「すべてにオープンになることだ」…ファレル・ウィリアムス@ROLI×Apple銀座イベントに登壇

レポート by 篠崎賢太郎(サウンド&レコーディング・マガジン編集部) 2018年1月19日

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1月16日、Apple Store銀座の“Music Lab”のプログラムとして、ご存じSeaboardやBlocksといった意欲的な楽器で知られるUKのメーカー=ROLIのスペシャル・イベントが行われた。同社のCEOであるローランド・ラム氏によるROLIのプレゼンテーション、ユニットPARISI(パリシー)によるROLI製品を使ったパフォーマンス、そして昨年秋に同社のCCO(チーフ・クリエイティブ・オフィサー)に就任したファレル・ウィリアムスも登壇。その内容をピックアップしてレポートしよう。

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ローランド・ラム氏(ROLI CEO)

かつて禅の修行で日本に滞在経験があるという彼は、グラフィック・アーティスト/音楽家として世界を旅し、2009年にROLIを創業。SeaboardやBlocksといった独自性の高い電子楽器をリリースし、スタートアップとしてイギリスでもっとも成功した会社の一つを作り上げた人物である。

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【ROLIの思想】
「ROLIの思想は“多くの人にクリエイティビティを与えること”です。すべての人はクリエイターであると私たちは考えており、質の面でも量の面でも皆さんにクリエイティビティを存分に発揮してもらえる楽器を生み出していきたいと思っています。同時に、クリエイションには人と人とのかかわりが深く影響していると思っていますので、単純に技術が進化したからといってクリエイティビティの質と量も上がるというわけではありません。人と人とのインタラクションをより発展させることができる製品を目指しています」

【ROLIの製品について】
「音楽という一つの分野に限って言えば、写真や絵画などに比べて、技術によってクリエイティビティのサポートがそれほど進んでいないと思います。自分はピアニストとして活動していた経験があり、技術を使ってもっと自分を表現することができないだろうかというのがROLIの原点です。日本に居たときはジャズ・バンドを組んでピアニストとして活動していました。そのときピアノでは表現できないことをギタリストやベーシストがやっているのを見て、非常に悔しい思いをしていました。それがきっかけとなってSeaboardを製作しました。通常のピアノはもちろん、連続したピッチ表現ができるサーフェスですので、ビブラートを効かせたウッドベースの演奏なども行えます。書道の筆使いの止め、跳ね、払いといった基本的な動作と似ています。そういった発想をピアノのインターフェースに乗せてみたらどうなるかというのがアイディアの元でした。それをより多くの人に手軽に体験してもらおうと思った製品がBlocksです。小さなサーフェスですが、自由な表現が可能となっています。

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【ファレルのCCO就任について】
「ファレルは音楽だけでなくファッションにおいてもポップ・アイコンであり、多岐にわたる分野で創造性を発揮しています。我々は音楽のクリエイティビティを皆様に届けることを使命に活動していますので、ファレルと我々はこれ以上ない組み合わせと考え、弊社のクリエイティブ・チーフに就任してもらうことになりました」
 

ファレル・ウィリアムス(ROLI CCO)

1990年後半からプロデュース・ユニットのネプチューンズとして頭角を現し、ポップス・フィールドで新たなブラック・ミュージックの形を提示。近年は主にソロとして活動し、「ハッピー」が世界的にヒットしたのも記憶に新しい。この日はローランド・ラム氏から質問を受ける形で、哲学的な言葉も交えながらクリエイティブについて持論を披露した。

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【人間はなぜ「創造」をするのか】
「恐らく創造は人間として前進するために必要不可欠なことだと思います。音楽というのは決して廃れない、古くならない、そして自分にとっては非常にやりがいのあることです。創作活動を通して、楽曲ができる、みんなが聴いてくれる、そうした一連の流れが人々に影響をもたらしているのではと思います」

【創造性のブレイクスルー】
「創作活動の中で音楽を作っていくアプローチは個人によって異なります。それぞれの異なったレンズを通すことで、人には見えるけど自分には見えない、逆も然りということもあります。暗い部屋でサングラスをしていても、何かが見える瞬間が必ずあるのです」

