「ZOOM LiveTrak L-12」をレコーディングに試す!

【特別企画】ZOOM LiveTrak L-12 by 中村公輔 撮影:Hiroki Obara 2017年10月25日

MAIN

【Check & Report for Live Recording】バンドの一発録り&歌のオーバーダブを実践

こんにちは、レコーディング・エンジニアの中村公輔です。今回は、ZOOMから新しく発売されたデジタル・ミキサー=LiveTrak L-12が、バンドの録音でどこまで使えるのか検証してみました。早速レポートしていきたいと思います。

【チェックに参加したメンバー】
PROFILE

 

プラグ&プレイでiPadアプリに録音

LiveTrak L-12のチェックに使ったスタジオは、東京・調布のSTUDIO CRUSOE。ビンテージ機材を備えたコントロール・ルームを持つ本格的なレコーディング・スタジオですが、今回はアマチュア・バンドが自分たちで録音する状況を想定し、ライブ・ルームだけを使用しました。協力してくれたのは、 CRUSOEのオーナー西村曜氏と4人組バンドのTAMTAMです。

チェックの方法は、バンドのオケを一発録りしてからボーカルをオーバーダビングするという二段構え。リハーサル・スタジオに集まって“せえの!”でオケを録音し、自宅に戻ってから歌を録るようなシチュエーションです。さてここで、LiveTrak L-12を使ったマルチトラック・レコーディングの方法を整理しておきましょう。

●Mac/Windowsと接続し、内蔵のオーディオI/O機能を介してDAWソフトに録音するやり方
●APPLE iPhone/iPadと接続し、オーディオI/O機能を通してDAWアプリに録る方法
●内蔵のレコーダー機能を使い、本体に入れたSDカード(別売)へ録っていくやり方

これらすべてを試してみようということで、今回はバンドのオケをiPad Mini内のDAWアプリと本体内のSDカードの両方へ同時に録音。それからAPPLE MacBook Airにつなぎ替え、DAWソフトへ歌を録りました 。

まずはオケの録音についてレポートします。初めに iPad MiniをLiveTrak L-12へ接続。別売のAPPLE iPad Camera Connection KitでLightning端子をUSB端子に変換するとつなげます①②LiveTrak L-12はクラス・コンプライアント・モードに対応しており、リア・パネルのスイッチでモード・オンにするだけで、DAWアプリにオーディオI/O機能を認識させることができました。

①iPad&パソコンの二段構えでチェック

▲今回のテストで、スタジオに持ち込んだ録音機器。LiveTrak L-12のほか、“コンピューター+DAWソフト”のコンビネーションを試すべくAPPLE MacBook Air+AVID Pro Tools(写真左上)、“iOSデバイ+DAWアプリ”のチェック用としてiPad Mini+STEINBERG Cubasis(同左下)を使った。録音のクオリティは24ビット/48kHz。作業の流れとしては、Cubasisにバンドの一発録りを行った後、その録り音を書き出してPro Toolsへインポート。最後にボーカルのオーバーダビングをPro Toolsへ行った。LiveTrak L-12のオーディオI/O機能をフル活用した形だ

▲今回のテストで、スタジオに持ち込んだ録音機器。LiveTrak L-12のほか、“コンピューター+DAWソフト”のコンビネーションを試すべくAPPLE MacBook Air+AVID Pro Tools(写真左上)、“iOSデバイ+DAWアプリ”のチェック用としてiPad Mini+STEINBERG Cubasis(同左下)を使った。録音のクオリティは24ビット/48kHz。作業の流れとしては、Cubasisにバンドの一発録りを行った後、その録り音を書き出してPro Toolsへインポート。最後にボーカルのオーバーダビングをPro Toolsへ行った。LiveTrak L-12のオーディオI/O機能をフル活用した形だ

 

②CCモードでiPadに接続

▲LiveTrak L-12をクラス・コンプライアント・モード(CCモード)に設定し、iPadをつなげた。接続に使ったのは、iPadのLightning端子をUSB端子へと変換するAPPLE iPad Camera Connection Kit(写真でクローズアップしている白いケーブル)

▲LiveTrak L-12をクラス・コンプライアント・モード(CCモード)に設定し、iPadをつなげた。接続に使ったのは、iPadのLightning端子をUSB端子へと変換するAPPLE iPad Camera Connection Kit(写真でクローズアップしている白いケーブル)

