C-Showが使う「FL Studio」第3回

ミュージシャンが使うFL Studio by C-Show 2017年5月19日

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リズム隊をレベル・アップさせる
細やかな工夫の数々

こんにちは、トラック・メイカーのC-Show(シショウ)です。今回は、僕が普段FL Studio上で実践しているリズム隊のサウンド・メイクにフォーカス。4つ打ちのハウス系トラックを想定して話を進めます。

 

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▲本稿は、FL Studio上でVENGEANCE SOUNDのサンプルを使いながら作成。まずはキック(最上段)やクラップ(上から2段目)から入力した

 

Fruity Stereo Enhancerを使う
クラップのレイヤー技

リズム隊の音作りの際、最初に手を着けるのはキックです。処理の内容は音色などによっても異なりますが、キックとベースがいずれもリリースの長い音の場合、同じタイミングで鳴らしたときに低域が濁りがちです。そこで活躍するのがコンプ。両者にインサートし、リリースの膨らみを抑えるわけですね。僕はWAVES Renaissance Axxをよく使っていて、キックに関してはアタック・タイムを40ms前後に固定しつつ、スレッショルドとアウトプット・ゲインで音作りします。この“40ms”は、120〜130BPMのハウスにおいて、キックに適していると感じる値。いい具合にアタックを立たせることができるんです。コンプの調整が済むと、その前段にEQを挿して30〜50Hzをブースト。これにより、歯切れが良いけれど低域の充実したキックが得られます。後段にコンプがあるので、ある程度持ち上げてもモッサリしにくいのが特徴。30Hz前後は温かみ、50Hz周辺は腰に来る成分なので、音作りの際はその辺りがスカスカにならないよう注意しましょう。ベースについても同様の処理でいいと思いますが、コンプの代わりにWAVES Trans-Xのようなトランジェント・シェイパーを使うのも手です。

 

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▲WAVES Trans-Xはマルチバンド仕様で、狙った帯域のトランジェントをコントロールできる。ちなみにFL Studioは今年から、WAVES製品の正式な対応ホスト・アプリケーションとしてリストアップされた

 

と、ここまで言っておいて何ですが、僕はキックをある程度処理した後、ベースではなくクラップに着手することがほとんど。スタンダードに小節の2拍目と4拍目に打ち込むほか、それらとは別途“2拍目のちょっと前/4拍目のちょっと前”に異なるクラップを入力します。こうすればキックが発音する手前でクラップが鳴り始めるので、抜けが良く聴こえるのです。ただし注意したいのは音色。アタッキーなクラップを使うと二度鳴りして聴こえるため、“ぱしゃ〜”といったようなアタック感の薄い音を選びましょう。またこのクラップにFL Studio標準搭載のFruity Stereo Enhancerを挿し、ステレオ幅を広げても面白い。存在感を強めることができます。こうしたクラップのレイヤーは、最近流行していると思います。また今日びこのくらいは処理しておかないと、イナタく感じられる気がするので、やったことがない人は試してみてください。

 

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▲抜けを作るためのクラップの位置。画面は2拍目のちょっと手前に入力されたクラップのノートで、ジャスト2拍目(ピンク枠)よりも16分音符分手前に打ち込まれている

 

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▲Fruity Stereo Enhancerは、ステレオ幅を調整するためのプラグイン。GUI左の“STEREO SEP”(ステレオ・セパレーション)を使ってもステレオ幅を調整できるが、今回筆者は中央のPHASE OFFSETでLchの位相をズラし、広がりを作った

 

 

リズム・ミックスのループを
トラックの“背景”として使用

クラップの次はハイハット。基本的にはワンショットのサンプルを使ってイチからパターンを組みますが、リズム・ミックス(ハイハット+クラップなど)のオーディオ・ループを取り入れることもありす。“背景”のような感じでうっすらと鳴らし、ドラム・トラックに厚みを持たせるんですね。存在感があるとゴチャゴチャして聴こえるので、標準搭載のマキシマイザーMaximusをかけるなどして、アタック感を抑えておくのがポイント。またさっきのFruity Stereo Enhancerでステレオ幅をセンターに寄せ、さらにこぢんまりさせておきます。ここにWAVES Aphex Vintage Aural Exciterなどをかけたハイハットが重なると、前後の対比というか、奥行きのある音像となるわけです。ちなみに先のループと同様“地味”な音色にするパーツと言えば、ライドもその一つ。ホワイト・ノイズ的な要素以外はあまり必要ないと思うので、コンプやトランジェント・シェイパーでアタックを抑えておきます。