【テクノロジーが創造性に及ぼす影響】
「それは音楽家にもよると思います。もちろん技術に長けている人には何百万といった選択肢が広がってくるし、一方で、単にアイディアを出したいという人にとっては非常にシンプルなものとなるでしょう。私は音楽制作にパッドを使っていて、いつも同じツールで良いというタイプです。ですが、何かアイディアを拡張したいという場合は技術がそれを手助けしてくれます」

【創作で苦労した/充実した瞬間】
「今振り返ってみると、創作においてタフな瞬間が自分にあったかな?とさえ思うほどです。社会では医者になる、弁護士になることが成功だと教えられますが、自分は大好きな音楽を追求できて、この上ない喜びを感じています。それは皆に与えられた権利です。自分が大好きなことをやり続けていられることについて文句は無いし、すべてが学習であって、自分をより強くして前進させてくれるものです。創造で充実した瞬間を挙げるならば、ROLIに加わることができたことだと思います。朝起きて、自分が大好きなことに携わることができる、さらに楽曲制作のための楽器作りにも携わって、それによって他の人たちが楽曲を作る楽しさを味わってもらえる。あらゆることに感謝しています」

【創作の原動力】
「自分の場合はやりがいという感情がわき起こってきます。音楽のスタイルはいろいろあって、自分の中での基準、サウンドに対する期待値がおのおのにあると思います。そうしたフィーリングと行動が合致した瞬間……自分が正しいと思ったことと創作がピッタリと合ったときの感覚が創作の原動力になっていると思います

【自分が何を求めているか分からない人へ】
「皆が必ず持っている感覚……いわゆる認識のかたまりというものがあって、その中で幾つかに区分されていった先にあるものの一つが音楽です。それは誰しもが備えているものですが、必ずしも感じ取れなかったり、自分からそこにアクセスしようとしないケースがあるかもしれません。ただ、スピリットは必ずすべての人が持っていると思います。クリエイティビティはそれを表面化してくれる衝動。世の中にある有機的でないもの……服であれ、カメラであれ、スマートフォンであれ、Seaboardであれ、我々が持っているフィーリングを表面化したいという衝動から創られたものだと思います。驚くべきことに、世の中には無限のアイディアがあります。誰かが思いついても表面化してこなかったことが無数にあり、他の誰かがそこからインスピレーションを受けて具現化するということもあり得えます。例えば、50年前に南アメリカに居た誰かが持っていたアイディアを、何十年後にアフリカの誰かがピックアップして具現化しようとする。素晴らしいことだと思います」

【アイディアに対して「NO」と言わないためには】
「意欲的にオープンになるということ、そして試していくこと。そのためにはオープンにならなければいけません。自身が閉じていたらインスピレーションを受ける余地はありません。皆が必ずしも実行の意思を持っているかと言えばそうではないため、その点においては助言できることはありません。ただ、心の中に何かが見えるのであれば、それを成果としてアウトプットしていけると思います。思いついたことを一瞬の儚い(はかない)ものとして扱うか、形ある有限なものとして作り出していけるかどうかは個人次第です。そして欲求というものは教えられるものではありません
 

パリシー

イタリア出身/UK在住の兄弟ユニット。ROLI製品をパフォーマンスに取り入れ、“世界で最もSeaboard/Blocksを操るプロ・アーティスト”と言っても過言ではない二人。当日はエド・シーラン「シェイプ・オブ・ユー」のカバーなど、圧巻のプレイを披露していた。

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<MI7(ROLI製品取り扱い)リンク>
https://www.mi7.co.jp/products/roli/

<Music Lab(ミュージックラボ)とは>
Today at AppleというApple Storeで毎日開催されているインスピレーションに満ちたプログラムの数々のうちの一環になります。プログラミングや、スケッチや写真をとるプログラムがある中、Music Labでは「音楽制作の舞台裏でプロデューサやDJ、ミュージシャン、サウンドメイキングのプロたちが作品をどうやってつくりだすのか。というアプローチなどを紹介します」。今年はこのPharrellのMusic Labもそうですが、インスパイアを得ることができるMusic Lab が数多く予定されています。
https://www.apple.com/jp/today/event/music-lab-developing-your-sound-by-rza-6354172686067157385

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