第4回〜番外コラム「レコーディングで何を食べる?」①

“D”と“P”の作法(音楽業界編) by 中脇雅裕 2017年1月15日

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皆さんこんにちは! 年も明け早2週間。ボーっとしていると今年もアッという間に終わってしまいますよ! 自分のイメージをしっかり作って、ステップ・アップしていってくださいね。

さて、今回はちょっと脇道に逸れ、番外コラム「レコーディングで何を食べる?」と題して、私がディレクター時代に培った“レコーディングの食”にまつわるお話をしたいと思います。

 

優秀なディレクターは“食事のタイミング”まで計算している!

私がレコーディング・ディレクターとしてスタジオに入ったのは1993年。スタジオ・ワークを共にする先輩エンジニアやミュージシャンのインペグ屋さん(※注1)などから最初に教えてもらったのは、“食事のタイミングをどう読むか?!”ということでした。

当時、レコーディングは大体13時か14時スタート。お昼ご飯は食べてくるのが何となくのルール。終わりは早くて22時から24時。朝まで作業なども珍しくありませんでした。ともかく、“夕ご飯はスタジオでみんなと食べる”。これもなんとなくのルール。

大体、18時から20時くらいの間に出前を注文して食事が到着次第、“ご飯タイム”になるわけですが、この出前の注文のタイミングと、どこに頼むかということにディレクターのセンスが出てくるわけです。ディレクターはその日のスタジオ・ワークの流れを大体イメージしておきます。

「13時スタートでギター・ダビングに2時間。歌入れに4時間くらいかな……。ここまでで19時。ってことは、歌入れ終わりにご飯だな。でも今日はすぐに仮ミックスを作らなければならないから、ゆっくりご飯を食べてると終電に間に合わないぞ!」

みたいな感じです。

こんな場合、歌入れの後半にまずどこに頼むかを決めます。出前のメニューはスタジオの方で大体まとめてくれています。それを、その日のスタジオで“一番立てなくてはならない人”にそれとなくお伺いをたてます。それはベテラン・エンジニアさんだったり、アーティスト本人だったり、自分だったり(笑)します

でも、もう一方でアーティスト本人、特にボーカリストなどその日のパフォーマーにも気を遣わなくてはいけません。食べ物の好き嫌いやアレルギー、ダイエットしてるかどうか、日ごろの食生活などなどいろいろな情報を事前に集めておきます。もちろん歌入れがあるボーカリストに、喉に悪い辛い物などは食べさせません!

 

メニュー決めも気遣いそのもの。天ぷら蕎麦は要注意!?

そんなことあんなことを考えながら、どこに出前を頼むか決めます。もちろん、スタジオのスタッフにどこが美味しいとか、あそこはどのくらい時間がかかるかといった情報も聞いておくことは言うまでもありません(ちなみに私はBunkamuraスタジオから注文できる、確か吉野の鰻と焼き鳥がのった「あいのり重」が好きです)。

後は、メニューを持って各人の注文をとります。ここで気を遣わなくてはいけないのが、蕎麦屋で出前を頼む場合。誰かが温かい天ぷら蕎麦なんかを注文していたら大変です。出前が到着してすぐ食べられるのであれば問題ないのですが、どうしてもレコーディング作業を止められないような状況で、30〜40分も放置したら蕎麦とテンプラははガッツリと自らの汁を吸い取って、見た目も食感も全く違う食べ物になってしまいます

ともかく、温かい麺類を誰かが頼んでいたら、それも気を遣うべき人が頼んでいたら大変、注文時に大体何時くらいに来るかを聞いておいて(あんまり当てにならないけど……)、その時間に作業をいったん止められるように気を配ります。

また、良くあるのが“俺は終わるまで食べない。”という人。エンジニアさんやボーカリストに比較的に多いです。そういう人が偉い人だったりすると、ワサワサ出前などとれなくなり、コンビニでおにぎりやサンドイッチを買ってこっそり食べたりします。

でも一番ディレクターが気を遣うべきなのはアーティスト、特に“ボーカリストの声とお腹の関係”。先ほども少し触れましたが、女性ボーカリストはダイエットなどをしていてあまり食べないでスタジオに来たりします。しかし、やはりお腹が空いていると声が出ないことが多いのです

そんなときは決まった食事の時間など気にせずに、おにぎりを1個食べてもらうと急に声が出たりします。もちろん、食べ過ぎはダメですが……。優秀なディレクターはボーカリストの声を聴いて、「あー、お腹空いてるな!」とすぐ分かったりします。このように、ディレクターの仕事はまさに“気遣い”そのものです

さて、次回ももう少し脇道にそれてこの続きをお話ししたいと思います。

【※注1 インペグ屋さん】
スタジオ・ミュージシャンやライブでのサポート・ミュージシャンを、その趣旨に合わせて斡旋/紹介してくれる人たち。優秀なインペグ屋さんはディレクター、プロデューサー、ミュージシャンからの信頼も厚く、結構、音楽の制作にかかわるようなことも相談したりします。

 

 

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【中脇雅裕】
プロデューサー/音楽ディレクター。CAPSULE、中田ヤスタカ、Perfume、手嶌葵、きゃりーぱみゅぱみゅなどのヒット作品に深くかかわる。アーティスト/クリエイターの成功とメンタルの関連性に日本でいち早く着目し、研究を重ねている。http://nakawaki.com

 

 

※本連載は毎月15日・30日近辺に更新していく予定です。お楽しみに!

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