プロが信頼を置く英国のブランド ASTON MICROPHONES〜島田由生

ASTON MICROPHONES連載 by 撮影:Hiroki Obara 2018年5月15日

ShimadaYYard

第2回 島田由生がステージに使う理由

 ASTON MICROPHONES(以下ASTON)は、SE ELECTRONICSの共同経営者であったジェイムス・ヤング氏とフィル・スミス氏が2015年に創業したマイク・メーカー。現在は単一指向&トランスレスのAston Origin(以下、Origin)とマルチパターン&トランス出力のAston Spirit(以下Spirit)という2種類のコンデンサー・マイクがラインナップされている。“Built in Britain”のコンセプトの下、ハイクオリティかつリーズナブルなこれらのイギリス製マイクは、さまざまな現場での活躍の機会が増えている。今回は、PAエンジニアの島田由生氏を横浜のライブ・バーTHE CLUB SENSATIONに訪ね、話を伺った。

 

島田由生
<Profile>1980年代からライブ音響に携わり、2006年に自身の音響&制作会社y-yardを設立。現在はKREVA、KICK THE CAN CREW、スピッツ、Ra:INなどの音響を担当しつつ、2010年のTHE CLUB SENSATION立ち上げ時から音響面をプロデュースしている

 

“ブリティッシュ”な店にマッチする英国製
ベースの低域〜中域の輪郭が見える音

横浜は日ノ出町にあるブリティッシュ・ロック・カフェ・バーTHE CLUB SENSATIONは2010年オープン。TENSAWやRa:INなどのベーシストとして知られるmichiaki氏がオーナーで、ヨーロッパ・ツアーで巡ってきた現地のライブ・ハウスをイメージして居抜き物件を改装。サウンド面でも自身が満足できるものを追求するため、旧知の島田氏が深くかかわることになった。島田氏はマイク選定についてこう語る。

 「店の雰囲気と、自分の好みで、マイクはヨーロッパ系でまとめました。新製品にも興味があるので、長年お付き合いしているトモカ電気さんから情報を得て、試してみています」

 

UKテイストでまとめられたTHE CLUB SENSATION店内。キャパシティはスタンディングで70、椅子席で50ほど。ロックWebマガジン『BEEAST』による投票制の「全国ライブ会場グランプリ」においてキャパ100未満部門で2年連続グランプリを受賞している

UKテイストでまとめられたTHE CLUB SENSATION店内。キャパシティはスタンディングで70、椅子席で50ほど。ロックWebマガジン『BEEAST』による投票制の「全国ライブ会場グランプリ」においてキャパ100未満部門で2年連続グランプリを受賞している

 

 そんな島田氏に新たに紹介されたのが、イギリス製マイクのASTON Spiritだった。実は島田氏、以前からコンデンサー・マイクを積極的にPAに使っていたそうだが、実際の使用状況を見て驚かされた。1本はベース・アンプのキャビネットに、もう1本はスネアにマイキングしているのだ。

 「ベース用は、キャビネットへクランプして使っています。この使い方でも振動の悪影響は感じていないです。むしろいい方向に振動が作用しているんじゃないか?と思うくらい。どっしりとした音像で、低域や中域の輪郭が見えてくる。特性としてはSpiritは高域が持ち上がったマイクだと思うのですが、ベースではそもそもその影響は無視できますからね」

 

ベース・アンプのキャビネットにクランプを介してSpiritを直接マイキング。振動による悪影響はほとんど感じられず、低域〜中域の輪郭がはっきりしているという

ベース・アンプのキャビネットにクランプを介してSpiritを直接マイキング。振動による悪影響はほとんど感じられず、低域〜中域の輪郭がはっきりしているという


 

 逆にスネアについては、そんなSpiritの特性を期待して使用しているという。

 「スネアは、高域を伸ばしたいと思うことが多いので。自分の好みもあって距離を離しておきたいということもあり、こちらはショックマウントを付けています。ハイハットの下付近に置けばプレイの邪魔にならないし、万が一スティックが当たっても波形形状のメッシュ・ヘッドが振動を吸収してくれると聞いているので、不安なく使っています」

