プロが信頼を置く英国のブランド ASTON MICROPHONES

ASTON MICROPHONES連載 by 撮影:Hiroki Obara 2018年2月23日

masudatosh

第1回 益田トッシュが愛用する理由

ASTON MICROPHONES(以下ASTON)は、SE ELECTRONICSの共同経営者であったジェイムス・ヤング氏とフィル・スミス氏が2015年に創業したメーカー。コンデンサー・マイクを中心に手掛けており、“Built in Britain”のコンセプトの下、ハイクオリティかつリーズナブルなモデルを追求している。その実力を明らかにすべく、今月からASTON製品を愛用しているプロ・クリエイターにインタビューを敢行していく。初回はAston Origin(以下Origin)とAston Spirit(以下Spirit)の2つのコンデンサー・マイクをメインに使用する作編曲家、益田トッシュに話を聞けたので早速お届けしよう。

 

益田トッシュ(トップ写真)
<Profile>映画『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』の挿入歌の作編曲や、NHKオンライン『みいつけた!』のエンディング曲「グローイングアップップ」(作詞:宮藤官九郎、作曲:星野源)の編曲のほか、アーティストへの楽曲提供や編曲などを行う。現在は6月23日公開予定の犬童一心監督/沢尻エリカ主演の映画『猫は抱くもの』にて挿入歌などを担当。

 

底面のマイク・スタンド用アダプターや
ポップ・フィルターなど特徴的な機能を実装

益田がASTONの製品を導入するきっかけとなったのは、音響会社サンフォニックスのサウンド・エンジニア、安藤拓也氏のマイキングをライブの現場で見たことだったと言う。
「2017年の夏にザ・プリンス パークタワー東京で行われた“TOKYO MUSIC CRUISE 2017”にNao Yoshiokaが出演したときです。僕はマニピュレーターとして参加したのですが、安藤さんがベース・アンプやドラムのトップに立てたマイクを見て“すごくかっこいいな”と思ったんですね。そのときに撮った写真を見てみると、ベース・アンプにOrigin、ドラムのトップにはSpiritが立っているものの、初めて目にするマイクだったので、会場のラグジュアリーな雰囲気に合ったデザインがまずは印象的でした。それですぐにOriginとSpiritを入手して使い始めたところ“外観だけでなく音も良いぞ”と

 

▲Aston Origin(写真左/オープン・プライス:市場予想価格33,000円前後)は単一指向性、Aston Spirit(同右/オープン・プライス:市場予想価格50,000円前後)は無/単一/双指向性を切り替えられるコンデンサー・マイク。いずれも金蒸着の1インチ径カプセルを備え、回路はOriginがトランスレス、Spiritがトランス内蔵だ。タンブル加工のボディは傷がつきにくく、ハードな現場でも安心。

▲Aston Origin(写真左/オープン・プライス:市場予想価格33,000円前後)は単一指向性、Aston Spirit(同右/オープン・プライス:市場予想価格50,000円前後)は無/単一/双指向性を切り替えられるコンデンサー・マイク。いずれも金蒸着の1インチ径カプセルを備え、回路はOriginがトランスレス、Spiritがトランス内蔵だ。タンブル加工のボディは傷がつきにくく、ハードな現場でも安心。

 

OriginとSpiritは共にタンブル加工の胴体を備え、ハードな環境にも向く頑丈な仕上がりとなっている。サウンドの要は、30人以上のエンジニアやプロデューサーによる監修の下で厳選されたカプセルだ。
「まずは2つのマイクをボーカルやアコースティック・ギターの録音に試してみて、“ものすごく音楽的なトーンがするな”と感じました。世の中には原音忠実をうたったマイクも存在しますが、僕にとってはマイクを通った音に存在感があるかどうか、それをオケに入れたときにきちんと“座ってくれるかどうか”の方が重要なんです。その点から考えても素晴らしいと思いましたね。また2つとも、底面にマイク・スタンド用アダプターを備えているので、ショック・マウントを使わずともスタンド設置できるのが便利。もちろんシビアな録音の際には、専用のショック・マウント(別売)を使います。通常はゴムひもになっている部分が樹脂でできているため、切れたりしないのが良いですね。マイク本体に話を戻すと、ヘッドの中にポップ・フィルターが入っていて、超近接マイクでない限りは別途ポップ・ガードが要らないのも素晴らしいと思います

