革新的な3ウェイ・アクティブ・モニター・スピーカー GENELEC 8351Aを牧野“Q”英司が試す!

マガジン連動 by サウンド&レコーディング・マガジン編集部/撮影:小原啓樹 2015年4月20日

1978年の設立以来、さまざまなアクティブ・スタジオ・モニター・システムを設計、製造し続けているGENELECから、革新的な3ウェイ・アクティブ・モニターGENELEC 8351Aが発表された。同製品には、オリジナルの同軸中高域ドライバーMDCがマウントされ、Max DCWという技術でバッフル面全体がMDCのウェーブ・ガイドの役割を果たし、ワイドなリスニング・ポイントと高い定位感を実現している。さらにデュアル・ウーファーをMDCが中心になるよう2カ所に設置し、全帯域の物理的な点音源化を実現させたという。ユニークなデザインも相まって、注目を集めている同製品を、エンジニア牧野“Q”英司氏のプライベート・スタジオatelier Qに設置し、同氏にその印象について語ってもらった。

1_IMG_5520

プライベート・スタジオでもラージとして活用できる
今の音楽状況に合ったモニター・スピーカーだと思います

想像以上の低域感と中域感で
位相も良い印象

僕はいろいろなスピーカーを試してきましたが、GENELECの印象は、パワーがあってロック的。中域がしっかりしているので、ギター・サウンドなども分かりやすいですね。あと、クライアントを納得させる、説得力のある音です。気に入って使っていたのは1030Aで、特にリズム録に重宝していました。録音にパワーが入ることがGENELECのスピーカーの良いところなんですよ。当時はまだプライベート・スタジオを構えていなかったので、それを持ち運んでいましたね。

今回の8351Aは、昔から同軸スピーカーが大好きな自分としてはとても気になっていた製品です。まず製品が届いてから、DSP補正をしない状態で聴いてみました。まず驚いたのは想像以上の低域感と中域感です。低域の出方はGENELECらしくパワーがあって、バスレフなんだけどバスレフっぽくない。つまりバスレフ特有のぼわっとした緩い感じがなく、位相も良かったです。ウーファーというより、無指向のスーパーローのような、サブウーファーに近い印象でした。このウーファーは、楕円形をしているんですよね? それが2カ所にあるからなのか、フォーカスがずれる印象も全くなかったです。

僕はBAREFOOT MicroMain27を気に入って使っているのですが、8351Aよりもサイズの大きいMicroMain27と比べても、レンジ的には広い印象で、このサイズですごいなと。また、これまでのGENELECは、音源によっては高域がちょっと痛く聴こえる場合があったのですが、なじみも良かったです。

現在2ウェイの同軸スピーカーMUSIKELECTRONIC GEITHAIN RL904を使用しているのですが、3ウェイはどんな印象なんだろうと思っていたんですね。RL904は僕にとって理想的な2ウェイの同軸スピーカーなんですけど、それよりも8351Aは低域がすごくしっかり出ていて、指向性も、リスニング・ポイントが少しずれただけで嫌な感じになることもなく、ある意味広がって聴こえるのは好印象でした。同軸スピーカーの良さは、定位、まとまり感があるというところ。昔はALTECやTANNOYなどが有名でしたが、向いているジャンルなど癖があるスピーカーでもありました。RL904は若干そういった癖がありますが、8351Aはそういった癖もなくフラットに聴けましたね。

その後、専用ソフトウェアGLMとインターフェース、測定用マイクを使い、スピーカー補正を行ったのですが、全体的に締まった印象になりました。補正されたポイントは低域だったので、その分すっきりした感じでしょうか。より聴きやすくなりましたね。よくDSPの癖が気になると聞きますが、それも全然無く、本当にフラットだと思います。測定自体も一瞬で終わって、これはすごいなと。デジタル処理ということですが、デジタル臭さは全く感じませんしね。強いて言えば、中域がしっかり聴こえるのでざらつきが目立つ。それは僕ら作る側の問題ですけどね(笑)。つまり良いミックスとそうでないものがハッキリ分かってしまいます。もちろん好みの領域の話ではありますけどね。

