ユウイチロウ“ICHI”ナガイ氏 OX|Amp Top Boxを語る

レポート by サウンド&レコーディング・マガジン編集部 2017年11月8日

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2017年6月にナッシュビルで行われたSummer NAMM。その会場でUNIVERSAL AUDIOの新製品、OX|Amp Top Boxが発表された。ギター用真空管アンプのサウンドを最大限に引き出すロード・ボックスとして注目を集めているが、なぜUNIVERSAL AUDIOがこのような製品を開発したのか疑問を持つ人も多いだろう。そんな中、UNIVERSAL AUDIOインターナショナル・セールス・マネージャーのユウイチロウ“ICHI”ナガイ氏(写真右)が来日。OXについて話を伺った。

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真空管アンプのトーンを保ったまま
シーンに合わせてボリューム調整が可能

OXはリアクティブ・ロード・ボックスと言われる製品だ。真空管ギター・アンプのスピーカー・アウトを直接ミキサーやオーディオ・インターフェースにつなぐと、インピーダンスが合わずに破損してしまう。そこで使うのがロード・ボックス。ロード・ボックスをつなぐことで疑似的にキャビネットと接続した状態になり、真空管アンプのサウンドをラインで録音することが可能となる。OXはギター・アンプの出力に応じて負荷が変化するリアクティブ・ロード・ボックスとなっており、アンプをフルドライブした場合でもスピーカー・アッテネーションとの組み合わせによって、トーンを保ったまま好きな音量で鳴らすことができる。さらにDSPによる“RIG”と呼ばれるキャビネット・シミュレーション、スタジオのアウトボードを再現したエフェクト機能などを持つ。このギタリスト向け製品を開発した理由について、ナガイ氏が語った。

「アナログ回路の特性を再現できる“Unisonテクノロジー”を使ったギター用UADプラグインのおかげで、ギタリストの中にもUNIVERSAL AUDIOファンが増えてきました。そのユーザーたちはさまざまなアンプ・シミュレーションのプラグインを使っているのですが、スタジオでのレコーディングなどでは結局実機のアンプを使ったシステムに戻っているんです。“いろいろと試したけれど、実機のアンプに勝てるものはない”ということなんですね。しかし、真空管アンプを良い音で鳴らそうとするとかなり大きな音を出さなければいけません。“大きなスタジオは持てないしマイキングも大変だから、そこはデジタル処理でどうにかしてほしい”という意見もありました。そういった話から開発がスタートしたんです」

OXのフロント・パネルは5つのノブのみが並んだとてもシンプルな見た目。しかし機能は豊富に用意されており、細かな設定はAPPLE iPadから専用アプリを使って行える(Mac/Windows/iPhone/Android用アプリも配信予定)。取材時はギタリスト/プロデューサーの青木征洋氏が実際にOX|Amp Top Boxを使って演奏を行い、実際に音を確認しながらナガイ氏が機能について解説してくれた。

▲FENDER Deluxe Reverb(写真右下)とMARSHALL 1959X(写真左上)を使ってサウンド・チェックを行った。APPLE iPadにはOX|Amp Top Boxのパラメーターをコントロールするアプリが立ち上がっている

▲FENDER Deluxe Reverb(写真右下)とMARSHALL 1959X(写真左上)を使ってサウンド・チェックを行った。APPLE iPadにはOXのパラメーターをコントロールするアプリが立ち上がっている

OXにはアンプからの音を実機のキャビネットに送ることができるスピーカー・アウトと、キャビネット・シミュレーターを通ったサウンドが出力されるライン・アウトとS/P DIFアウトが備わっている。まずはFENDER Deluxe Reverbにギターをつなぎ、アンプのスピーカー・アウトからOXへ入力。そしてOXのスピーカー・アウトからDeluxe Reverbの内蔵スピーカーへつないで出力した。ナガイ氏はアンプのボリュームを最大にし、OXのフロント・パネルにあるSPEAKER VOLUMEノブで音量を下げる。そうするとスピーカーからはブルージーな真空管のひずみが加わったオーバー・ドライブ・サウンドが飛び出してきた。

