オウテカ 発掘interview【4】 ~ WARPレコーズ特集

インタビュー by 編集部 2009年11月20日

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「今はハードウェア・シーケンサーを多用している。DSPの進化を追いかけることに飽きたんだ」
(ショーン・ブース/2005年インタビュー)

オウテカ第四弾インタビューは、2005年の来日時のもの。ハードウェア回帰を果たした『アンティルテッド』を引っ提げてのライブ・セッティングについて、詳細なインタビューが行われた。ライブ・システムの全貌図も必見である。

[この記事は、サウンド&レコーディングマガジン2005年8月号のものです]  Interpretation:Hashim Baroocha

複雑かつ強固なビート、エクスペリメンタルで研ぎ澄まされたシンセ音、それらが渾然一体となったカオティックなサウンド……ショーン・ブースとロブ・ブラウンによるユニット、オウテカが作り出す音世界はほかのエレクトロニカ系アーティストとは一線を画している。しかも、10年以上にわたってシーンをけん引し続けているにもかかわらず作品を発表するごとに進化を遂げていく。それを証明するかのように今春リリースされた8thアルバム『アンティルテッド』でも強力なビートを展開し、新たな地平を切り開いている。そんな彼らがこの6月に7年ぶりとなる来日公演をも敢行。そこで、川崎CLUB CITTA’でライブ前の彼らをキャッチし、新作と謎に包まれたライブ・パフォーマンスについて話を聞くことができた。

“Untitled”というタイトルは、絶対に付けないよ

■新作のアルバム・タイトルである『アンティルテッド』にはどんな意味があるのですか?

ショーン  タイトルを考えているときに”Untitled”という単語を見ていたら”Untilted”に見えてきたんだ。すると”Untilted”にしか見えなくなってね。頭とケツの文字が同じなら、何となく読めてしまう。でも、ちゃんと読めばどこが違うかが分かるはず。このアルバムのサウンドも同じだ。一聴では後退しているように聴こえるけど、よく聴けばテクニカルで高度なアルバムだと分かるものになっている。

ロブ  僕らが”Untitled”というタイトルを付けかねないと思っている人が多いようだけど、”Un
titled”というアルバムは絶対に作らないよ。

ショーン  これはちょっとしたトリックなんだ。ある人に”なぜタイトルを付けなかったのですか?”って聞かれたんだけど、”もうちょっとちゃんと見てよ”って言ったよ(笑)。

■今作のブックレットにはスタジオ名はクレジットされていませんが、どこで制作作業を行ったのでしょうか?

ショーン  今回はほとんど僕のスタジオで作業した。ロブは子供が生まれたばかりだから、家では大きな音が出せないんだ。

ロブ  ショーンのスタジオの方が広いしね。それに、今までもアルバムを作るごとに新しい場所でレコーディングしていたわけだし。

ショーン  『コンフィールド』や『ドラフト 7.30』は部屋に大量のスポンジをセットして完全吸音されたデッドな空間で制作した。音の反射が少ないから、すごく静かだったよ。でも、今のスタジオは、すごく音が反射するんだ。このスタジオで作業しているとトラックが空間的になるし、リスナーと同じような環境で制作できる利点もある。僕はどちらかというと普段、音楽を聴いているような環境でトラックを作る方が好きなんだ。デッドな部屋で作って、それを別の部屋で聴くと混乱することがあるからね。

■モニター環境によって出来上がる音楽が変わるということですか?

ショーン  そうだ。今回スピーカーはDYNAUDI
O ACOUSTIC BM15Aを使ったんだけど、高域がフラットでレスポンスがすごくリアルなところが良かったよ。

ロブ  でも、マスタリングのときはGENELECのスピーカーを使うことがある。

ショーン  GENELECのスピーカーは悪いとは思わないけど、僕にとっては音が豊か過ぎる。G
ENELECで音を確認しながら曲を作ると、別のシステムで聴き直したときに、違和感を持つことがあるからね。

■スタジオにあるほかの機材について教えてください。

ショーン  ミキサーはずっと使っているMACKI
E. 24・8とSHURE AuxPanderがセッティングされているね。

今回はMax/MSPをほとんど使っていない

■今回も前作までと同様に2人の役割分担はなかったのですか?

