第4回〜SC207をDJ Mitsu The Beatsが使う!

EVE AUDIO SC207

ベルリン発新鋭モニター・スピーカーEVE AUDIOの実力 by サウンド&レコーディング・マガジン編集部 Photo:Koichi Watabe 2013年10月11日

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ADAMのモニター・スピーカーの設計に携わり、CEOも務めたローランド・シュテンツ氏がベルリンにて新たに立ち上げたブランドがEVE AUDIO。その妥協無く品質を追求する姿勢に共感するクリエイターの数は、日本でも増えてきている。今回編集部は、高品質なビートで世界的に名を知られるDJ Mitsu The Beatsが、6.5インチ・ウーファー搭載の2ウェイ・モデル=SC207を導入したという情報をキャッチ。仙台のプライベート・スタジオ=Jazz Phenomenon 2にて話をうかがった。

音像の広さや空間の感じがとてもよく“見える”

DJ Mitsu The Beatsは本誌にもたびたび登場しており、音質へのこだわりについては読者も知るところだろう。最新作となるインストゥルメンタル集『Beat Installments Vol.2』をはじめ、このところミキシングはstudio MSRの奥田泰次、マスタリングはベルリンCalyxのボー・コンドレンという制作体制を採っているが、プライベート・スタジオでのビート・メイク時には「95%ヘッドフォンで」モニタリングしてきたのだという。

「仙台と東京の行き来が多いので、制作場所に依存しない基準を作りたくてSONY MDR-CD900STをメインに使ってきました。ただ、ヘッドフォンのみのモニタリングでは空間までは判断できないことも分かっていて、そうした部分はstudio MSRの環境で確認してきました。奥田さんとは長い付き合いなので、“MSRではこういう感じで鳴るだろう”という予測は僕なりに立てられるようになったのですが、自分がミキシングした音源をクラブで鳴らすとスネアが耳に痛かったり、ドラムの“硬さ”の面で苦労することが多かったですね。特にヘッドフォンではコンプ感が分かりにくく、かけ過ぎてしまうことが多かった。そうした経緯もあり、奥田さんとも“やはりスピーカーは必要だね”という話はしていたんです」

これまでも幾度かモニター・スピーカーを導入する機会はあったが、基準を満たす機種とはなかなか巡り会えなかったそうだ。

「最近のニアフィールド・モニターは低域が強調されているものが多いですよね。幾つかのブランドを試聴したことがあるのですが、僕が必要とする以上にローが出ていて、使いづらいと感じることが多かった……僕は、音に色付けの少ない機材が好きで、先日オーディオ・インターフェースもRME Fireface UCXに替えたばかりなんです。そんなタイミングでSC207を試聴する機会があったのですが、音を出してすぐに“これだ!”とピンときました」

続けて、初めてSC207で音を出した際の印象を、次のように振り返る。

「まず一聴して音像が見えやすいというか、空間がよく分かるように感じました。僕は普段、J・ディラがプロデュースしたコモン『Like Water For Chocolate』をリファレンスにしているのですが、イメージしていた通りの音像で鳴ってくれましたね。あと一番驚いたのは……僕はレコードを聴いていて気になった個所を、AVID Pro Toolsのオーディオ・トラックにネタとして録りためているのですが、そのトラックをSC207で再生すると、各レコードの録音条件による定位や空間の違いがはっきりと聴き取れたんですよ。良い録音の素晴らしさはより明確になりましたし、逆に“これだけのレンジでしか鳴っていなかったんだ”というレコードもあった。これはヘッドフォンだけで聴いていた際には気付かなかった部分です。次に自作曲のPro Toolsセッションも再生してみましたが、ディレイやリバーブの消え際の聴こえ方が、これまでと全然違いました。“やはりヘッドフォンだけでは全然ダメだったんだ”とあらためて感じましたね」

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▲プライベート・スタジオ=Jazz Phenomenon 2に設置されたSC207。APPLE MacBook Proを挟むように、60cmほどの間隔を空けてほんの少しだけ内振りに設置。デスク用のスピーカー・スタンドでAMTリボン・ツィーターが耳の高さにくるよう調整している。後方の壁からは5cmほどの距離だが、バスレフ式のモニター・スピーカーにありがちな低域のブーミーさは感じられないという

 チューニング用フィルターは音像が崩れることもなく使いやすい

6月号のシュテンツ氏のインタビューを読んで「ユーザーの環境に合わせてスピーカーの特性を調整できる」という設計思想にも共感を覚えたと語るDJ Mitsu The Beats。自身も早速フロント・パネルにあるDSPコントロール・ノブを使ったチューニングに入ったという。

