プロが公開!ライブ用エレクトロニクス構築法 〜 AA=によるアドリブ演奏に対応できるシーケンス・システム

サンレコ・アーカイブス by Text:Ryosuke Sakai Photo:Tetsuro Sato(Equipment) 2016年10月11日

▲ 上田剛士(手前右)、草間 敬(奥左)

▲ 上田剛士(手前右)、草間 敬(奥左)

本誌、サウンド&レコーディング・マガジン2016年8月では、“プロが公開!ライブ用エレクトロニクス構築法”と題し、ライブパフォーマンスにおけるエレクトロニクス・システムについて、5組のアーティストを特集している。ここでは、その中から上田剛士によるソロ・プロジェクト、AA=の記事を紹介する。 (構成を一部変更しています)

THE MAD CAPSULE MARKETS時代からラウド・パンクとデジタル・サウンドの融合を図ってきた上田剛士によるソロ・プロジェクト、AA=。本誌7月号のアーティスト・インタビューでは、新作『#5』の制作の様子を伺った。打ち込みのビートやシンセの音を多く取り入れた作品ではあるが、ライブではどのように再現されているのだろうか? 今回は、去る6月11日に東京・恵比寿のライブ・ハウスLIQUIDROOMで行われた“#5”ツアー・ファイナルのシーケンス・システムを取材。まず、ライブ・エレクトロニクス・システムを紹介し、上田剛士とマニピュレーター草間敬氏の話をお届けしよう。
 

DETAIL OF ELECTRONICS

DETAIL OF ELECTRONICS

写真は、6月11日のLIQUIDROOM公演にて撮影されたものだ。ABLETON Liveはメイン❶とサブ❷の2つを用意し、それぞれをオーディオI/OのFOCUSRITE Scarlett18I20❸に接続している。2台のScarlett18I20は、マスター・クロックのART SyncGen❹とつながりワード・クロックを受信。オーディオ・アウトに関してはスイッチャーのRADIAL SW8 MK2❺に入力され、メインのLiveにトラブルがあった際、サブへ切り替えられるようになっていた。

またメインとサブのLiveには、MIDIコントローラーAKAI PROFESSIONAL APC40❻の後段にICONNECTIVITY IConnectMIDI4+❼を接続することで、同じMIDI信号をパラで送信。IConnectMIDI4+には上田のM-AUDIO Evolution UC-16❽も接続され、リモートでLiveのエフェクトをコントロールできるようになっていた。上田のもとには、音源+シーケンサーのROLAND MC-307❾とKORG Kaosspad KP3❿もスタンバイ。

 

オンビートのままロケーターを飛ばせるABLETON Live

AA=の曲は上田が制作しており、新作『#5』ではミックスまで自身で行っているという。曲で使われる音は、ギター/ベース/ドラム以外にもシンセサイザーや打ち込みのビートなどを多く取り入れているのが印象的だ。上田はこう語る。「基本的に生演奏とトラック系の音が混ざって一つになっている音楽を作ることが自分のスタイルです。なので、ライブでもしっかりと曲を再現できるように草間さんにマニピュレートを一任しています」

現在AA=のマニピュレーターとしてステージにも立つ草間敬氏に、ABLETON Liveを主体としたシーケンス・システムについて話を聞いていこう。

ABLETON Liveで見るAA=のライブ用セッション

▲ ABLETON Liveで見るAA=のライブ用セッション。アレンジメントビューにはセット・リストに沿って各曲のシーケンス・データが並んでいる

「Liveは名前の通りライブ使用時の安定性が高く、一度も止まったことがありません。でも一応バックアップ・システムも用意しています。またこのソフトの良いところは、あらかじめロケーターで指定しておいたポイントへオンビートのまま小節単位で飛ばせることですね。ライブの演出で長さが決まっていない個所があるのですが、そこはループを何小節か並べておいて、ループ開始点にロケーターを打っておけば何度でもループできます。“次に進もう”という合図が来たら、その先に打っておいたロケーターにオンビートでジャンプできます」

 

