ワンストップで制作が行える音の質にこだわり抜いた空間 CRYSTAL SOUND

ワンストップで制作が行える音の質にこだわり抜いた空間 CRYSTAL SOUND by Photo:Hiroki Obara 2017年10月27日

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楽曲プロデュースや音響コンサルティングなどを手がけるSure Bizが運営する音楽スタジオ、CRYSTAL SOUND。スタジオには、同社が培ってきた音響コンサルティング“AQE”のノウハウを駆使し、徹底した音響調整が行われた機材を数多く導入。それらの機材により、ノイズが少ない清澄な音でレコーディングやモニタリングができる環境が整えられている。本稿ではCRYSTAL SOUNDのスタッフの話とともに、スタジオの魅力に迫っていく。

 

いかに機材本来の音を鳴らしてあげるのかを考えて
音のクオリティに特化したスタジオを目指した

東急池上線洗足池駅から徒歩3分ほどでアクセスできるCRYSTAL SOUND。コントロール・ルームのA Room、レコーディングが行えるB Roomの2部屋を備えており、録音からミックス、マスターの作成まで一貫して行えることが特徴のスタジオだ。運営しているのは音響コンサルティングなども行っているSure Biz。ノイズ対策や制振、電源環境改善など、独自のノウハウを生かした施工サービス“AQE”で、渋谷のデルモンテスタジオや赤坂見附のソウル・バー鶴千、江ノ島で行われたWATERWARS BEACH FESTIVAL 2017など、多くの場所で音響の改善を行ってきた。その技術の原点となるのがこのCRYSTAL SOUNDだ。

「このスタジオは2009年9月から稼働を始めました。都心から離れているこの場所に来てもらうためには、このスタジオを選ぶ理由となる特色が必要です。そこで、音のクオリティに特化しつつ、コスト・パフォーマンスも高いスタジオにしようと考えました。スタジオの環境を向上するために試行錯誤し、その中で溜まってきたノウハウがAQEにつながるんです」

そう語るのは、CRYSTAL SOUNDのエンジニア兼アーティストのDJ SWINGとしても活動する佐伯寛志氏だ。「アメリカと日本のスタジオはなぜ鳴りが違うのかずっと疑問に思っていた」と続ける。

「スタジオを作るにあたり、その鳴りの違いの差を埋めたくて研究を続けたんです。でも良い機材を導入するだけではアメリカの音にはならない。そこから電源やジッター、ケーブル、振動の影響などの研究にも手が伸びていきました」

佐伯氏の徹底した音響調整には、スタジオに訪れた人なら誰もが驚くだろう。コンピューターからスピーカー、電源ボックスなど、さまざまな機材に対してノイズ対策や振動対策が行われている。このこだわりは、佐伯氏の機材に対する考え方によるものだ。

僕にとって機材はすべて楽器なんです。いかに本来の音をちゃんと鳴らしてあげるのかを考えています。例えば電源コンディショナーの上に鉱石を置いていますが、代わりにペットボトルを置いたとするとペットボトルっぽい音が出音に乗ってくる。電気の流れるところは、筐体やその上に乗っているものを含めて振動して、エネルギーが伝わっていくんです。そのコントロールを天然の鉱石を使って行っています。気に入っているのはラブラドライトという青緑色に光る鉱石です。中域の倍音が奇麗に出てくれますね。電源コンディショナーもいろいろと試しましたが、オーディオ用途の製品が多いため、極力癖が無くて音楽性を失わずに電源の質を良くしてくれるものを自社で開発して使用しています」

 

A Roomはコントロール・ルームとなっており、多数のアウトボードが用意されている。スピーカーはMUSIKELECTRONIC GEITHAIN RL901Kだ。機材の多くはSure Bizの音響コンサルティング“AQE”によるノイズ対策やトランスの入れ替えなどの手が加えられている

A Roomはコントロール・ルームとなっており、多数のアウトボードが用意されている。スピーカーはMUSIKELECTRONIC GEITHAIN RL901Kだ。機材の多くはSure Bizの音響コンサルティング“AQE”によるノイズ対策やトランスの入れ替えなどの手が加えられている

 

質の高いクロックや電源環境があれば
Pro Tools上で良いミックスができる

まずはコントロール・ルームであるA Roomを見ていこう。デスクには多数のアウトボードが組み込まれている。これらの機材にも調整の手が加えられているそうだ。

「やっぱり使っていくうちに“この機材はここが弱いな”とかが見えてくるんです。例えばAQEで使用している旭化成のノイズ抑制シート“パルシャット”を機材の電源部やコンデンサーなどのノイズが発生するところに適材適所で張り付けています。また、TONEFLAKEの佐藤俊雄さんに相談してモディファイしてもらったものもあります。その中でもすごかったのは、DANGEROUS MUSIC Master。オリジナルはほとんどICを使った回路なんですが、全部MARINAIR製トランスに置き換えているんです。トランスに置き換えることでどっしりと安定した音に変わりました。引き締まった低域と倍音豊かな中域、シルキーかつ抜けの良い高域になって、無駄なEQ処理無しに良い音を作ることができるようになりましたね」※“パルシャット”は旭化成の登録商標です

