MKが使う「FL Studio」第3回

ミュージシャンが使うFL Studio by MK 2017年6月16日

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ドロップ前じわじわ効く
“ピッチ・アップFX”の作り方

こんにちは、トラック・メイカーのMKです。今回は編集部から“EDMのFX(効果音)をテーマに解説してください”というお題が出たので、ドロップ(サビ)前のピッチ・アップFXを題材にしてみます。

 

 

“ぴゅんぴゅん”鳴るシンセ音は
ピッチ・エンベロープがポイント

ピッチ・アップFXは、ドロップの前でリスナーのテンションをじわじわと上げていくための音です。徐々にピッチが上がるシンセのフレーズ、と言えば分かりやすいかもしれません。そう! あの“ぴゅんぴゅんぴゅん……”というフレーズですね。ピッチの上昇とともに気分も高揚してくるので、ドロップの頭でキックが入ってくると気持ち良さもひとしおです。シンセのフレーズが支配的なピッチ・アップFXですが、実はほかの音と一緒に鳴っている場合がほとんど。同時に鳴らすものとしては、ホワイト・ノイズのスウィープやスネアのロールが挙げられます。

 

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▲3オシレーターのシンセ3X OSCはFL Studio 12 All Plugins Bundle(99,990円)、FL Studio 12 Signature Bundle(パッケージ版:31,000円)、FL Studio 12 Producer Edition(24,000円)、FL Studio 12 Fruity Edition(12,800円)に標準搭載。Signature Bundle以外はbeatcloud(http://beatcloud.jp/)にてダウンロード購入可能だ。3X OSCは、各オシレーターでサイン/三角/矩形/ノコギリ/丸みのあるノコギリ/ノイズの6種類の波形を切り替えて鳴らせるほか、オーディオ・サンプルの読み込みにも対応している

 

▲“ぴゅん”という音は、ピッチが急激に下がるようピッチ・エンベロープを描くことで得られる。アタック/サステイン/リリースを0msに設定し、うまく“ぴゅん”と鳴らせるまでディケイを調整してみよう

▲“ぴゅん”という音は、ピッチが急激に下がるようピッチ・エンベロープを描くことで得られる。アタック/サステイン/リリースを0msに設定し、うまく“ぴゅん”と鳴らせるまでディケイを調整してみよう

 

ここではまず、シンセ・フレーズの作り方を解説します。使用するシンセは、FL Studioに標準搭載の3X OSC。3つのオシレーターを備えていて、それぞれに6種類の波形が用意されています。基本的な音色は曲によって変えて良いと思うのですが、あまり複雑にするよりはシンプルな音の方が抜けてくるでしょう。音作りのポイントはピッチ・エンベロープの設定。すべてのインストゥルメント・チャンネルに付いている画面“Miscellaneous Channel Settings”(以下、MCS)でアタック・タイムを0msに設定し、ディケイはかなり短め、サステインとリリースは0msに設定します。そうすると、ディケイのポイントだけがトガったようになりますね。これにより、あの“ぴゅん!”という音が得られるのです。海外のEDMでもよく聴かれますが、僕は最初作り方が分からず、試行錯誤を繰り返した覚えがあります。

さて基本的な音色ができたら、曲のキーに合ったノートをピアノロールへ打ち込みます。それからMCSのアルペジエイターでシーケンスを作成。アルペジオの音域を1オクターブ、リピート回数を最小値の2回に設定した上で、“TIME”ツマミを回しながら8分音符のノートが等間隔で鳴るようにします。これで“ぴゅんぴゅんぴゅん……”というシーケンスができました。しかしこのままだと同じピッチで鳴り続けるだけなので、MCSのPITCHツマミにオートメーションを描き、徐々に上がっていくよう設定。曲によりけりですが、4小節や8小節の間に2オクターブ上がるよう描くことが多いです。

 

▲シンセの音は、Miscellaneous Channel Settingsのアルペジエイター(ピンク枠)で鳴らす。アルペジオと言っても“ぴゅん”という音色を繰り返すだけのシンプルなものなので、アルペジオの音域を表す“Range”は1オクターブ、パターンを繰り返す数の“Repeat”は最小値の2に設定しておく

▲シンセの音は、Miscellaneous Channel Settingsのアルペジエイター(ピンク枠)で鳴らす。アルペジオと言っても“ぴゅん”という音色を繰り返すだけのシンプルなものなので、アルペジオの音域を表す“Range”は1オクターブ、パターンを繰り返す数の“Repeat”は最小値の2に設定しておく

 

そしてさらに、MCSのローパス・フィルターのカットオフ周波数にもオートメーションを設定。ピッチの上昇とともにトーンが明るくなるようにすることで、高揚感を強めるわけですね。また最初からカットオフ周波数が高いと、存在感があり過ぎて浮いてしまうため、うるさく聴かせないためにもフィルターは有効です。

 

 

