Artist Interview 1:滝 善充(9mm Parabellum Bullet)

アーティストがApollo Twinを選ぶ理由 by Sound & Recording Magazine編集部  2014年10月31日

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UAD-2システムとオーディオ・インターフェースを統合し、精度の高いプラグインのかけ録りまで実現したUNIVERSAL AUDIO Apolloシリーズ。最新モデルとなるApollo TwinはThunderbolt接続のMac用インターフェース。デスクトップ・タイプながら、最高10イン/6アウト、24ビット/192kHzのレコーディングに対応。UADプラグインのかけ録りはもちろん、Unisonテクノロジーにより入力信号をモデリングのマイク・プリアンプで増幅できる画期的な製品となっている。現代のスタジオワークに必要な機能を網羅したこのコンパクトなI/Oは瞬く間にクリエイターの注目を集め、発売からほどなくして多くのプロフェッショナルが自身の制作環境にApollo Twinを組み込み始めている。ここでは開発者や既にApollo Twinを実戦投入しているアーティストのインタビューを通して、このモダンなインターフェースの魅力を明らかにしていきたい。 Photo:Hiroki Obara

 

機動性と音質を考え合わせるとオーディオ・インターフェースはApollo Twin一択になる

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【滝 善充】9mm Parabellum Bulletではギター/コーラスのほか大半の作曲を担当。栗山千明やIA、mudy on the 昨晩への楽曲提供やプロデュースも積極的に行う。コンパクト・エフェクターやケーブルなど音楽制作機材の自作マニアでもある Support:Malmo

05Release
『生命のワルツ』
9mm Parabellum Bullet
ユニバーサル:UPCH-80399

 

スピード感あふれるギター・プレイとメロディアスな楽曲で9mm Parabellum Bullet(以下9mm)の屋台骨を支える滝 善充。機材好きとしても知られる彼が、このところオーディオI/OとしてApollo Twinを現場に投入しているという情報を編集部は入手。UADプラグインを含めた普段の活用法について聞いてみた。

ツアー先での本気の録音を見据えApollo Twinを導入

まずApollo Twinを導入した経緯について滝に聞くと、「可搬性の高さがポイントでした」とその理由について語り始めた。
「僕は普段の制作をAVID Pro Tools 10メインで行っていて、最近までDISIDESIGN 002 RackをI/Oとして使っていたのですが、可搬性に問題があったため、コンパクトで音の良いオーディオ・インターフェースをずっと探していたんです。そんなときにApollo Twinの広告を目にして、Realtime Analog Classics  Bundleが付属するお得感もあり、興味を引かれました」
9mmの大半の作曲を手掛ける滝は、これまでもツアー先などでハンディ・レコーダーを使ってメモ的な録音を行ってきたという。
「その際、“もう少し本テイクとして使えるようなクオリティで録れたらいい”と、ずっと感じてきました。制作に対する本気度をツアー先にまで持ち込みたいというか……9mmはもちろんですが、僕はそれ以外のプロジェクトも並行して手掛けているので、自分が心地良く制作できる環境を持ち運べたらいいと考えていました」
UADプラグインについても「仲の良いエンジニアがミキシングで使う機会が多く、一緒にUNIVERSAL AUDIO 1176LNの実機とUADプラグインを聴き比べたこともあります」と続ける。
「そうした経験から、UADは“自分でも持っていたら楽しいだろうな”と思っていました。しかもApollo Twinはプラグインのかけ録りもできるということで、結局ほぼ即決で導入しました」

UA 610-Bのゲインを突っ込んで“小音量でも存在感のある録り音”を得る

ギターだけでなく鍵盤からドラムまでマルチにこなす滝。Apollo Twinの導入後、早速さまざまな楽器を録音してみたという。
「まずプリアンプの音質ですが、高域がよく伸びて、とてもスッキリしています。マニュアルには“Super Natural”と書かれていましたが、その通りの印象を受けました。これまでも幾つかコンパクトなオーディオ・インターフェースを試したことがあったのですが、録り音に変なピークがあり、音像がゴロついているものが多かったんです。その点Apollo Twinのプリアンプは変な色付けが無く、扱いやすい音に感じました」
Realtime Analog Classics Bundleに含まれるUA 610-Bを使ったギターのかけ録りについては、次のように音の印象を語る。
「若干高域が丸くなりますが、クリアさは残したまま太くなる印象でした。1970年代のアメリカっぽい音というか、元気でバリッとしたノリがいい。以来、太い音で録りたいときは迷わずUA 610-Bを挿しています」

 

01◀Apollo Twin付属のRealtime Analog Classics Bundleに含まれるUA 610-B。Unisonテクノロジーに対応し、真空管のニュアンスを加味したかけ録りが可能になる。「インプット・ゲインを突っ込み気味にしたりEQで ギターの高域を足したりと、イメージに沿った音にして録ることが多い」と滝は語る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

滝は「僕は性格的に“かけ録り命”です。とにかく気に入った音で演奏したい」と続ける。
「やはりパッと出た音が気に入ったものでないと、録音ボタンを押す気にもなれないので。僕は“カッ”と来る音……スピードと音圧が感じられて、ボリュームを下げてもショボくならない音が好きです。UA 610-Bはゲインの突っ込み方で音の太さを調整できて、ゲインをパンパンに突っ込んだ状態でレベルを下げると、音量は小さめでもパツッと存在感のある音で録れるんですよ。あとギターの弦がタレてきたら、EQで高域を持ち上げたり(笑)。さらに気合を入れたいときは1176SEやリバーブまでかけて録ってしまいます」