レコーディング時はAVALON DESIGN VT-737SPを通ってAVID Pro Toolsへ録音。それからプラグインやアウトボードなどを使ってミキシングを行う。以前はサミング・ミキサーを使用していたそうだが、現在ではPro Tools内部でミックスを完結させているそうだ。

「超高精度なマスター・クロック・ジェネレーターと、DAコンバーターのLAVRY ENGINEERING DA-N5を導入したときに、Pro Toolsの内部ミックスでも十分良いものができると気付いたんです。サミング・ミキサーを使う場合、左右のレベル差などのキャリブレーションをしなければいけませんが、それを全チャンネル、全プロジェクトでやっていくのは大変です。その労力をかけずとも、最高精度のクロックとDAコンバーター、それらを駆動する良い電源環境があれば、内部ミックスで最良の結果が得られます。プロジェクトのサンプリング・ レートは基本的に32ビット・フロートまたは24ビット/44.1kHzです。高いサンプリング・レートだとジッターも増えますし、高域方向に伸びた腰高な音になってしまいます。僕が多く手掛けるクラブ・ ミュージックやポップ・ミュージックは可聴範囲内の低域や中域の鳴りが大事なので、そこをしっかりと奇麗に鳴らすのは44.1kHzで十分だと考えています。もちろん96kHzなどでの制作も対応可能です」

Pro Toolsで制作された2ミックスはDA-N5でD/Aされた後、DANGEROUS MUSIC Masterに送られ、各アウトボードで調整される。そしてLAVRY ENGINEERING AD122-96 MXでA/Dされ、WEISS EQ1-LPでイコライジング、WAVES L2でマキシマイズされてから、JÜNGER AUDIO D02へ。それからAES/EBU対応の拡張ボードRME HDSPE AESへ入力され、WindowsマシンのMAGIX Sequoiaでマスターの制作が行われる。このシステムの中で要となっている機材について、佐伯氏に尋ねてみた。

「BEDINI B.A.S.E.ですね。マスタリング・エンジニアのブライアン・ガードナーがよく使っていた機材です。ステレオ・ワイズのノブとセンターの音像の距離感を調整できるノブがあり、ステレオ・エンハンサーのように特殊な音像を作れる。B.A.S.E.でしか作れないサウンドになります。また、チューブ・プロセッサーのBLACK BOX ANALOG DESIGN HG-2もよく使用しますね。Pro Tools内部でミックスすると、どうしてもアナログ感が無くなってしまいます。そういうときに、真空管のサチュレーションが威力を発揮してくれますね」

モニター・スピーカーにはMUSIKELECTRONIC GEITHAIN RL901Kを導入している。佐伯氏はスタジオを作る前からRL901Kを使うと決めていたそうだ。

「初めてRL901Kの音を聴いたとき、今まで体感したことのないような立体的な鳴りで衝撃を受けたんです。ただデフォルトでは高域と低域が伸びている音で、スピード感がある低域は出にくい印象でした。カーボン・ウールの吸音材をスピーカーに張り付けたり、スタンド部分に御影石を置いて制振し、より理想的な音が再生されるるように調整しています」

▲A Roomのデスク上、左側のラックのアウトボード類。上からPHON ON NTC Rack、ORTHO SPECTRUM AR-2000、AVALON DESI GN  VT-747SP、API 2500、DANGEROUS MUSIC Master、SO NTEC MES-432D9

▲A Roomのデスク上、左側のラックのアウトボード類。上からPHONON NTC Rack、ORTHO SPECTRUM AR-2000、AVALON DESIGN VT-747SP、API 2500、DANGEROUS MUSIC Master、SONTEC MES-432D9

▲デスク上、中央のラックには上からBLACK BOX ANALOG DESIG N HG-2、BEDINI B.A.S.E.、JÜNGER AUDIO D02、WAVES L2、WEISS EQ1-LP、ANTELOPE AUDIO OCX HD、LAVRY ENGINE ERING DA-N5が組み込まれている

▲デスク上、中央のラックには上からBLACK BOX ANALOG DESIGN HG-2、BEDINI B.A.S.E.、JÜNGER AUDIO D02、WAVES L2、WEISS EQ1-LP、ANTELOPE AUDIO OCX HD、LAVRY ENGINEERING DA-N5が組み込まれている