「初めはSC207をテーブルに直接置いたのですが、低域がやや強く感じたので、まずDesktopフィルターを試しました。すると邪魔に感じていただけの低域が削れてバランスが良くなったのですが、やはりツィーターは耳の高さにした方が良いということで、デスク用のスピーカー・スタンドを設置して高さを出しました。すると音の感じが随分変わって、低域もさほど気にならなくなったんです。その後も先述したリファレンス音源などを再生しながら、まず“自分が気持ち良く作業できる音”を念頭にチューニングしていきました。フィルターの設定もいろいろと試した結果、現状ではLowのフィルターを−1にしている以外は、フラットな状態になっています」

そのフィルターの効き具合だが、「とても自然で調整しやすいです」と言葉を続ける。

「聴感上の音色がガラッと変わるわけではないのですが、特定の帯域に集中して聴いていると、明らかに効いている。ごっそり低域が削れたり、高域が耳に痛くなったり、音像が崩れることもないので、とても使いやすいですね……スピーカーに合わせて部屋の環境を調整するのではなく、スピーカーを置きたい場所に置いた上で、特性を精細にチューニングできるのは素晴らしいと思います。DSPノブの回りのLED表示も、初めはリング状に光っていたのが若干気になりましたが、設定を変えて1点のみが光るようにしたところ、気にならなくなりました」

SC207のバスレフ用ダクトはリア側にある。取材時は後方の壁から5cmあたりの場所に本体が設置されていたが、特に低域のブーミーさを感じることもなく、先述したフィルターの微調整のみで問題無く使えているという。

「SC207は低域の見え方も良いです。初めはこの部屋のサイズに対して筐体が大き過ぎないかな?と感じましたが、逆にこれくらいサイズがある方が鳴りも良く、聴こえやすく全体像を見せてくれる。低域も出ているのですが、モワッとしているわけではなく、ソリッドなところが良いですね。ミキシングだけでなく、ビート・メイクの際にMOOG Little Phattyでシンセ・ベースを弾いているときも、輪郭がクッキリと聴こえて判断しやすい。無駄な低域が出ていないので、ベースの音量も調整しやすくなりました」

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▲EVE AUDIOのモニターはチューニング用のノブがフロント側にあるため、スピーカーのセッティング後も操作しやすく、気に入っているという。リファレンスCDを使って調整した結果、現在はLowを−1にしているのみで、ほかはフラットな状態で良い結果が出ているそうだ

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▲“SC”というシリーズ名の由来ともなっている、EVE AUDIOが独自に開発したSilverConeウーファー。グラスファイバーでハニカム構造を挟む設計となっており、軽量化と高能率を実現。タイトでスピード感のある低域を再生する

モニター音が向上すると制作へのモチベーションが刺激される

「現状でもここでの作業は随分楽になったので、これからは奥田さんのスタジオやクラブでの鳴りとの差をより少なくする方向でSC207のセッティングを詰めていきたい」と語るDJ Mitsu The Beats。早くもプロダクションの工程で良い変化が現れ始めているそうだ。

「『Beat Installments Vol.2』では奥田さんのミックスの確認にSC207を使いましたが、音の解像度が高いので、修正点なども的確に指示することができました。今後は、これまで自宅で詰め切れていなかったコンプのかけ過ぎなどが減るのではないでしょうか……すると奥田さんの方も楽になるというか、studio MSRに持ち込んでからの作業量が少なくなると思います」

何より良いのは、SC207の導入を機にモニター音のグレードが上がったことで、「制作に対するモチベーションが、ここ数年なかったくらい刺激されている」ことだという。

「現在はGAGLEのニュー・アルバムを制作している最中なのですが、ここでラッパーのHUNGERのボーカルを録って、SC207でプレイバックを聴くだけで気分が盛り上がるんですよ。モニター環境の向上が、これほど制作意欲を起こさせるとは思わなかったですね。また、ここはいろいろなアーティストやディレクターが出入りする場でもあるので、デモを聴かせるにも、MP3を送るのと、ここで良いスピーカーで聴かせるのとでは大きな違いが出てくると思います……SC207は、僕が作ったビートを色付け少なく良い状態で再生してくれるので、とても気に入っています」

 

DJ Mitsu The Beats
【Profile】仙台を拠点とするJAZZY SPORT所属のDJ/トラック・メイカー。実弟であるラッパーのHUNGER、DJ Mu-Rと組んだGAGLEのほか、ソロとしても活躍。ヒップホップをベースにジャズやソウルが交錯する音楽性は、ジャンルを越えて高い評価を集める

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『Beat Installments Vol.2』

DJ Mitsu The Beats

JAZZY SPORT:JSPCDK-1015

 

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EVE AUDIO

SC207

98,700円(1本)
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

問い合わせ
メディア・インテグレーション
TEL: 03-3477-1493 http://www.minet.jp/

【SPECIFICATIONS】
■構成/高域:AMT RS2リボン・ツィーター、低域:6.5インチSilverConeウーファー ■出力/150W(高域50W+低域100W) ■周波数特性/44Hz〜21kHz ■クロスオーバー周波数/3kHz ■最大出力レベル/106dB ■外形寸法/215(W)×330(H)×280(D)mm ■重量/8kg(1本)

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