ショーン  そうだ。役割分担は無い。目の前にある機材を何でも使っているだけだ。その中でも使う機会が多かったシーケンサーはROLAND M
C-4やアナログ・シーケンサー、それにROLAND R-8とELEKTRON Machinedrum SPS-1といったリズム・マシンだね。僕はハードウェア・シーケンサーの制限があるところが好きなんだ。これまで、CYCLING’74 Max/MSPを使って、さまざまなシーケンサーをデザインしてきたけど、それは簡単にパターンを生成するためだった。でも、その作業を楽にする必要は何も無いということに気が付いたんだ。僕たちはそのことを遠回りして学んだというわけさ。

■Max/MSPは全く使わなかったのですか?

ショーン  MIDIをコントロールするためのユーティリティとして使ったくらいだ。ほかには、CYCLING’74 PluggoやMax/MSPから電圧変動(varying voltage)を出力して、MIDI機能の無い機材をコントロールしたり……といった感じでデータ変換用に使った。MIDI/CVコンバーターを使っている人は多いけど、Max/MSPをこんなふうに使っている人はほかに聞いたことがない。テクノロジーはどんどん発展しているけど、僕はその使い方は人それぞれだと考えている。それに、僕たちはDSPの進化を追いかけることに飽きてしまったんだよ。でも、ハードウェア・シーケンサーで賄えないところは、MARK OF THE UNICORN Digital Perfomerを使った。例えば、2〜3台のハードウェア・シーケンサーでそれぞれ違う尺のリズムを作って同期させると、予想できないようなシーケンスを作り出せることがある。そのMIDIデータをDigital Performerで編集することもあったんだ。

ロブ  Digital Performerはもともとデヴィッド・ジッカレリに薦められて導入したんだ。あるときROLAND MC-202と正確に同期させられることに気が付いて、それから気に入って使っている。つまり、オールド・スクールな機材と新しいシステムを同期させられるんだ。

ショーン  ハードウェアを使っていて”ここだけ音の順序を変えたい”と思ったときはオーディオ・データを読み込んで編集することもある。もちろんレコーディングにも使っているけど。

■オーディオ・インターフェースは何を使っているのですか?

ショーン  MARK OF THE UNICOEN 2408 MKIIだ。音が好きなんだよ。

ENSONIQ ASR-10とCASIO FZ-1は、最高のハードウェア・サンプラーだ

■従来の作品を含め、オウテカのシステムの中で中核を担うのはサンプラーだと思うのですが、今回はどんなものを使ったのですか?

ロブ  ソフトだとMARK OF THE UNICORN Mach Fiveだな。
ショーン  ほかのソフト・サンプラーも試したけど、あまり好きにはなれなかった。理由は分からないけど、Mach Fiveの音質はKURZWEILやENSONIQのサンプラーに近い気がする。ハードウェア・サンプラーはAKAI PROFESSIONAL Z8やENSONIQ ASR-10、CASIO FZ-1、RZ-1を使った。これらは常に電源が入っていて、いつでも作業が始められるようにしてある。

■それらのサンプラーの中で使用頻度が高かったものを教えてください。

ショーン  FZ-1が多かった。フィルターが荒々しいんだけど、そこがまた素晴らしくて、ほかのソフトや機材ではまねできないサウンドが生み出せるんだ。FZ-1のフィルターをソフトウェアでエミュレートしようとしたけど、できなかったよ。

ロブ  FZ-1の音はローファイだけど、使いこなせばチェップ・ヌーネズ(編集部注:マントロニクスなどのリミックスを手掛けるアーティスト)みたいな音を作ることもできるんだ。

ショーン  それに、FZ-1には1つの音色をさまざまな出力から次々に出せる機能があるんだけど、その機能を使うと、1つ1つキーの異なる音を複数の出力から出せる……そんなことができるサンプラーはほかに見たことがないよ。FZ-1を駆使すれば素晴らしい音楽が作れるんだ!  バイオリンなどの生楽器の音を正確に再現しようとしてFZ-1を使っていたら、それは大問題だろうけどね(笑)。

ロブ  あとはサンプルをチョップするときにはASR-10を使った。ループ・ポジションを調整するのに便利だからね。ASR-10も最高のハードウェア・サンプラーだと思う。ウェーブテーブル的な使い方もした。

ショーン  たくさんの波形を読み込んで、MIDIコントローラーでループする個所を変えて、すごく細かいリズムをループさせている。ネタはテレビから音をサンプリングすることもあるし、気に入った音があれば何でも使っている。

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