伊東俊郎〜音のプロが使い始めたECLIPSE TDシリーズ

ECLIPSE TDユーザー・レポート by サウンド&レコーディング・マガジン編集部 2018年10月31日

Photo: Takashi Yashima

Photo: Takashi Yashima

TD-M1はラージ・スピーカーが小さくなったもの

タイムドメイン理論に基づき設計されたECLIPSEのスピーカー、TDシリーズ。2001年に最初のモデルがリリースされるやいなや、ミックスやマスタリングなど正確な音の再現が要求される現場で高い評価を獲得し、その後もモデル・チェンジやラインナップの拡充が続けられている人気シリーズだ。特に2014年にリリースされたTD-M1はアンプや24ビット/192kHz対応のDAコンバーターを内蔵したほか、USB接続やAirPlayにも対応したことで、使い勝手が格段に向上。これまで以上に幅広い層から人気を集めている。そんなECLIPSE TDシリーズの魅力をトップ・プロに語っていただくこのコーナー、今回登場していただくのはエンジニアの伊東俊郎氏。渡辺美里の「My Revolution」や米米CLUB「浪漫飛行」といった大ヒット曲を手掛けたほか、山下達郎、佐野元春、TM NETWORKなど多くのアーティストたちから厚い信頼を寄せられているベテランだ。最近ご自宅でTD-M1を使用してミックスを行っているとの情報キャッチしたので、早速お話をうかがってみることにした。

この記事はサウンド&レコーディング・マガジン2018年11月号から編集・転載したものです。

 

音の直進性が高く正確な音が耳に届く

これまで自宅ではニアフィールド・スピーカーを数種類設置してモニターを行っていた伊東氏だが、あるときふと“このセッティングだと大仰でリラックスできない……”と感じ、小型スピーカーの導入を検討。評判を耳にしていたTD-M1を試聴したところ、音が良かったので購入したそうだ。

「とにかく音の直進性がいいんです。普通の箱形のスピーカーだとエンクロージャーの後ろや横からも音が鳴って、壁に反射した音も聴こえちゃうんだけど、TD-M1は直接音だけが耳に届く。イメージで言うとヘッドフォンがちょっと離れたところにある感じですね。部屋の影響をあまり受けないので助かります」

またフル・レンジであるがゆえの正確さも、ミックスの仕事をする上でポイントが高いとのこと。

「もちろん、2ウェイや3ウェイのスピーカーの方が低音も高音も出ますから気持ちはいい。でも、われわれの仕事はそれぞれの音がどういうふうに鳴っているかを見極め、適切な処理を行い2ミックスを構築していくことですから、正確な音が鳴っていないことには始まりません。その点、フルレンジのスピーカーは正確で安心感がありますね」

さらに伊東氏は、“TD-M1は商用スタジオのラージ・スピーカーと同様の使い方ができる”とさえ語る。

「自分にとって、ラージは音のレンジと位相の確認を行うものです。特に位相の確認は重要で、ミックスをしている上で楽器をセンターに定位させたいのに、ほかの楽器との位相ずれによって高域が片側に寄ってしまうとか、低域がはっきりしないっていうことが起こり得るんですね。小さなスピーカーだとそれが分からないことが多いんですが、TD-M1だと分かる。低域についてもボリュームを上げていけばぐっと出ますし、超低域で何かおかしなことが起きていれば、位相の乱れとしてきちっとアラートを出してくれます。ですから、TD-M1はラージ・スピーカーが小さくなったものという感覚で使えているんです。自宅でTD-M1を使ってミックスしたデータを、商用スタジオに持っていってラージで確認してもらうことはよくありますが、そこで音が悪いと言われたことはないです。逆にラージのツィーターがへたっていることが分かってしまうことがありますね(笑)」

各帯域のアタックの出し方でタイミングを補正

TD-M1は位相が正確に見えるスピーカーだからこそ、ミックスを行っていくためには慣れが必要だと伊東氏は説く。

「TD-M1で作業すると音域ごとのアタックのスピードの差が全部出る。例えば、キックの音でも高い帯域の音とミッドローとが分離して聴こえてしまって最初はビックリします。でもそれは“今はこういう音になってますよ”と言われているだけなんです。自分の耳が慣れる……もっと言うと脳が慣れるまで時間を要しますが、これが正しいという認識に自分の脳を持っていって、その上で、さて、これをどうやって1つにまとめようか~という作業を開始するんです」

その作業を伊東氏は勘ではなく理詰めで行っている。

「まずはキックやベースなど低音だけをまとめて鳴らすんですけど、そのとき全部ハイカットして上の倍音が出ないようにするのがポイント。その状態でキックに対してベースが遅れている場合、ベースのハイを出していってアタック成分を前に出す。そうしてからキックのハイの出し方をベースのアタックに合うように調整していく。こうやって帯域の出し方でタイミングを補正することで、演奏者のグルーブを残しつついい低域が出来上がるんです。その要領で中低域、中域というように下から順に積み上げていくとミックスがうまくいきます。もっと慣れてくると、その曲のキーの基音のあたりから積んでいくと、ものすごくきれいにスペクトルが出て、訴えてくる音になります」

“きれいに積まれた倍音が出たときの快感はたまらない”とにこやかに語る伊東氏。氏の立体感あるミックスは、そんな緻密な作業の積み重ねであったのだ。

【PROFILE】エンジニア。音響ハウスからキャリアをスタートさせ、その後CBS・ソニー、スマイルガレージを経てフリーランスに。これまでに渡辺美里、TM NETWORK、米米CLUB、吉田美奈子、山下達郎、佐野元春、Hound Dogらの作品に、エンジニア/サウンド・プロデューサーとしてかかわる。特にTM NETWORKについては、デビュー時から長きにわたって制作に携わり、その華麗なサウンドの一翼を担っていた。

 

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■スピーカー・ユニット:グラスファイバー製8cmコーン型フルレンジ ■方式:バスレフ・ボックス ■再生周波数:70Hz~30kHz ■定格出力:20W(THD 1%/片チャンネル駆動時) ■最大出力:25W(THD 10%/片チャンネル駆動時) ■高調波ひずみ率:0.08%(1kHz/10W出力時) ■SN比:90dB以上 ■分離度:60dB以上 ■入力感度:950mVrms(20W出力時) ■入力インピーダンス:10kΩ ■消費電力:10W ■待機電力:2.7W(ネットワーク・スタンバイ時)、0.5W以下(完全スタンバイ時) ■外形寸法:155(W)×242(H)×219(D)mm ■重量:約5.3kg(ペア) ■価格:125,000円(ペア)

 

問合せ:デンソーテン http://www.eclipse-td.com/

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