 

ベース・アンプのキャビネットにクランプを介してSpiritを直接マイキング。振動による悪影響はほとんど感じられず、低域〜中域の輪郭がはっきりしているという

ベース・アンプのキャビネットにクランプを介してSpiritを直接マイキング。振動による悪影響はほとんど感じられず、低域〜中域の輪郭がはっきりしているという


 

生音とのマッチングが良い素直な高域の伸び
大音量ソースに耐えうる癖の無いマイク

 ベース・アンプとスネア、一見すると音量が大きいこと以外には共通項の少ない用途に同じSpiritを使用している島田氏だが、そこで得られるサウンドには共通点があるという。

 「THE CLUB SENSATIONはステージと客席が近いので、生音が直に届くんです。それをうまく使ったPAをすることで、お客さんへの伝わり方もより良くなる。その意味で、Spiritは生音とのマッチングがすごくいいと感じています。高域が伸びている部分に関しても、それがざらつきに感じられるマイクがある中、Spiritの高域は“素直に上がっている”だけで、ピーキーな感じはありません。実用を考えてそうした特性にしているのでしょうが、本来はフラットからスタートしているという印象があります。ちゃんと拾って、ちゃんと出してくれているマイクなんだなと。生音とのマッチングが良いというのも、そういう理由があるのかもしれません」

 THE CLUB SENSATIONについては、スピーカーのユニットやネットワークを更新したり、さまざまな改善を積み重ねてきたという島田氏。「マイクをSpiritに変えただけでガラッと変わったわけではありませんが」と前置きした上で、こう言葉を重ねた。

 「そのマイクの違いが分かる再生環境を作りましたし、その環境で聴いて、Spiritを使ったことでのメリットというか、生音との一体感は分かるんですよね」

 今後は、ツアーなどでもASTONマイクを活用してみたいと島田氏は付け加えてくれた。

 「以前、ホールPAにドラムのオーバーヘッド用としてスタジオ定番のラージ・ダイアフラム・マイクをペアで持ち込んだことがあったのですが、さすがに高級なマイクをツアーで持って回るのは難しい。何かトラブルがあったときにスペアが必要で。でも、手ごろなASTONのコンデンサー・マイクはそうした用途にも可能性があると思います。僕もまだいろいろ試している最中ではあるけれど、癖が無くて、これだけ音圧に耐えてくれるなら、どんな用途にも使えるでしょうね」

 

Aston Origin(写真左/オープン・プライス:市場予想価格39,600円前後)は単一指向性、Aston Spirit(右/オープン・プライス:市場予想価格54,000円前後)は無指向/単一指向/双指向を切り替えられるコンデンサー・マイク。いずれも金蒸着の1インチ径カプセルを備える。回路はOriginがトランスレス、Spiritがトランス内蔵。どちらもタンブル加工のボディは傷がつきにくく、波形形状のメッシュ・ヘッドでカプセルを保護。両モデルともPADと80Hzでのローカットを内蔵している

Aston Origin(写真左/オープン・プライス:市場予想価格39,600円前後)は単一指向性、Aston Spirit(右/オープン・プライス:市場予想価格54,000円前後)は無指向/単一指向/双指向を切り替えられるコンデンサー・マイク。いずれも金蒸着の1インチ径カプセルを備える。回路はOriginがトランスレス、Spiritがトランス内蔵。どちらもタンブル加工のボディは傷がつきにくく、波形形状のメッシュ・ヘッドでカプセルを保護。両モデルともPADと80Hzでのローカットを内蔵している


 

【製品サイト】
Aston Origin
Aston Spirit

 

取材協力:The CLUB SENSATION
http://sensation-jp.com/

サウンド&レコーディング・マガジン 2018年6月号より転載

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