入力端子はマイク/ライン・インが8つとライン・インL/Rが2つ。ライン・インL/Rの下にはUSBボタンがあり、それを押すとDAWの音をモニターできます。今回はアプリのクリックをch 11/12へ立ち上げたので、録音に使ったチャンネルは以下の通りです。

ch1:キック(ダイナミック・マイク)
ch2:フロア・タム(ダイナミック・マイク)
ch3:タム(ダイナミック・マイク)
ch4:ギター・アンプ(ダイナミック・マイク)
ch5:ベース・アンプ(コンデンサー・マイク)
ch6:スネア(コンデンサー・マイク)
ch7:ドラムのトップL(コンデンサー・マイク)
ch8:ドラムのトップR(コンデンサー・マイク)
ch9/10:シンセ(ライン)

少し変則的な並びですが、本機ではコンデンサー・マイクに必要なファンタム電源のオン/オフがch1~4とch5~8でそれぞれ一括なので、ファンタム電源を使うグループ/使わないグループに分けた結果こういう順番になりました。リーズナブルなミキサーには、ファンタム電源のオン/オフが全チャンネル一括のものが多いので、分かれているのは親切だと思います。

③親切設計のファンタム電源

▲コンデンサー・マイクを使うのに必要なファンタム電源は、ch1〜4とch5〜8のそれぞれで一括してオン/オフする仕様。“全チャンネルまとめてオン/オフ”という製品も多い中、ダイナミック・マイクとコンデンサー・マイクを併用できる設計がうれしい。ファンタム電源は、マイク・インのすぐ下にある赤いボタンでオン/オフ可能。今回はch5〜8でコンデンサー・マイクを使ったので、ボタン直下の赤いLEDが点灯している

▲コンデンサー・マイクを使うのに必要なファンタム電源は、ch1〜4とch5〜8のそれぞれで一括してオン/オフする仕様。“全チャンネルまとめてオン/オフ”という製品も多い中、ダイナミック・マイクとコンデンサー・マイクを併用できる設計がうれしい。ファンタム電源は、マイク・インのすぐ下にある赤いボタンでオン/オフ可能。今回はch5〜8でコンデンサー・マイクを使ったので、ボタン直下の赤いLEDが点灯している

使っていて“これは便利”と思ったのが、5つのモニター・アウトで別々の音量バランスのミックス(返し)がモニターできること。各モニター・アウトにはA~Eの名前が付いていて、パネル上のA~Eボタンでバランスを調整したいものを選択できます。例えばAボタンを押すと、モニター・アウトAのバランスをフェーダーなどで作れるようになるのです。これで、メンバーが5人居たらそれぞれに適した返しを作れますね。

リハスタでの一発録りでは、ドラマーが“自分の音が大き過ぎてたたきづらい”と感じたり、各人がクリックばかり聴いてしまってノリがバラバラになるなどしがちですが、実は聴きやすいモニター・ミックスを作るだけで解決できる場合が多いです。そのためには通常、キュー・ボックスが必要になりますが、5台そろえると安価な機種でも計20万円近くかかってしまうので、アマチュアには手を出しづらいところ。だからこそ、LiveTrak L-12は5系統のモニター・アウトが備わっているだけでも、十分お買い得だと感じるわけです。

④5つの“返し”をボタンで選ぶ

▲全5系統のモニター・ミックスは、パネル右下にあるA〜Eのボタンで選択できる

▲全5系統のモニター・ミックスは、パネル右下にあるA〜Eのボタンで選択できる

 

DAWと内蔵レコーダーに同録が可能

DAWと同時に、本体内のSDカードへマルチトラック・レコーディングできるのもうれしい機能。DAWは利便性に富んでいますが、その一方で録音中にフリーズしてしまうなど不安がつきものです。というわけで、バックアップとしてSDカードに記録しておけるのは安心。これについても、本機クラスの価格で実現しているモデルは、ほかに無いのではないでしょうか?