6月11日の恵比寿LIQUIDROOM公演でのシステムは、2台のAPPLE MacBook ProにメインとサブのLiveがインストールされていた。2つのLiveは全く同じ内容で、事前に草間氏がセット・リストに合わせたプロジェクト・ファイルを用意。そのアレンジメントビューには、MCやアドリブに対応できるようにあらかじめループさせる個所にロケーターが打たれていた。また、音源制作時のデータを元に作られたシーケンスがオーディオ・クリップとして並び、それらを基本トラック、声+エキストラ、そしてクリックなどに分けて出力。“エキストラ”は、『#5』に収録の「BATTLEFIELD」での上田によるブレイクビーツ演奏のために用意されたチャンネルで、PAエンジニアが演奏の雰囲気を見つつ、自由に音量を調整する。オーディオI/Oは、FOCUSRITE Scarlett18I20で、メインとサブのそれぞれに個別のユニットを用意。これらの同期方法について草間氏がこう解説する。

ROUTING

Scarlett18I20にはマスター・クロックのART SyncGenからワード・クロックをS/P DIFで送っています。なので、2台のLiveの再生がズレていくということがないんです。またMIDIコントローラーのAKAI PROFESSIONAL APC40にLiveのトランスポートを割り当てていますが、後段にICONNECTIVITY IConnectMIDI4+を接続し、同じMIDI信号をメインとサブにパラで送れるようにしているので、双方のタイミングはほとんどズレません。ただし、同じ仕様のMacBook Proでバッファー・サイズなどの設定を合わせていても、MacBook Pro自体の個体差やMIDIの揺れによる数msの誤差は出てしまいます。でもタイム・コードで同期しても同程度の誤差がでますし、問題の無い範囲です。リハーサル時にシステム・チェックとしてメンバーに内緒でメインとサブの切り替えを行うこともあるのですが、みんな変わったと感じることなく演奏を続けています」

2台のScarlett18I20からの出力はRADIAL SW8 MK2に入り、メインのLiveにトラブルが起きた場合に自動的にサブへ切り替わるようになっている。SW8 MK2の出力はPAシステムのインプットに送られていた。

AKAI PROFESSIONAL APC40

▲ MIDIコントローラーのAKAI PROFESSIONAL APC40。Liveのトランスポートがアサインされている

 

UC-16でブレイクビーツを即興演奏

ライブ本番の「BATTLEFIELD」のアドリブ・セッション時には、上田とドラマーZAXとの“バトル”が行われた。エキストラ・トラックのブレイクビーツに対し、上田がリアルタイムにエフェクト処理を施すというもので、ドラムの生演奏にコール&レスポンスするようなパフォーマンスを披露。上田はコントローラーにM-AUDIO Evolution UC-16を使っていたが、どのように演奏していたのだろうか?

UC-16は草間さんのシステム内にあるICONNECTIVITY IConnectMIDI4+に接続し、Live上のエキストラ・トラックに挿したエフェクトのパラメーターをいじれるようにしています。具体的にはBeat Repeatやフィルター、モジュレーション系のエフェクトをコントロールしていますね。このトラックはPAエンジニアの方に生ドラムに負けないくらいの音圧にしてもらっています」

上田の持ち場には、UC-16以外にもROLAND MC-307KORG Kaosspad KP3がスタンバイしていた。

▲ROLAND MC-307

▲ 上田の持ち場に置かれていたROLAND MC-307。アドリブ時に、シーケンス・パターンを再生させていた

「この2つは草間さんのシステムとは同期していませんが、UC-16と同じようにアドリブ演奏に使っています。MC-307は、シンセ系の音をメインにして内蔵シーケンサーに打ち込んでおいたパターンを即興で流していくんです。Liveと同期していないためテンポに多少のズレが出てきてしまいますが、“TURNTABLE EMULATION”スライダーや“BPM” ボタンを使って、その場で補正しています。以前から愛用している古い機材ですが、アナログのターンテーブルのように融通が利いて便利なんです。Kaosspad KP3MC-307の後段に接続していて、ディレイをかけたり、シンセ音を出すなど色付け程度の操作をしていますね」

aa-live

マシンが出す音と人間の出す音のぶつかり合いをテーマに音楽を作る上田。今後のライブについてこう締めくくってくれた。
「従来とは違い“トラックとセッションできる”という状況になってきていますが、まだまだ演出の可能性を広げていきたいと思っているんです。機材をいじっているうちに機能に触発されてアイディアが生まれてくることがあるので、それを演出や音作りに還元していきたいですね」

サウンド&レコーディング・マガジン 2016年8月号より)
 

 

AA=リリース&ライブ情報

【配信情報】

<配信日時>2016年10月7日(金)0:00〜
「LIVE #5 AT LIQUIDROOM 20160611」
<価格>アルバム 1,600円 / 単曲 250円