▲デスク上、右側のラック。THERMIONIC CULTURE The Fat Busta rd ⅡとAVALON DESIGN VT-737SPが設置されている。左側にあるのはCRAME SONG Avocet Ⅱ Aのコントローラー部

▲デスク上、右側のラック。THERMIONIC CULTURE The Fat Bustard ⅡとAVALON DESIGN VT-737SPが設置されている。左側にあるのはCRAME SONG Avocet Ⅱ Aのコントローラー部

▲A Roomのデスク下、左側にあるラック。上からLAVRY ENGINEE RING AD122-96 MX、ORTHO SPECTRUM DR-3000

▲A Roomのデスク下、左側にあるラック。上からLAVRY ENGINEERING AD122-96 MX、ORTHO SPECTRUM DR-3000

▲デスク下、中央のラックにはCRANE SONG Avocet Ⅱ Aのユニットが設置されている

▲デスク下、中央のラックにはCRANE SONG Avocet Ⅱ Aのユニットが設置されている

▲デスク下、右側のラック。上からORTHO SPECTRUM DR-3000、AVID HD I/O。HD I/Oは内部の電源周りのノイズ対策を徹底しているとのこと

▲デスク下、右側のラック。上からORTHO SPECTRUM DR-3000、AVID HD I/O。HD I/Oは内部の電源周りのノイズ対策を徹底しているとのこと

▲スタジオのパッチ盤の内部にはトルマリンなどの鉱石の粒が詰め込まれており、「サウンドに透明感が出る」と佐伯氏は話す。パッチ盤の上にはラブラドライトのほか、備長炭も置かれている

▲スタジオのパッチ盤の内部にはトルマリンなどの鉱石の粒が詰め込まれており、「サウンドに透明感が出る」と佐伯氏は話す。パッチ盤の上にはラブラドライトのほか、備長炭も置かれている

次はB Roomについて尋ねてみよう。もともとはドラムも録音できるように考えて作られたレコーディング・ルームだったが、現在ではB Roomだけでも制作ができる空間へと改良されたそうだ。

「AQEで電源環境などをしっかりと整えて、このB Roomだけで問題なく制作を完結できる環境にし、ローバジェットの方でも気軽に使えるようにしたんです。B RoomのMac ProにはPro ToolsとAPPLE Logicが入っていて、オーディオ・インターフェースはDIGIDESIGN 003、スピーカーはPIONEER RM-07です。PIONEERはDJ機器のイメージがあるので、プロ用のモニター・スピーカーとしてはどうなのか、最初は気になっていたのですが、実際使ってみると想定していたよりはるかに素晴らしかった。同軸らしい、はっきりした音像かつスピード感がある音。RL901Kに近い傾向ですね」

音響コンサルティング/施工サービス“AQE”のノウハウを駆使し、音のクオリティを最大限に高めているCRYSTAL SOUND。佐伯氏は「±0.1dBのEQの違いも明りょうに分かり、判断に迷わずスピーディに作業ができるスタジオです」と語る。またSure Bizの代表を務める二村圭佑氏は「音楽を作る人たちがこのスタジオに集まり耳を養い、ここから巣立っていく……実家のような場所にしたいですね。アーティストやエンジニアが交流できる場となって、新しい音楽のムーブメントを作り出したいです」と締めくくってくれた。“よりクリアな音で録れて、子細な変化までとらえられるモニター環境で制作したい”と考えている人はぜひ問い合わせてみてほしい。

レコーディングを行えるB Room。こちらの部屋だけでも音楽制作が完結できるようになっている。モニター・スピーカーはPIONEER RM-07。ディスプレイの前にはMACKIE. Big Knob Studio+、ARTURIA KeyLab 61、DIGIDESIGN 003などが置かれている。左側の机にあるのはKORG R3。立てられているマイクはNEUMANN U87 AI、手前にあるキュー・ボックスはCONISIS COM1805だ。右側にはPIONEER DJ DJM-900SRTが見える

レコーディングを行えるB Room。こちらの部屋だけでも音楽制作が完結できるようになっている。モニター・スピーカーはPIONEER RM-07。ディスプレイの前にはMACKIE. Big Knob Studio+、ARTURIA KeyLab 61、DIGIDESIGN 003などが置かれている。左側の机にあるのはKORG R3。立てられているマイクはNEUMANN U87 AI、手前にあるキュー・ボックスはCONISIS COM1805だ。右側にはPIONEER DJ DJM-900SRTが見える

 

■CRYSTAL SOUND
☎03-6425-9228
https://www.crystal-sound.jp/

サウンド&レコーディング・マガジン2017年12月号より転載

 

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