 

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▲リズム・ミックスのループにインサートしたMaximus。シングル・バンドのリミッターとして使用し、アタックを抑えている

 

そのほかの打楽器に関しては、スネアやROLAND TR-808系のカウベルなどをアクセント的に使用。ただしパーカッション類のワンショットは選択肢が多く、“どういうものを選べばいいのか分からない”という人も居るでしょう。まずタムのようにボンボン鳴る音については、キックやベースの邪魔になりそうなら使わない方がベターです。一方カウベルのような高域系のパーカッションは低音楽器とぶつかりにくく、音量が小さくてもよく抜けるので、うまく使えばトラックの面白みがグッと増します。パーカッションにFruity Delay 2などをかけ、リズムに変化を加えてもいいでしょう。

 

▲ステップ・シーケンサーの画面(上)は、2種類のパーカッションのリズム・パターン。これらのうち下段のカウベル系音色にFruity Delay 2(下)を挿し、タイミングに変化を与えている

▲ステップ・シーケンサーの画面(上)は、2種類のパーカッションのリズム・パターン。これらのうち下段のカウベル系音色にFruity Delay 2(下)を挿し、タイミングに変化を与えている

 

 

マスタリングでは
全3系統のMaximusを使用

以上のようにリズム隊を作り込むわけですが、低音楽器のリリースなどがきちんとコンプレッションできていれば、マスターの音圧がとても上げやすくなります。近ごろは質の高いマキシマイザーも増えているので、ミックス時に音圧のことを考慮する必要はあまりないと思いますが、参考までに僕のマスタリング手順を紹介しましょう。

 

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▲ミキサーのマスター・スロット。Maximus(マルチバンド・コンプ用途)→WAVES SSL G-Master Buss Compressor→Maximus×2(リミッティング用途)が定番ルーティングだ。ちなみに最前段に挿したFABFILTER Pro-QはOFFの状態

 

①マルチバンドのダイナミクス・エフェクト(Maximusなど)で出っ張っている帯域を抑える
②バス・コンプのWAVES SSL G-Master Buss Compressorで分離を良くする
③マキシマイザー(Maximusなど)で音圧を上げる

 

まずは①に関して。クラブ系の曲は概して低域が一番出ているものですが、実は200〜500Hzの量に個人差が出ると思います。この帯域をうまく抑えれば抜けが良くなるので、Maximusで処理したり、M/Sに対応したプラグインでサイド成分の200〜500Hzを下げるなどします。②のSSL G-Master Buss Compressorは、通すと全体的にスッキリするのでよく使っています。③のマキシマイザーについては、音量のピークをならすためのもの/しっかりとかけて音圧を上げるためのものの2つを用意し、“二段がけ”するのがオススメ。後者はシーリングを−0.2〜−0.1dBに設定しておくと、MP3などへ変換した際、音にひずみ感が出にくいと言われています。

 

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▲最後に二段がけするMaximusのうち、前段のもの。リミッティングの度合いを表すグラフィックから分かる通り(ピンク枠)、ピークを軽くならすための用途だ。なおMaximusはFL Studio 12 Signature Bundle(パッケージ販売)とFL Studio 12Producer Editionに標準搭載されている。FL Studio 12 Producer Editionはbeatcloudにてダウンロード販売中(https://beatcloud.jp/

 

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▲最終段のMaximus。前段でピークをならしておいたからこそ、これだけガッツリかけても音に無理な感じが出ない。なおシーリングのパラメーター(音量の“天井”。ここで設定した音量を超えることは、基本的には無い)は−0.2〜0.1dBにしておくのがポイント

 

 

FL Studio シリーズ・ラインナップ

FL Studio 12 All Plugins Bundle(92,583円)
FL Studio 12 Signature Bundle(パッケージ版のみの販売:31,000円)
FL Studio 12 Producer Edition(22,222円)
FL Studio 12 Fruity Edition(11,852円)

<<<Signature Bundle以外はbeatcloudにてダウンロード購入可能>>>

 

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