Maozonが使う「FL Studio」第2回

ミュージシャンが使うFL Studio by Maozon 2017年4月14日

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ASYのリミックスでも大活躍した
標準装備のプラグイン・エフェクト

前回はIMAGE-LINE FL Studio でのパターン作成について解説しましたが、今回のテーマは音作りに欠かせない標準装備のプラグイン・エフェクトです。アルバムASY『Repackage “#Zero_ASY”~S.T.A.R.S.~ 』の中の1曲「young, poor, fabulous(Maozon Remix)」で使ったものを取り上げ、その活用方法を紹介していきます。

 

マルチバンドのマキシマイザーで
特定帯域のステレオ幅を調整

僕がよく使っているエフェクトの一つにMaximus Multiband Maximizer(以下、Maximus)が挙げられます。もちろん「young, poor, fabulous(Maozon Remix)」の制作でも活躍しました。これは3バンド+マスターのマキシマイザーなのですが、僕は特定の帯域を強調するためのEQ的なツールとして使っています。この曲ではNATIVE INSTRUMENTS Massiveで作ったシンセ・ベースなどに使用し、低域やビキビキと鳴る高域の音圧を上げました。Maximusにはリミッティングのほかにも面白い機能が用意されていて、中でもステレオ左右の広がりを調整できるパラメーター“Stereo Separation”が出色です。原音がセンターにしか定位していない場合は広げられませんが、デチューンさせたシンセ音や、リバーブをかけた音に対しては効果的。この曲ではローエンドを担うためのベースなどに使っています。

 

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▲筆者がオーセンティックなエレクトロ・ハウスを意識し制作した「young, poor, fabulous(Maozon Remix)」。画面は、歌の無い部分で登場するアップリフティングなベースのピアノロールと、そのチャンネルにインサートしたMaximus Multiband Maximizer。ステレオ幅を広げたり狭めたりできる“Stereo Separation”(赤枠)が便利

 

ちなみに僕は、一つのベース・フレーズを“ローエンド用”と“中高域用”の2つのチャンネルに分けて鳴らすことがよくあります。実は先述のビキビキとしたベースも、ローエンドだけを鳴らした同じパターンとレイヤーしているんです。フレーズ作りに使ったMassiveは、高域を強調した音と低音を1台の中で重ねようとすると、高い部分が抜けにくくなります。周波数バランスを取るための特性なのかもしれませんが、この曲ではビキビキとした成分を前に出したかったので、ローエンド用のチャンネルを別途用意したわけです。また1つのベース・フレーズを複数の帯域に分けておくと、音色調整の自由度が上がると思います。例えば高域だけに何かしらのエフェクトをかけたい場合、全帯域をまとめて鳴らしていると中域や低域にまで効果がかかってしまいますが、帯域分けしておくと目的の部分のみをピンポイントに処理することが可能です。

 

さまざまなプラグインを使って
ステレオ・イメージをコントロール

先ほどMaximusを使ったステレオ幅の調整について解説しましたが、FL Studioにはステレオ幅のコントロールに特化したFruity Stereo Enhancerというツールが備えられています。これはインサートしたチャンネルのL/Rの位相をズラすことによりステレオ効果を増大させるもので、パッドのように空間的な広がりを持たせたいサウンドや“ちょっと前に出過ぎているかな?”という音に使っています。この曲では、ボーカルと一緒に鳴っているシンセ・リードに使用しました。歌を主役に据えつつも、リードをきちんと聴かせたかったからですね。

 

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▲Fruity Stereo Enhancerでは入力ソースのL/Rの位相をズラすことにより、ステレオ感を強めることができる。右のピアノロール画面は、このFruity Stereo Enhancerを使用したシンセ・リードのもので、NATIVE INSTRUMENTS Massiveで作られたサウンドが左右に広げられている。センターに定位したボーカルとの干渉を防ぐためで、楽曲の00:45前後などで聴くことが可能だ

 

