木村健太郎〜KORG DS-DAC-10Rを使う理由

KORG DS-DAC-10R

DSD対応オーディオ・インターフェースKORG DS-DAC-10Rを使う理由 by サウンド&レコーディング・マガジン編集部 2017年1月11日

撮影/小原啓樹

撮影/小原啓樹

DSDは音数が少なく空間性を感じさせる音楽に合う

KORGは2006年にMR-1、続けてMR-1000を発売したのを皮切りに、2008年には1Uラック・マウントのMR-2000SさらにはMR-1の後継機MR-2と、プロの使用に耐え得るDSDレコーダーを作り続けている。一方で2012年にはパソコンとUSBで接続してDSD再生が行えるDAコンバーターDS-DAC-10をリリース。その後も新機種を次々と市場に投入し、オーディオ・マニアから支持を集めている。DS-DACー10Rはその2つのラインを1つに統合した製品で、基本はパソコン用DAコンバーターなのだが、末尾に“R”とあるように録音が可能。つまりはDSD録音ができるオーディオ・インターフェースとして使えるのだ。その魅力についてプロに語っていただく本連載、3回目はマスタリング・エンジニア木村健太郎氏の登場だ。 

MR-2000Sで録ったマスターの持ち込みが増えた

木村氏はオノセイゲン氏が主宰するサイデラ・マスタリングで“史上最年少のマスタリング・エンジニア”としてキャリアをスタート。その後、小泉由香氏のオレンジ設立に参加し、1998年からは自身のスタジオKIMKEN STUDIOをベースに活動している。確かな耳に裏打ちされた丁寧なサウンド・トリートメンと最新機材への造詣の深さにより、電気グルーヴ、クラムボン、相対性理論など一癖も二癖もあるアーティストから絶大なる信頼を得ている。そんな木村氏がDSDと出会ったのはサイデラ・マスタリング時代であったという。

「セイゲンさんが1998年にPUFFYのアルバム『FEVER FEVER』の録音〜ミックスを手掛けられた際に、SONYがプロトタイプとして作ったDSDレコーダーが使われ、そのとき初めてDSDの音を体験しました。それまではPCMの仕事がほとんどでしたから、DSDはそれと比較してものすごくリアル……ライブを聴いているような生々しい音がしましたね」

その後、オレンジ時代はDSDに接する機会は無かったが、自身のスタジオを構えてからはDSDがミックス・マスターとして持ち込まれるケースが増えていったという。

「KIMKEN STUDIOを始めた当初はSONIC SOLUTIONSのシステムを使っていて、その後MERGING TECHNOLOGIESのPyramixに変更したのですが、DSDを扱うためのDSPボードやI/Oは導入しなかったので、PCMの再生しかできなかったんです。なので、DSDマスターを再生するためにKORGのDSDレコーダーMR-2000Sを購入しました。実際にMR-2000S使ってみてPUFFYのときと同じような生々しさを感じたのと、あと音がとてもキレイだなと思いました」

その後、PyramixがネイティブでDSDに対応したのを機に、2012年にI/OであるHorusを導入してバージョン・アップ。現在では持ち込まれたDSDマスターの再生用としてPyramixを使っているという。

「PyramixとHorusでDSDマスターを再生していて気がつくのはMR-2000Sのレコーダーとしての優秀さですね。最近ではbonobosの『23区』、そして牛尾憲輔さんが手掛けた映画『聲の形』のサウンドトラックがMR-2000Sで録られたマスターだったのですが、両方ともとてもいい音で録れていました」

5万円でこの音が録れるDS-DAC-10Rはすごい

今回、DS-DAC-10Rを試していただいての感想を伺うと「MR-2000Sに通じるKORGの音がした」と語る。

「MR-2000Sと同じ音で録れますね。もちろん、別途コンピューターは必要になりますが、5万円くらいの価格の機材でこの音が録れるのはすごいと思います。目玉の機能であるDSDフォノ・イコライザーを使ってアナログ・レコードも録ってみましたが、とてもいい音で録れました」

昨今はミックス・ダウンをDAWの内部でファイルとして書き出すことが一般的になっているが、より良いマスターを作るために、アナログ・コンソールでミックスし、別のレコーダーにマスターを録音する方法も検討していいのではと木村氏は続ける。

「bonobosの『23区』も牛尾さんの『聲の形』のサントラも、アナログ・コンソールでミックスしたものをMR-2000Sに落としているんです。その際、PCMでも落としていて、聴き比べた上でDSDの方がいいと判断し、そっちがマスターとして持ち込まれたんです。決して最初からDSDと決めていたわけではなく、音楽に合っている方を選んだということなんです」

DSDに合う音楽と合わない音楽がある……とはよく話題なるテーマだが、木村氏はどう考えているのだろう?

「やっぱりすき間のある音楽は合いますね。逆に音数が多いバンド・サウンドには合いません。bonobosはバンド編成ですが、今までよりちょっとアダルトというかアーバンな傾向になっていて、アレンジや演奏のすき間が多くて空間を感じさせる音楽性なんですね。牛尾さんのサントラも非常に繊細なサウンドで構成されていましたのでDSDがとても合います」

マスタリングをする際の選択肢としてDSDを積極的に活用している木村氏。今後はKORG純正のDSDエディターAudioGateが、さらに発展してくれることを望むと最後に語ってくれた。

「現状のAudioGate4は2tr専用エディターですが、これがマルチトラックになり、さらにDSDベースでのEQも装備されれば、マスタリングはもちろんライブ録音のミックス用としても重宝すると思うんです。現状でもフォノ・イコライザーが実現できているわけですから、きっとすぐにできると思うんですけどね」

DS_DAC_10R_for-web

Presented by KORG
サウンド&レコーディング・マガジン2017年1月号より転載

KORG

DS-DAC-10R

オープン・プライス(市場予想価格5万円前後)
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】
●チャンネル数:2 ●入出力端子:ライン・イン/フォノ(RCAピン)×2、ライン・アウト(RCAピン)×2、ヘッドフォン(標準)×1 ●入力フォーマット:2.8MHz、5.6MHz(以上1ビットDSD)、44.1kHz、48kHz、88.2kHz、96kHz、176.4kHz、192kHz(以上16ビット/24ビットPCM) ●周波数特性:10Hz~40kHz(±1dB) ●S/N:105dB(TYP.)20Hz~20kHz、IHF-A ●接続:USB2.0 ●オーディオ・ドライバー:ASIO2.1、WDM、Core Audio ●電源:USBバス・パワー(5V 500mA) ●外形寸法:155(W)×184(D)×49(H)mm(突起部含む) ●重量:1.1kg

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