DJ Myosukeが使う「FL Studio」第2回

ミュージシャンが使うFL Studio by DJ Myosuke 2017年7月7日

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ガバ・キックを応用したサウンド
“トリック”について

DJ Myosukeです。先月から始まった僕の連載ですが、読者の方々から反響があると聞き、大変うれしく思っております。ありがとうございます。今回は、ガバ・キックと同様にハードコア特有の音使いである“トリック”などを取り上げます。トリックとは、キックのパラメーター変化を用いたサウンド。うねるような音で、FX的にも聴こえます。連載の題材にしている曲「Hardsound Primary(SRM Edit)」(https://soundcloud.com/sound-7/dj-myosuke-hardsound-primary-srm-edit)でも頻繁に登場し、00:38辺りが分かりやすいと思うので、ぜひ聴いてみてください。

 

 

フィルターのレゾナンスを最大にして
カットオフを動かしまくる

前回説明した通り、僕はガバ・キックを専用のプロジェクトで作っています。ひずみやEQなどのエフェクトを大量に使うので、CPU負荷を考慮し、曲全体のプロジェクトから切り離しているわけですね。トリックを作るときも、まずはこのキック用プロジェクトを開きます。キックの音源は、サード・パーティ製ドラム・シンセSONIC CHARGE MicroTonicを使っています。このMicroTonicを複製し、ミキサーの新しいチャンネルに入力。そのチャンネルの出力をオリジナルと同じシグナル・パス(ひずみなどを含むエフェクト・チェイン)に設定します。しかしこのままではオリジナルの完全なコピー。そう、トリックの音作りはここからが本番なのです!

 

▲ガバ・キックの音源として使用しているサード・パーティ製のドラム・シンセ、SONIC CHARGE MicroTonicは、トリックの素材としても活躍している

▲ガバ・キックの音源として使用しているサード・パーティ製のドラム・シンセ、SONIC CHARGE MicroTonicは、トリックの素材としても活躍している

 

▲トリック用のMicroTonicはCh 1“kick trick”に立ち上げていて、ガバ・キックと同じシグナル・パス(赤枠)へと送っている。前回紹介した通り、これらのチャンネルにはひずみなどのエフェクトがてんこ盛りだ

▲トリック用のMicroTonicはCh 1“kick trick”に立ち上げていて、ガバ・キックと同じシグナル・パス(赤枠)へと送っている。前回紹介した通り、これらのチャンネルにはひずみなどのエフェクトがてんこ盛りだ

 

やり方を大まかに説明すると、複製してできたチャンネルにエフェクトを挿し、好みの音色になるまで調整するというものです。サード・パーティ製のひずみエフェクトCAMEL AUDIO Camel Crusherをはじめ、FL Studioに標準装備のFruity FilterやFruity Compressor、Fruity Parametric EQ 2などを用いましたが、それぞれを行き来しつつ音作りしているので、細かい手順は覚えていません(笑)。というわけで、一番のキモである“Fruity Filterさばき”にフォーカスして説明します。

パラメーターは、フィルター・タイプをバンドパス、レゾナンスをマックスに設定。この状態でカットオフ周波数にオートメーションを描き4つ打ちを鳴らすと、“ぎゅわん”といったうねりのあるサウンドが得られます。カットオフのポイントは、レゾナンスでガンガンに音量が上がっているため、後段のエフェクト・チェインで最も激しくひずみます。そこが絶えず動くため、うねりのように聴こえるわけです。カットオフを動かす範囲は、200Hz〜1kHz辺りが基本。あまりに低過ぎたり高過ぎたりすると、おいしい倍音が出にくくなるので要注意です。そしてオートメーションの設定が終わったら、オーディオに書き出して曲のプロジェクトで使えるようにしましょう。

 

▲見よ! このレゾナンスの極端な設定(赤枠)。Fruity Filterのレゾナンスを最大値にセットし、左側のカットオフをオートメーションで動かすのが筆者流のトリックだ

▲見よ! このレゾナンスの極端な設定(赤枠)。Fruity Filterのレゾナンスを最大値にセットし、左側のカットオフをオートメーションで動かすのが筆者流のトリックだ

 

▲Edisonは、任意のチャンネルに立ち上げて使用するオーディオ・レコーダー/エディターだ。筆者はマスターにインサートしておくことが多く、チャンネルの出力を録音&編集しサンプル化。そのプロセスは簡単で、右上の矢印アイコン(赤枠)をプレイリストや対応デバイスにドラッグ&ドロップするだけだ。なお、EdisonはFL Studio 12 Signature Bundle(パッケージ版:31,000円)をはじめ、beatcloud(beatcloud.jp/)にてダウンロード販売されているFL Studio 12 All Plugins Bundle(99,990円)やFL Studio 12 Producer Edition(24,000円)に付属。FL Studio 12 Fruity Edition(12,800円)には含まれていない

