関正道(DIGITAL SONIC DESIGN)が使う「Pro Tools」第2回

クリエイターが使うPro Tools by 関 正道 2017年11月25日

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一見遠回りに見えても
迅速確実なMIDIエディット法

 皆さんこんにちは! 前回ではAVID Pro Toolsの環境を整え、より安定した環境で作業するための注意点をお話ししました。劇伴制作をすべてPro Toolsで行っている私にとって、Pro ToolsのMIDI機能は当たり前のように使用していますが、今回の内容は、Pro Toolsをオーディオでしか使ったことがない方にも、興味を持って読んでいただければうれしいです。

 

 

コピー&ペーストできない
ベロシティ・パターンの“複製法”

 私が劇伴音楽のプリプロを行う場合、作曲家の関美奈子と組んでいることが多いのですが、彼女もPro Toolsを使っているので、セッション・データをそのまま受け取り、バーチャル・インストゥルメントの差し替え、MIDIの編集、各音源のアーティキュレーションなどを整えていくことが主な作業内容です。Pro Tools以外のDAWで作業している作曲家とやり取りをする場合は、SMFなどでシーケンス・データを受け取ってインポートします。劇伴制作では曲数も多く、リテイクや微調整など、何度も修正を加えていく作業が多いため、とにかく作業効率を上げるための工夫が必要です。

 現在のPro Toolsでは、編集ウィンドウとは別にMIDI専用のエディタウィンドウを開くことができます。複数のMIDIトラックをレイヤーして、楽器ごとの音の重なり具合や、各MIDIコントロール・チェンジ(CC)なども見ることが可能です。とても便利で、作曲家の方はよく使うようですが、編集ウィンドウ上でのMIDIエディットに慣れてしまった私は、最初からMIDIエディタウィンドウを開いて編集をしません。オーディオ編集でPro Toolsを使用し始めた私にとって、編集ツールが共通ということもありますが、まずは編集ウィンドウで全体的な曲の構造を把握して、曲を覚えることから始めるのに都合が良いのです。とはいえ、音の間違い探しをするときなどは、MIDIエディタウィンドウを使うと便利です。

▲MIDIエディタウィンドウでは、複数トラックのMIDIデータを同時に表示することができる

▲MIDIエディタウィンドウでは、複数トラックのMIDIデータを同時に表示することができる

▲おなじみ編集ウィンドウではオーディオと同じ編集方法&時間軸でMIDIの編集が行える

▲おなじみ編集ウィンドウではオーディオと同じ編集方法&時間軸でMIDIの編集が行える


 

 MIDIベロシティを編集する場合、各種編集ツールで変化を描くことができますが、MIDIノートに対して依存しているため、ベロシティのコピー&ペーストはできません。アルペジオ・パターンが同じでも音高が違うフレーズが続くときなどはベロシティの値だけ複製できたらいいのにと思います。そこで私は、一度元になるMIDIトラックを複製してノンアクティブにし、トラックのカラーを目立つ色(ピンクなど)にしてエディットするMIDIトラックの下に置いておきます。そして編集するトラックで、アルペジオの1パターンだけアクセントなどベロシティを調整。そして音高を気にせずに⌘+D(Macの場合)で、繰り返してしまいます。最後に、先程複製しておいた元のMIDIクリップとレイヤーして比較し、元トラックのフレーズとズレている部分を直していけば、一音一音ベロシティを調整するよりも手早く編集できます。

▲ベロシティ・エディット済みのMIDIノート(茶色)と、元のフレーズ(紫)をMIDIエディタウィンドウで比較。ずれている部分を修正する

▲ベロシティ・エディット済みのMIDIノート(茶色)と、元のフレーズ(紫)をMIDIエディタウィンドウで比較。ずれている部分を修正する


 

 この方法は、アルペジオ・パターンだけでなく、オクターブ・ユニゾンで弾くことが多いオーケストラの第1&第2バイオリンにも有効です。第1バイオリンをエディットし終えたら第2バイオリンに全部コピーし、元トラックと比較する方法を行うとかなり速く作業できます。

 エディットする前に、そのトラックの複製を作っておくことは、ある意味、編集ミスを防ぐバックアップにもなるので、お勧めです。プレイリストを利用した複製もバックアップになるのですが、プレイリストではレイヤー比較ができないので、トラックを複製しています。
 

MIDIコントロール・チェンジを
ペンシルツールで効率良く描く

 Pro ToolsでMIDIコントロール・チェンジ(CC)のオートメーションを描く場合、リアルタイムでコントローラーからフェーダーなどを使って入力する方も多いですが、私は全部ペンシルツールで書きます! Pro Toolsの各編集ツールは、波形編集もMIDI編集も共通していて、何万ファイルとゲームのセリフやSEをエディットしてきた私にとっては、まさに鉛筆のごとく描くことができます。一時期、液晶ペン・タブレットで直接画面に描けたらもっと効率も上がるかと挑戦したのですが、トラックボールに戻ったり、ペンを取ったりと持ち替えすることが効率を低下させてしまい、あきらめました。

 それでは、私がどうやってMIDI CCのオートメーションを描いているか紹介します。まず私の場合初期設定のMIDIタブでペンシルツールの分解能設定は5msにしています。Pro Toolsのペンシルツールは自由線、直線、三角波、短形波ランダムなどがMIDI CCをエディットするのに使用できます。自由線以外はグリッドに添って変化量を確認しつつ描くことができるので、テンポに合わせたフィルター変化やパンニングなどが可能です。

▲初期設定(筆者は英語表示で使用)のMIDI画面。左側に、ペンシルツール分解能を設定する項目がある(赤線部)。筆者は5msに設定

▲初期設定(筆者は英語表示で使用)のMIDI画面。左側に、ペンシルツール分解能を設定する項目がある(赤線部)。筆者は5msに設定


 

 では曲線はどう描くのか? 私は曲線(のような変化)を直線で描きます。極端に言えばMIDIのCCを変化させたい最小から最大の位置まで、一度直線を引きます。次にその2点の間で変化させたいところから最初の点と終わりの点に直線を引きます。これを繰り返すと、だんだん曲線に近付くという単純な方法です。MIDI CCの解像度は128段階なので、曲線そのものを求めるより結果として音源の鳴り方が自分の理想に合えば良いわけですので、最終的な判断は耳でします。また、MIDI CCを直線で変化させても音源側がそれを曲線的な変化に変換している場合もあるので、注意が必要です。

 私がよく使うストリングス音源では、MIDI CC1で強弱の波形レイヤー、CC2でビブラートをコントロールできます。CC1の強さに合わせてビブラートも強くしたい場合、CC1で描いた線をCC2でも描くのではなく、CC1からCC2へコピー&ペーストしてから変化量を調整する方法が便利です。まずCC1のオートメーションを選択し、コピー。CC2で“特殊ペースト”を選ぶとペーストできます(Macでは⌘+control+V)。後は、全体的に変化量を上下するなどして、部分的な調整を加えます。最初から書くより効率が良いでしょう。

▲CC1のオートメーション・データをコピーし、CC2に特殊ペーストで“現在のオートメーションの種類へ”を選択すると、オートメーション・データをペーストできる。Macでは⌘+control+V(WindowsではCtrl+Start+V)

▲CC1のオートメーション・データをコピーし、CC2に特殊ペーストで“現在のオートメーションの種類へ”を選択すると、オートメーション・データをペーストできる。Macでは⌘+control+V(WindowsではCtrl+Start+V)


 

 ……とここまで書いたところで誌面が尽きました。続きはまた次回に!

 

 

*AVID Pro Toolsの詳細は→http://www.avid.com/ja

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