エンジニア鎌田岳彦とクリエイターnishi-kenがGENELECアクティブ・モニター 4機種を徹底試聴

マガジン連動 by 編集部(撮影:八島崇) 2016年2月29日

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 1978年の創立以来、アクティブ・モニター設計/生産の先駆者として、さまざまな製品を世に送り出して来たGENELEC。近年は、DSPを搭載したSAM(Smart Active Monitor)システムを内蔵する製品のラインナップが主流となってきている。GENELECのSAMシステムとは、専用のインターフェース、マイク、パソコン、スピーカーを接続し、測定信号を解析することで、設置環境にマッチした音場を作り上げてくれる機能。SAMシステム内蔵のスピーカーはサイズ違いでさまざまな製品をラインナップしている。

 今回は、オタリテックの試聴室にエンジニア鎌田岳彦氏とクリエイターnishi-ken氏を迎え、アナログとDSP搭載モデル4機種を試聴してもらった。試聴したのは、2ウェイ5インチの8030Bと同サイズでDSPを搭載した8330A。そして、3ウェイで同軸ドライバーを採用したダブル・ウーファーの8351Aと10インチの826
0A。音源ソースは、鎌田氏がスタジオ一発録りしたジャズ系インスト・ナンバーの24ビット/96kHzのファイル。nishi-ken氏は『APPLESEED ALPHA ORIGIN
AL SOUNDTRACK』に収録された自身のエレクトリックなナンバー「Acceleration」のCD音源をそれぞれ用意した。アナログはプリアンプから、DSP搭載機はAES接続し、専用のGLMソフトで、試聴室に合わせたDSP補正をして試聴。各モデルの特徴や用途について語ってもらった。それでは早速、試聴後の対談の模様をお届けしよう。

 

▲専用インターフェースを使用してスピーカーをネットワーク接続して構築するSAMシステムは、画面のGLM(GENELEC Loudspeaker Manager)ソフトを使用して、ネットワーク内のスピーカーを制御。専用マイクを使い、環境に合わせた音響特性の補正(AutoCalシステム)などが行える

▲専用インターフェースを使用してスピーカーをネットワーク接続して構築するSAMシステムは、画面のGLM(GENELEC Loudspeaker Manager)ソフトを使用して、ネットワーク内のスピーカーを制御。専用マイクを使い、環境に合わせた音響特性の補正(AutoCalシステム)などが行える

▲2ウェイ5インチの8030B(左)と8330A(右)

▲2ウェイ5インチの8030B(左)と8330A(右)

▲3ウェイで同軸ドライバーを採用したダブル・ウーファーの8351A

▲3ウェイで同軸ドライバーを採用したダブル・ウーファーの8351A

 

▲3ウェイ10インチの8260A

▲3ウェイ10インチの8260A

アナログではパワーをDSPでは
分離感の良い音を感じた

●お二人は普段から自宅やスタジオでGENELECのスピーカーに慣れ親しんでいると聞きました。今回はオタリテックの試聴室に設置されたモデルのうち4つを試聴してもらいましたが、最初に8030Bと8330Aの印象についてお聞きします。この2台のサイズは同じで、DSP搭載の有無の違いが大きな点ですが、アナログとDSP補正をした音にどのような印象を持ちましたか?

nishi-ken どちらの楽曲も、アナログである8030Bの印象は音にパワーがあるということ。圧力を感じました。一方8330Aは、聴いた瞬間から音の1つ1つがしっかり聴こえ、特にサブ帯域の分離感や、ハイのコンプレッション感などが有機的で見えやすいと思いました。

鎌田 僕らエンジニアとしては、音が濁っているところを探して聴くので、DSPの処理をしている場合、ボリュームをどんどん上げたくなる傾向にあるんですね。なので、nishi-kenさんが今言ったように、音を塊として体感できるのはアナログ・スピーカーの特徴だと思います。モニタリングする用途としては8330Aの方が向いているのかなと。どちらの曲も低音が明解で、特にエフェクティブなことを仕掛けたいと思ったとき、どのようにエフェクトがかかるかしっかり分かるので、より突っ込むことができるんじゃないでしょうか。もちろん、ほかのスピーカーで聴いたらどうなるかということも踏まえて、いろんなスピーカーで聴くことも大事ですけどね。また、一発録りの距離感や空気感は、8330Aの方が出ていた印象でした。

●このサイズのモニターは、自宅スタジオでの導入用途がメインになると思いますが、その点に関してはいかがでしょうか?