ステレオ幅の調整と言えば、標準装備のプラグイン・ディレイ=Fruity Delay Bankのパラメーター“SEP”(Separation)を使ってフィードバック音を広げることもあります。僕はもともとトランスなどからダンス・ミュージックに入ったので、空間的な広がりを持つサウンドが好きなんですね。FL StudioにはFruity Delayというプラグインも用意されていますが、僕は複雑な効果の得られるFruity Delay Bankを使うことがほとんどです。8つのディレイ・モジュールをつなげて音作りできるほか、内蔵フィルターでより凝った響きを作れるのが魅力です。フィルター・タイプはローパスやハイパス、ノッチなど全7種類となっており、それぞれで3種類のスロープを選んで使用可能。ディレイ・タイムを秒数ではなく音価(音符の長さ)で設定できるのも分かりやすくて良いですね。

 

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▲Fruity Delay Bankは、8つのディレイ・モジュールやフィルターを統合したプラグイン。GUIの左から右にかけて、信号の流れに沿った配列で各種セクションが並んでいる。フィルター・タイプはローパス/バンドパス/ノッチ/ハイパス/ローシェルフ/ピーキング/ハイシェルフの7種類から選択可能。ディレイ成分は“FEEDBACK”セクションでコントロールでき、ディレイ・タイムやL/Rchの出力タイミング、ステレオ感の調整などが行える。“FB FILT”セクションでは、ディレイ音にフィルターをかけることが可能。そのほかディレイ音を切り刻んで複雑な効果を生み出す“GRAIN”セクションなどもある

 

なお僕は普段、ディレイをインサートで使っています。エフェクトも“楽器の音”としてとらえているため、ディレイに関しても複数の楽器をセンドするのではなく、各パートに固有の設定を用意します。なのでおのずと各パートのチャンネルにインサートして使うことになるわけです。

プラグイン・フィルターのFruity Filterもフェイバリットの一つ。この曲ではシンセ・パッドにローパス・フィルターをインサートし、時間軸に沿ってカットオフ周波数が徐々に上がっていくようオートメーションを書きました。こうした音使いもトランスに多いと思いますが、ボリューム・オートメーションとは別のニュアンスでダイナミクスを付けられるので気に入っています。オートメーションの作成方法はとても簡単で、動かしたいパラメーターを右クリックするとメニューが現れます。あとはピアノロール上で作成するか、プレイリスト上に書いていくかなど方法を選ぶだけで作業に移れます。

 

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▲シンセ・パッドに使ったFruity Filter。ローパス/バンドパス/ハイパスの各種フィルターの出力にかかるアマウント(量)をツマミで調整できるのが特徴。この画面では、完全にローパスの状態となっている

 

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▲FL Studioの標準搭載デバイス(音源やエフェクト、ミキサーなど)では、オートメーションを書きたいパラメーターの上で右クリックするとオートメーション用のメニューが出現する

 

そのほか、僕のプロダクションではサイド・チェイン・コンプも重要なエフェクト手法。効果を作るにあたっては、シングル・バンドのコンプ/リミッターFruity Limiterが活躍しています。サイド・チェイン・コンプが最も効果を発揮するのは、やはりキックとベースのすみ分け。キックが発音した瞬間にベースがうっすらとリダクションされるよう設定しています。キック以外のものをソースにすることもあり、この曲ではフィルで“ターン!”と鳴るスネアを使いベースをコンプレッション。というわけで、ベース・チャンネルには幾つかのFruity Limiterが挿さっているのですが、GUIの“SIDECHAIN”欄に入力ソースが数字で表示されるため、何を使ってコンプレッションしているのかが視認しやすくなっています。

 

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▲ローエンド用のベースにインサートされたFruity Limiter。キックをソースとしたサイド・チェイン・コンプがかけられている。GUI上の“SIDECHAIN”欄(赤枠)にはキー・インされているソースが数字で表示され、画面の“1”はキックを表している

 

さて、次回はFL Studioで追加で購入できるツール(デモ版として収録)を紹介したいと思います。

 

FL Studio シリーズ・ラインナップ

FL Studio 12 All Plugins Bundle(92,583円)
FL Studio 12 Signature Bundle(パッケージ版のみの販売:31,000円)
FL Studio 12 Producer Edition(22,222円)
FL Studio 12 Fruity Edition(11,852円)

<<<Signature Bundle以外はbeatcloudにてダウンロード購入可能>>>

 

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