▲Edisonは、任意のチャンネルに立ち上げて使用するオーディオ・レコーダー/エディターだ。筆者はマスターにインサートしておくことが多く、チャンネルの出力を録音&編集しサンプル化。そのプロセスは簡単で、右上の矢印アイコン(赤枠)をプレイリストや対応デバイスにドラッグ&ドロップするだけだ。なお、EdisonはFL Studio 12 Signature Bundle(パッケージ版:31,000円)をはじめ、beatcloud(beatcloud.jp/)にてダウンロード販売されているFL Studio 12 All Plugins Bundle(99,990円)やFL Studio 12 Producer Edition(24,000円)に付属。FL Studio 12 Fruity Edition(12,800円)には含まれていない

 

さて、この手法は2000年代から存在しています。最近はXFER RECORDS Serumなどの派手な音が出るサード・パーティ・シンセで代用するパターンが増えていますが、僕は断然キック+エフェクト派。ガバ・キックと似た音に仕上がるため、唐突に出てくる感じがしないし、むしろひとつの楽器がフィルとして活躍しているような雰囲気を作れるからです。

 

 

声ネタのチョップ&再構築には
Slicexがとても便利

題材曲には、幾つかの声ネタが含まれています。声はハードコアの大事な要素で、ヒップホップのMCなどをチョップしたものがよく使われています。ここからは、曲の冒頭などで聴けるキャッチーな声ネタについて解説します。

素材として使ったのは、サード・パーティ製のライブラリーから取ったボイス・サンプル。ファイル・テンポが96BPMだったので、曲のテンポである175BPMに合うようプレイリスト上でストレッチをかけ、FL Studioのオーディオ・エディターEdisonへインポートしました。ここに読み込んだのは、ストレッチの情報が反映されたオーディオをほかのデバイス(今回は後述するサンプラーのSlicex)で扱うため。一度読み込めば、ドラッグ&ドロップなどの操作により、対応したロケーションもしくはデバイスへオーディオとしてエクスポートできます。

Slicexに読み込んだ声ネタはアタックが検知され、そのタイミングで自動的に断片化されます。検知精度は完ぺきではないものの、スライス・ポイントを調整することができるため、イチからハサミを入れるよりもずっと効率的。また声の断片にはMIDIノートが割り振られるので、ピアノロールで鳴らせるようになります。スライス・ポイントの微調整が済んだら、ピアノロールに適当なパターンを打ち込んで声の断片をトリガー。パターンによっていろいろなフレーズが出てきて面白いですよ。

 

▲Slicexのアタック検知機能で断片化されたオーディオ(赤枠)。スライス・ポイントは黄色い縦線で表示され、位置を微調整できる。断片化された音は、すぐ下にあるグラフィックのキーボードやSlicexのチャンネルのピアノロールにオートでアサインされるため、MIDIキーボードなどで演奏することが可能だ

▲Slicexのアタック検知機能で断片化されたオーディオ(赤枠)。スライス・ポイントは黄色い縦線で表示され、位置を微調整できる。断片化された音は、すぐ下にあるグラフィックのキーボードやSlicexのチャンネルのピアノロールにオートでアサインされるため、MIDIキーボードなどで演奏することが可能だ

 

パターンだけでなく音響的な部分にも工夫を凝らしています。例えばパン。各ノートがおおよそ交互に左右へ振れるよう、ピアノロール上で設定しました。ピアノロールでの音作りと言えば、ピッチも便利です。例えばビルド・アップなどで声ネタのピッチを上げていくと、シンセの上昇音のように聴かせることができるのです。こうしたMIDIのコントロールに加え、エフェクトも大活躍。先ほどのトリックと同様にFruity Filterとひずみエフェクトを組み合わせ、うねるようなサウンドにしています。ひずみエフェクトはFruity Fast Distを使っていますが、その前段(Fruity FilterとFruity Fast Distの間)にVocodexを挿し、高域にシュワっとした成分を与えているのもポイント。そして最後にFruity Parametric EQ 2をかけて完成です。Fruity Filterでローパス・フィルターを選んでいて、抜けが悪く感じたため高域を増やしておきました。

 

▲ノートはSlicexを鳴らすためのもので、その下にはパンのMIDIデータがある(赤枠)。あまり深く考えずに、おおよそ交互に左右へ振れるようパンニングを設定するのが筆者のやり方

▲ノートはSlicexを鳴らすためのもので、その下にはパンのMIDIデータがある(赤枠)。あまり深く考えずに、おおよそ交互に左右へ振れるようパンニングを設定するのが筆者のやり方

 

今回もハードコアらしい音使いを紹介しましたが、いかがでしたか? 来月は“スクリーチ”や“スクラッチ”といった上モノについて解説できればと思います。

 

 

FL Studio シリーズ・ラインナップ

FL Studio 12 All Plugins Bundle(99,990円)
FL Studio 12 Signature Bundle(パッケージ版のみの販売:31,000円)
FL Studio 12 Producer Edition(24,000円)
FL Studio 12 Fruity Edition(12,800円)

<<<Signature Bundle以外はbeatcloudにてダウンロード購入可能>>>

 

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