鎌田 小型のサイズですが、ホーム・スタジオとレコーディング・スタジオの中間くらいの用途でも使用できるんじゃないでしょうか。あとはサラウンドにも対応しているので、そういった用途にも良いでしょうね。

nishi-ken そうですね、サイズからイメージする以上のサウンドを体感できると思いますよ。

Profile●作編曲家、キーボーディスト。GReeeeN、TEMPURA KIDZ、武藤彩未、伊東歌詞太郎など、さまざまなアーティストの楽曲制作を手掛けるほか、キーボーディストとしてもステージに立つなど、幅広く活躍中

nishi-ken Profile●作編曲家、キーボーディスト。GReeeeN、TEMPURA KIDZ、武藤彩未、伊東歌詞太郎など、さまざまなアーティストの楽曲制作を手掛けるほか、キーボーディストとしてもステージに立つなど、幅広く活躍中

 

Profile●サウンドデザインスタジオ、スタジオインパルスを経てフリーで活躍。近年は、おおたか静流のアルバム『IKOR』、プロジェクト・アルバム『NO NUKES JAZZ ORCHESTRA』のレコーディング/ミックスを手掛けた

鎌田岳彦 Profile●サウンドデザインスタジオ、スタジオインパルスを経てフリーで活躍。近年は、おおたか静流のアルバム『IKOR』、プロジェクト・アルバム『NO NUKES JAZZ ORCHESTRA』のレコーディング/ミックスを手掛けた

100Hz以下の低域も
8351Aなら突き詰めることができる

●続いて、3ウェイで同軸ドライバーを採用した8351Aと3ウェイ10インチの8260Aで聴き比べてみました。

nishi-ken 8351Aはすごいですね! 僕はクラブ系の音楽をよく作っているイメージがあるかもしれませんが、バンドものも多く手掛けていまして、このスピーカーで鎌田さんの曲を聴いたとき、ウッドベースの鳴りが全く違っていてびっくりしました。タム回しのボトム感など、スピード感がとてもリアルに聴こえながら、低音をフォローアップしている。例えるなら僕が普段自宅スタジオで使っている8250Aは録音ブースの音をコントロール・ルームで聴いているイメージで、8351Aはブースの中にいる感じ。圧倒的にスピード感が違いましたね。これが同軸ドライバーの効果なんだと実感しました。

●「Acceleration」の印象はいかがでしたか?

nishi-ken 「Acceleration」は8250Aを使い、作編曲しながらミックスも同時進行させるような、1つ1つの音をすごくシビアに聴きながら作業を進めていたんですね。8351Aで聴いたら、アタックから減衰までさらにしっかり見えて、このモニターで作っていたらリリースはもう少し切っていたかもと思うほどでした。またサブ帯域に関しては、8250Aは良い意味でグッと押し上げてくれていて、8351Aはそこがシビアにフラットに聴こえたんです。僕は8250Aを導入して以来、余計な音を減らすようになり、残した音をどう広げるかという考え方になり、より1つ1つの音にクリエイティブにこだわれるようになったんですけど、8351Aはそれをさらに加速させてくれそうです。また、8260Aに関しては、8250Aの鳴りをより大きくしたイメージで、迫力も違いましたね。重厚感ある音がしました。より大きなスタジオ、クラブなどで鳴らすのに向いているんだろうなと。個人的にはモニタリングすると言うより、8260Aを使って爆音の中で曲を作ってみたいですね(笑)。

●鎌田さんはいかがでしたか?