「多くの方がFENDERのアンプと言えばクリーンな音をイメージしますが、実はこんな音が出るんです。でもアンプのボリュームを最大にすると音が大き過ぎて自宅などでは使えないですよね。OXには5段階の調節が行えるアッテネーター機能が備わっています。ギター・アンプ側の設定はそのままで、自宅やリハスタ、ライブなどのシーンに合わせてボリュームをコントロールすることが可能です

自宅での練習からライブまで、同じトーンで演奏を行いたいという人にとってはとても重宝する機能だ。青木も「アッテネーターと言われると音がやせたり、こもったりするイメージがありますが、OXはすごくナチュラルです」とその音の変化の少なさに驚いていた。

 

18種のキャビネット・モデルを収録
個体差のあるオーバー・トーンまでモデリング

続けてナガイ氏はOXのライン・アウトをミキサーにつなげて、キャビネット・シミュレーターについて説明してくれた。

「18のキャビネット・モデルを収録し、ダイナミック・スピーカー・モデリングによってコーンの紙質や熱による反応、オーバー・トーンなどを再現しています。iPadのアプリではキャビネットのモデル選択、50Wと100Wの切り替え、オーバー・トーン量に影響するSPEAKER DRIVEを調整できます。また、キャビネットに対するマイク2本とルーム・マイク、計3本分のチャンネルがあり、それぞれの音量やパンをコントロール可能です。ルーム・マイクの部屋の響きはUADプラグイン、Ocean Way Studiosのテクノロジーを使っています。キャビネットに対するマイクの位置を自分で動かせるプラグインも多いですが、“ちゃんとマイキングされた音が良い”というお客様の意見があり、UNIVERSAL AUDIOのエンジニア・チームでマイクとキャビネットのセッティングを完ぺきなものにして、自動的に適用されるようにしました」

▲OX|Amp Top Box専用アプリ画面。ここでキャビネット・モデルやマイクの選択、それぞれのボリュームやパンが設定できる

▲OX専用アプリ画面。ここでキャビネット・モデルやマイクの選択、それぞれのボリュームやパンが設定できる

▲1176をモデリングしたコンプのほか、EQやディレイ、リバーブなどのエフェクトを使用できる

▲1176をモデリングしたコンプのほか、EQやディレイ、リバーブなどのエフェクトも使用できる

このキャビネット・シミュレーターは、先ほどのアッテネーター機能と一緒に使うこともできる。つまり、PAシステムからはDSPで処理されたウェットなサウンド、実機のキャビネットからはギター・アンプのベストなトーンを同時に出力可能。プレイにかかわってくるレイテンシーはライン・アウトで約2.7ms、S/P DIF出力では約2.2msと、低く抑えられているのもポイントだ。また、演奏を行ってくれた青木氏はOXの魅力についてこう語る。

「僕はKEMPERを愛用していますが、例えばアンプ・ヘッドをフル・ドライブさせてOXを使ってボリュームを絞れば、自宅でアンプのベストな音をKEMPERにプロファイルできますね。また、ダイナミック・スピーカー・モデリングが素晴らしい。最近のトレンドはIRだと思いますが、あれはキャビネットの瞬間の動作をキャプチャーしたに過ぎません。キャビネットはもっと動的なものなんですよね。ノンリニアな部分までモデリングされているので安心して使えます」

真空管アンプのトーンを最大限に生かしたレコーディング、演奏が可能となるOX。“アンプ・シミュレーターでは満足できない。でもチューブ・アンプをしっかり鳴らすのは難しい”と悩んでいた人にとって垂ぜんの的となるに違いない。

▲OX|Amp Top Boxのリア・パネル。中央部のノブでインピーダンスの切り替えが可能。TO SPEAKERからはアッテネートされた音のみが出力され、LINE/MON OUTからはDSP処理された音が出力される

▲OXのリア・パネル。中央部のノブでインピーダンスの切り替えが可能。TO SPEAKERからはアッテネートされた音のみが出力され、LINE/MON OUTとS/P DIFからはDSP処理された音が出力される

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