▲メッシュ・ヘッドは波打ったような形状で、衝撃を受けた際に自ら歪曲することでショックを吸収。中には巣織り状のポップ・フィルターが入っている

▲メッシュ・ヘッドは波打ったような形状で、衝撃を受けた際に自ら歪曲することでショックを吸収。中には巣織り状のポップ・フィルターが入っている

 

▲XLR端子の横にはスタンド・アダプターがあり、スタンドに直接取り付けられる

▲XLR端子の横にはスタンド・アダプターがあり、スタンドに直接取り付けられる

 

押し出し感のあるSpiritのサウンド
カラっとした抜けの良い音がするOrigin

益田が音色の面で特に気に入っているのはSpiritだ。
Spiritの回路にはトランスが入っているんですよ。僕はトランスの音がすごく好きで、これまでもビンテージ・トランスをさまざまな機材と併用するなどしてきました。だからSpiritについても、“トランスの音色をうまく生かしているな”と感じますね。昨今のリーズナブルなマイクにはハイ上がりなものが多い印象で、パッと聴きはハイファイに感じられるのですが、やっぱり芯が無かったりする。そんな中、Spiritの音はどっしりとしていて押し出し感があり、例えば歌の低域に関しても迫り来るような感じがあります。とは言えこもってはいないので、全体としてはバランスが良く素直な音ですね。僕はSpiritを通った声の音色がすごく好きなのですが、ボーカルだけでなくさまざまなソースにファースト・チョイスとして使えると思います。このSpiritとすみ分けをするかのように、Originはカラっとした抜けの良い音がします。もちろんシャリシャリとした感じではなく、二階堂ふみちゃんの歌録りに使った際には、声のきらびやかな成分を非常にうまく収めることができました。Originを使わなければ、あそこまで良い感じにはならなかったと思いますね

益田は2つのマイクのほか、同社のリフレクション・フィルターHaloも愛用。「他社のものに比べてずっと軽く、上下左右を包み込むようなフォルムなのでマイクの位置や角度を調整しやすいところも気に入っています」と語る。

 

▲特許取得のPETフェルトを使ったリフレクション・フィルター、Halo(オープン・プライス:市場予想価格33,000円前後)。このフェルトは約70%がペット・ボトルのリサイクル素材から成り、軽量化と表面積の拡大に成功。最大約10cmの奥行きがマイクを包み込み、従来のリフレクション・フィルターでは難しかった上下方向の吸音/遮音を実現している

▲特許取得のPETフェルトを使ったリフレクション・フィルター、Halo(オープン・プライス:市場予想価格33,000円前後)。このフェルトは約70%がペット・ボトルのリサイクル素材から成り、軽量化と表面積の拡大に成功。最大約10cmの奥行きがマイクを包み込み、従来のリフレクション・フィルターでは難しかった上下方向の吸音/遮音を実現している

 

▲マイクの高さと前後の位置を微調整できる機構も特徴

▲マイクの高さと前後の位置を微調整できる機構も特徴

さてASTONは、製品の設計/開発/組み立てのすべてをイギリス国内で行っている。それでいてOriginを30,000円ほど、Spiritを50,000円ほどという価格に抑えているので、パーツの集め方などにも独自のノウハウがあるのだろう。
「近ごろは、アウトボードのメーカーなどにしても“価格を抑えつつ良質なものを作る”という企業が出てきています。私見ですが、彼らに共通するのは“品質管理能力の高さ”だと考えていて、それがASTONにも備わっていると思うんです。クオリティ・コントロールこそブランド力……OriginやSpiritからはそんなメッセージを感じますね」

 

【製品サイト】
Aston Origin
Aston Spirit

 

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