今回は、8351Aでリズム録りもしてみました。その印象は、ベースなどの不要な超低音も聴くことができ、ラージ・モニターの変わりを果たしてくれました。ドラムのキックとスネアのバランスも良く、ギターや歌も引っ込まず、突っ込むとひずんでしまうかなというのが少し心配だったのですが、パワーも含め全く問題無かったです。万能的に使えるイメージでかなりの好印象でしたね。

2_IMG_5594

▲atelier Qに設置された8351A。牧野氏は、普段使用しているBAREFOOT MicroMain27(外側)と、MUSIKELECTRONIC GEITHAIN RL904(内側)の間に置かれ、それぞれのスピーカーとの聴き比べをしながらテストしたという

フラットな出音で
勘ではなく実感してモニターできる

これまではスタジオのラージ・モニターで低域を確認するのが一般的でしたが、今の音楽業界は、大きなスタジオを借りるのが難しくなっています。しかし、弦や歌の低域など、ラージで確認したい音はあるんですよね。また近年復調を見せているアナログ盤を作る場合は、低域が出過ぎていると致命傷になりますから、しっかり確認しなくてはいけません。しかし、この8531Aなら、僕のようなプライベート・スタジオでもそれが確認できるし、勘ではなく実感して低域をモニターできると思います。GLMで、どのような部屋の環境でもマッチした音に補正してくれるのもメリットですしね。しかも、スタジオ内でリスニング・ポイントをセーブしておくこともできます。僕の場合はパソコン・デスク前と、ディレクター・デスク後ろと2カ所でポイントをセーブして、切り替えられるようにしてみました。今の音楽状況に合ったモニター・スピーカーだと思いますね。

僕はスピーカーが大きくなると、キックやベースが出て歌やギターが引っ込んでしまう印象があったんですけど、8351Aは歌も前に出てくるのが素晴らしいですね。MicroMain27は中域がちょっと弱い印象で、RL904は逆に中域が張り出しているのですが、8351Aは本当にフラットです。歌やギターはYAMAHA NS-10Mで、全体をGENELECという使い分けをしている人がいると思うんですけど、8351Aなら1本でそれをまかなうことができますね。小さな音でも大きな音でも印象は全然変わりません。今まで聴いたスピーカーの中ではナンバー1と言ってもいいくらいのバランス感ですね。ぜひ皆さんに聴いてもらいたいですね。

genelec_compact_sam_connection

▲GENELEC SAMスマート・アクティブ・モニタリング・システム。専用インターフェースを介して、スピーカー自体をネットワーク接続し、専用ソフトウェアGLMでネットワーク内のスピーカーを制御できる。モニター・スピーカーを部屋に合わせて調整するという考えで、専用の測定用マイクを使用して設置されている部屋の音響特性を測定、そのデータをパソコン内で計測/分析し、再生レベル差、距離遅延、周波数特性の補正を行い、自動で最善なモニタリング環境(フラットな周波数特性)を構築することができる。ユーザーの好みに合わせてエディットも可能

▲リア・パネル。左から電源スイッチ、ネットワーク端子×2、各種設定用DIPスイッチ×2と音量トリム。その下に電源インレット、AES/EBU出力&入力、アナログ入力

▲リア・パネル。左から電源スイッチ、ネットワーク端子×2、各種設定用DIPスイッチ×2と音量トリム。その下に電源インレット、AES/EBU出力&入力、アナログ入力

 

製品情報

4_GENELEC8351Af

GENELEC 8351A

価格:¥530,000円(1本)
【スペック】
■最大出力:110dB SPL
■周波数特性:32Hz〜40kHz(−6dB)、38Hz〜21kHz(±1.5dB)
■クロスオーバー周波数:490Hz&2.6kHz
■アンプ:150WクラスD(LF)+120WクラスD(MF)+90WクラスAB(HF)
■外形寸法:287(W)×452(H)×278(D)mm
■重量:19kg(1本)
【問い合わせ】
オタリテック ☎03-6457-6021 www.otaritec.co.jp

TUNECORE JAPAN