鎌田 8351Aはサンレコからレビューでお借りしたことがあって、そのときもびっくりしたんですけど、僕らは普段、100Hz以下の低音をなかなか突き詰めることができないんですよ。というのは、これまでのスピーカーでは分からなかったから。でも、8351Aなら50〜100Hz辺りをコントロールすることができると感じたんですね。これなら家でもマスタリングができると思うほどでした。今回聴いてみても同じ印象で、よりシビアに音を確認できます。これが正しい音なんだなと。音がフラットなので色気はないんだけど、これでどのように色気を出すかというのが我々の仕事だと思っています。8260Aは、nishi-kenさんと同じく、このサイズからはこの音が出るなと言う印象でした。でもやはり8351Aが、サイズは大きくないのに、ここまで低音が分かるのが素晴らしいですね。あとスピーカーのデザインの概念を壊したのも良かったです。もっと壊しても良いと思いましたが(笑)。

●今回4機種を比較試聴してみた総括をお願いします。

nishi-ken アナログとデジタルの違い、それからサイズやモデルの違いで、GENELECはそれぞれをいろんな計算の元で作っているんだなと感じました。こういう聴き比べの機会はなかなかないと思いますし、僕たちの意見がこれから導入しようと思っている人に役立つと良いですね。1つ言えるのは、今日聴いたスピーカーを新たに導入すれば、何かが変わるはずです。現に僕がそうでしたから。現状、音楽を再生するのはラップトップ内蔵スピーカーやイアフォンなどが多くてそこを意識しがちだけど、僕らは良いスピーカーで音を鳴らして音楽を作ってなんぼだと思うんです。そうすると自分たちも磨かれていくし、たくさんのことに気付ける。個人的には、僕は楽器の鳴りのスピード感が一番聴こえるスピーカーを選びたいので、今回の8351Aはかなり理想に近いものでしたね。欲しいです!(笑)

鎌田 よく作家やミュージシャンから機材の相談をされるんですね。そこで持っている物を尋ねてみると、モニターがあまりよくないことが多い。ヘッドフォン環境でももちろん良いのですが、僕は、モニターを変えることを勧めています。スピーカーが良いものになれば、絶対にクリエイティブな部分が変わってくるはずなんです。自分の出している音のどこがカッコ良くて、どこがダメなのか、すごく明確にしてくれるので。特に今日試聴した4機種でいくと、DSPでの補正の良さ、アナログの良さが分かりました。サイズに関しては自分の環境があるので、それに合う物を選んだら良いと思います。SAMシステムなら、音場の補正も手軽にできますからね。

 

▲今回の試聴は、オタリテックの試聴室にて行われた。試聴室には、8030B、8330A、8250A、8351A、8260A、1234Aを設置。試聴にはコンバーターにLYNX Aurora 8が用意され、8030Aと1234Aはアナログ・セレクターを介し接続、そのほかの機種はAES接続で、GLMソフトによる切り替えで行われた

▲今回の試聴は、オタリテックの試聴室にて行われた。試聴室には、8030B、8330A、8250A、8351A、8260A、1234Aを設置。試聴にはコンバーターにLYNX Aurora 8が用意され、8030Aと1234Aはアナログ・セレクターを介し接続、そのほかの機種はAES接続で、GLMソフトによる切り替えで行われた

 

Specification

[8030B](価格:100,000円/1本)
▪最大出力:100dB SPL
▪周波数特性:50Hz〜25kHz(−6dB)
▪アンプ:40W(LF)+40W(HF)
▪外形寸法:189(W)×299(H)×178(D)mm
▪重量:5.6kg(1本)

[8330A](価格:136,000円/1本)
▪最大出力:104dB
▪周波数特性:45Hz〜23kHz(−6dB)
▪アンプ:50W(LF)+50W(HF)
▪外形寸法:189(W)×299(H)×178(D)mm
▪重量:5.5kg(1本)

[8351A](価格:550,000円/1本)
▪最大出力:110dB
▪周波数特性:32Hz〜40kHz(−6dB)
▪アンプ:150W(LF)+120W(MF)+90W(HF)
▪外形寸法:287(W)×452(H)×278(D)mm
▪重量:19kg(1本)

[8260A](価格:720,000円/1本)
▪最大出力:113dB
▪周波数特性:23Hz〜40kHz(−6dB)
▪アンプ:150W(LF)+120W(MF)+120W(HF)
▪外形寸法:357(W)×593(H)×347(D)mm
▪重量:27.5kg(1本)

 

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