ACCUSONUS「数学ではなく“人間の脳でどう感じるか”で解析」~創業者インタビュー

レポート by サウンド&レコーディング・マガジン編集部 2019年3月1日

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ギリシャとアメリカに拠点を置くプラグイン/ソフトウェア・メーカー、ACCUSONUS。2ミックスのドラムを各パーツへと分離するRegroover、ドラムのマルチトラック同士の“カブり”を抑制するDrumatom、そして各種ノイズの除去に便利なEraシリーズといったオーディオ・リペア・ツールを意欲的にリリースしている。InterBEE 2018で来日したAlex Tsilfidisにインタビューする機会を得た。

複雑なアルゴリズムをプラグインに落とし込む
その作業に1年費やしました

●ACCUSONUSはいつから始めたのですか?
Alex 2014年に立ち上げて、最初の2年間は土台作りとして共同創業者のElias Kokkinisと2人で開発作業をしていました。現在は25名まで増えました。
●Alexさんは技術者としてどこかで働いていたのですか?
Alex ACCUSONUSを始める前は大学でPhD(博士号)を取得するために、音に関する研究を続けていました。その間、ヨーロピアン・リサーチャー・プロジェクトにかかわって、その後、デンマークにある補聴器の会社で少し働いていました。私は若いころは作曲者としても仕事をしていましたよ。
●個人的にどんな音楽が好きなのですか?
Alex エキスペリメンタル・エレクトロニカですね。エイフェックス・ツインや池田亮司が好きです。
●ご自身でも音楽は作っているのですか?
Alex 今はもう作っていませんが、作曲をしていたころはピアノを弾いていました。
●大学では具体的にどんな音の研究をしていたのですか?
Alex 音響心理学です。研究の中でさまざまなアルゴリズムを生み出し、それらがACCUSONUS製品のベースになっています。もちろんアルゴリズムは非常に複雑なので、それらをユーザー・レベルのシンプルなツールに落とし込むことに時間をかけ、プラグイン/ソフトを開発しています。
●RegrooverとDrumatonはドラム向けのソフト/プラグインですが、あなた自身がドラム・サウンドを扱う際に困った体験が出発点になっているのでしょうか?
Alex 実は共同創立者のEliasがドラマーなんです。彼は世界で初めて“ドラムのカブり”に関する論文を書いた人物なんですよ。重要なのは、オーディオ信号を解析する際、数学的に処理するのではなく、人間の脳でどう検知しているかということです。私のアルゴリズムは人間の脳がどう音をとらえているかをシミュレートしているのです。オーディオ・ファイルの中に入っている無数の情報を、音楽的に意味のあるリズムなのかどうかを検知して解析しないと意味が無いのです。音を聴くのは人間なので、単に数学的な計算をしただけでは良い結果は得られないのです。それを感知するAIが動いていると考えてもらって差し支えありません。
●そうなるとCPU負荷も高くなっていきそうですね。
Alex そうなります。RegrooverはDAW上であまり重くならないようにするために、プラグインの中身をオプティマイズしてCPU負荷を抑えるように設計しています。その作業に1年間費やしましたね。一方、Drumatonはマルチチャンネルに対応しなければならないのでアルゴリズムが重く、CPU負荷が高いためプラグインではなくスタンドアローンのソフトにしました。
●RegrooverとDrumatonに入っているアルゴリズムは同じなのでしょうか?
Alex 異なるものです。すべて特許は取得済みです。

▲2ミックスのドラムを各パーツへと分離するRegroover。Pro版とEssential版がラインナップされている

▲2ミックスのドラムを各パーツへと分離するRegroover。Pro版とEssential版がラインナップされている

▲ドラムのマルチトラック同士の“カブり”を抑制するDrumatom

▲ドラムのマルチトラック同士の“カブり”を抑制するDrumatom

 

残響成分だけを取り除くのは難しい作業です
しかし音響心理学を応用してそれを可能にしました

●一方、Eraシリーズはユーザー・フレンドリーでポップなUIですね。
Alex Eraシリーズはオーディオ・リペアの仕事を素早く仕上げることにフォーカスしています。最初はライト・ユーザー向けに作ったのですが、いざリリースしてみると映画やテレビなどに関係するプロフェッショナルなユーザーたちが支持してくれるようになりました。彼らは常に締め切りに追われているので、素早く処理ができるというのはメリットだったようです。
●リバーブ成分をコントロールするEra Reverb Removerなど興味深いツールがラインナップされています。
Alex Reverb RemoverはまさにPhDを取得する際のテーマだったんです。なので最も得意とする分野でした(笑)。部屋に響いている声の成分は、大本となる声と非常に似ているので、その残響だけ取り除くのは非常に難しいことです。ですが、私は音響心理学を通じて“人間が脳で感じている残響成分”だけを解析して抜き出すことに成功したのです。
●ACCUSONUSで最も売れている製品は?
Alex Regrooverが一番有名ですが、セールス的に現在伸びているのがEraシリーズです。ユーザーの多くはバンドル・セットですべてのプラグインを併用しているようですが、Eraシリーズの中でも強いていうならばEra Noise removerが人気があります。また、新たにEra De-Cliperという製品も作りました。
●最後に、ACCUSONUSとして今後目指していることは?
Alex 私たちの製品はすべて数学や物理学とは異なり、“人間の脳でどう感じるか”が元になっているのが特徴です。今までできなかったことをテクノロジーで可能にするということにフォーカスすることで、“サウンド・メイキング・ライフを変えたい”と思っています。プロフェッショナル/アマチュアを問わず音作りをサポートしたい、つまり音楽の民主化を目指しているのです。

▲オーディオ・リペアのEraシリーズ。左から残響成分をコントロールするEra Reverb Remover、ハムやヒスなどのバックグラウンド・ノイズを低減/除去するEra Noise remover、クリップしてしまった音声を補修するEra De-Cliper。Era De-Cliperはユーザー・フィードバックで改良されるベータ版のため特別価格でのリリースとなっている(2019年2月現在)

▲オーディオ・リペアのEraシリーズ。左から残響成分をコントロールするEra Reverb Remover、ハムやヒスなどのバックグラウンド・ノイズを低減/除去するEra Noise remover、クリップしてしまった音声を補修するEra De-Cliper。Era De-Cliperはユーザー・フィードバックで改良されるベータ版のため特別価格でのリリースとなっている(2019年2月現在)

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