3X OSCでノイズを作成し
Direct Waveにインポート

次はホワイト・ノイズのスウィープを作成。素材としてサンプリングCDなどのオーディオを使う人も居ますが、ストレッチすると音質が落ちてしまうため、僕は3X OSCで作ることが多いです。FXは装飾的なパートですが、あなどってはいけません。ドロップの前ではむしろ主役級に目立つので、ローファイな質感を狙うのでなければ音質への気配りは大事です。またこうしたFXは、オーディオ・サンプルよりもシンセを用いた方が作り込みやすく、オケによくなじむ気もします。

作業の流れとしてはすべてのオシレーターでノイズを選択し、白玉のノートで鳴らします。それからオーディオ・レコーダー/エディターのEdisonをミキサーの任意チャンネルに立ち上げて録音。中央の“Waveform View”に録り音の波形が現れるので、前後の空白の部分をカットして完全にノイズだけの状態にします。そして波形を右クリックし、“Regions”→“Set loop”という順にメニュー選択してループ再生してみましょう。

 

▲オーディオ・レコーダー/エディターのEdison。取り込んだ音(今回の場合はノイズ)のエディットを終えた後、波形上で右クリックし“Regions”→“Set loop”(ピンク枠)を選択するとループ再生することができる

▲オーディオ・レコーダー/エディターのEdison。取り込んだ音(今回の場合はノイズ)のエディットを終えた後、波形上で右クリックし“Regions”→“Set loop”(ピンク枠)を選択するとループ再生することができる

 

こうして出来上がったノイズ・ループを聴いていると、ややピッチ感が低い印象。しかし3X OSCではノイズのピッチを変えられないので、Edisonの内蔵EQで中域以下をカットし、高域成分のみを残すことで“聴感上高く思える音”を作ります。オーディオのピッチ・トランスポーズはNGなの?と言われそうですが、そうすると音質が下がってしまうため、EQで対処しているのです。

 

▲Edisonの内蔵EQでノイズの3kHz辺りから下を切り、聴感上ピッチが高く聴こえるよう加工。幾らノイズとは言え、オーディオのピッチ・トランスポーズで上げると音質が落ちるため、EQを使っている

▲Edisonの内蔵EQでノイズの3kHz辺りから下を切り、聴感上ピッチが高く聴こえるよう加工。幾らノイズとは言え、オーディオのピッチ・トランスポーズで上げると音質が落ちるため、EQを使っている

 

音の重心が上がったところで、今度はEdison内のオーディオ波形をFL Studioの標準搭載サンプル・プレーヤーDirect Waveにドラッグ&ドロップでインポートし、ピアノロールで打ち込める状態にします。それから先の3X OSCをミュートするか削除して、ピアノロールにスウィープの頭のノートを入力。僕はなるべく低い音から始めたい方なので、いつもC0を頭にしています。続いてはピアノロールの“Slide”ボタンをONにした状態で、スウィープの最後のノートを入力。そうすれば頭のノートから最後のノートまでピッチが滑らかに上がっていきます。ピッチ・オートメーションを描くより簡単なのでオススメですよ! 以上でスウィープができたわけですが、仕上げにリバーブをかけたりすると周囲の音になじみます。

 

▲ノイズは標準搭載のサンプル・プレーヤーDirect Waveにインポート。これでピアノロールでの打ち込みが行えるようになる

▲ノイズは標準搭載のサンプル・プレーヤーDirect Waveにインポート。これでピアノロールでの打ち込みが行えるようになる

 

▲Direct Waveを立ち上げたチャンネルのピアノロール。ノイズ・スウィープの最後のノートは“Slide”ボタン(ピンク枠)をアクティブにした状態で入力する。これにより、一つ前に打ち込んだノート(この場合はスウィープの頭の音)からスライドするような滑らかなピッチ変化が得られる

▲Direct Waveを立ち上げたチャンネルのピアノロール。ノイズ・スウィープの最後のノートは“Slide”ボタン(ピンク枠)をアクティブにした状態で入力する。これにより、一つ前に打ち込んだノート(この場合はスウィープの頭の音)からスライドするような滑らかなピッチ変化が得られる

 

ここまで来ればもう簡単。あとはスネアのロールを打ち込むだけです。素材は何でも良いと思いますが、僕はオーディオ・サンプルをSampler Channel(チャンネルへ自動的に立ち上がるサンプラー)に読み込んで、最初は8分音符の刻み、それから16分→32分と譜割を細かくしていきドロップへつなぐことが多いです。ドロップ直前には先月紹介した“Pryda Snare”を入れましょうね!

さて次回で僕の連載はいったん終了。締めとして、標準搭載音源の活用法にフォーカスしたいと思います。

 

FL Studio シリーズ・ラインナップ

FL Studio 12 All Plugins Bundle(99,990円)
FL Studio 12 Signature Bundle(パッケージ版のみの販売:31,000円)
FL Studio 12 Producer Edition(24,000円)
FL Studio 12 Fruity Edition(12,800円)

<<<Signature Bundle以外はbeatcloudにてダウンロード購入可能>>>

 

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