 

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▲同じくRealtime Analog Classics Bundleに含まれる1176SE。1176LNから派生したプラグインで、同等の音色キャラクターながらDSP消費量を大幅に削減。出力トランスのエミュレーションによりウォームなキャラクターを再現し、軽くコンプをあててレベルをそろえる用途から激しいひずみまで幅広く対応する

 

その1176SEは「実機同様、音作りのキャパシティが大きい」という。
「ギターをクリーンに録りたい場合は、軽くあててレベルをそろえる使い方もできますし、逆に強くひずませることもできる。ギターを音像全体になじませたいときもアタック・タイムの操作で音の前後感をコントロールできるところが気に入っています。音量を絞っても音の輪郭が崩れないところもいいですね」
1176の実機とプラグインとの音の印象については、次のように語る。
「僕は、UADの方が実機よりもキャラクターが“濃い”気がします。良い意味でデフォルメされた音……1176の実機って、実はハイファイだったりしますよね? その点、UADはコッテリした音になるように感じます。その意味では、かけ録りして面白みがあるのはプラグインの方ではないでしょうか。トラック数を気にせず、気軽にどんどん立ち上げられるのもいいですね」
ほかにお気に入りのUADプラグインとして、滝はHelios Type 69 EQの名を挙げた。
「これは劇薬というか、挿すだけで低域がボコッと持ち上がるんですよ。高域がひずむ感じも好きですね。音にやる気が出まくる不思議なプラグインで、EQと考えない方がいいかもしれません。9mmのメンバーにデモを聴かせるときは、マスター・フェーダーにこのプラグインを挿してハッタリをかますこともあります(笑)」

 

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▲滝が“劇薬”と語るHelios Type 69 EQ(199ドル)。1969年から1979年にかけて生産されたHELIOSコンソールのEQセクションをエミュレートした3バンドのEQプラグイン で、低域は50Hz固定のステップ式シェルフ・フィルター(−3/−6/−9/−12/−15dB)または周波数選択可能なピークEQ(60/100 /200/300Hz)として動作。音に元気が出るため、滝はデモのマスターに挿すこともあるという

 

Consoleソフトによるモニターは現在のところ最強

滝はApollo Twinの仕様について、「このサイズでアナログ出力を4系統備えているところも導入した理由の一つです」と語る。
「僕はコンパクト・エフェクターを自作するのですが、2アウトのオーディオ・インターフェースでは、外部エフェクターをDAWと併用するのは現実的ではありません。その点、Apollo Twinは、例えばペダルのディストーションで音を汚して戻すといった作業が手軽にできるのがいいですね。002 Rackは配線を変更する場合、その都度ラックからネジを外して取り出さなければなりませんでしたが、Apollo Twinは卓上でケーブルを付け替えられるので、作業が随分楽になりました。デジタル・インを併用すれば10インまで対応するので、オプティカル・アウトの付いたプリアンプを使ってドラムのマルチ録音にも挑戦してみたいです」

 

04◀Apollo Twinはモニター・アウトL/Rに加えてアナログのライン・アウト3/4も装備(すべてフォーン)。DAWの再生音をいったん外に出し、コンパクト・エフェクターなどで加工した後にDAWに戻すという作業が手軽に行える

 

 

 

 

 

滝は、持ち出し用のラップトップ・コンピューターとしてAPPLE MacBook Airを使用している。「CPUは最高のものではありませんが、Apollo Twinの動作は全く問題無い」という。
「Consoleソフトウェア上でのモニターは、他社の低レイテンシー・モニタリング機能と比べても格段に快適に演奏できます。ギタリストはちょっとした音の遅れも演奏に大きく影響するので、これはとても大事な機能。レイテンシーに関して、Apollo TwinとConsoleソフトの組み合わせは、現在のところ最強と言えるのではないでしょうか。ヘッドフォン・アウトの音質も優秀で、レコーディングに集中できます」
滝は今回の取材に持ち出し用のセットを持参していたが、自作のフルレンジ・スピーカーやマイクを含めて、ハード・ケース1つで持ち運べるコンパクトなものとなっていた。
「昨日、埼玉の山奥に住んでいる友人の家に遊びに行ったのですが、木造でとても響きの良い空間でした。そこで何か素材を録りたいと思っていたのですが、たまたまハンド・クラップを録ることになり、このハード・ケースを取り出してAKG C414 XLSを無指向性で立ててApollo Twinにつないだところ、余裕で本テイクとして使えるクオリティで録音できました。可搬性の高さが存分に発揮されたレコーディング・セッションでしたね……この自作スピーカーは昨今の機種と比べるとレンジこそ狭いものの、その分耳に優しいですし、制作でも活躍しています。フルレンジはクロスオーバーが無いので、中域周辺の音のそろいが良く、外で音を判断する際も頼りになるんですよ」
滝は「Apollo Twinを導入したことで、音楽制作の可能性が大きく広がりました」と語る。
「やはり、いろいろな場所で録音できるのは夢があります。気分の良い場所で録れば演奏自体も変わりますし、その場の空気の響きごと録るわけですから、それこそ究極の“かけ録り”ですよね。必然的に録り音の雰囲気を生かすことになるので、曲の方向性も悩まなくて済みますし、制作には良い影響しかないような気がします。機動性と音質を考え合わせると、今のところオーディオ・インターフェースはApollo Twin一択になるのではないでしょうか」

(そのほかの記事)
UNIVERSAL AUDIO Apollo Twin開発者インタビュー
Apollo Twinの全容
Artist Interview 2:TeddyLoid

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