 
<収録曲>
01 ?erusrofyzarcuoyera (LIVE #5 AT LIQUIDROOM 20160611)
02 INEQUALITY (LIVE #5 AT LIQUIDROOM 20160611)
03 DOWN (LIVE #5 AT LIQUIDROOM 20160611)
04 憎悪は加速して人類は消滅す 〜Hatred too go fast, Vanishing all human〜 (LIVE #5 AT LIQUIDROOM 20160611)
05 FREE THE MONSTER (LIVE #5 AT LIQUIDROOM 20160611)
06 Such a beautiful plastic world!!! (LIVE #5 AT LIQUIDROOM 20160611)
07 M SPECIES (LIVE #5 AT LIQUIDROOM 20160611)
08 3.600.000.000 = 62 (LIVE #5 AT LIQUIDROOM 20160611)
09 divide 〜プレイングカードは分離壁の夢を見るか?〜 (LIVE #5 AT LIQUIDROOM 20160611)
10 BATTLEFIELD TvsZ (LIVE #5 AT LIQUIDROOM 20160611)
11 →MIRAI→ (ポストミライ) (LIVE #5 AT LIQUIDROOM 20160611)
12 Shine 輝 (LIVE #5 AT LIQUIDROOM 20160611)

<iTunes>
https://itunes.apple.com/jp/album/id1156374410?app=itunes&ls=1
<レコチョク>
http://recochoku.jp/album/A1005014441/
<Amazon>
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B01LYK0ZZU
<mora>
http://mora.jp/package/43000005/VEAWA-33764/

 

【DVD情報】

「TOUR #5」
<発売日>2016年12月7日(水)
<形態/価格>初回限定盤 VIZL-1083 6,500円 (税抜) 2DISC (DISC2詳細後日発表)
通常盤 VIBL-819 4,800円 (税抜) 1DISC

 
<DISC1収録曲>*初回通常共通
TOUR #5 at LIQUIDROOM 20160611
01. ?erusrofyzarcuoyera
02. INEQUALITY
03. DOWN
04. 憎悪は加速して人類は消滅す 〜Hatred too go fast, Vanishing all human〜
05. FREE THE MONSTER <Masato (cold rain) 、Koie (Crossfaith)との共演>
06. Such a beautiful plastic world!!!
07. WARWARWAR
08. posi-JUMPER
09. M SPECIES <Kj (Dragon Ash)との共演>
10. 3.600.000.000 = 62
11. GREED…
12. The Klock
13. HUMANITY2
14. divide~プレイングカードは分離壁の夢を見るか?~
15. BATTLEFIELD TvsZ
16. I HATE HUMAN
17. FREEDOM
18. →MIRAI→ (ポストミライ) <J.M. (0.8秒と衝撃。)との共演>
 
-ENCOLE-
01. ALL ANIMALS ARE EQUAL
02. LOSER
03. PEACE!!!
04. Shine 輝
 

【先着予約・購入特典AA= TOUR #5 スペシャルクリアファイル】
<対象>
・タワーレコード全国各店/タワーオンライン
・HMV全国各店/ローチケHMV
・Amazon.co.jp
*特典の数には限りがありますので、無くなり次第終了となります。

 

【ライブ情報】

AA= VERSUS LIVE 〜X-FADER #1 to #2〜
 
2016年12月11日(日) 
大阪・OSAKA BIG CAT /w POLYSICS (17:30開場 18:00開演)
2016年12月18日(日) 東京・SHIBUYA TSUTAYA O-EAST /w Nothing’s Carved In Stone (17:30開場 18:00開演)
 
*チケット情報
前売:4,500円 (税込/1drink別)  当日:5,000円 (税込/1drink別)

 
<チケット先行予約>
<大阪>
・GREENS 2016年9月30日(金)〜10月4日(火)23:00
 http://www.greens-corp.co.jp/schedule/info/index.php?event_id=5525
・イープラスプレオーダー 10月1日(土)12:00~10月6日(木)18:00
 http://eplus.jp
 
<大阪&東京>
・Yahoo!チケット 2016年10月1日(土)15:00~10月10日(月)23:59
 http://tickets.yahoo.co.jp/
・楽天チケット 2016年10月1日(土)11:00~10月11日(火)9:59
 http://ticket.rakuten.co.jp/

 

 

サウンド&レコーディング・マガジン2016年8月号にて、AA=はじめ、SEKAI NO OWARI、DJ KRUSH、Neutral、LM.Cの5組のライブ・エレクトロニクス・システムを紹介しています。
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