずれかのエフェクトを選択し、中央のX/Yパッドなどで音作りを行う仕様だ。このEffectorは、FL Studio 12 All Plugins Bundle(99,990円)、FL Studio 12 Signature Bundle(パッケージ版:31,000円)、FL Studio 12 Producer Edition(24,000円)、FL Studio 12 Fruity Edition(12,800円)に標準搭載。Signature Bundle以外はbeatcloud(beatcloud.jp/)にてダウンロード購入可能だ

▲Effectorは、ひずみ/モジュレーション/空間系など12種類のエフェクトを備えたプラグイン。いずれかのエフェクトを選択し、中央のX/Yパッドなどで音作りを行う仕様だ。このEffectorは、FL Studio 12 All Plugins Bundle(99,990円)、FL Studio 12 Signature Bundle(パッケージ版:31,000円)、FL Studio 12 Producer Edition(24,000円)、FL Studio 12 Fruity Edition(12,800円)に標準搭載。Signature Bundle以外はbeatcloud(beatcloud.jp/)にてダウンロード購入可能だ

 

▲スネアにかけた各種オートメーションのトラック。一番下がEffectorのY PARAM(X/YパッドのY座標の位置を調整するパラメーター)のオートメーションで、その上がバイパスのオートメーション。共に9小節目以降からサビへ向かって変化している(ピンクの縦線よりも右側。バイパスは11小節目から解除される)。そのほかのオートメーションは、上からスネア1とスネア2のピッチ、フィルター・プラグインのフリケンシー、リバーブ・プラグインのミックス・バランスとなっている

▲スネアにかけた各種オートメーションのトラック。一番下がEffectorのY PARAM(X/YパッドのY座標の位置を調整するパラメーター)のオートメーションで、その上がバイパスのオートメーション。共に9小節目以降からサビへ向かって変化している(ピンクの縦線よりも右側。バイパスは11小節目から解除される)。そのほかのオートメーションは、上からスネア1とスネア2のピッチ、フィルター・プラグインのフリケンシー、リバーブ・プラグインのミックス・バランスとなっている

 

このフィルにスウィープやライザーなどの効果音を加えてビルドアップを完成させます。今回は、サード・パーティ製シンセLENNAR DIGITAL Sylenth1のプリセットをビルドアップ用に作り直し、ライザーとして使用。まずはスネアのピッチと合うようピアノロールにA4/A5/A6の3つのノートを打ち込みます。これらはリフレインさせて鳴らすので、それぞれの長さは1小節でOK。最初の8小節にはA4のノートを並べ、それ以降はA5からA6へと移り変わるように並べます。次にSylenth1のモジュレーション用EGをピッチ・ベンド・ホイールにかけ、アマウントのノブを右に回し切ります。そしてピッチ・ベンドの左にあるベンド・レンジを24に設定し、原音から1オクターブ上にピッチが上がるようセット。最後に、9小節目からピッチが上がっていくようオートメーションを描きます。これが済んだら、ライブラリーから好きなサンプル・スウィープを選んで入れたら完成です。

 

▲ライザーを作るのに使用したLENNAR DIGITAL Sylenth1。サード・パーティ製で、さまざまな音色を作れる優れたソフトだ

▲ライザーを作るのに使用したLENNAR DIGITAL Sylenth1。サード・パーティ製で、さまざまな音色を作れる優れたソフトだ

 

▲ビルドアップの9〜16小節目を写したスクリーンショット。Sylenth1のピッチ・ベンド・オートメーションは下段の方で、サビへ向けてピッチが徐々に上がっているのが分かる。上段の方は、ライブラリーからサンプリングしたスウィープのオーディオ

▲ビルドアップの9〜16小節目を写したスクリーンショット。Sylenth1のピッチ・ベンド・オートメーションは下段の方で、サビへ向けてピッチが徐々に上がっているのが分かる。上段の方は、ライブラリーからサンプリングしたスウィープのオーディオ

 

EDMの場合、サビのリフをコピーしてフィルターをかけ、それをループさせたものをビルドアップに入れたりもします。またホワイト・ノイズで高域を補ったり、クラップでリズム感を強めることも。今回の技は基本なので、自分流の色を加えて理想のビルドアップを手に入れましょう。

 

FL Studio シリーズ・ラインナップ

FL Studio 12 All Plugins Bundle(99,990円)
FL Studio 12 Signature Bundle(パッケージ版のみの販売:31,000円)
FL Studio 12 Producer Edition(24,000円)
FL Studio 12 Fruity Edition(12,800円)

<<<Signature Bundle以外はbeatcloudにてダウンロード購入可能>>>

 

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