最高32ビット/384kHzを実現するペンシル型DAC NEXTDRIVE Spectra

NEXTDRIVE Spectra by Photo:小原啓樹(except *)、川村容一(*) 2018年5月28日

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2013年に設立されたNEXTDRIVEは、専用アプリと連携してエアコンを操作/監視できる赤外線リモコンBeep、Webカメラや振動センサーをネットワークへ接続するゲートウェイCubeなど、IoT技術を生かした製品を生み出しているメーカーだ。そんなNEXTDRIVEからペンシル型DAC、Spectraが発売された。最高32ビット/384kHzのPCM、最高11.2MHzのDSDの再生に対応。全長は89mm(コード、端子を除く)、重量は17gと、コンパクトで軽量な製品となっている。ここではSpectraが現代の音楽制作のどのようなシーンで活躍してくれるのか、エンジニア/プロデューサーのDub Master X氏によるインプレッションとともに紹介する。

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最高32ビット/384kHzのPCM、最高11.2MHzのDSDに対応するDAC、Spectra(22,000円)。USB Type-A、USB Type-C、Micro USB Type-Bで接続できる3モデルを用意しており、コンピューターやスマートフォンなどのデバイスにつなげるだけでハイクオリティな音質を楽しめる。全長89mm(ケーブル、端子を除く)のペンシル型で、持ち運びも容易。外出先でも簡単に良い音で音楽を聴きたいという人はもちろん、移動先での音楽制作でも高解像度に対応したSpectraは性能を発揮するだろう。カラー・バリエーションはブラックとシルバーの2種類を用意している。

 

▲Spectraの中枢であり小型化に貢献しているのが、ESS TECHNOLOGYのSABRE9018Q2C。DACとヘッドフォン・アンプが1つのチップになっており、特許取得技術である“ハイパー・ストリーム”や“リボルバーDEM”“ジッター除去機能”により、低いひずみ率かつクリアでパワーのあるサウンドを実現する

 

SPECIFICATIONS
●DAC/アンプ部:ESS TECHNOLOGY SABRE9018Q2C
●周波数特性:20Hz~50kHz
●ダイナミック・レンジ:121dB
●全高調波ひずみ率:0.001%
●最大出力:13.3mW(インピーダンス300Ω/最大出力電圧2Vrms時)、49mW(インピーダンス32Ω時)
●入力端子:USB Type-A/USB Type-C/Micro USB Type-B
●出力端子:ステレオ・ミニ
●ビット数/サンプリング・レート:最高32ビット/384kHz(PCM)、最高1ビット/11.2MHz(DSD)
●外形寸法:11.2(W)×89(H)×11.2(D)mm(ケーブル、端子を除く)
●重量:17g

 

Dub Master X × Spectra

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荷物を軽くしたいけど音のクオリティは下げたくない
そんな人たちにぴったりのDACだと思います

エンジニアとしてだけでなく、リミックスやプロデュースなど幅広い活動を行っているDub Master Xこと宮崎泉氏。活動初期からヘッドフォン、イア・モニターをメインにミックスをするスタイルを取っていたという氏に、Spectraを試してもらった。音楽制作におけるSpectraの有用性、そしてヘッドフォン/イアモニを使ったミックスについて語っていただこう。

外でもしっかり仕事ができるハイファイさがある
高域の伸びが奇麗でノイズがほとんど無い

ヘッドフォンやイアモニ中心で制作するスタイルは25年ほど前から続けているという宮崎氏。きっかけについて尋ねてみると、「住宅環境の影響がある」と語った。

「自宅スタジオとはいえ、防音をしていない家の中で作業をしていたから、必然的に大きい音は出せない。じゃあ、その中でどうやってクラブ・ミュージックの音像を作るのかと考えたときに、じゃあヘッドフォンでミックスしようと。当時は“スピーカーで鳴らしてなんぼだろ”っていう人が多かったけど、自宅の環境を考えたときにヘッドフォンで作業するしかなかったんです。実際にヘッドフォンで作った曲をクラブに持って行って、“現場ではこういう音で鳴るのか”という経験が自分の中にたまっていって、ヘッドフォンでのミックスでも良い作品が作れるようになっていった。自分としてもヘッドフォンで作っている方がやりやすいという感覚がありましたね」