モノラル・チャンネルにはコンプが搭載されており、いわゆるかけ録りが行えます。軽く触ってみたところギター用エフェクターのようなワンノブ・タイプで、即座にセッティングすることが可能。厳密な音作りは録音後のミックスで行えばいいので、あわただしい現場ではこれくらい簡単な作りになっている方が現実的だと感じました。コンプに限らず必要な機能が直感的に扱えるよう配置されており、筆者はテスト中、ほぼマニュアルを見ずに使うことができました。ミキサーとオーディオI/Oの経験者なら、恐らくいきなり使えるほど分かりやすいです。製品としてはデジタル・ミキサーですが、実際には“小型のアナログ・ミキサーにMTRとオーディオI/Oが追加されたような機材”という印象ですね。

 

ギラつきなどを感じない素直な音質

続いては、アプリで書き出したオーディオ・ファイルをMacBook Air上のAVID Pro Toolsへ取り込み、そこに歌を録ってみました。LiveTrak L-12をコンピューター用のオーディオI/Oとして使う場合は、ZOOMのWebサイトから専用のドライバーをダウンロードし、コンピューターにインストールする必要があります(www.zoom.co.jp/ja/LiveTrak#downloads)。しかしそれさえ済ませれば、特にストレス無く通常のオーディオI/Oとして使用可能です。

⑤Macとつないで歌をオーバーダブ

▲iPad用のDAWアプリへオケを録音した後は、LiveTrak L-12をMacBook Airにつなぎ替えてDAWソフトへ歌をオーバーダビングした

▲iPad用のDAWアプリへオケを録音した後は、LiveTrak L-12をMacBook Airにつなぎ替えてDAWソフトへ歌をオーバーダビングした

コンピューターとの併用に関するトピックとして紹介しておくと、DAWの音は2系統のステレオ・チャンネルのどちらにも立ち上げられるので、レコーディングだけでなくライブにも有用。例えばミュージシャンのモニターにはクリックとオケを返し、客席に向けてはオケだけを出力するようなことも簡単ですまた演奏を内蔵レコーダーにマルチトラックで録っておけば、持ち帰ってミックスし、ライブ音源を作ることも可能。コンパクト・サイズのデジタル・ミキサーで、コンピューターなどをつながずにマルチトラック録音できるのは画期的です!

ちなみに、ステレオ・チャンネルへ返したDAWの音も内蔵レコーダーに記録できるため、同期モノを使ったライブでも漏れなく録音できます。そのほか、学園祭やサークル活動などでPAしながらマルチで録るような使い方も考えられますね。

 

⑥同期演奏での活用法

▲スタジオ録音からはそれるが、DAWからのトラックをLiveTrak L-12のch9/10に、クリックをch11/12へ入力すれば、客席にはトラックだけを出してモニターではクリック+トラックを聴くという同期演奏用のセッティングが可能。マスター・アウトとモニター・アウトのそれぞれの設定は、FADER MODEセクションから行える

▲スタジオ録音からはそれるが、DAWからのトラックをLiveTrak L-12のch9/10に、クリックをch11/12へ入力すれば、客席にはトラックだけを出してモニターではクリック+トラックを聴くという同期演奏用のセッティングが可能。マスター・アウトとモニター・アウトのそれぞれの設定は、FADER MODEセクションから行える

最後に、気になる録り音について。内蔵のマイクプリが“ZOOM史上最高性能”というだけあって、素直なキャラクターで使いやすい音質です。リーズナブルな機種の内蔵マイクプリには、過度なギラつきや変なピークが出るものが多いのですが、本機はサラっとしていて好感の持てる音。筆者が普段使っている業務用のマイクプリに比べると、低域が控えめで中高域がややきらびやかな印象ですが、ミュージシャンが音源制作に使うような場合は、扱いやすく手堅い音だと思います。輪郭がハッキリしていて低域がボヤけないので、ライブを動画配信するような場合にもメリットになりそう。そういう意味では“ネット乗り”の良い音だとも言えるでしょう。また小型ミキサーとしては、S/Nが圧倒的に良いのも特徴です。

LiveTrak L-12は、デジタル・ミキサーでありながらオーディオI/Oとしても動作し、それと同時に本体でマルチトラック・レコーディングまで行えます。こうした機材はほかに見当たらないので、“バンドの一発録りをやりながらバックアップ・データも欲しい”“一台でカフェ・ライブのマルチトラック録音をやりたい”といった場合には本機一択でしょう!

 

【関連記事】
「ZOOM LiveTrak L-12」イントロダクション
「ZOOM LiveTrak L-12」PAチェック編

【製品ページ】
ZOOM LiveTrak L-12

 

TUNECORE JAPAN