宮崎氏はさまざまなアーティストのライブでエンジニアリングを行っており、遠方への移動も多い。滞在先のホテルや新幹線などでの作業もよく行っているという。

「ライブで使うシーケンスを直したり、録音したものを出先でまとめたりすることが多いです。普段はライブで使う1Uサイズやハーフ・ラック・サイズのオーディオ・インターフェースを持ち歩いたりしますが、やっぱり面倒なんですよね。タオルで巻いてスーツ・ケースに入れて、ホテルで出して作業して、また片付けて移動する……。毎日続くと嫌になるんですよ。外で作業するとなると持ち物がコンパクトであることが大事だと思います」

今回宮崎氏に試してもらったSpectraは全長89mm(ケーブル、端子を除く)、重量が17gと、ポケットにも入る大きさ。コンパクトなだけでなく、ESS TECHNOLOGYのDACチップを内蔵し、解像度の高さ、低ノイズ、低ひずみ率を実現しているのが特徴だ。「外でしっかりと仕事ができるハイファイさがある」と宮崎氏は評する。

「とても解像度が高く、高域の伸びが奇麗。しかもノイズがほとんど無い。素晴らしいですね。今まで新幹線の座席などの狭い空間では仕方なくコンピューターのヘッドフォン・アウトを使っていました。オーディオ・インターフェースを置いていたりしたら迷惑になってしまいますしね。でも自分のコンピューターが少し古いということもあって、直挿しでは高周波ノイズが聴こえたりして困っていました。それが解決されるだけでもかなりありがたいです。しかもSpectraを挿すだけだと場所も取らない。遮音性の高いイアモニとSpectraがあれば、新幹線でも十分に仕事ができますね。移動先で“仕方が無いからヘッドフォン・アウトに直挿しで作業する”という人は業界にとても多くいるんです。そういう人たちには絶対お薦めできます。現場が続いて、毎日移動して何か作業をするとなると、荷物をできるだけ軽くしたい。でも音のクオリティは落としたくない、という人たちにはぴったりのDACだと思います」

音に色付けがされないところが良い
自分の音の基準を作れる信頼できる機材

Spectraは最高32ビット/384kHzのPCM、最高11.2MHzのDSD再生に対応しており、一見すると音楽鑑賞に向けたDACのように感じる方もいるかもしれない。しかし宮崎氏はSpectraの音質が制作作業にも向いている理由をこう話す。

「Spectraを通しても音に色付けがされない、というところが良いと感じました。例えば、あるオーディオ・インターフェースを通すと高域と低域が持ち上がって“ドンシャリ”な音に聴こえるなど、違ったサウンド・キャラクターになってしまうということがあります。それはオーディオ・インターフェースのD/A部分が多分に影響しているからだと思いますが、そういったことがSpectraは無いので、ニュートラルに使える。手持ちのオーディオ・インターフェースをA/Dとして使って、D/AをSpectraにして作業してもよいかもしれません」

コンピューターの性能が向上し、ミニマムな環境で楽曲制作を行う人も増えてきた。Spectraの登場で、より気軽に出先での作業が良い音でできるようになり、ライブの滞在先や旅先などで制作をするクリエイターも増えるかもしれない。

「ヘッドフォンやイアモニで制作する人は、ヘッドフォンで聴いている音と実際にクラブなどで鳴らしたとき、または人の曲と聴き比べて、“こういうふうに作れば、ああいった音で鳴ってくれる”と自分の中で変換できるようになるといいと思います。自分の頭や耳でイコライジングする感覚です。例えばアコギを素のまま録ったとして、自分の部屋で聴くと大丈夫だけれど、クラブで流したら低域が過剰で、うるさく聴こえる。そうならないよう、自分の制作環境とサウンドを流す環境を把握してミックス時に低域を処理するわけです。そういったことを行うためには、自分の音の基準を作ることが大切。制作する上で“これは信頼できる”という機材が一つあれば、それを基準にして作業ができます。Spectraはそんな機材になると思いますし、クリエイターの“心のよりどころ”となるDACになるでしょう」

▲Micro USB Type-BモデルをAndroidデバイスに接続した様子。ハイレゾ対応アプリなどを使えば、高音質なリスニングも可能となる。USB-Lightning変換アダプターを使えば、iOSデバイスにも接続できる

 

■お問い合わせ

銀座十字屋 ディリゲント事業部
☎ 03-6264-7820
https://dirigent.jp/

サウンド&レコーディング・マガジン2018年7月号より転載

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